第2話 護り神

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 案内されるままに辿り着いたその家は天井に焦げ跡がいくつもあり、その内のいくつかはそのまま空の景色を映し出す程の大きな穴になっているものもあった。

「ただいま! おばあちゃん」
「お帰りアカラ。 おや、そちらのお方は?」
「この方はあのシルバ様だよ!」

 家に帰り着いたアカラは祖母の元へ駆け寄り、笑顔で帰りを告げる。
 それを聞いて祖母はアカラを優しい笑顔で迎え、後ろにいたシルバに気が付いた。



 第二話 護り神



 アカラの祖母はアカラから昔に行方不明になったはずのシルバがそこにいると教えられ、心底驚いた様子だった。
 しかしアカラの祖母が何かを言い出す前に先にシルバが口を開く。

「あなたがオバアチャンか。"理の出でし洞"という場所について教えてくれ」
「え? えぇ……。"理の出でし洞"なら知っていますよ。今からかなり昔にはなるので、今どうなっているのかは分かりませんが……」

 シルバの言葉にアカラの祖母は一瞬戸惑ったが、まずはシルバの質問に答えるべきだと判断し、自分の言葉は一旦しまい込むことにした。
 アカラの祖母曰く、彼女が物心つく前からおおよそ大人になるぐらいまでの間、この島に竜の軍勢が攻め入るようになるまでは毎年、"理の出でし洞"と呼ばれる大楠の樹の洞で神事を行っていたそうだ。
 島民全員が集まり、奉納の舞を踊るポケモンが演舞を披露し神に供物を捧げ、その年一年の豊穣と安全を祝い、また次の年の為に祈祷したのだという。
 しかし侵攻が始まってからはとてもではないが島民全員が同じ場所に集まることが難しくなり、次第にその文化自体が廃れ、今では知るのは老人ぐらいだとアカラの祖母は語った。

「でも、私が幼い頃見ていた光景では確か、その神事の最後には必ず神様がその御姿を眩い光と共に現していてくれたような気がしたんだけれどねぇ……。今ではもう手入れもされなくなってどれほど経ったのかも覚えていないから……」
「つまりその大楠の洞へ行けばそいつに会えるという事だな」

 思い出すように話すアカラの祖母の言葉に対して、シルバはさも当然のように言葉を返した。
 この言葉に驚いたのはアカラの祖母だけでなく、アカラも心底驚いていた。
 シルバは元々誰かの声を聴いたと言っていたのをアカラは覚えていたため、もしもその場所で会う約束をし、シルバの心へ直接話しかけるという事ができるのであればアカラの祖母が言っている言葉にも信憑性が出てくる。
 しかしそれは同時にアカラにとっては非常に心配でもあった。
 昔のシルバならともかく、今のシルバは優しさや礼儀という部分からはかなり遠い存在であり、こんな無表情で不愛想な輩がいきなり神様の元へ会いに行くというのがあまりにも無礼で危険だと感じたからだ。
 しかし止めようとしてもシルバは全く持って耳を貸さないため、仕方なくアカラは祖母から大楠までの行き方の地図を描いてもらい、それを自分が受け取った。
 本来ならばシルバが受け取ればよかったのだろうが、残念ながらシルバは記憶を失っているせいかその地図を見てもよく意味を理解できていなかったからだ。
 そうと決まるとシルバは礼もそこそこにすぐにアカラに案内を依頼し、すぐに家を去ろうとした。

「ちょ、ちょっとシルバ様!」
「どうした? 場所は分かったんだ。案内を頼む」

 アカラは明らかに困った表情をしていたが、アカラの祖母はその様子を見てもにっこりと微笑み行ってきなさい。とアカラ達を手を振って送り出していた。
 本来ならばお礼を言われてもいいはずだったが、アカラの祖母なりに緊急性を感じたのかそうしたのだろう。
 結局挨拶も特になく、休憩もほとんどせずにやってきてすぐだが村を離れ、来た道とはまた違う林道を二人進んでいった。
 しかしその道はアカラの祖母が言っていた通り、最近では全く利用されていなかったのか進みだしてから一時間としない内に道とは呼べなくなり、岩や倒木で既に道らしき物すら見えなくなってゆく。
 そんな道をシルバはまるで何事もないかのようにひょいひょいと進んでゆくが、流石にアカラはそういうわけにはいかない。
 小さい体を使って逆に木の下をくぐったりして進むが、岩やくぐれない倒木は必死によじ登って進んでゆく。
 そうしてシルバが飛ぶように高い所から高い所へ二、三移動する度にアカラが追い付くのをただ見つめて待っているという奇妙な光景が出来上がっていた。
 しかしアカラは泣きそうな顔をしながらも弱音は吐かず、必死にシルバの後をついていきながら目的地を目指し続ける。
 そうすること数時間ほど歩いた末、ようやく沢山の苔むした倒木と岩に囲まれるようにして大きな樹とその根元の真ん中辺りにぽっかりと開いた大きな洞の前まで辿り着いた。

「ハァハァ……ここだよ……。"理の出でし洞"、通称『大楠の祠』。でもこの感じだと、もう本当に神様も居なくなっちゃってそう」
「関係無い。奴はここでまた会おうと言った。ならばいるはずだ。……それに分からないが、ここには何故か来たことがある気がする」

 シルバの言葉を聞いて、大きく肩で息をしていたアカラの耳がぴんと跳ねた。
 少しだけ元気を取り戻したアカラはシルバの元に近寄り、周囲を見渡すシルバの様子を伺っていたが、残念ながらシルバの様子の変化は特には現れなかった。
 そして少ししてから洞をじっと見つめ、そのままゆっくりと洞の方へと歩いていき、洞の縁に手を掛けてひょいとその入り口に上る。

「だ、駄目だよ! 流石にシルバ様でも神様がいる場所に勝手に入るのは!」
「だが他に場所はない。何処にも奴の気配はないし、次の声が聞こえてくるわけでもない。ならば奴の言った通り"理の出でし洞"そのものに行かなければ意味がない」

 そういってアカラの制止を振り切るようにしてシルバは洞の中へと姿を消してゆく。
 洞の中はとても樹とは思えないほど広く深く、まるでそのまま冥界にでも繋がっていそうなほどに静かで暗かった。
 シルバはそんな中をものともせず、また飛ぶような速度で降りてゆき、次第にその暗さから自分と周囲の見分けがつかないほどの暗さになっても脚を止めることはなかった。
 降り始めてから少しすると何故か樹の洞の中が少しずつ明るくなってゆき、次第にその終着点と思われる一際眩しい場所が見えるようになる。
 暗闇に目が慣れていたシルバは少しだけ目を細めつつも速度は落とさずに降りていき、あっという間にその深い深い洞の底まで辿り着いた。
 上を見上げても明かりは見えず、周囲にあるぼんやりと光輝くきのこが密集しているお陰でその底だけは昼間のように明るい。

『こちらだ……その横穴を抜けてこちらへ来るのだ』

 そこで周囲を見渡していたシルバの元にようやくあの時と同じ声が頭の中で響いた。
 声に導かれるままに横を見ると、そこには光っているせいで分かりにくかったが横穴が開いており、その向こう側でも同じように光るきのこが茂っている。
 シルバには少しばかり低いその横穴を潜り抜け、より眩しい光が差し込む方を見ると、そこには形を成した光が佇んでいた。
 うっすらと輪郭のようなものが見えるその光はシルバが来たことに気が付いたのか、ゆっくりとシルバの方へ歩み寄ってきた。

「久方振りだな……シルバよ……。とは言っても、君の方は私の事など知りもしないだろうがな……」
「そうだな。お前は誰だ?」

 その光は頭の中に響いていた声と同じ声でシルバへ直接語りかける。
 名前も知らなければその姿も知らないはずだったが、シルバは何故かその声に何か感じるものがあったのだが、それが何なのかはその時のシルバには分からないままだ。
 ただアカラから聞いていた自分の知り合いという言葉を頼りにその光が何者なのか知ろうとすることで精一杯だった。
 しかしその光は直接会ったとしても今はまだ名乗るべきではない。とだけ言い、結局その者が何者なのか、なぜ自分の事を知っているのかについては教えることはなかった。

「私からお前に教えることができるのはこの石板についてだけだ。これをお前は集めなければならない。この世界の終焉を防ぐために……」
「それが俺の目的だというのならやるまでだ」

 その光はそう告げると、その光る体の中から光を帯びた円状であったと思われる石板の欠けた一部をシルバと彼の前に浮かせている。
 それを見てからシルバは光に対してそう言い、その石板を手にした。



――視界に広がるのは何処までも白い空間。
 しかしその空間にはぽつぽつと何か巨大な姿が自分を見下ろしているのが分かる。

「我々では出来ぬ……。しかしこの宿命をお前は本当に背負うことに躊躇いなど無いと申すか……」
「ありません。私が貴方方の御力になれるというのならば、例えどんな宿命であろうと有難い事です」

 響くのは何処か懐かしい声と……そしてその声に応える自分の声。
 眩しいのかどうかも分からない程の白の世界は自分の声を皮切りにその巨大な姿の輪郭すら消して全てを白に染める。



 石板に触れた瞬間、意識を失っていたのかそれとも先ほど見た光景がそう錯覚させたのか、どちらにしろ身に覚えのあるようなないようなそんな不思議な光景が見えた。
 シルバは一瞬だけ放心したままその石板を見つめ、その石板の光が失われると意識もしっかりと覚醒する。

「今のは?」
「君自身の記憶の断片であり、この世界の終焉を防ぐための"鍵"だ。この世界はもうすぐ終わりの時を迎える。それまでにこれから君はあと六つの島を巡り、その石板と共に君の記憶を取り戻してゆくことになる。そして石板が完成した時、"幻の島"と呼ばれる島へと向かえ。これが私から教えることのできる全てだ」

 光はシルバの質問に対してそう答えた。
 それを聞き、シルバは少しの間沈黙した後、石板をしっかりと握って小さく頷く。

「分かった。確かに俺の使命を聞き届けたぞ」
「急ぐ必要はない……。"鍵"を……この世界の行く末を……頼んだぞ……」

 シルバの答えを聞き、光は最後にそう答えるとその眩い輝きは失われてゆき、初めからただの光であったかのように周囲の光に溶けるように消えてゆく。
 そうして目の前の光が完全に消えると、周囲の明かりは先程までとは比にならない程の輝きを一瞬だけ放ち、次にシルバが目を開いた時にはそこは既に大楠にぽっかりと開いた洞の前だった。

「シルバ様。どうしたの? さっきからずっとぼーっとして」
「ずっと……ぼーっと? アカラ、俺は何時からここでそういう風に立っていた?」

 アカラが不思議そうに話しかけてくる声に気が付き、シルバはすぐにアカラの方を向いてそう聞いた。
 まさかそんな風に聞かれるとは思っていなかったのか、アカラは少しだけ驚いた表情を見せて、少しだけ頭をひねりながら思い出す。

「えっと……多分、この洞の中に入る……って言った時ぐらいから」
「そうか。すまなかったな。アカラ」
「えっ!?」

 アカラが教えてくれたことを聞くとまるで幻でも見ていたのかと思いそうになるが、シルバの記憶の中には先程の会話と欠片を手にした際の不思議な記憶が確かに残っており、その出来事が事実であったことを告げるようにシルバの手の中にはその石板の欠け等がしっかりと残っていた。
 そこでシルバは初めて心配そうに見つめるアカラに対して労いの言葉を投げかけると、アカラはピンッという音が聞こえそうな勢いで耳をまっすぐ伸ばして目を見開いてその言葉に驚いていた。

「えっ……えっ!?」
「どうかしたか?」
「いや……えっと……なんでもないです!」
「ああそうだ。アカラ。俺の事だが、恐らくアカラが思っている"シルバ"と俺は程遠い存在だと思う。だがこれからも俺はお前に協力してもらわなければならない。だから、俺の事をシルバ様と呼ぶ必要はない。呼び捨てで十分だ」
「えぇ!?」

 相当驚いたのかアカラは、口も耳も尖らせて信じられないといった表情でシルバの顔を見つめていた。
 それから暫くの間はアカラの中で色々な感情が鬩ぎ合っていたのか、シルバからの提案を素直にはいと言えないでいたが、結局今目の前にいるシルバの事は、自分の知っているシルバとは別の記憶を失ったシルバだからという事で納得し、シルバの言葉を受け入れた。
 その後、アカラの中で決着が付くとシルバはアカラをひょいと持ち上げ、しっかりと抱き抱えたまま来た道を行きの時よりも速いペースで飛ぶように走り抜けて戻る。

「待って待って!! シルバ様ストーップ!!」
「どうした?」

 アカラのそんな声で一度止まり、シルバはアカラの方を見つめる。
 当のアカラはいきなりまた同じ道を必死に変えるのかと考えていたところを不意を突かれたり、自分では出せないような速度で森を突き抜けていくことへの恐怖だったりで、表情が半泣きのまま固まっていた。
 結局一度降ろしてもらい、何度か深呼吸をして色々と混乱した頭を落ち着かせることにしたアカラは、そのままついでにシルバに質問することにした。

「シルバさ……シルバはあの時、一体何があったの?」
「説明が難しい。とりあえず断片的には記憶を取り戻したということと、俺のこれからの目的も判明した、という事だけは確かだ」

 シルバの話を聞いてアカラは嬉しそうな表情を見せた。
 しかしその後シルバの身に起きた事をそのままアカラに伝えていったが、やはりアカラとしても望んでいたような結果ではなかったため、その表情は少しだけ複雑そうな感情を浮かべていた。
 とはいえ、アカラにとっても一つしっかりと分かったことがある。

「そのシルバが思い出した不思議な記憶と関係があるのかは分からないけれど、多分少しだけ僕の知ってるシルバ様に戻ったんだと思うの」
「何故だ?」
「確かに今でも表情は無いし、声の抑揚もほとんどないけど、僕の事をシルバの速度で運んでくれたり、止まってって言ったら止まってくれたり、その記憶を取り戻すまでは全くしようともしてなかったことが今は多分自然にできてるんじゃないの?」
「それはないだろう。この道はオバアチャンが教えてくれたものと随分と様変わりしている。この道をアカラが普通に移動するのは不可能だと考えたから抱き上げただけだ。それにこの方が早く移動できる」
「それなら少しだけ移動速度を落としてもらいたいって僕がお願いしたら?」
「確かに先程のアカラの表情を見る限り、対応できていなかったのは分かる。俺とアカラとで通常時の移動速度に違いがあることを考慮していなかったのだから、移動速度を下げることは問題ない」
「う~~~ん? 多分、シルバが気付いてないだけで、やっぱり少しだけ元に戻ってると思うんだけどなぁ。シルバ様もよく、みんなの事を思いやった行動を自然としてたから。少なくとも目的の為に黙々と動くような機械みたいな人ではなかったよ。それこそ辿り着く前のシルバと今のシルバは全く違う人みたいに見える」
「そうなのか」

 何時間も掛けて進んだ行きの道はアカラにとっても辛い道のりだった。
 その道のりを一度はシルバと共に自らの足で歩いたからこそ、今のシルバはアカラにとっては全くの別人と言えるほど違う。
 それ以外にもアカラとしても言いたい事はあったのかもしれないが、シルバも既に自身のその違いに関して一応の納得はしていたので帰りを急ぐことにした。
 とはいっても既にアカラに合わせた速度ではなく、アカラが負担を感じない程度で荒れた道を駆け抜けて行ったため、一時間と掛からない内に村の近くの街道まで戻ってくることができた。

「おばあちゃんただいま」
「あらあらお帰り。それにシルバ様もよくぞお戻りになってくれました」
「ああ。ただ、すまないが私はあなたの知るようなシルバではない。それに、まだ戻ることもできない」
「おや? どうかされましたか?」

 帰り着いたアカラとシルバをアカラの祖母はまた優しく出迎える。
 アカラの祖母に対してシルバは淡々と事情を説明していくと、アカラの祖母も少しばかり残念そうな表情を浮かべてはいたが、納得もしたらしい。

「世界の終焉……。何とも恐ろしい響きですねぇ。分かりました。できればその事をフレア様達とテラ様達にもお伝えください」
「分かった。では、アカラ、オバアチャン。世話になった」
「おやおや。もう出られるのですか? 今日はもう遅いですし、是非泊まっていってくださいな」
「そうだよ! その光の人も急ぐ必要はないって言ってたんでしょ?」
「火事で燃えたばかりだ。俺が居ては迷惑だろう」
「そんなことないよ! あ! それなら焼けちゃった所の張替えを手伝って! その代わりに泊まってもらうってのならいいでしょ?」

 ぴょこぴょこと跳ねながらアカラがシルバにそう言うと、シルバはただ分かったと言って首を縦に振った。
 その後はアカラの提案通りシルバは余っている建材を使って屋根や壁の燃えてしまった部分を一時的に張替え、その間にアカラと祖母は夕飯の準備を進めてゆく。
 陽が沈みきる前までには建材の張替えも完了し、夕飯の方も丁度出来上がったため三人でそのまま食事を摂る。
 食卓ではアカラは祖母に今日あった出来事を楽しそうに話し、それを聞いてアカラの祖母は相槌を打ちながら楽しそうに微笑んでいた。
 そうして楽しい食事を終えると、今日は色々とあってアカラは疲れ切っていたのかいつの間にか眠っていたようだ。
 ランプの明かりだけが照らす部屋の中で、アカラの祖母に導かれるようにしてシルバは眠っているアカラを抱えて寝室まで移してあげた。
 その後はアカラの祖母が緩やかに話し始めた。
 
「シルバ様。あの子の事を気に掛けていただきありがとうございます」
「礼を言われるようなことはしていない。寧ろ俺はアカラの親切さを利用したようなものだ」
「成り行きであったとしても、今までの事を覚えていなかったとしても私達は貴方様にただただ感謝しかないのですよ」
「俺の事をその"護り神"と同一視しない方がいい。事実、俺は明日にでもこの島を去ることになる」
「変わりませんよ。ただ護るものが私達の村からこの世界そのものに変わっただけです。それに……貴方が行方知れずとなった間にこの島は大きく変わってしまいました……」

 シルバは変わらず、アカラの祖母の言う"シルバ"と自分とは違う存在だと語ったが、アカラの祖母はそれでもシルバに感謝を告げる。
 そして語ってゆく内に彼女の表情は少しだけ悲しいものへと変わった。
 元々はテラもフレアも協力し、シルバが元々いた頃と変わりなく島民達が生活できるよう必死に守り続けていたらしい。
 しかし本来三つあった村の一つずつをフレア達"三聖獣"、テラ達"三闘神"、そしてシルバが守っていたため、シルバが欠けてからの負担はそれこそ計り知れない。
 次第に精神も疲弊し始め、苛立ちも募り始めた頃に遂に悲劇の引き金ともいえるテラ達の村への襲撃があり、そこで起きた壊滅的な被害が遂に彼等の思想に亀裂を生じさせた。
 テラ達はただ護るために先手を打ち、決して島へ入らせないようにするために戦い、その間フレア達はそれぞれが一つの村を守っていたのだが、敵の情報に惑わされほんの少し村を開けたがためにそうなってしまったのだ。

「お前達がもっとしっかりと護っていれば!!」
「自分達の村も護らずに何が戦いか!!」

 たった一つのミスが原因で互いの考えを否定するようになり、その言い争いは不安を抱えていた村人達にまで波及してしまい、遂に島民すら二分しての仲違いになってしまう。
 今では村人同士の交流が失われたどころか、必要最低限の物資の移動以外には接触もなく、お互いの村人が出会おうものならその場で喧嘩が始まってしまう始末だ。

「そしてその時、私の息子と義娘、つまりアカラの両親は件のテラ様達が治めていた村に手伝いに出ていました……。私も二人の無事を祈りましたが、願いは叶わず……。それからは私とアカラの二人で暮らしているのです」
「そうか」
「あの子はその日からずっと私に心配を掛けないようにするためなのか気丈に振る舞おうとしています。私は不安なのです。老い先短い私達はともかく、何の罪もない子供達が大人の下らない喧嘩に巻き込まれ、あの日以来離れ離れにされて話すことも許されていないような親友達もいるのです。そんな子供達がこの先、笑って暮らせるような世界がどうしても私の目には見えなくて……。無理を承知だとは存じています。でも、せめて子供達だけでも貴方に救っていただきたいのです」

 アカラの祖母はそう言って寂しそうに遠くを見つめた。
 無論今のシルバにはそんなことは出来ない。
 少し前までのシルバなら考えることもなく不可能だと一周しただろう。
 だがシルバは考えていた。
 どうすれば自分の目的を変えることなく、アカラの祖母の思いに応えることができるのかを。
 暫しの間静寂だけが場を支配し、その暗い雰囲気をより暗く張り詰めたものへとしてゆく。

「すまない。やはり俺では望む答えを出すことは出来ない。だが俺の目的を果たさない訳にもいかない。全てが貴女の理想通りとはならないだろうが、それでもできることはする。それが旅立つ俺の責任だ」
「いいえ。それで充分です。必ず子供達が笑って過ごせる明るい未来の為に……世界を守ってください」

 そんな張り詰めた空気を割くように、シルバはいつも変わらない淡々とした口調で話し出した。
 しかしその長い間とその言葉は今までのものとは違い、しっかりと考え抜いた末に出した苦渋の決断のように見える。
 だからこそアカラの祖母もその言葉を聞いて安心できたのか、優しく微笑んでからシルバに頭を下げた。



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 翌日、しっかりとした睡眠を行ったことで疲れも取れたのか、アカラはまた朝から元気一杯といった様子で祖母の朝食を作る手伝いをしている。
 シルバは本来なら朝起きた後、挨拶だけしてすぐに出るつもりだったのだが、ここでもアカラ達に止められて朝食まで頂くととなった。
 というよりもアカラとしては何としても引き止めたかったのだろう。
 ようやくシルバが戻ってきたというのに、また彼は何処かへ旅立ってしまおうとしている。
 しかしその旅の目的を聞いてしまった以上、アカラはシルバを止めることが出来ない事は十分分かっていた。
 そうこうしている内に朝食も終わり、きっちりと片付けまで手伝ってからシルバは旅立つことに決めた。

「アカラ、そしてオバアチャン。短い間だが世話になった。後は出来る限りの事をしてからこの島を出る」
「で、でも……この島を出てからどうするの? 他の島の事も覚えてないんでしょ?」
「ああ。だがどうにかする。それが俺の目的だからかな」
「だったら……! 僕が手伝うから!」
「駄目だ。どれほどかかるのかも分からない、どれほど危険かも分からないような旅だ」
「危険だっていうんなら、この島だって危険だよ! いつまた襲撃されるかも分からないし、シルバもいなくなるんだったら尚更!」

 少しだけ感情的になったまま叫ぶアカラに対して語り掛けるシルバの淡々とした声は、その時だけはまるで窘めるかのように静かで優しい声のようだった。
 それがワガママであることもアカラには十分分かっている。
 だが例え分かっていたとしてもそのままシルバを旅立たせれば、もう二度と会えなくなるような気がしてアカラは必死になって腕を引く。
 自分の手を引っ張るアカラの両手を黙ったまま見つめ、シルバはただ静かにアカラが諦めてくれるのを待っていた。
 そうするのが最善だと考えたからだ。
 しかし、シルバがようやく考えたその思いは再び鳴り響く聞きたくなかった鐘の音で遮られる形となった。

「そんな……昨日襲撃されたばっかりなのに!」

 アカラも祖母の顔もあっという間に不安の色に染まり、祖母はアカラを抱えて急いで部屋の中へと戻り、シルバにも入るように促した。

「シルバ様!」
「シルバ!」
「二人共、世話になった」

 しかし必死に呼ぶアカラ達の声を聞き、そちらへ顔を向けてシルバが言ったのはそんな言葉。
 そして次の瞬間にはもう突風の如く村の中央を目指して走り出していた。
 攻め込まれたばかりならば普通、村の端へと向かうだろうが、アカラ達の家があるのも中央から大分離れた位置。
 そのためシルバはこちらとは中央を挟んで逆の方から攻め込まれたと考えて中央の広場を一気に走り抜け、そのまま悲鳴の聞こえる方へと走ってゆく。
 次第に悲鳴の数も多くなってその声も大きくなり、それと共に赤い炎がようやく直ったばかりの家々を包み込み、音を上げて燃えていた。

「やれ! 今度こそ徹底的に奴らの戦意を削ぎ落とせ!」

 そんな凄惨極まりない光景の中心には鎧に身を包むオンバーンの姿があった。
 シルバは他の場所には脇目もふらずに走り抜け、あっという間にそのオンバーンの前へ辿り着いて足を止める。

「お前が今回の指導者だな。ならばお前を止める」
「シルバ……まさか本当に噂通り蘇っているとはな……。だがこちらもただで退くわけにはいかんのだよ! 総員! シルバを攻撃しろ!」
「攻撃を仕掛けるのならば後悔するな。まだ加減は出来ないからな」

 オンバーンの号令が響き渡ると先程まで破壊活動を行っていた者達もそれを止め、一直線にシルバの方へと向かってゆく。
 しかし全方位からの一斉の攻撃をシルバはひらりひらりと躱してゆき、代わりと言わんばかりに手刀をその攻撃してきたポケモンへと打ち込んだ。
 鈍い打撃音が響き渡り、手刀を受けたポケモンは宙を二、三度回りながら舞い、そして激しい衝突音と共に地面へと叩きつけられる。
 しかしそのシルバの一撃は今までとは違って当たった瞬間に相手が両断されるような手刀ではなかったが、同時にシルバの言う通りそれを受けて生きているかは不明なほどの強烈な一撃でもあった。
 次々と攻め込む竜達の攻撃を同じように紙一重で躱し続け、代わりに攻撃を行った竜が不自然に宙を舞ってゆく。
 そのポケモンの全てが地面に辿り着いてからもピクリとも動かないため、死んだのかそれとも気を失っただけなのかは定かではないが、少しずつシルバの攻撃を受けた者達の吹き飛ぶ距離が短くなり、その打撃音も小さくなっていく。
 受け流されるようにして荷物へ突っ込む者や軽く足が地面から離れるぐらいの一撃を顎に受けて伸び切り、そのまま倒れるようにして地面に投げ出される者と、少しずつその攻撃は弱くなってゆく。
 戦う中でどんどん加減してゆくなどそれこそ稀有な例だろうが、アカラの言葉を覚えていたシルバは可能な限り殺さないように集中する。

「さあ、ようやくお前で最後だ」
「……化物め!」

 五十以上は居たであろう竜達はその全てが今では地面に転がりピクリとも動かない。
 それを見てオンバーンは顔を強張らせながらそれでもシルバに向かって臨戦態勢を整えた。
 その顔は恐怖も含んでいるが、それ以上に鬼気迫る何かを感じさせる圧があった。
 一瞬の静寂、そして衝撃波すら発生させるような速度で一気にシルバへと近付くが、シルバはそれさえも見切っているのか手刀を振り下ろしているのがオンバーンにも見え、転がるようにしてシルバの攻撃をギリギリ躱す。
 殺気も怒気もないその異質な手刀はオンバーンにとっても軌道が読みにくく、躱せたことが奇跡に近い程だ。
 しかし殺意が籠っていないはずの攻撃は明らかに高い殺傷力を持っており、例えこのオンバーンであっても喰らえばひとたまりも無いだろう。
 また長い睨み合いへと移り変わり、いつどちらが動き出すのかお互いがお互いの動きを待っているような状態になる。

「レイド! 首尾はどうなっている!?」

 次に静寂を破ったのはシルバでもオンバーンでもなく、オンバーンの名を呼びながら現れたドラゴの姿だった。

「どうもこうもない! 見れば分かるだろ!? 俺の部隊は壊滅。俺もこのままじゃ確実にシルバに殺されるだろうな。それで満足か?」
「そいつは悪かったな! こっちだって部隊員は半分も壊滅して無理矢理ここまで突っ切って来たんだ! 少しは有り難がれ!」

 大きく息を切らせたドラゴがレイドと呼ばれたオンバーンの横に並び立ち、二人で視線をシルバに向けたまま皮肉を含んだ会話をする。
 睨み合いの相手が二人に増えてもシルバは決して動かず、ただひたすらに二人の動きを見ていた。
 結局膠着状態になった人数が増えただけで特に何も変わっていないかのように見えたが、少し余裕が生まれたのかドラゴはそこでようやく周囲を見渡した。
 そこら中にレイドの部下達が倒れているが、見たところ全員大きな外傷も流れた血の後も見えなかったため、何かに気が付いたのかシルバの方へ向き直す。

「シルバ! 竜の島遠征戦闘部隊"竜の翼"六番隊隊長、ドラゴだ! お前との戦いの最中、俺の右目はお前の手で奪われた! これを聞いても俺の事を思い出せないか!?」
「確かに俺は少しだけ記憶を取り戻した。だが生憎その中にお前達やこの島の事に関する記憶はない。何を期待しているかは知らんが、話すだけ無駄だ。これ以上この島は攻撃させない」
「やはり……! ということは貴様は今石板を持っているはずだ! それをこちらに渡せ!」
「何故お前達がそれを知っている。それに何故石板を渡す必要がある。渡した所でお前たちのやることは変わらんだろう」
「変わる。少なくとももう俺達がこの島を狙う理由はなくなる! 俺達がこの島を攻撃した……いや、"させられた"理由はその石板だ。手に入りさえすれば攻撃する必要もない!」

 シルバとレイドの間に割り込んできたドラゴはシルバに対して叫ぶようにしてそう告げた。
 俄かには信じ難い話だが、確かに何故かドラゴは石板の事を知っており、それに伴って記憶が戻ったことも気付いていたようだ。

「……いいだろう。石板をお前達に渡す。その代わり今すぐに攻撃を止めさせろ」
「マジか! ドラゴ、それならもう合図を出すぞ!」
「ああ、構わない。シルバ、たった一日の間で何があったかは知らんが、今はただ感謝させてくれ」

 結局その言葉の真偽は確かではなかったが、シルバは戦闘態勢を解いて自身の髪束の中から石板を取り出した。
 その時点でレイドとドラゴは同じように、宣言した通りすぐに戦闘態勢を解いてからレイドは空へ向けてかえんほうしゃを天高く打ち上げ、それを暫く打ち上げるとそのまま止めた。
 レイドがそうして合図を出している間にドラゴはシルバの前へ移動し、シルバの目をしっかり見てから感謝を伝えて右手を差し出す。
 シルバは特にドラゴに対して返事はせず、ただその手に石板を渡しただけだった。

「ドラゴと言ったな。何故戦わなかった」
「言ったはずだ。俺達は石板を奪うために戦っただけだ。石板さえ手に入れば戦う理由はない」
「辻妻が合っていない。何故お前は俺が持っていることを確信していたのに、昨日は俺と戦わなかったのかを聞いている」
「多くを話すことはできない。だが、俺達はただの遠征用の駒であり、俺達はただ奪うためだけに戦っているわけではないとしか言えない」

 シルバの問いに対してドラゴは少しだけ顔をしかめて答え、受け取った石板を見つめる。
 ドラゴの言葉にはまだ不明な事が多すぎるが、シルバはただそうか。とだけ答えた。
 そうしている内にレイドのかえんほうしゃを見てか、周囲には竜達が集まっており、そこら中に倒れ伏したままのレイドの部下達を担ぎ上げている。
 ドラゴの言葉に嘘偽りはなく、既に攻撃は行わずに撤退の準備だけを進めている様子だった。

「シルバ様! そいつらがこの部隊のリーダーです! そいつらを倒せば奴等は霧散します!」

 フレア達が辿り着いたのか、遠くからシルバへ語り掛ける声が近づいてくる。
 しかしシルバは、そのままフレア達がドラゴ達へ飛び掛からないように右手を横へ伸ばして止めただけだった。

「何故です!? あいつらは倒さねばならぬ敵なのですぞ!?」
「それに関しては一応の解決はできた。今ももう撤退するつもりだ」

 シルバの言葉を聞いてフレア達は二重の意味で衝撃を受けていた。
 彼等が本当に撤退の準備だけを着々と整えていることもだが、昨日と今日とで別人のような対応をしているシルバの方が彼等としては衝撃的だったらしい。
 倒れている竜達を次々と担いで逃げるようにしてその場を離れてゆく竜の軍勢など既に眼中に無く、あんぐりと口を開けて三人ともシルバの方を見ていた。

「一体何が……!? というよりもどうやって奴等を説得させたのですか?」
「もうすぐテラ達の方も到着するだろうから、その時に全部話そう」

 かなり困惑した様子のフレア達にシルバがそう告げると、その状況について一応納得はしたのかすぐにその場を離れて火事の鎮火と住民の避難を始めた。
 その頃には倒れたままだった竜達もほぼ運び終わっており、場に残されたのは数名の竜の軍の隊員とレイドとドラゴ、そしてシルバの三人となる。
 周囲も次第に村人達の消火活動や避難誘導の声で騒がしくなり始め、そのままその場にレイド達がいれば騒ぎとなると判断したのか、何か伝えようとしていたがそのまま彼等もすぐにその場を去っていった。
 それを見送ってからはシルバも消火活動の手伝いをし、合流したテラ達もそのまま消火活動にあたったためか、それともそもそもの火を点けられた範囲が狭かったからか、先日とは違いあまり大きな被害は出なかった。
 全ての事態が収まった後でシルバはフレア、テラ達を連れてそのまま村中央の広場へと移動し、彼等全員に自身の身に起きた事を説明してゆく。
 記憶喪失になった事から始まり、"理の出でし洞"で謎の光に出会い僅かながら不思議な記憶を取り戻したことと石板を手に入れた事、そしてその石板を竜の軍勢に渡したことで彼等が引き下がった事、そしてシルバはその石板を集めるために旅に出なければならないことも伝えた。

「そ、そんな大切な物を一時の襲撃を退けるために渡したというのですか!?」
「話した通りだ。渡した所でどうせ全ての島に行かなければならない。その竜の島とやらにも行かなければならない以上、俺が持っていても彼等が持っていても大差無い」
「破壊が目的だったとしたらどうするつもりなのですか!」
「多分大丈夫だろう。加減が分かっていない時に思いっきり握っていたが、砕けることもなかったからな」

 シルバがそう淡々と告げていくとまたしてもフレア達の怒りの矛先はテラ達へと向いた。
 というのも、彼等の言い分ではテラ達がまた戦いに出て守りが手薄になったのが原因だというものだ。
 先日と同じような事を言えばテラ達も同様に同じような事で反論する。
 もしもこの場のシルバが先日と同じだったのであれば事態の収拾はつかなかっただろう。

「先日も言ったと思うが、必要なのはどちらかではなく、どちらも必要だということだ。テラ達が言うように攻撃をそもそも仕掛けられないようにするために先に動くのは大事だ。だがフレア達の言うようにそれで本来守るべき対象への配慮が手薄になっているのでは意味がない。同様にフレア達が言うように守ることは大事だ、だが村だけを守り続けてもこの島の何処かに奴等が拠点を構えればそれこそ終わりだ。連日連夜、いつでも好きな時に奇襲を掛けれるようになってしまう。必要なのはどちらが正しいのかではなく、どちらも相手を信頼してやるべきことをするだけだ。お前達が協力し合えば簡単にできることだ」
「しかし……それでまたあのような惨劇が訪れれば……もう……」
「起きた事は起きた事だ。それにもしあいつらが言っていたことに偽りがなければもう攻められることもないだろう。だがそうでなければまた侵攻が開始される。お前達は何のために戦っているのかをよく考えろ。もしそれが昔の俺に対する贖罪なのだとしたらそんな無意味な事の為に戦うな。今の俺は俺でしかなく、お前達の知るシルバは戻ってこない。必要なのは威厳や意地ではない。今お前達が守っている者達だ」

 その言葉にはとても感情が籠っているとは思えないほど淡々としたものだった。
 しかし、その言葉に込められた意味は彼等の心には十分届いたのだろう。
 ハッとした表情を見せ、そして己の未熟な考えを痛感したのか皆俯いて考えているようだった。
 彼等の考えていたことはシルバの思っていた通りだったのか、少しバツの悪いように視線を泳がせていたが、互いに自分の非礼を詫びて口だけではあるが協力し合うことを約束した。
 それを見届けるとシルバは特に彼等に言葉は掛けずにその場を離れようとし、彼等に背を向ける。
 しかし、何故か視線の先には息を切らせたアカラの姿があった。

「シルバ! やっぱり僕も付いていく!」
「駄目だ。今回のような事が先々で起こる可能性の方が高い。お前には危険だ」
「じゃあどうやってこの島から別の島へ移動するの?」

 アカラを諭そうとしたシルバに、アカラはそう質問した。
 しかし案外これは的を得ていたらしく、シルバは思わず黙ってしまう。

「僕ならどうすれば他の島へ移動できるか知ってるよ! 教えてあげるからその代わりに僕も連れて行って!」
「成程、そうきたか」

 アカラはにっこりと笑ってからシルバにそう言い放った。
 シルバの言葉はそれこそいつも通りのあまり抑揚のない声だったが、その声は確かに笑っているように聞こえた。

「仕方がない。俺には記憶が無いからな。常識や他の人とのやり取りはアカラに任せることにしよう」
「やったー! よろしくね!」

 軽い溜息でも聞こえてきそうなセリフをシルバが淡々と言うとアカラは嬉しそうにぴょこぴょこと跳ねてみせる。
 ひとしきりアカラが跳ねた後、落ち着いた時にシルバは改めてアカラの手を取り、しっかりと握手を交わした。

「これからもよろしくね! シルバ!」

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