幕間《其ノ壱》
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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください
……こうして【首刈三日月】と【新月霊剣】、二つの幻剣に選ばれたみなしご達は相討ちとなったのです。
残念ながら彼らが携わった戦は隣合う小国のちょっとした小競り合いのようなものでしたので、歴史として大きく取り上げられる事はございませんでした。
しかしながら彼らが戦うに至った経緯を鑑みますと、とてつもなく印象に残るお話だとお思いになられませんか?
運命に分かたれし想い合う二人が剣を手にし、戦いの場で宿命の再会を果たす……なんとも浪漫を感じます。
……そうですか、貴方はそう感じられましたか。いやはや、否定するつもりは滅相もございません。感じ方は人それぞれですので。
おや、この剣をどのようにして手に入れたかが気になりますか。人間様にしてはなかなかに目の付け所がよろしいようで。
持ち主であった二人が亡くなってすぐ、駆けつけた兵士達によりこれらの幻剣は国に持ち帰られたそうですが……選ばれし所有者を失った幻剣はなまくらよりも扱えぬ品でしたそうで。力はあるのに使えぬ剣と、手に余されていた所を引き取ったのでございます。
こんなにも素晴らしい剣が日の目を見れないなんてどれほど不幸な事でしょう! 処分を免れたのは不幸中の幸いでした。そのような経緯があり、今の展示に至るのです。
本当はこれらの幻剣が血を吸う様を見たいのですが……選ばれた者がいない今、それが叶わない事が非常に残念でございます。貴方にも是非お見せして差し上げたかった。あの美しさは一見の価値がございますから……。
さて、そろそろ次に参りましょうか。
幻剣はまだ数がございます。そんなに驚かれる事でしたか。相変わらず珍妙なお顔をされておりますよ。
幻の剣というのにいくつもあるのか、ですと。なんともごもっともで捻りのない、つまらない質問でございますね。少しはご自身のその小さな頭でお考えになってみてはいかがです?
最初にお話しましたでしょう、『伝説のポケモン達の力を宿す』と。つまりは伝説のポケモンの数だけ存在するという事でございます。お分かり頂けましたか?
残念ながらその全てがここに揃う訳ではございませんが、ここにありますは全て本物。紛うことなき幻剣でございます。
そしてそのそれぞれにまつわる物語がございます。だからこそこれらの剣はより価値を増すのです──伝説を語るものとして。