ポケモン小説スクエア☆15周年おめでとう!!!!!!

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読了時間目安:6分
「あ、あれ?」

 黒髪の少女は目をパチパチとさせた。目の前に、赤い絨毯が長く伸びている。振り返った先に道はなく、くるりと高く結ったポニーテールが躍った。
 
「ゼニ」

 声に、赤い絨毯へと視線を戻した。カメックスが、立っていた。差し出された片手に、手を乗せた。ああ、そうだ。招待されたのだと、ぼんやりと思った。
 赤い絨毯の先、重々しい木の扉を開くと、柔らかな陽光差し込むテラスに出た。紅茶と焼き菓子の香り――そしてそれを情け容赦なく、ガツガツと食らう金髪の少女。その足下に寝そべるレントラーが、頭を持ち上げた。ウォン、とあがった鳴き声は「いらっしゃい」と囁いた気がした。出入り口で止まっていた足を進める。焼き菓子で膨らんだほっぺたもこちらを向いた。
 
「もむもむもむにゅ」
「う、うーん?」
「――ごくん。君も招待されたの?」

 ようやく嚥下したらしい金髪の少女が問いかける。多分、と答えると、「ええっと、君の席は、どれかな? あと一人来ると思うんだけど」と卓上のカードが差し向けられた。その中の一枚が目にとまる。
 
「あ、これ……」

 〝ユズル様〟と書かれたカードを受け取り、席に着く。「ふーん、ユズルちゃんか。僕はウル。こっちはレン。よろしくね」と、金髪の少女は足下のレントラーを紹介した。
 
「うん。こっちのカメックスは、メロンパンだよ。よろしくね」
「美味しそうな名前だね」
「目が怖いよ!?」

 ウルの視線に、焼き菓子に注がれるのと同種のものを感じた。ユズルはカメックスとウルの間に即座に割って入った。
 
「ウルちゃんも気がついたらここに?」
「うん? そうだね。でもまぁ、なんでか敵意は感じないし、そのうち戻れるんじゃない?」

 あっけらかんと言い放つ。敵意がない――同感だ。カメックスもリラックスしているし、ユズルも焼き菓子に手を伸ばした。ウルが超スピードで消費しているが、何故か一向に減る気配がない。質量保存の法則を無視する焼き菓子に、これは夢なのではないだろうか、と思い始めていた。
 不意に、あと一枚のカードに目を留めた。記された名前の主が、あと一人の客なのだろう。焼き菓子の他は、そのカードと、可愛らしいポップな蝋燭が15本。誕生日に使うような小さなものだ。
 
「もしかして……誕生パーティとか?」
「あーそうかもね。15歳オメデトウみたいな感じかな。それにしてはケーキがないぞ」

 ギラついたウルに、ユズルは苦笑いを浮かべる。あと一人が来る前にケーキがなくて良かった。
 
「あ、開けて~……」

 扉の向こうから、よろよろとした声がした。ユズルが慌てて立ち上がり開くと、扉の向こうで大きなケーキが「ありがとう!」と喋った。
 
「来たね。ケーキが」
「重い……」

 ケーキが歩いて――ではなく、よろめく少年が、運んでいた。結んだ黒髪がぴこぴこ揺れる。ウルが焼き菓子をどけて確保したスペースに、本日のお菓子の主役が置かれた。
 
「……っはぁ~」
「大変だったね」
「あぁ、ありがとう……」

 ユズルが席をひいてあげると、少年はどさっと座った。「君がリク君かな?」とウルがカードを差し出す。疲労気味の視線が差し向けられ、文字を辿ると、コクンと頷いた。「リ?」とリクの後ろから、リーシャンも顔を出す。

「じゃあ、客は全員揃ったようだね」
「客?」
「誰が呼んだんだろう……?」
「さぁね。でも主役は多分彼だと思うよ」

 疑問符を飛ばしながら、「オレ?」とリクは自身を指さした。「違う違う」とウルは手を振る。もぞっとテーブルかけが動き、机下からマグマラシが這い出てきた。
 
「わぁっ!?」
「うぇっ!?」

 驚いたユズルとリクが席を飛び退いた。出てきたマグマラシもびっくりした顔をしている。ウルは焼き菓子を食べる手を止め、ひょいと持ち上げた。
 
「ほーら。見てごらんよ」

 くるりと向けたマグマラシの首には、看板がかかっていた。恐る恐る、といった様子で、ユズルが読み上げる。
 
「えっと……〝ポケモン小説スクエア☆15周年おめでとう!!〟?」

 大きなメッセージの下、小さく〝春より〟と書かれている。ウルがパンパンと手を叩き、「さぁ祝おうか」とにっこり笑う。よく分からないながらも、なんとなくめでたいような気がして、ユズルもリクも席に着き直した。お誕生日席に座らされたマグマラシも、照れながら笑っている。ぶすぶすと蝋燭がささったケーキが前に出ると、ふうっと息を吹きかけた。リーシャンが身を揺らし、カメックスが手を叩き、レントラーもウォンと笑った。ウルがユズルへ視線を向ける。
 
「君が生まれてから、10年くらいかな」
「その次に、ウルちゃんが来たんだよね」
「そうそう。そして今は、そっちの彼の世代だ」
「オレ?」

 リクがきょとんとする。

「そうさ。頑張ってね」
「そうだね。頑張ってね……」
「なんか疲れてない?」
「気のせいだよ~」

 遠い目をするユズルに、リクが胡乱な目を向ける。「僕らの時より、下手したらもっと大きな敵だものね~」とウルが笑えない事を言いながら笑った。
 そんなわけで――
 
 
 ポケスク15周年、おめでとうございます!!

1日フライングだけど許して!!!!!!!!!あと修正もちょっとしました!!

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