フウト「この小説はリアルとは異なる世界が舞台です。なのでポケモン達が普通に旅をしています」
次の町へ向かって旅を続けている僕達。時刻は夕方になり、日もだいぶ傾いている。
すっかりトワイライトな雰囲気? だねだね。という感じで。
昼間は雲に覆われていた空も、いつしか晴れ間が覗き、今はきれいな夕焼けを見ることが出来た。
晴れた日であれば見ることの出来る普通の夕焼け。しかしそれでも......やはりこの光景は綺麗だった。
空に浮かぶ雲もまた、夕日に照らされ鮮やかなオレンジ色に染まる。
ミライ「暗くなってきたね」
フウト「じゃあ今日はこの辺で野宿にしようか」
ミラン「えっと......野宿!?」
かなり暗くなってきたのと、ちょうど近くにはキャンプに適した場所があったので提案すると。
僕の言葉に対しミライは驚いたように思わず声をあげる。どっかで見たような反応なような気がするけど……まあ、いいか。
まあ驚くのも無理はない。そういう経験も無いしあまり(あるいは全然)慣れてないんだろう。そういう僕も決して慣れてるとは言えないんだけどね。
でもポケモン世界での旅では野宿って定番イベントだ。ゲームでも最近キャンプ要素追加されたし。
危険じゃないか? って心配する声もありそうだけど、そこはポケモン世界。10歳のポケモントレーナー少年少女が普通に旅して野宿しても安全な世界観だからな。現実とは違うのだ。
ミライ「どうしよう......」
フウト「どうしたの? 大丈夫か?」
ミライは少し俯きつつ独り言のように呟く。予想以上に戸惑いが大きいのかもしれない。ミライの様子を見ると一抹の不安がよぎる。
その声には落ち込みや戸惑いの色は感じられなかったけど......。
まあその時は不安を解消すべく全力でサポートするだけだ。キャンプとか野宿の準備に関しては旅を始める前にしっかり確認してきたからね。
ミライ「ものすごい......」
フウト「大丈夫?」
ものすごい......? なんだろう......ものすごい傷薬とか? すごい傷薬の上位互換。それって回復の薬か。
それとも進化の予兆? ルガルガン黄昏の姿ならぬ、イーブイ黄昏の姿。つまりエーフィとブラッキーの中間の新ブイズ。
名前は……エフィブラ? ブラッフィ?
あるいは“ものすごい”進化だからメガ進化でメガイーブイ?
いやいやそういう話じゃない。やっぱりものすごい不安だとか......そう感じてるのだろうか。
しかし次にミライが発した言葉は、ちょっといい意味で予想を裏切るものだった。
ミライ「楽しみ」
相変わらずの変化に乏しい表情ながらも、一言そう呟いた。
フウト「なんだそういうことだったんだ......」
ミライ「でも......」
フウト「でもよくわからないんだろ。大丈夫、僕が手伝ってやるよ」
まあ、とりあえず楽しみにしてるようで良かった。ミライの反応を見て僕はホッと安堵の息をつく。
☆ ☆ ☆
旅を始める前にしっかり確認や練習したのもあり、慣れてないながらもテント等の準備は滞りなく進んだ。
そういえば最近はキャンプを題材にしたアニメとかもあるよね。
さてやがて準備が一段落すると、完成したテントを眺めつつ、ちょっとなんか達成感。
ミライはちょっと目を輝かせつつ、テントの周りをうろうろ。
とその時、ちょっと可愛らしく、ぐ~っとお腹が鳴る音。
ぼっ僕じゃないからね!? ということは......。
視線に気づくとハッと顔を赤らめるミライ。
ミライ「あはは......なんだかお腹が空いてきたかも」
フウト「それじゃそろそろ夕食にするか」
まあ今日はずいぶん歩いたからな。それにちょうど僕もお腹が空いてきた頃だし、
ミライ「でも......」
フウト「これでも僕はそれなりに料理出来るんだぞ」
ミライ「そういえばそうだね......! フウトの料理美味しいもんね」
いやいやそんな大したことはないけど、褒められると正直ちょっと嬉しいかも〜。
その後は夕食の準備に取り掛かる。ちなみに僕はこれでも料理はそこそこできる方だ。まあ事情があって実質一匹暮らしだからというのもあって。
とりあえず簡単に出来るものだったけど、やがて美味しそうないい匂いが漂ってくる。
ミライはちょっとワクワクしてるのか、揺れる尻尾にも感情があらわれていた。
出来上がったので、後はつまずいて転ばないようにしないと。
ミライ「いただきます……!」
というわけで今は絶賛お食事中。
ミライ「美味しい~。フウト料理うまいんだね~」
ミライは幸せそうに食べていた。喜んでもらえるとつくりがいもあるってもんだ。
うん、我ながらなかなか美味しい。
それに、やっぱり運動してお腹が空いた状態で食べるご飯は美味しく感じられるね。
☆ ☆ ☆
ミライ「ねえ、肝試しやらない?」
さて夕食を済ませ、今はなんとなくゆっくりまったりしている。
ふと、ミライが肝試しをしたいと言い出したり。
今いつだと思ってるんだよ......季節外れだろ......。思わずツッコミを入れつつ。
フウト「夏にでもやるか?」
ミライ「やっぱりなんか怖いから......やめる」
フウト「それじゃお化け屋敷はどうだ?」
ミライ「ふーとぉ、からかわないでよ……でも一回くらい行ってみてもいいかな……?」
ちょっとからかってみると、ミライはわざと不満げに頬を少し膨らませてみせる。
けどすぐに、クスクスと控えめな笑い声をもらす。クスネじゃないよ。
ミライ「えっクスネさん?」
フウト「ふぉこーん」
ミライ「そういえば、星がきれいだね......」
ふと、空を仰ぎながらミライが呟く。つられて僕も夜空を見上げてみることにする。
すっかり夜の帳がおりた空には星々が瞬いていた。
旅に出た時は曇っていた空だがいつしか晴れていたこともあり、確かに星がよく見えていた。
そういえば、しばらく星なんて見てなかったな......。見上げればすぐそこにあるというのに。
昔はよく眺めていた夜空。星座図鑑を片手に覚えたての知識を語ったりしたものだけど。
まるで、いつしか......星空を見ることを忘れてしまっていたようだった。
フウト「せっかくだし何か話さないか?」
まだ寝るにははやいし、なんとなく雑談でもしようと思った僕はミライにそんな提案する。サジェスチョン。
ミライも喜ぶだろうし、寝る前の雑談ってこういう時の定番イベントだしね。
僕が提案するとミライは待ってましたとばかりに、無表情の中でも少し顔を輝かせる。
フウト「月も綺麗だね」
ミライ「えっ……ちょちょっと待って……」
フウト「青い青い静かな夜には〜」
ミライ「ニャースの歌かい……!」
雑談に盛り上がった僕達。主に僕の方から話を振ってミライが答えるという形だった。
ミライ「ねえフウトには夢とかあるの?」
フウト「夢か......正直よく分からないかな」
雑談の途中、ふとミライがそんなことを問いかけてきた。
その質問に僕は曖昧に答える。
ミライ「それじゃ、やってみたいこととか」
フウト「それもよく分かんないかな……なんとなく一日が過ぎ去っていく」
ミライはちょっとだけ残念そうな表情を浮かべたけど、少し考える仕草を見せると。
何か思いついたのか、それとも事前に考えてたのか。
ミライ「それじゃ一緒に旅を楽しもうよ......!」
フウト「僕はミライが楽しければいいよ」
ミライ「せっかくだからフウトも楽しもうよ! ワクワクしようよ」
昔だったらもっと積極的に夢を追いかけ、ワクワクを探し、ゼンリョクで楽しんでいたのかもしれない。
でも今は……
ミライ「ボクはフウトと一緒に旅を楽しみたいから……ダメかな……」
それでもミライがそんなに言うんだったら、それに付き合ってみるのも悪くはないかな。
その後も僕達は雑談をコンティニュー。
とりとめのない、たわいもない会話。でもミライはとっても楽しそうだった。
ミライ「ふぁぁ、そろそろ眠くなってきたかも……」
楽しい時間は、あっという間に時間は過ぎ去りミライはなんだか眠たげな様子。
そろそろ、ねむいーぶいって感じ? もうこんな時間だしな。
フウト「そろそろ寝るか?」
ミライ「うん、そっそうだな......」
フウト「おやすみ」
ミライ「おっおやすみ......」
☆ ☆ ☆
翌朝、鳴り響く目覚まし用のアラームの音で僕は目が覚める。二度寝したい衝動に駆られつつも、それをこらえて、とりあえず起き上がる。
そして顔を洗うのだけど、ふと水面に映った自分の顔が目に入って......。
驚きのあまり二度見する。そして驚愕の表情を浮かべお決まりのセリフを言うんだ。
「えっ嘘......僕ポケモンになってる!?」ってね。
なーんてね、それは冗談だけど。水面をのぞくとそこにはポケモンになった自分の顔が......ってそりゃ当たり前だ。だって僕はポケモンなんだから。
どうやらミライはまだ寝てるようだ。
まあ朝はやいし、睡眠は大事だし、それに旅の初日でミライも疲れてるだろうから。
まあゆっくり寝させてあげよう。しばらくしてから起こしてやればいいか。
早朝の爽やかな空気を思いっきり吸い込んで、ゆっくりと吐き出す。
朝焼けをみると、なんかいい気分だ。ヤヤコマ達のさえずりも聞こえてくる。
うーん、起きてるって感じ! ウェイクアップふぉっこぉ。
この早朝の雰囲気は正直かなり好きだ。早起きもやっぱりいいものだな。つくづく思う。
まあ早起きは三文の得とも言うからね。
しばらくして僕はミライを起こしにいく。するとミライは眠そうな目で僕を見ると、自分の首元をモフモフもふる。モフモフするの。
ミライ「ふえっポケモンになってる......」
どうやらまだ寝ぼけているようだ。どんな夢を見たのか、まるでポケダン主人公みたいなセリフを呟いていた。
僕はそんなミライに声をかけると。
ミライ「ふぃあっ! フウトおはよう。グッドモーニング」
フウト「ああ、ミライおはよう」
ミライは時刻を確認するなり、もうこんな時間!? と驚きの声を上げていた。
さて簡単に朝食を済ませたら、次の町へ出発だ。てなわけで、僕達は旅を再開するのだった。
ミライ「つっ次の町へレッツゴー……!」
続く……
星空を見上げて……