【四】遠いボール

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 ビギナーズラックというのは本当にあるものなんだと僕は痛感した。昨日はあれよあれよと箱が増えていったのに、今日は稼いだはずのお金が焚火で燃やす紙みたいに消えていく。欲を出しすぎてはいけないとは言うが、そんな多くを求めているわけではない。僕が求めているのはあのケーシィを交換できるだけのメダルだ。
 やっと出始めたと思ったら、今度はやめるタイミングがいまいち分からず、次第にまたメダルが減っていく。時間を潰せるのは良いが、自分のお金でやるとひやひやしてしょうがない。
 結局、バイトが一時間後に迫ったところで、僕は切り上げることにした。本当にケーシィを交換出来る枚数と、プラスアルファだけだった。途中、本当にマイナスが続いて焦ったが、どうにか持ち直してよかった。こんなゲームを続けていたらどうにかなってしまいそうだった。
 とにかく、枚数を確保出来たので僕はゲームを終え、コインと交換し、すぐに交換所へ出向いた。
 ラミネート加工された紙をもう一度上から追っていくと、やっぱり見間違いはない。一番安い値段でケーシィが景品として並んでいた。隣に用紙と鉛筆があったので、欲しい景品に丸を付け、メダルと一緒に提出する。そうするよう、フローを示すぼろぼろの紙が壁に貼られていた。
「……本当に出てきた」
 余ったコイン分のお金と、モンスターボールがトレイに乗っていた。こんな簡単に、ポケモンが僕の手元に。
 その小さなボールを手に取るだけなのに、随分遠くにある気がする。まごまごしていると、後ろに人が並んでしまった。
 僕は意を決して、モンスターボールを掴んでポケットにしまい込み、まるで万引き犯が店から出て、誰かに追いかけられないか気にするかのように、バイト先へ走った。

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