ベーメンブルクの戦いが終わっても戦いの火は消える気配はなく。
様子を窺っていたフィオラケス=アルビノウァーヌスは帝国と同じ新教国であるカロス王国に援助を要請する。
しかし、援軍としてやってきたはずのカロス王国軍は侵略軍であり、招き入れてしまったアルビノウァーヌス領レンリは、まんまとカロス王国に占領されてしまう。
このラインフェルデンの襲撃にて、領地を追われてしまったフィオラケスはここから本格的に神聖帝国の下で戦いに参じることになる。
しかし、カロス王国までも敵に回ってしまった帝国はもはや瀕死の状態であり、ブライテンフェルトの再戦にも敗れる有様だった。
ヅツマルズハウゼンの戦いでフィオラケスは、10倍の戦力を相手にオンバーン航空部隊を率いて空中からの襲撃を繰り返し、見事にカロス王国軍を撤退させることに成功する。
しかし帝国にもう戦い続ける力は無かった。戦いは終結してウェストファリア条約にてアルビノウァーヌス家とその領地レンリはカロス王国に割譲されることに決定した。
それを聞いてフィオラケスは怒り狂い、座っていた椅子を蹴り飛ばして、その場で下賜されたマントを細切れに切り裂いたとパルファム宮殿の公書記録に残っている。
ブラムは衛兵をクビになった。
ベーメンブルクの戦いで国王につかず、民衆についたので当然の結果であるのだが、これによってブラムは困窮した生活を余儀なくされる。
だが、ナルツィサ=メランクトーンに拾われて、アルビノウァーヌス家に雇われ仕えることになる、苦渋の決断でその申し出は承諾したようだ。
その後、ヅツマルズハウゼンの戦いでは師団長を命じられ、約11日の間も敵のカロス王国軍の侵攻を食い止めたと伝わる。
千年の寿命を持つといわれるキュウコンのユリアンはこの後、三百年近く生きた。
騎士の権威が失われていくことで、騎士道精神の上で成り立っていた、固い誓約を掛けて正々堂々と一騎討ちを行う文化が軽視されることになり、たくさんのポケモンが戦場でぶつかり合うことが主流となっていった。
同時に、相手のポケモンのワザを無効にする技術も発達し、ワザではない武器の需要が高まっていった。そこに登場したのが弾丸に回転を掛けて真っ直ぐ飛ばすライフリング技術で、ワザの補助としての武器ではなく、ポケモンのワザに匹敵する兵器へと変貌したライフル銃により、戦いの状況は大きく変化した。
その中で、ユリアンは最新式のライフル銃を背負い、獣の足で戦場を駆け回った。
銃とワザを巧みに使い分け、自在に跳び回る機動力と突破力を兼ね備えたポケモン兵は戦場において圧倒的な制圧力を誇り、その時代を大きく塗り替えた最強の兵種『銃兵獣』として戦場を駆け回った。
ユリアンは数々の勲章を授与され、国の英雄となり。時代の寵児として持てはやされた。
だが、それから二百年後、産業革命によって可能になった非情なる物資の暴力、そして銃の最終形態となる『機関銃』が導入された世界大戦争に従軍し、ユリアンは命を落とすことになる。
敵軍を崩し大勢の人間やポケモンを殺すのに必要だったことは、勇気あるリーダーが率いる決死の部隊が突撃をかけるわけでも、傑出した英雄が敵兵を何人も斬り伏せるでもなくなっていた。ただの非力な一般歩兵が、機関銃のクランクを回すだけの作業であった。生身でぶつかり合う戦争は終わりを告げ、機械が戦う戦争へと変遷していた。
数々の勲章や名誉を得たかつての英狐は、長らく愛用していた銃を片手に敵陣に突っ込み頓死して、その亡骸は凡庸な一般兵として葬られた。銃によって名を成して、銃と共に生きた彼の命を奪ったのは皮肉にも、銃だった。
かつてカゲマサやゲンジが生きていた、騎士階級を名誉とし、個々の人間やポケモンの力が勝負を分ける時代はここで、終わりを迎えたのだった。
その後のカゲマサとゲンジは歴史の表舞台から姿を消した。
おそらくはあの戦いによって得た傭兵のコネクションを元に、闇に生きる界隈とつながり、城に潜入して暗躍をするなど、自ら進んで影となったようだ。
カロスに渡り、かつての元頭首に会って頭を下げて、そこで正式に里の頭首を襲名したことがアルビノウァーヌス家所有の書架に収蔵された手記にあることから、アルビノウァーヌス家と出入りがあったことが伺える。
ベーメンブルクの戦いでゲッコウガという種族は一躍有名になり『市民の味方』として周りの国でも英雄視されるようになった。カロスに残った里の仲間たちが連れていたゲッコウガも、被り物を脱いで大手を振って街中を歩けるようになった。
カロス革命の先陣をきって戦ったゲッコウガたちはその末裔とされて、その功績は革命時に掲げられた
三色旗の色に残される。
友愛の魔女 マフォクシーの赤
平等の衛兵 ブリガロンの白
そして、自由の忍者 ゲッコウガの青
この3匹のポケモンはカロスを代表するポケモンとして、現在ではカロス地方の初心者用ポケモンに指定されている。
日本におけるゲッコウガは、戦国乱世の終焉で、忍者というものが無くなると共に、その地から絶えて滅びてしまった。
だが、その血は遠い土地に根付き、時代を超えて、今も愛されている。