episode7━22 終わりの一撃

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

…しばらく、ペースが落ちます。
大昔からゾロアークというポケモンは、見るものを惑わす幻影という力を持っていた。自分を別の存在に見せたり、辺りの景色を変えることも出来たと言う。

ゾロアークはその力を使い、敵から身を守っていた。だが、時が経つにつれ昔ほど物騒な世の中では無くなり…いつの間にか殆どのゾロアークが幻影を使えなくなっていった。

だが神殺しであるゾロアークは違い、彼女は幻影を使いこなせた。過去でも類を見ないほどに。多大なエネルギーと体力を消費する為、一日に何度も使える様な物では無かったが。

…しかし、所詮は幻。実体があるように見せ掛けているだけだ。気配を探られれば直ぐに幻を見抜かれてしまう。

彼女に、特性が渡るまでは。

………

「幻影を強化している、のは分かったが…あれはどういう事なんだ?ガイラル」

「はは、まぁ驚くよな」

切断された足をすぐに再生させ、また立ち上がって攻撃をするアンノウンに対し、空中を飛び回り、アンノウンに攻撃を仕掛けているゾロアークを見ながら唖然とするキリキザン。確かに、俺も最初に見たときは驚いたな。

「幻を見せる、または作り出すのがゾロアーク本来に備わった力。で、あの特性はな…幻影を実体化させるっつう物らしい」

「実体化…だと!?」

キリキザンは更に驚く。そして何やら考えた後…苦笑いを浮かべた。

「…はは、無敵じゃないか…!」

「ああ。少なくとも今のゾロアークは最強だ。幻影の見せられる幻に制限は無いに等しい。その上実体化も出来るって事は…噛み砕いて言ってしまえば、何でもアリってことさ」

「それならば応援など、ゾロアーク一人で良かったんじゃないか?」

「いや、そうもいかないらしい。幻影は平たく言えば自分のイメージを他人に見せるって能力。どういう物を見せれば良いかを考える時間が必要になる。更にエネルギーや体力も消費するから、幻影を使う事だけでもかなり労力が掛かるんだと。あの大人数は、その時間を稼ぐための作戦だな」

なるほど、とキリキザンは頷いた。

…後はゾロアークがどこまであのアンノウンを削れるか、だな。確か時間制限も合った筈だしな…。

………

「ふぅー!硬いね」

慣れない空での移動に慣れてきた頃、改めて目の前のアンノウンの異質さに嫌気が差す。さっきから魔術をぶつけてるけど少ししか削れない。足をジュカイン達にも手伝って貰えたからなんとか切れたけど、再生の速度が尋常じゃなくて直ぐに立ち上がっちゃった。

しかもコイツ、さっきから私だけを的確に攻撃してくる。特性で強化した実体を持つ私のコピーを何体も作ってるのに、そいつらには目もくれず本物だけを攻撃してくる。エネルギーを察知してる?それとも別の何か?

「━いや、そうか。そういう事か。マテリアに反応してるのね」

私と偽物の違い、マテリアを持っているか否か。アンノウンを元に作られたマテリアを察知する目を持ってるんだね。厄介だな。

「どうするかな…。私の特性じゃアンノウン自体を爆破させるとか消滅させることは不可能だし、かといってちんたらしてたらタイムオーバー。私自身の強化…も難しいかな」

翼を生やすとか小さくなるとか大きくなるとかは出来る。相手に翼の生えた私という幻影を見せ、それを実体化すれば本当に私に翼は生える。でも、私がどんなアンノウンでも粉砕する力を付けるみたく、見て分からない物までは実体化出来ないからなー。巨大化したところで膂力やら魔力は変わらないから的がでかくなるだけだし…うーん。出来れば私と増援だけで倒したかったけど…仕方無いか。

「コピー1から3!ガイラルとルカリオ、それとルト君をここに連れてきて!」

分身達は頷き、ガイラル達のいる方向へと飛んでいく。

「さ、後は任せるかな」

………

「…おおおおおっ!!?そ、空を…」

突然翼の生えたゾロアークに体を掴まれ、ぐんぐんと空へと上がっていく。ミリアンの背中に乗って飛んだことはあるが、あの時は森の中だったからな…!こうも見晴らしが良いと、流石に少し怖い!

「ウフフ、楽しいでしょ?私も最初はちょっと怖かったけどね」

「す、凄いですね…!これが、ゾロアークさんの特性…!」

空を昇りながらゾロアークから話を聞き、特性の説明を受けていた。幻影…シャルから聞いたことはあったけど、シャルは幻影を全く使えないゾロアークだったからな。出身次第で幻影を使えるか使えないか、また幻影をどこまで使いこなせるかもかなり違うんだったな。

「…お、ルトも来たか」

やがて上昇するのを終え、本体のゾロアークと共にルカリオ、ガイラルが自分と同じように分身のゾロアークに掴まれたまま止まっていた。

「ルカリオさん、ガイラルさん。それで、これからどうするんですか?」

「それの説明にはまず、足場を作らないとね。宙ぶらりんじゃ剣を振るのも難しいだろうし」

ゾロアークはパチンと指を鳴らし…一瞬にして空中に大きな足場が出来上がった。アンノウンの所まで続いており、ゾロアーク達はそこに俺達を下ろす。

「足場まで一瞬で…!話には聞いていたが、凄いな」

「そうでしょ?まぁこう見えて、不便な事も多いけどね」

ガイラルの言葉にそう返すゾロアーク。…良く見ると、息を荒げて汗をかいていた。

「…大丈夫か?」

「結構しんどい…かな。体力も魔力も物凄く使うのよね。サーナイトくらいの魔力量があればねぇ。…まぁそういう事なんで、なるべく速く倒してくれると助かるかな。二人は特性を使って攻撃してよ。アンノウンの頭付近にこうやって足場を作ったから、倒せる筈よ」

「了解だぜ。ゾロアーク」

ルカリオとガイラルは頷き、剣を構えてアンノウンを見た。

…この二人の特性ならアンノウンに痛手を負わせる事が可能だけど、そうなると俺はどうするべきなんだ?

「その、何故私まで?ルカリオさん達は分かりますが…」

「…君、ディアルガの力とやらを使えるらしいじゃない?それに加えて特性を使った先読み。ルト君はひたすら二人のサポートをお願い。貴方にしか出来ないことよ」

「…!はい!」

息を吸い、気合いを入れる。…あの二人の攻撃に邪魔が入らないようにサポートに徹する。…幸い、今日はディアルガの力をまだ使ってない。この戦闘の間なら十分に持つ!

「防御は頼むぜ、ルト!」

「はい!ルカリオさん!…来い…!」

ルカリオに返事をし、ディアルガの力を発動させる。脳内に響く秒針のような音。それが聞こえた瞬間に二人の前へと走り出す。

「フッ!」

こちらに反応して密度の濃い魔術を連続して放ってくるアンノウン。それを全て止め、消し去っていく。一瞬でも油断したら命取りだ。だが時間を掛けてはいられない!

「…キリキザン、力を借りるぜ!『狂戦士』!」

ルカリオは仲間から特性を借り、見て分かるほどのエネルギーが満ちていく。…キリキザンさんの特性みたいだな。なんにせよ、見るからに攻撃型の特性…防御が薄くなる可能性も考慮して、もっと集中して二人を守らないと。

「もうちょっとで頭の側だ!ラストスパートだ、気合い入れろよォ!」
「応!」
「はい!」

ガイラルの声に返事をし、特性も発動させ攻撃を全て捌いていく。…しかし、なんて密度だ!ちょっとでもディアルガの力の調整を間違えば、大きなダメージを受けてしまうな…!

「…来たッ!ルト!少し離れろ!」

「了解…ですっ!」

足でブレーキを掛け、後ろに跳ぶと同時に攻撃を数発捌く。…ここまで寄れば、勝ちだ!

「先に行く!コアが少しでも見えたら叩き斬れ!兄貴!」

「任せな!」

先にルカリオが飛び出し、剣にエネルギーを乗せていく。

「『波動連剣』!」

波動を帯びた剣はいくつもの青い光を放ちながら、アンノウンの硬い体を削り取る。尋常じゃない威力、流石だな…!

「もう、少し…!…見えたッ!兄貴!!」

「おうよ!」」

コアの光が見えた瞬間、ルカリオの背中を足場にしてガイラルが跳び、剣を振り上げる。

「終わりだぁぁぁぁぁッッ!!」

…ガイラルの振り下ろした剣が、アンノウンのコアを切り裂いた。



ゾロアークの特性
名前は「幻影・改」。
幻影によって見せる幻を実体化する特性。ただし、見て分かるものでは無いと実体化は出来ない。(作中で説明したように、素の力を強化する等の見て分からないものは変化がない)
加えて体力と魔力を途方もなく消費する為、一日に一回しか発動出来ず、時間も短い。だが得られるアドバンテージは多く、ゾロアークが一人居れば戦況を変える事も難しくはない。

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