28話 魔法

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

2020年8月4日改稿
「というわけで、お前らに魔法というものを見せてやろう!」
「よっ、待ってました! ラプラ!」

フフンと胸を張るラプラに拍手をするクロネ。
ハルキ達は昨日、約束した通り練習場にマジカルズの魔法を見に来ていた。

「言っておくけど、クロネも見せる側ですからね。 ほら、こっち」
「あ~、もうわかったから、あたいのローブを引っ張らないでくれよ」

イオがクロネの首根っこを掴んでズルズル引きずっていた。

「コホン! それでは僕達、チームマジカルズの魔法をみせようと思います! ただ、その前に、君達はどの程度、魔法について知っていますか?」
「「全然知りません」」
「本で読んだ程度にしか知らないです」
「私もそんな感じかなー」
「それじゃあ、1から教えた方がいいな 。説明は任せたぞ、イオ!」
「あたいからも頼んだよ! イオ!」
「ほんと、2匹ふたりとも僕に丸投げなんだから……」

イオがジト目で2匹ふたりを見るが、当の本人達は一切気にしていないようである。

「それでは、まず魔法を使用するには魔力と言うものが必要となります。 魔力とはポケモンが本来持つ技を使う力とは別に存在する力です」
「さっそくで悪いんだが質問。 魔力って誰でも持っているのか?」

話を聞いていたアイトが手をあげて質問した。

「誰しも持ってはいますが、魔法を使えるわけではありません」
「どういう意味だ?」
「言葉通りの意味です。 そもそも魔法というのは使用するのに条件が2つあります。 1つ、小さなポケモンであること。 2つ、魔力を感じる事ができること。 基本的にこの2点を満たさないと使えません」
「つまり、誰でも魔力は持っているが、魔力を感じる事ができるわけではないって事か?」
「大体その通りです。 先ほど1つめの条件で言った、小さなポケモン。 ……つまり、進化する前のポケモンや進化しない僕らのようなポケモンの方が持っている魔力の量は潜在的に多いのですが、その中でも魔力を感じられるポケモンが魔法を使えると言った方が正確でしょう」

ここまでの話をまとめると、
魔力は誰でも持っている。
魔法を使うには魔力を感じられる必要がある。
進化後のポケモンよりも進化前のポケモンや比較的、体格が小さいポケモンのが潜在的に持っている魔力の総量が多い。 と言った感じか。

「ん? それじゃあ、進化すると魔力が減ったりするってことか?」
「はい。 減るというより、ほぼ無い状態になります。 これには諸説がありまして、一説によると、進化によって、身体が急激に成長すると同時に魔力が消えていく事から、力の足りない部分を魔力で補っていたのではないかと言われています。 まあ、例外的に進化しても魔力がそこそこ残るポケモンもいますが、僕はこの諸説が有力だと思っています 」
「なるほどなー」
「っても、魔法で出来ることなんてたかが知れてるってのが世間の認識さ。 だから、あたし達みたいに、魔法使いに率先してなろうとする奴らが少ないのさ」
「え? そうなんですか?」
「……残念ながらお姉ちゃんの言う通りで、魔力が無くても、技の練習を重ねて、コツさえ覚えてしまえば、魔法を使わなくても似たような事が出来てしまうのが現状です」

つまり、進化する前で未熟なうちは、出来ない事を魔力で補い、魔法を使って出来るようにしているという感じだろう。
人間の世界よりも自然が多く、危険な目に遭遇する確率も高そうなこの世界では、生物として生まれ持った自衛の手段として、魔法が存在しているのかも知れない。

「では、次に魔法が出来た起源についてですが――」
「ああ、イオ! もういい! もういいから、あとは魔力パターンの説明だけして、さっさと始めようぜ」
「そう? それじゃあ、魔力パターンについて説明をしてから実演しますね。 今、説明した魔力についてですが、ポケモンが個体ごとに持つ魔力は大きく分けて3種類存在します。 それぞれ得意な事と不得意な事が違ってきますので、細かく説明していきますね」

イオが詳しく話してくれた事をまとめると、
・攻撃魔法が得意なアタックタイプ。
・防御魔法が得意なディフェンスタイプ。
・制御魔法や強化魔法といった補助系が得意なテクニカルタイプ。
この3種類が存在するらしく、それぞれの特徴として、
アタックタイプは攻撃魔法の威力が1番高い反面、防御魔法の耐久力が低い。
ディフェンスタイプは防御魔法の耐久力が1番高い反面、攻撃魔法の威力が低い。
テクニカルタイプは魔法の細かい調整が得意な反面、攻撃魔法も防御魔法も中途半端な威力でしかだせない。
といった特徴があるようだ。
ちなみに、マジカルズはプラスルのラプラがアタック、マイナンのイオがテクニカル、デデンネのクロネがディフェンス、とバランスよく魔力パターンが分散しているらしい。

「というわけで実演タイムだ! まずは、魔法の基本である制御魔法について見せてやる。例えば『スパーク』という技があるが、この技を普通に繰り出すと電気を纏ったとっしん技だ。 だが、制御魔法を使えば……」

ラプラが全身に電気を纏うと、その電気はゆっくりラプラの右手に集中していき、やがて電気で作られた剣となった。

「と、こんな感じに形状を変化させて技にバリエーションをつける事が出来るんだ」
「おおー! カッコいいな!」
「ラプラさんすごいです!」
「まあ、このぐらいなら魔法が使えなくても、本来の技を上手く使えるようになれば、誰でもできるらしいけどな。 それに、あたしは魔力パターンがアタックタイプだから、ただ電気で剣の形をとっているだけだが、テクニカルタイプのイオがやるともっと剣っぽくなるぞ」
「こんな感じです」

イオがラプラと同じように電気の剣を作る。
ラプラの作った剣と見比べても大差ないように見えるが、イオの剣は制御魔法で微細に振動しているらしく、切れ味が段違いらしい。

「ちなみにディフェンスタイプのあたいが作っても、ラプラと大差ないよ。 イオみたいに器用なこともできないしね」
「とまあ、こんな感じに魔力パターンによって差が出るって感じだな」
「へぇー、てっきり魔法って呪文を唱えるもんだと思ってたけど、実際はこういう感じなんだな」
「アイトの言う通り、詠唱が必要な魔法もあるけど基本的にはないな。 戦闘中に詠唱なんかしてられないしなー」
「それもそっか」
「でも、こんなにすごいのになんで人気がないんです?」
「あー、さっきも言ったが電気で剣を作るぐらいなら魔法なんか使わなくても出来るようになっちまうんだよ」
「僕達、ポケモンは技を出す事なんて、息をするのと同じように当たり前に出来る事なので、コツさえ覚えてしまえば魔法なんかに頼らずとも、電気の剣みたいなのは作れちゃうんですよ。 それに、魔法を使えるようになるためには最初、魔力のコントロールという地味な反復練習が必須なので、挫折するポケモンも多いんですよね……」
「魔法なんて不要だと言うポケモンも出てきたぐらいさ。 だから、あたい達は魔法の強さを証明するためにも救助隊に入ったのさ」
「か。感動したです! わたしもいつか魔法が使えるようになりたいです!」

ヒビキが目をキラキラさせて感動していると、マジカルズの3匹さんにんはじーっとヒビキのことを見つめた。

「……え? な、何か変な事、言いました?」
「いや、本当に魔法の事を知らないんだなって思ってさ。 ヒビキが首から下げているペンダントってたぶん魔法道具だし、知っているのかと思っていたが」
「え!? このペンダントって魔法道具なんですか!?」
「そもそも魔法道具が何か知らなかったみたいですね。 この世界の魔法道具には、共通して星のマークが刻まれているんです。 僕達が今着ているローブにもね」

イオは羽織っているローブの内側にある星のマークを見せる。

「へぇ~。 でもヒビキのペンダントは見た感じ、ただのペンダントにしか見えないけどな」

ハルキ達はイーブイの里で中身を見せてもらったが何か入っているわけでもなく、窪みがいくつか空いている事以外、いたって普通のペンダントのように見える。

「微力だが魔力を感じるから間違いないとは思うんだけど、どんな力があるかはわからないね~」
「ヒビキさん、この魔法道具ってどこで見つけたんですか?」
「イーブイの里にある伝説のイーブイを祀った祠にある祭壇の奥の部屋です」
「その部屋ってお前以外は存在知っているのか?」
「それが里のみんなそんな部屋ないって言うんですよー」
「その部屋って、なんか地面とか天井とかに星のマークがでかく描かれていたりしなかったかい?」
「ありましたよ! 地面におっきな星の模様があって、青く光っていました!」

ヒビキの話を聞いたラプラ達は、何やら思い当たる節があるようで、3匹さんにんで話し合った結果、1つの結論を出した。

「……もしかすると、その魔法道具はヒビキさん専用の道具かもしれないね」
「わたし専用の道具です?」
「話を聞く限りだとね。 たぶん、その部屋は認識阻害魔法が付与された結界魔法で守られていたんじゃないかな? そして、それをなんなく突破できたという事はヒビキさんはその部屋に立ち入るのを許可されていた存在ってことになる」
「ちょっと待て、なんで認識阻害魔法って言う魔法が付与されていたのにヒビキは気づけたんだ?」
「簡単に説明しますと結界魔法は魔法の中で唯一、個人識別機能を付与できる魔法なんです」

セキュリティが強化されたアパートに指紋認証システムがあったとすると、そのシステムは結界魔法以外では実装できないような感じだろうか。

「よくわかんねぇけど、ヒビキはその魔法道具を置いた奴に認められていたって事か」
「まあ、そういうことだな」
「なんか魔法使いさんに1歩近づいたみたいで嬉しいです!」
「よかったね~、ヒビキ!」
「はい!」

ペンダントの秘密も少しわかり、嬉しそうに笑うヒビキ。

「おいおい、喜ぶのはいいが、まだ最後の実演が残っているんだから、よく見ておけよ」
「最後?」
「こいつさ!」

ラプラはローブから小さな箒を取り出すと、その箒があっという間にラプラの身長サイズにまで大きくなった。

「この箒も魔法道具でな! 持ち運ぶときはこうして小さくできる優れ物なんだ! 今からこれを使ったとっておきを見せてやるよ!」
「箒って、まさか!」
「やっと俺達の知っている魔法使いっぽい姿が見れそうだな! ハルキ!」

心なしかワクワクしているアイト。
無理もない。 魔法使いで箒といえばもう定番のあれしかない。

「最後に見せる魔法は飛行魔法だ! こいつはひこうタイプでもないポケモンが唯一自力で空を飛ぶことができる、魔法使いにしかない特権だぜ!」
「そ、空を飛んでるです!?」

箒にまたがって中に浮いているラプラにヒビキが口をあんぐりと開けた。

「飛行魔法も制御魔法の一種で、魔法使いの町でしか入手できないこの箒を使えば、あたしにだって空を飛ぶことはできるのさ! どうだ! すごいだろ!」
「すごいです! とってもすごいです!!」
「うわぁー、マジで飛んだ。 すげぇな」
「想像していたとはいえ、実際に見るとやっぱり違うね」
「へぇ~こんな魔法もあったんだ~」

それからしばらく、箒にまたがったラプラの空中浮遊をハルキ達は楽しんで見ていた。

―――――――――――――――――――――――――――――

「それにしてもすごかったなー」
「はい!やっぱり魔法ってすごいです!」
「バチュチュ~!」

マジカルズの魔法を見終わった後、ハルキ達はサラから依頼を達成した報酬を受け取りに行き、その報酬金で軽く買い物をすませてきたところだ。
今は、ハルキの部屋で全員くつろいでいる。
まあ、買い物といっても、ほとんど食べ歩きばかりだったが。

「そういえばヒビキは何買ったんだ?」
「日記帳を買いました! せっかく里の外に出たんですから、定期的に出来事でも書き留めておこうかと。 みんなの分も買っておいたので、ぜひ使ってください!」

そう言うとヒビキは鞄から茶色い日記帳を4冊取り出し、みんなに1冊ずつ配った。

「いや、俺はそういうの続いたことないから……」
「え、アイト君やらないですか?」
「ちょっ、そんな悲しい顔するなよ。 わかったよ、俺もやるよ。 ハルキとヒカリもやるよな?」
「せっかく買ってくれたんだし、使わないのはもったいないからね。 たまに書く程度でやってみようかな」
「なんか面白そうだから私もやってみるよ~」
「バチュ~」
「バチュルはとりあえず文字と言葉を覚えるところからだねー」
「バチュ……」

かわいらしく不貞腐れたような表情をするバチュルにハルキ達は思わず笑ってしまった。
結構端折ったり、わかりやすくしたつもりですが魔法の説明が分かりにくかったらすみません(。-人-。)

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