episode7━2 番人とギラティナ

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

シリアスになりそう。
「━━皆、いるか?」
「ルト、います。隣に…ミリアンとシャルも」
「同じく、ヤイバ隊もいるぞ」

紫の光へと飛び込んだ後、直ぐに暗闇が広がっていた。ルカリオは全員がいるかを声で確認していく。

「こちらベルセルク。…隣にキリキザンとアーリアも確認した」
「ガイラルだ。ガブリアスとサーナイトも見つけたぞ。…皆いるな」

…視界は黒。音はなく匂いもしない。風も吹いておらず、気温は高くも低くもない。足下は見えないが、ゴツゴツとした…洞窟内のような地面だ。

「…とりあえず、私の特性で探ってみます」
「頼むぜ」

ガイラルの了承を得て、特性を発動させた。
…筈だった。

「…?特性が…使えない…?」
「なんだと?」

おかしい。いつもと同じように特性を発動させようとしたのに、全く使えない。反転世界では、特性が使えないのか?

「…マジだナ。俺も影に潜れねぇ。つっても真っ暗で何処が影かわかったもんじゃねえが」
「私もです。この世界は一体…」

シャルやミリアンも同じようだ。
困ったように、ガイラルが唸る

「どうすっか…文字通り右も左も分からねぇなこれじゃ…」

その時、聞き覚えの無い声が聞こえた。

「お前達!何者だ!」
「ここに来たということは…偶然ではありませんね?」

少女のような声が二人。その瞬間、青い光が辺りに広がり…周りの景色が明らかになった、

「お前らは…?」

ほの暗い洞窟のような通路の先に、青い頭と黄色い頭をした小さなポケモンが二人並んでいた。明らかに警戒しており、こちらを睨みつけている。
何処か、エムリットと似ていた。

「私はアグノム。この世界の番人だ」
「同じく番人のユクシー。貴方達は何者かしら?」

青い方がアグノム、黄色い方がユクシーと名乗った。…間違いない。エムリットの仲間だ。

「俺達はミラウェルの者だ。用があってギラティナに会いに来た。通してくれないか?」
「ミラウェル…表の世界で平和の為に力を尽くしている者達か。…だが、ギラティナに会うことは止めた方が良い」
「何?」
「…会わせないじゃなく会わない方が良い、よ。オススメ出来ないという事ね」

アグノムとユクシーは交互にそう話し、ガイラルは唸る。次はガブリアスが前に出た。

「訳を話してほしい。…その口振りからして、俺達を敵視しているようでは無いのだろう?」
「…まぁ、ね。貴方達が正しい行いをしていることは良く知っているからね。でも」

ユクシーは気まずそうに下を向く。

「私達は、の話だ。ギラティナだけはそうじゃない」
「何だと…?」

アグノムも何処か気難しい顔をしており、ルカリオは更に追及する。

「会った方が早い…か。良いわ、覚悟があるなら付いてきなさい。ただし、命の保証は出来ないぞ」
「簡単に殺されはしないさ」
「表の世界ならな。…現にお前達、特性が使えないだろう?この世界の支配者はギラティナ。その気になれば立つことすら制限することも出来る」
「なるほど、特性が使えないのはギラティナの仕業か…!」

全員が凍りついたように静まる。…本当に、命の保証は出来ないな。

「それでも、来るか?」
「……行くさ。世界の為にもな」
「…そう。なら来なさい」

アグノムとユクシーは先へ進み、僅かに恐怖を抱きながらも全員が付いて行った。

………

「ギラティナ。客人を連れてきたぞ」

着いたのはなにもない広場。辺りには青い火の玉の様な光が無数に浮遊していた。腹の底に響くような悪寒。なにもないのに、全身の毛が逆立つ。

『……番人が賊を招き入れてどうする。アグノム、ユクシー』

闇の奥から、低く威圧的な声が聞こえた。

「ミラウェルの連中です。悪いポケモンでは無いですよ」
『…どうかな。アルセウスを殺した連中が作った組織のポケモンだろう。我からすれば、無礼者に違いないが』
「アルセウスはまともではなかった。誰かが倒さねば、表の世界は終わっていただろう。少しは聞く耳を持ったらどうだ?」

ユクシーの言葉にギラティナは反発し、アグノムはギラティナを説得している。…明らかに、歓迎されていないな。

『それがどうした。奴が作った世界を奴が壊したところで…我には関係がない。…下等なポケモンが、アルセウスを殺したという無礼に比べればどうという事はない』
「…いい加減にしやがれ、ギラティナ。この世界と表の世界は繋がっている。表の世界が壊れればこちらも壊れるのはテメェが一番知っているだろうが」

ギラティナの態度に、ガイラルが激昂する。…無理もない。

『…ほう、生意気にもこの世界について調べたようだな。確かにその通りだ。だが、アルセウスが行おうとした事は表の世界に直接ダメージを与えるものではなかろう』
「何言ってやがる。奴が計画していた事がもし成功していたら、世界には何億って数のポケモンの死体が出来上がるんだぞ!百分の一にも満たない数のポケモンだけを残してな!」
『それでも世界は壊れない。アルセウスが造り出した表の世界は例えポケモンの数が少なくとも壊れることは無い』

話は一方通行。ガイラルは更に苛立ちを募らせていた。

「ざけんじゃねぇ!お前は世界さえ残ってるなら表がどうなろうが知らねぇとほざくのか!」
『最初からそう言っている。…貴様、何か勘違いをしていないか?我はこの世界の主であって表の世界の主ではない。例え表の世界の危機であろうと、力を貸すつもりなど毛頭無い』
「……ッ!」

ガイラルは怒りに任せて剣を取ろうとするが…ベルセルクとガブリアスがそれを止めた。

「お前ら…」
「落ち着くと良い。先程言われただろう。この世界でギラティナに歯向かうことは出来ないと」
「ガブリアスの言った通りだ。…そも私はギラティナに協力など求めても無駄だと思っていた。アルセウスと同格の神…そもそもの価値観が我々とは違うんだ」
「く…」

ガイラルは渋々剣をしまった。

『理解したか。ならば消えろ。我に力を貸してもらおうなどと思い上がるな』
「━━━ちょっと待った、ギラティナ」

嘲笑するギラティナの声に、何処かから聞こえたポケモンの声が反応した。その声に思わず一歩前に出てしまう。あの声は…!

「エムリット!」

俺の声に気付き、姿を現したエムリットが笑う。

「やぁ。やっと会えたね、ルト。…ギラティナ」
『…何だ?エムリット』

エムリットは厳しい表情でギラティナのいる闇へと目を向ける。

「確かにアルセウスは世界そのものを壊そうとはしていなかった。けれど、今回はどうなのさ?ディザスタを名乗る連中の狙いが、表の世界の破壊を狙ったものだったとしたら?」
『根拠は?』
「根拠はアンタが一番分かっている筈だよ?ディザスタの連中のアジトの場所はこの反転世界から観測出来た。なのに、中は覗くことが出来なかった。明らかに、ギラティナを警戒しているんだ」

エムリットの言葉にギラティナは唸る。…それより、サラッと言ったがアジトの場所を知っているのか。

「反転世界からの観測は万能ではない。けれど、ああも露骨に観測を遮断してるのは…ギラティナからの邪魔が入らないようにしてるって事さ。という事は…」
『…我が自ら動く程の事を、ディザスタは行っている。そう言いたいのか』
「そう。しかもアンタが大嫌いなただのポケモンが行っている計画。無視出来るかい?」
『…フン。お前らしくない。ソイツらに肩入れするとはな』

エムリットは違うよ、と一言呟き

「これも、私が行うべき仕事なのさ。ディアルガ様が愛した平和を…守りたいのよ」
『………』

そう告げ、ギラティナの声が途絶える。

「…頼む、ギラティナ。力を貸してくれ」

ルカリオはギラティナのいる方向に頭を下げる。他のポケモンも全員下げた。

『…致し方ない、か。良いだろう。力を貸してやる』
「本当か!?」
『ただし。我が出す試練を乗り越えたらな』

と、ギラティナは広場に四色の光を出現させた。どうやら、テレポートポイントのようだ。

『この光の先にいる奴を倒してこい。…安心しろ、特性は使えるようにしてある』
「何が目的かは知らんが…わかった」

ルカリオは頷く。

『…貴様らに出来るのなら、な』

ギラティナは意味深な言葉を残し…声が途絶えた。

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