第25話 特訓!

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

「コォォオラァァア! なーにをやっちょるけん! まーたその坊主に頼りおって~!」
「ごっごめんなさい~!」

 ウバメの森を無事に抜けた二人。無事に抜けれたのはいいのだが、それはウバメの森なだけであって現在いる場所はマイにとっては早く抜けたいとろこだった。
 二人は今「育て屋夫婦」のところに来ていた。
 育て屋、というのはトレーナーの代わりにポケモンを育てる施設のようなところである。

「そこの坊主も! あんたもボーっとしてないでさっさとポケモンをお出し!」
「わーったよ! 出てこいお前ら!」

 太陽が照り付ける日差しの中、手持ちのポケモンを全て出してそれぞれに指示を出す。さっきから怒号の声を上げているのは、育て屋夫婦の「奥さん」にあたるおばあちゃんだ。
 育て屋夫婦の経営しているのを遠くから眺めているだけの二人だったが、運悪く夫婦に見つかってしまい、手伝いという名目でポケモンの特訓をさせてもらっていた。
 手伝いというのは、ほかのポケモンの面倒を見ながらそのポケモンと戦い経験を得る、ということ。

「リューくん、叩きつける! ピーくん、電光石火! フィーちゃん、サイコキネシス!」
「バクたろう、火炎車! エイたろう、驚かす! キマたろう、葉っぱカッター!」
「だーめじゃ、駄目じゃ! もっとしっかりポケモンの目を見るんじゃ! そんなんじゃなんの経験も得られんだろう!」

 マイはすでに泣きそうだったが、ゴールドが側にいてくれるだけでもいいと思い涙をひっこめる。しかし、それを見逃さないのが育て屋のおばあちゃん。
 怪しげに笑った姿を見て、おじいちゃんは顔を下に向けて、深いため息。

「そこの小さいの! あんたはこっちで一人で相手をしてみるんじゃ! いつまでも坊主にベッタリいるでない!」
「え~! そ、そんなぁ~!」

 無理矢理マイのパーカーのフード部分を掴むと、どこにそんな力があるのか分からないがマイをずるずると引きずっていく。
 ゴールドはどこかに連れていかれるマイを見ながら、ああ俺の優しさが無駄になったな、と空を見上げていた。

「うう、ゴールド。おばあちゃ……師匠」
「よし、それでいい」
「師匠、わたしどうしたらゴールドのところに戻ってもいい?」
「こやつの相手を終わらしたらよいぞ。第一、お前さんはあのゴールドとかいう坊主に頼りすぎじゃ! そんなんじゃ、この先のジムリーダーアカネには勝てないぞ!」

 図星を付かれて反論が出来ない。こやつ、と視線をおばあちゃんと同じ方向に向けるとそこにはズルズルと重たそうに身体を動かしているイワーク。
 怖いとすら思える体格に、太陽が反射して黒い身体が余計に黒々としている、何よりもマイを怖がらせているのはそのギョロリとした大きな目だ。
 草むらをかき分けてどんどんと近寄ってくる。

「ほら行けぇ!」
「はっはいいい! リューくん、水の波動! ピーくんは……えっと」
「そのピカチュウは素早さがあるじゃろう! それを有効するんんじゃ!」

 なんだかんだ助けてくれるおばあちゃんにほっこりとするマイ。頭を杖で叩かれたが気にしている暇はない。ピカチュウにお得意の電光石火をさせて目をくらます。

「やった! イワークが地面に倒れた! リューくんもう一回……うっ師匠。フィーちゃん! えーと」
「技くらい覚えておけぇ! エーフィは手助けという仲間の攻撃力をあげてくれる技をもっておる!」
「フィーちゃん、リューくんに手助けをしてあげて! そうしたらリューくんは水の波動!」

 エーフィの別れている尻尾をゆらゆらと揺らすとそこからキラキラと星の粉のようなものがミニリュウに触れる。
 心地よさそうな顔になったと思ったら、ミニリュウにしては珍しいきりっとした目つきに代わり、口から特大の水を噴出し波動に変える。ピカチュウは動き回って疲れたのかマイの傍にそっと近寄り休んでいる。

「やったー! すごいよ三人共! あんなに大きなポケモンだったのに!」
「よしよし。チームワークは完璧じゃな。あとはマイ、お主がしっかりするんじゃ。まずは技を覚えること! 次に、それぞれのポケモンの特徴を見極め伸ばしてゆく! いいな!」
「はいっ!」

 草むらに倒れたマイは三匹(マイは三人と表現しているが)と戯れていながらも、きちんと返事を返す。
 もう昼になる、特訓はここまでにして家に戻るぞい、と呼ばれ起き上がりポケモンを戻す。ゴールドはとっくにおじいちゃんと家に戻っていて、マイとおばあちゃんは修行が足りない! と声を上げる。なんだか似てきたな、と男組はこそこそと話していた。

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