ゲンガーはかみさま?

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まだこの洋館にこんなにゴーストポケモンたちがたくさんいなかった頃のおはなし。ゲンガーは洋館の絵画が気に入って、ここを自分の家にしようと住み着いていました。

あるひどい雪の晩、一匹のヌメイルが洋館へ寒さを逃れるために入ってきました。ゲンガーは自分の家に変な奴が勝手に入ってきたと思い、イジワルしてやろうと考えました。

ヌメイルは進化の際、目が退化して盲目になったポケモンです。目が見えないことをいいことに、ゲンガーは普通より一回り大きい木の実をぶつけてやりました。

どんな顔をして痛がるだろうかと期待していると、木の実はヌメイルの柔らかい体にふにゅっと当たってすとんと下に落ちました。ダメージはないようです。

ヌメイルは落ちてきた木の実を触角を頼りに拾って、もぐもぐ食べました。 こんなにおいしい木の実が都合よく落ちてきた。これはきっとここのかみさまが助けてくれたのだと考えたヌメイルは、かみさまありがとうございます。とお辞儀をしました。

ゲンガーは予想外の出来事にしばらく開いた口がふさがりませんでしたが、またイタズラしてここから追い出してやろうと考えました。

次のイタズラは、ヌメイルの体を守る大事なぬめぬめを乾かそうと放った鬼火でした。しかしこの雪で体の冷えてしまったヌメイルにとって、それはちょうどいい暖かさでした。ヌメイルはかみさま、あたたかいものをありがとうございます。とお辞儀をしました。

ゲンガーはまたしてもあんぐり口を開けてぽかんとしていました。しかしまだまだ負けてはいられません。ヌメイルが適当に入った部屋のカギを閉め、タンスをガタガタ揺らして怖がらせようとしました。

するとタンスから集めていた鳥ポケモンの羽根がばっさばっさと出てきて、ふわふわの寝床が出来上がってしまいました。ヌメイルはふわふわに乗っかり、かみさま、おふとんをありがとうございます。とすやすや眠ってしまいました。

ゲンガーは悔しさが高まっていきました。絶対こいつを追い出してやるぞ! と決意し、その日はそのままヌメイルを泊めることにしました。

次の日、今度こそ成功させようと昨日より硬い木の実をぶつけましたが、やっぱりぬめりと滑り落ちてダメージを与えられません。それどころか、ヌメイルの好物の木の実だったので、更に喜ばれてしまいました。

小石を置いて転ばせても、くるんと一回転して遊んでもらえているのだと喜ばれ、キッチンでは大事にとっておいたふしぎなアメを食べられ、腹いせにシャドーボールを放てば違うところに当たって跳ね返ってくる始末。

なにをやってもヌメイルにありがたいかみさまだと思われてしまうばかり。とうとうゲンガーは追い出すのを諦めて、ヌメイル自身が出ていくのを待つことにしました。

ある大雨の日、ヌメイルは何かに突き動かされるように外へ飛び出していきました。ゲンガーはやっと出て行ったかと喜びましたが、また一人ぼっちになってしまって、なんだか悲しくなってきました。

いなくなってよかったはずなのに。追い出したかったはずなのに。と絵画の中でめそめそ泣いていると、どしんどしんと大きな音がしました。なんだろうと見てみると、玄関先にヌメルゴンが立っていました。

ヌメルゴンはキョロキョロ辺りを見渡して、二階への階段を発見するとずしんずしん登ってきます。慌てて絵画の中へ隠れると、ヌメルゴンは絵画のある部屋に入ってきました。

部屋に入ってきたヌメルゴンが見たのは、穏やかな優しい光を受けて祈る女性の姿が描かれた絵画でした。ヌメルゴンはその光景をしっかり目に焼き付けて、かみさま、いままでありがとうございました。ぼくはもういきます。とお辞儀をして、出ていきました。

もう見えるようになったヌメルゴンに姿を見られるわけにもいかず、ゲンガーはそのままヌメルゴンが出ていく音を、ぽろぽろ涙を流しながら聞いていました。

その後、ヌメルゴンが来ることはありませんでしたが、今でもゲンガーはまた来るのではないかとひっそり期待しているそうです。

きょうのおはなしは、これでおしまい

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