【第076話】悪魔の砂嵐 / チハヤ(鬼ごっこ、vsシママーマン)

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

「ソソゲーーーーーーーッ!!」
「なっ……何だあのポケモン……!?」
チハヤは当然、目の前にそびえ立つ巨大な器を携えたポケモンのことは未知であった。
そのポケモンの名はディンルー……人の悪しき欲に共鳴するポケモン、四災スーザイの一角。
リベルのイーユイ、マツリのチオンジェン、キクのパオジアンと続き……彼の手持ちにも、四災スーザイが顔を並べていたのである。

「悪いけど、アンタの事は本気で倒させてもらいます。あの人・・・から色々言われているのでね。」
「ッ……!」
先程までの覇気のない様子とは違う。
何かのスイッチが入ったシママーマンは、指を軽く鳴らす。
「(しかし……コイツを目の前にして失神しないのか。チハヤ・カミシロ……思った以上に厄介かもしれねーな……)」
マスク越しに、チハヤを睨むシママーマン。
その気迫は、外野のストームにも痛いほど伝わっていた。

「(クソッ……やっぱり居たな四災スーザイッ!!コイツはディンルー……!!僕に対しては出し渋ったくせに、チハヤと戦うってなった瞬間容赦なく出してきやがった……!)」
先程から気配でディンルーの存在を感じていた彼は、此処で出てきた驚く。
バトルの実力でチハヤとストームを比べれば、どう見積もっても後者の方が格上。
そのストームと互角に渡り合えるシママーマンが、どういうわけかチハヤにディンルーという厄災レベルのポケモンをぶつけてきたのだ。
「(あの男……勝負の勝敗以外に狙ってるものがあるのかッ……!?)」
これは最早、勝負ではない……一方的な蹂躙になることは目に見えていた。

 しかしそれでも、ストームは考える。
「(ッ……そうだ!今はシママーマンとディンルーの情報を搾り取るチャンスだッ!チハヤにすぐ倒れられては困るッ……!)」
黒衣の観測者ジャッカニューロの使命たる四災スーザイの調査を思い出した彼は……ここで、チハヤに肩入れをすることをきめた。

「き……気をつけろチハヤッ!ソイツは強いッ……!」
「お、おう……まぁ、言われなくとも見りゃ分かるわ。嫌な気配をビンビンに出してやがるもんな……!」
チハヤも、自らの頬を軽く叩いて気を引き締める。
此処で引く訳にはいかないからだ。
負けてしまえば授業は大幅に失点……落第まっしぐら。
ここまで頑張って積み上げたものが、台無しに成りかねない。

「……イケるな?シキジカッ!!」
「めるッ!」
シキジカも、やる気十分だ。
格上の相手など今更……それでも多くの勝利を収めてきた彼であれば、勝率はゼロではない。

 掛け声とともに、チハヤは早速攻撃の指示を出す。
「先に仕掛けるぞッ!!シキジカ、『くさわけ』ッ!!」
「めるるッ!」
攻撃を放ったのはディンルーの視界内一直線。
全く種も仕掛けもない状態で、正攻法で殴りに向かったのだ。

 しかしディンルーは動かない。
この程度の攻撃など些事だ……と言わんばかりに、その場で不動を貫き直立している。
「めるるーーーッ!!」
棒立ちのディンルーの顔面を、U字回転からの後脚で蹴り上げるシキジカ。
じめんタイプへのくさ攻撃……効果は抜群だ。

 ……が、それにも関わらず。
「ソソゲッ……!」
ディンルーには、全く効いている様子がない。
真正面から、眉間を蹴り抜かれたにも関わらず……だ。

「え……き、効いてないッ!?」
「め……るるッ!?」
あまりに歯ごたえの無さに、驚くチハヤとシキジカ。
そんな彼らに、横からストームが叫ぶ。
「駄目だチハヤッ!奴の特性は『わざわいのうつわ』ッ!!シキジカの出す技の威力は、大幅に低下するんだッ!!」
「な……何ッ!?」
そう、これは四災スーザイの固有特性の効果。
相手の内なる戦意を何かしらの形で削ぎ、著しい弱体化を施すのだ。
ディンルーが与えるのは、『不安感』。
ポケモンは本能的に攻撃を躊躇ってしまい、ディンルーに満足な攻撃を出来ないのである。

「おいおい、横からの口出しは流石にナシでしょーが。まぁ、別にネタバラシされて困るもんではねーですけど。ディンルー、反撃だ。『ヘビーボンバー』ッ!」
「ソソゲーーーーーーッ!!」
ディンルーはその特大サイズの頭部を振り上げ、眼前のシキジカ目掛けて振り下ろす。
『ヘビーボンバー』は使用者の体重に比例して威力の上がる攻撃。
金属製の超重量で叩きつけられてしまえば、シキジカも溜まったものではない。
だが距離が近すぎる……回避は間に合わない。

「だったらこうだッ……シキジカッ、『あまえる』ッ!」
「め……めるぅ……!」
攻撃を受ける直前……シキジカは澄んだ瞳を潤ませ、ディンルーを直視する。
すると着弾間際……『ヘビーボンバー』の勢いが弱まった。
「めるッ……!」
攻撃自体はシキジカに直撃したものの、なんとか軽症で済んだようだ。

「へぇ……正面から受けるか。……俺の嫌いなタイプだ。」
とはいえ、この選択肢は長い目で見れば賢明であったと言える。
ここで『あまえる』を打ったおかげで、ディンルーの攻撃力は大幅にダウン。
少なくとも、火力低下の不利をシキジカだけで被らなくてもよくなったのだ。
「そこから更に一撃ッ……『くさわけ』ッ!!」
「めるるるッ!」
シキジカは前脚に力を込めて、技を繰り出して駆け出す。
……が、それはディンルーの方向ではない。

 その真逆……相手から遠ざかる方向。
即ち、逃げの一手を打ったのである。
恐らく、『くさわけ』の助走のために距離を取ったのだろう。
……が、残念ながらそれはシママーマンにとっても想定通りの事態であった。
「……仕留めろ。『カタストロフィ』だ。」
「ソソゲーーーーーーッ!!」
シキジカが離れると同時、ディンルーはその前脚を振り下ろして地面を鳴らす。
激しく短い地響きと共に、彼を中心に黒い光が広がる。
まるで地割れの如く地面に広がる裂け目からは、実体を持った黒い棘が生える。
黒い棘は下側から、シキジカを飲み込もうとしてきたのだ。
「めるるッ!?」
シキジカは地面から生えてくる棘を跳び避けて回避する。
ステップが乱れたせいで、助走どころではなくなってしまった。

 だがチハヤは焦らない。
今のディンルーには、『あまえる』のデバフが掛かっていたからだ。
「落ち着け……アイツは攻撃力が下がっている。これくらい気にするほどじゃ……」
と、思っていたのもつかの間。
シキジカの身体に、『カタストロフィ』が直撃する。
「めるるッ………!」
が、その攻撃は予想外のダメージ。
「し、シキジカッ!?」
あまりの衝撃に、その場で転げ落ちてしまうシキジカ。
『カタストロフィ』は、体力を一気に削り取ってしまったのだ。

「そ……そんな馬鹿なッ!?どうして……」
「チハヤッ、『カタストロフィ』は攻撃力を参照しない技なんだよっ!『あまえる』のデバフなんか、この攻撃には関係ないッ!」
「マジかよッ……滅茶苦茶じゃねぇか!」
ストームの言う通り、一部の技には、ポケモン自身のステータスを参照しない系統の攻撃がある。
即死級の大ダメージを与えられないのがネックではあるが、デバフの影響を受けないという点では非常に強力な効果なのだ。
そしてその利点はこの状況で最大限生きてしまい、文字通りシキジカの足元を掬ったのである。

 更に此処で、ディンルーが最悪の一手を打つ。
「さて……もう一声。ディンルー、『すなあらし』だ。」
「ソソゲーーーーーーーッ!!」
けたたましい雄たけびとともに、ディンルーを中心に旋風が拭き始める。
激しい風が、周囲一帯の小石を巻き上げ……視界を劣悪にする。

「うわッ……『すなあらし』かよッ!趣味悪ィッ……!」
直接的なダメージを与える攻撃ではないが、長時間継続すれば決して小さくはない悪影響が出る。
チハヤとしても、決して喰らいたくはない攻撃であった。

 ……が、しかし。
このシママーマンの選択に、ストームは疑問を抱く。
「(……おかしい。本当に勝つつもりだったんなら、今まさに倒れているシキジカに『カタストロフィ』で追撃すればいいだけだ。でも、敢えてしょっぱい『すなあらし』を打った……どういうことだ……!?)」
彼の考える通り、今のシキジカは隙だらけの様子であった。
仮に反撃を警戒して攻撃を渋ったのだとしても、彼は(すぐに出せる技に限れば)近接攻撃しか持ち合わせていない。
その場で待機して、カウンターの『ヘビーボンバー』なりなんなりを決めればいいだけの話である。
「(いや、まさか。だと思いたいけど……)」
不安に胸をざわつかせながら、ストームは戦局を見守る。

 さて、しかしこの『すなあらし』も、シキジカにとってはやはり不都合だ。
激しく吹き荒れている風のせいで、直立がままならない状態にある。
「め……る……!」
なんとか立ち上がり、『くさわけ』の再発を試みようとするが、上手く行かない。
少しでも脚を踏み外せば、軽い身体が浮き上がってしまうからだ。
加えてこの視界の悪さでは、『ソーラービーム』を打つための採光量も制限されてしまっている。
シキジカの選択肢は、予想外に削られていたのだ。

「し、シキジカッ……『くさわけ』だっ!」
「める……」
「くっ……駄目かッ!」
そうこうしてもたついている間に、ついにディンルーは動き出した。
「さて……そろそろ行きますかね。ディンルー、『カタストロフィ』だ。」
「ソソゲーーーーーーーーッ!!」
地面からそびえ立つ棘の攻撃が、シキジカへと這い寄っていく。
次にこの攻撃を受けてしまえば、『すなあらし』と合わさってノックダウンも目前だ。

「……あ、そうだシキジカッ!!飛び上がれッ!!」
「め……めるるッ!」
迷いつつも……チハヤの指示に従って、そのままその場で『くさわけ』と共にジャンプをするシキジカ。
軽い身体は、ふわりと風に待って飛び上がっていく。
その上昇気流のお陰で、なんとか『カタストロフィ』の致命傷を免れることが出来たのだ。
が、しかし……地面からその脚を離すということは、非常に危険な一手である。
「(む、無茶だ……!あれじゃ地面を支点にする『くさわけ』は使えないッ!!)」
彼の言う通り、上空から『くさわけ』を決めるためには、キックをするための支点が必要である。
自ら地上を捨てるなど、完全に愚の骨頂なのだ。

 ……が、しかし。
解決策は無いわけじゃない。
支点がないなら作れば良い・・・・・・・・・・・・のだから。
そしてその手法を……チハヤは既に知っていた。

「なッ……!?」
「あ、アイツッ……!?」
ストームとシママーマンは、視界に飛び込んできたまさかの光景に驚く。
そう……チハヤがシキジカと共に、『すなあらし』に乗って上空へ舞い上がっていたのである。
これはウィッグ戦のときにも使っていた手法である。
本来であれば打てないはずの上空からの攻撃を、トレーナーの身体を使って無理矢理発動させたのだ。
以前にリッカと空中での挙動の訓練をしていた彼らは、奇しくもあの時と似たこの状況で……この奇抜な選択肢を選び取ることが出来たのだ。
「(い、イカれてるッ……!)」
「(それアリかよ……いや、そうだ!コイツはそういうことやりやがる奴でしたねーーーー!!)」
流石にトレーナーが殴り込んでくるのは、彼らとしても驚きを隠せない。
……が、その状況下で。
シママーマンは、マスクの下で僅かに笑っていた。
「(……まぁいい、それだけアクロバティックに動いてくれりゃ、手間が省ける・・・・・・。)」


 さて……空に飛び上がったチハヤはその手を伸ばし、シキジカとアイコンタクトを取る。
「よしッ……ぶちかませッ!!『ゼブラハンマー1号』ッ!!」
「めるるーーーーーーーーッ!」
トレーナーの腕を後ろ脚で迷いなく蹴り飛ばし、上空からの『くさわけ』キックを繰り出す。
流星の如き一直線のキックが、地上斜め45度の軌道を描き、疾風を貫いてディンルーの直撃する。
「っし……決まったッ!」
地面に受け身で着地をしつつ、グッドサインを出すチハヤ。

 シキジカが狙ったのは背中……硬い頭部ではなく、一番脆そうな背中である。
……が、やはり厄介な『やくさいのうつわ』。
これだけの大技を決めても、ダメージは殆ど入っていないようだ。
直立のディンルーは、痒がる様子すら見せない。

 ……しかし、そこから数秒後。
「そ……ソソゲッ……!?」
ディンルーの挙動が、明らかにおかしくなる。
『くさわけ』のダメージ以外の影響が、彼に降り掛かっていたのだ。

「……あぁ、そうか。そういやアンタのそのパクリ技は……『くさわけ』と『やどりぎのタネ』のコンボ技。ヒットした傷口に植わったタネが、徐々に体力を削っていく。」
「そうだ!これなら『わざわいのうきわ』とかも関係ねぇッ!!」
「『うつわ』な!?」
だが、チハヤの考えは非常に的を射ている。
『やどりぎのタネ』はスリップダメージを与える攻撃……故に、特性に寄る悪影響を受けずに、ディンルーの体力を削り取ることが出来るのだ。
シママーマンが仕掛けてきた、『すなあらし』と同じ原理だ。

「チッ……俺の考えたダサい技で傷を負うとか……笑えねーですね。」
「この一撃を決められたのはデカいッ!ディンルーから体力を吸い取っているおかげで、シキジカが倒れることもねぇ!よしッ、あとは全力で逃げろッ!」
「めるるッ!」
シキジカはディンルーから距離を取り、『すなあらし』に身を任せて舞い上がる。
ディンルーの持っている技は、総て設地攻撃……『すなあらし』以外には上空を舞うシキジカに対しての攻撃手段は持ち合わせていない。
あとはこの風に乗って、逃げ惑うだけなのだ。

 ……が、その状況でシママーマンは。
「……ディンルー、構わねーで下さい。『すなあらし』だ。」
「そ……ソソゲーーーーーーーーッ!!」
なんと『すなあらし』を、追加で更に吹き荒れさせていたのである。
風を更に吹かせてしまえば、シキジカは絶対に地上に降りてこなくなる。
それに、勢いを増したからと言ってスリップダメージの量までもが増えるわけじゃない。
傍から見ていれば、ディンルーのその攻撃は……ヤケクソの悪あがきにしか見えなかった。

 しかしその悪あがきは、やはりストームには納得がいかない。
「(いや、やっぱり変だ。シママーマンの動きが、明らかに不自然過ぎる。それに……)」
次に目をやったのは、ディンルーの方。
本来であれば、上空に居るシキジカの方を見ているのが普通だ。
……が、彼の視界はそちらには向いていない。
彼が見ていたのは……そのトレーナーである、チハヤの方だ。

「(この過度な砂嵐……トレーナーへの負担もやばいだろ……あっ、まさかッ!?)」
此処でようやく、答えにたどり着くストーム
その答えは……大変信じがたく、悍ましいものであった。

「(やべぇッ……そうか、やっぱりだっ!コイツ……飛んだサイコ野郎だッ!!)」
ストームは総判断すると、迷わずに腰元のボールに手をのばす。
「りるるーーーーッ!」
そしてチルタリスを呼び出すとすぐに解崩器ブレイカーを起動して、メガシンカを発動。
毛量が増して輝かしくなったメガチルタリスに、すかさず攻撃の指示を出した。

「え……?」
「ちょ……ちょっとストーム!?」
「問答無用ッ!チルタリス、『はかいこうせん』だッ!」
「りるるーーーーーーーーッ!!」
『フェアリースキン』の効果で威力が倍増した『はかいこうせん』が、『すなあらし』諸共戦場を吹き飛ばしてしまう。
激しく舞い上がる砂埃と爆風に、その場に居た誰もが目を覆った。

「……ッ、な、何だ……?」
シママーマンが顔をあげると、次の瞬間には……

 ディンルー以外、誰も居なかった。
この砂埃と混乱に乗じて、ストームとチハヤらは姿を消してしまっていたのだ。
取り残されたシママーマンは、小さくため息をついてその場に座り込む。

「うっわ逃げられたか……後ちょっとで、ドライブくん・・・・・・が呼び出せたのになぁ。」
そうしてディンルーをボールに戻すと、欠伸とともに立ち上がった。
「……っかしこれ、Mis.Wにどう報告しましょうかねぇ。」




 ーーーーーその直後。
南の森に隣接しているバイオーム、『ヘドロの森』。
チハヤとシキジカを強制連行してきたチルタリスとストームは、その場に彼らを下ろす。
「痛てて……な、何すんだよストームッ!」
「何すんだよは無いだろッ!?あのシママ野郎……お前の中の『ドライブ』を起こそうとしていたんだぞッ!!」
「え……!?」
ドライブ……それはチハヤの中に眠っている、忌刹シーズンの名前だ。
彼が目覚めてくる条件は……恐らく、過去2件の事例から推察するに。
チハヤ自身に致命的なダメージを与えること……だ。
ウィッグ戦の時には、騒音と高所からの落下。
オモト戦では、腹部を刺突されたことによる損傷。
それらがトリガーとなって、彼の表側にドライブが現れてしまったのである。
そしてそのドライブを……シママーマンは意図的に目覚めさせようとしていた、とストームは見抜いたのだ。

「な、何を根拠にそんなことを……」
「ディンルーがすぐにトドメを刺さず、無駄に広範囲な『すなあらし』を撃ったのは何故だと思う?チハヤ……お前を攻撃するためだよ!」
「え……えぇ……!?」
あのシママーマンとはいえ、そんな事をするわけがない……と、チハヤは考えた。
考えたかった。
だがしかし、状況的には今の説明で納得せざるを得ない。

「それに……奴は言ってた。上からの指示・・・・・・だってな。」
「ってことは……。」
「あぁ。チハヤは多分……組織的に狙われているってことだ。中にいるドライブごと、ね。まぁ、それが誰かはわからないけど。」
「ッ……!」
自らの身に危険が迫っていたことを悟ったチハヤは、軽く身震いする。
あのまま戦ってしまっていれば、またあの粗暴で邪悪なドライブを呼び出して……他のポケモンたちに、取り返しのつかないことをしていたかもしれない。
そう考えると先のストームの乱入は、まさに地獄に垂らされた救いの糸だったのである。

「ッ、で、でも……!」
チハヤは鬱蒼とした木々の隙間から、空を見上げる。
既に空は赤らみ始めており、日没が近い。
このままでは、チハヤはカード0枚のままで授業を終えてしまうことになる。
「俺、絶対に勝ち残らなくちゃならねぇんだ……今からでも、もう一回……」
そうして、来た道を戻ろうとするチハヤ。
その腕を引いて、ストームは呼び止める。

「やめろバカッ!また乗っ取られたいのかよ!?」
「で、でも……!」
「あぁわかったよ!どうしてもカードが欲しいってんなら……」
ストームはそう言うと、ボールをチハヤの目の前に差し出す。

「僕と戦えッ……チハヤ!!」


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