FILE11 エターナル・グッドバイ

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

・暴力的なシーンやグロテスクなシーンが数多く含まれます。苦手な方はブラウザバックしてください。
・結構な数のポケモンが命を落とします。自分の好きなポケモンが命を落としても平気な方のみどうぞ。
・この物語はフィクションです、実際の人物や団体、及び他のスクエア作品とは関係ありません。
・FILE11 エターナル・グッドバイ



 思考共有はJOINTの能力によるものなので俺の能力が途切れない限り消えることはないが、肝心の思考そのものはジュナに依存するからそれが消えたということは…
「あいつが、死んだ…?」
 噓だよな、ただ意識失ってるだけだろ…?
「ちょっと、死んじゃったってどういう…?」
「そんなこと俺が知るか!事実から推測しただけで俺だってあいつが死んだって信じられるかよ…!」
 探偵として活動する上ではCHRONICLEを使えることもあって情報収集役としてはかなり優秀だった。
 戦闘面では俺の相性不利なタイプに有利に立ち回れることもあり、機動力を確保できる飛行能力や影縫いによる拘束能力付きの遠距離射撃、ポルターガイストによる屋内での変則的な戦いもできて、DISC抜きでは機動力や搦め手、遠距離攻撃に乏しい俺にとってはペアを組むなら相性のいい存在で…

『違うだろッ!お前は俺の…』
 思考共有する相手も不在な抜け殻の空間に吠える。
『…今更遅いけど、“相棒”って呼ばせてくれ!』
 今更届かないし届けられないけど、こうでもしないと壊れそうだった…
『この事件を解き明かして、お前の体をワカバタウンに連れて帰ってやるからな…』


「悪い、ちょっと取り乱したな…」
「仕方ないよ、私だってお兄ちゃんが死んじゃってすぐはそうだったから…」
「スタンド使いもびっくりの精神力だな… ちょっと外の空気吸って来る」
 DISC使いとの抗争に巻き込まれて精神的に成長したんだろうか?その点俺はまだまだ未熟で…
 ふと気付くと玄関のドアに何かが刺さっている。
 抜いてみるとハンバーガーの包み紙を貫いた矢だった。
「矢文…?」
 そしてこの矢が誰のものかは考えなくても分かった。

「ジュナが、俺たちにメッセージを遺してくれていたらしい…」
「メッセージ?」
「この矢はジュナの矢だ…」
 包み紙を開くとDISCの破片と白くて薄い円盤が包まれていた。
 最高レベルのCHRONICLEは使い手が死んでも壊れないし、見たところLIARの破片と見て間違いないだろう。
「厄介なDISC能力が減ったな…」
 情報を混乱させる能力が盤面から消えたことはこちらにとっては大きなメリットで、あいつの死も無駄ではなかった、って言い切れるだけの余裕はまだない…
「この白いのってなんだろ?大根かな?」
 アシレーヌは白くて薄い円盤と睨めっこしている。
「だな、この感じは千枚漬け用にも見えたけどそれにしては妙に厚い…」
 千枚漬けなどの調理用の切り方にしては中途半端に厚く、どちらかと言えば円盾やチャクラムのような投擲武器のように見える。

「他には特になにもなくて、ハンバーガーの包み紙には何も書いてないね?」
 普通ならこの紙を手紙として使いそうな気がするけど、予想とは違って何も書かれていなかった。
「いや、敵に襲われた状況下なら悠長に文字を書いてる余裕もないし、大根とDISCの破片だけならそのまま飛ばして来るはずだぜ。これにはきっと何かある」
 光に透かして見ると、ハンバーガーの絵を囲むような跡があった。
「このハンバーガーの絵が囲まれてたぜ!」
「…で、それは何を意味するの?」
「…これから考える、うん」

 ハンバーガーの絵と隣のHAMBURGERの文字を囲んだだけ、以上。
 これがもし特定のアルファベットだけに跡があるなら“AMBER”みたいに一発で分かったけど、そういった類のものはない。
「まさかお前は“HAMBURGER”とか“DONALD”みたいなDISCの使い手に殺されたのかよ…?」
「そんなふざけた能力もあるの…?」
「別の世界では親子丼の能力持ってるやつがいたらしい…」
「えっ…」

「とりあえずジュナが生死に関わる状況下で必要もないことをするような奴じゃない、この大根と包み紙はきっと何かのメッセージのはずだ…」
 この台詞もそろそろ十回は言っているかもしれない。
 さっきから二匹で考えているけど、全然ヒントもなければ突破口の一つも見えない。
 ジュナはLIARをDISCブレイクした、それだけが事実で他は希望や願望で推理しているだけにすぎない。
 推理もCHRONICLEも事実から追跡しなきゃ真実には決してたどり着けないのに、俺の心にジュナの事が重くのしかかりすぎて、最後まで希望や願望を捨てきれずにいる…

『冷静さを無くして感情に流されて事実を追えないなんてよ、探偵失格だな俺…』
 情けなくて力なくテーブルに両手をつく。泣いたり怒ったりするよりも笑えて来た。
 今まで誰が死のうがどれだけ傷つこうが冷静に真実を推理して依頼をこなしてきた俺じゃなかったのかよ…!


『大丈夫、落ち着いて考えたらきっと解けるはずだよ』
 胸元に回された鰭、脳内に響き渡る優しい声と後ろから抱きしめられる感覚で荒れ模様の脳内が少しだけ落ち着く。
『…解けるのか?』
『あのジュナイパーなら推理力を信じてメッセージを残してそうだよ、きっと真実に到達するための大ヒントを。それに…』
『それに…?』
『ガオくんなら全ての謎を解き明かしてお兄ちゃんを殺した奴をやっつけてくれるって、私信じてるから…』
 背中を抱きしめる力が強くなった。
 家族を殺されて死に顔すら見られなかったアシレーヌにとっては、俺だけが真実に到達するための唯一の希望なんだ。俺がこんなところでくすぶっててどうするんだよ?

『わざわざ脳ミソの中まで励ましに来てくれてありがとな、確かに落ち着かなきゃ見えるモンも見落とすよな…』
 背中から密着する温もりを正面に持って来てさりげなく、力強く抱きしめる。
『心の中で言おうかどうか悩んでた状態だったのに、どうして伝わっちゃったんだろ?』
『多分“センチメンタルな気分になるようなピ○ゴラ装置”一緒に見た時に同じこと感じたから、JOINTの能力で思考が繋がったんだろうな…』
『あっ…』
『これは見ない様にすること自体はできるし、通信機なしで会話できるから結構便利なんだぜ?』
『確かに鰭だとスマホ上手く触れないから、悪くないかも…』
『とにかくちょっとは冷静さを取り戻せた、依頼を達成するべく“ガオくん”が事件を解決してみせるさ!』
『やめてソレ!恥ずかしかったから聞かなかった事にして!』
『そんな寂しい事言うなよ?雄ってのはそういう一言でフルパワー出せるんだぜ?』
『そう言われても… そういえば私どうでもいいこと気づいたんだ!』
『事件の推理が最優先であることを自覚しているガオくんはからかいたい気持ちをグッとこらえて進んで話を聞こう、言ってみてくれ』
『…ダイケンキとロコンって一部の文字引っ張ったら“ダイコン”になるなって!』

『…ごめん、俺が悪かった、ちょっとからかいすぎた』
 苦し紛れの冗談で一匹寂しく笑うアシレーヌを見ると流石に心が痛む。
 ダイケンキとロコンを組み合わせてダイコンだなんて…
 …ダイコン?

 ふと気になって包み紙の絵を再確認する。
『そういえばあの中には薄切りの大根が入ってたし、包み紙のバーガーの絵も9層でHAMBURGERも9文字…』
『どうかしたの?』
 そしてダイケンキは頭から首にかけてがなくなっていて、ロコンは逆に頭以外がなくなっていた。
 急いでゼラオラに電話をかける。
「どこ行ってたんだ⁉あのヒメグマの能力は解除されたからいいけどさっきまで本当に大変だったんだから…」
「ゼラオラ、一連の事件で殺されたポケモン達の失われたパーツを教えてくれ」
「その声は真実に向かってる最中だな、了解だ。何か分かったら教えろよ!」
 電話が切れて、メモの写真が送られてくる。



・ダイケンキ…頭から首にかけて
・ロコン…首から下
・オオタチ…首及び胴体の上辺
・ニョロゾ…腹部
・ペルシアン…胴体
・パラセクト…キノコの傘の外周部分
・ネイティオ…首及び胸元
・ヤドラン…頭部
・コリンク…頭部
・カラマネロ…胴体下部分
・ブニャット…首及び胴体の上辺
・フライゴン…頭部
・ルカリオ…頭部



 そして、大根の断面を見ると刃物で切ったというよりおろし金に触れたようにざらついている。
『鮫肌…?』
 直近で鮫肌に心当たりのあるポケモンはヤツしかいない。
『頭部を襲われた俺はコリンクとカラマネロの間で…』
『でも生きてるよね?』
『生きてるけど言動が引っかかってな、一応俺もカウントに入れておく』



・ダイケンキ…頭から首にかけて
・ロコン…首から下
・オオタチ…首及び胴体の上辺
・ニョロゾ…腹部
・ペルシアン…胴体
・パラセクト…キノコの傘の外周部分
・ネイティオ…首及び胸元
・ヤドラン…頭部
・コリンク…頭部
・ガオガエン…頭部
・カラマネロ…胴体下部分
・ブニャット…首及び胴体の上辺
・フライゴン…頭部
・ルカリオ…頭部



『これで完成かな?』
『そうだな…』
 アシレーヌの発言、ジュナの矢文、ゼラオラのくれたデータ…
 俺はついに一つの真実を見つけ出した。


「そうか分かったぜ!ジュナが本当に俺に伝えたかった事が!」
 俺自身でもわかるぐらい不敵な笑みを浮かべている。
 ジュナ、やっぱりお前はいい相棒だったよ。

 だからこそ、あとは俺に任せろ…!



 to be continued…
ガオガエンは謎を解き明かして“ジュナイパーが気付き、ガオガエンに伝えたかった真実”に到達しました。
この謎を解くために必要な情報は全て揃っています。
このままFILE12以降を読み進めても問題はありませんが、これを読んでいる皆さんも是非謎を解き明かし真実に到達してみてください。

It’s a piece of cake…

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