2.コピペ解説者

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 本日もポケモンリーグで、白熱したバトルが繰り広げられていた。
 現在行われているバトルは、両者とも残りのポケモンが後一匹だった。
『さあ両者とも、手持ちのポケモンは残り一匹で並んだ! この戦いはどうなる!?』
 ポケモンリーグの解説者が、大会を盛り上げるべく声を上げる。
 両者ともボールを投げた。ニドキングとゲンガーがスタジアムに現れた。


 審判が旗を上げ、バトルが開始される。最初に動いたのは、ニドキングの方だ。
『最初に動いたのはニドキングの方だ!』
 ニドキングは10万ボルトを繰り出す。眩い電撃の刃がゲンガーに襲いかかる。
『おっと! 眩い電撃の刃がゲンガーに襲いかかる!』
 ゲンガーはあっさり避けた。禍々しい漆黒の球体を空中に作り出した。
『今度はゲンガーが動いた! 禍々しい漆黒の球体を空中に作り出したぞ』
 ニドキングは鍛え上げられた強靭な腕でガードした。しかしダメージはあるようだった。
『ニドキングは鍛え上げられた強靭な腕でガードしたあああ! しかしダメージはある模様』
 お返しとばかりにニドキングは、冷凍ビームを放った。
『お返しとばかりにニドキングは、冷凍ビームを放った!』
 冷凍ビームは見事直撃し、ゲンガーの体半分がカチカチに凍ったが、ゲンガーはヘドロウェーブにより、体を纏う氷を粉々に砕いて脱出した。
『冷凍ビームは直撃だあああ! ゲンガーの体半分がカチコチに凍ったあああ! おっと!? 次のゲンガーの技はヘドロウェーブ! 体を纏う氷を粉々に砕いて脱出したあああ!』
 ニドキングもゲンガーも消耗していた。次の一撃で勝敗は決するだろう。
『ニドキングもゲンガーも消耗しています。次の一撃で勝敗は決するでしょう』
 ニドキングは岩雪崩、ゲンガーはシャドーボールを繰り出す。シャドーボールはニドキングの腹部に直撃。ニドキングはスタジアムの壁まで吹っ飛ばされる。そしてニドキングの岩雪崩もゲンガーに襲いかかる。無数の岩にゲンガーは押し潰されてしまった。
『おおっと!? シャドーボールはニドキングの腹部に直撃したあ! ニドキングはスタジアムの壁まで吹っ飛ばされた。ニドキングの岩雪崩もゲンガーに襲いかかる。無数の岩にゲンガーは押し潰されたあああ!』
 両者とも攻撃を食らった結果、戦闘不能になってしまった。つまりこの勝負は引き分けに終わったのだ。
 まさかの結末、そして、解説者の素晴らしい解説によって、スタジアムは大盛り上がりを見せた。


 仕事を終えた解説者は窓の外を見ながら、ゆっくりコーヒーを飲んでいた。
 部屋にリーグの偉い人が入ってきた。
「君の解説はいつ聞いても素晴らしい」
「いえいえ、そんなことはないですよ」
 偉い人は彼の解説を称賛していた。
「いやいや。バトルの解説は特に難しい。サッカーや野球とは訳が違う。複雑な戦闘状況を把握しつつ、同時に言葉も紡いでいくのはなんと大変なことだろう。よくもここまでスラスラ解説できるものだ。他の人なら、途中で必ず解説がぐちゃぐちゃになる」
「お褒め頂き大変光栄です」
「どうしたこんなことができるんだ?」
「……」
「おかげでいつもポケモンリーグは盛り上がる。この仕事は君にしかできないことだ。次回も頼む」


 解説者は、再び部屋に一人になった。
「『どうしたこんなことができるんだ?』か……」
ーーまさかこんなやり方を使っているなんて、誰も思うまいな」
 解説者はコーヒーを飲みながら、静かにほくそ笑んだのだった。

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