炎の宝石を入手せよ!

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 炎の石を手に入れたあなたは、イーブイと共に更に上へと登っていく。イーブイはあなたが持っている石がどうしても気になるようで、大人しく横を歩いている今もチラチラと視線を送っている。
 このままでは何かの拍子にイーブイが石を触ってしまう。そう感じたあなたはポケットからリュックに石を移動させようとして、うっかり石を落としてしまった!
「ぶいっ!」
 その瞬間を見逃すほど、イーブイは甘くない。コトリと音を立てて落ちたそれに向かって電光石火を繰り出し、嬉しそうに前足で橙色の石へと触れた。
と同時に、イーブイが眩い光に包まれ姿を変えていく!
「……すたぁ!」
 光が収まった時そこにいたのは、茶色くてモフモフとした毛並みを持ったイーブイではなく、オレンジ色の体にクリーム色の毛と尻尾を持つブースターだった。
 ブースターは進化したことに驚いていたようだったが、少しして早くも現状に慣れたのか、嬉しそうにフサフサの尾を振ってあなたの足首にすり寄る。イーブイの頃とは違い暖かいを超えて熱いくらいの感覚が伝わってくる。
 あなたはその感覚を嬉しいような勿体ないような、正確に表しようがない複雑な気分で味わった後、再び歩き始めた。

*****

 しばらく歩き続けたあなた達が見つけたのは、石が置いてあった場所よりも更に広い空間だった。先ほどが小部屋だとすれば、ここは大部屋と呼ぶべきだろう。
 大部屋には明らかに人の手が加えられた三つの扉と一つの階段があり、扉の横には何かが彫られた板が立てかけられている。ここからではよく見えないが、どれか一つを選んで進まなければいけないようだ。
 あなたがどれを選ぼうか悩んでいると、ブースターが突然一番左の扉に向かって走り出した!
「すたぁ!」
 そして扉の前にちょこんと座ると、あなたに向かってひと鳴きする。どうやらこの扉を選べ、と言っているらしい。仮に他を選んだとしても自分は絶対にここから動かない。目がそう語っているブースターに対して、あなたはその扉を選ぶ以外選択肢はないに等しい。
 小さく息を吐きながらあなたがブースターの待つ扉の前へと行くと、ブースターは前足で板をポンポンと叩く。行動から考えるに、早く読めと促しているようだ。
 彫られたとは思えないほど綺麗に整った字を読んでいくと、以下のようなことが書かれているのがわかった。

『階段の先へと進みたければ、宝石を入手せよ。扉の先にて宝石を守るは灼熱の塊。汝に宝石を取る覚悟があるのならば、扉を開けるといい』

 灼熱の塊、というワードで一気に不安に圧し潰されそうになるあなただったが、ブースターが勢いよく鳴いたことでその不安は霧消する。炎タイプであるブースターならば、灼熱は逆にエネルギーを化すかもしれない。
 あなたが覚悟を決めて扉を開くと、そこは今まで見た部屋の中では一番小さい部屋の中だった。とは言っても、広さは十分なほどある。その中央にはポツン、と橙色の塊が浮いている。この塊のせいか、部屋の中は暖かいを超えて熱い。
 これは一体どういう原理で浮いているのか、樹に影響はないのか。様々な疑問があなたの頭を過ったが、ダンジョンのようになっている樹の中でこのようなものは愚問に入るだろう。すぐに頭の外へと追いやることにして、橙色の塊へと近づく。
 すると、むわん……といるだけで汗が噴き出るような空気があなたを襲う。汗が止まらないこともあり、これ以上進むのは危険と感じて扉の方へと戻るあなたに対し、ブースターは勢いよく塊へと進んでいく。
 そして難なく塊の前へと着くと、器用に後ろ足で立ち上がって前足で中を探り始めた。見ているだけでも熱そうな光景に、あなたは汗とそれを拭う手が止まらない。
 少しして、堪らずリュックから水筒を取り出して飲み物をがぶ飲みをするあなたの元に、赤い宝石をくわえたブースターが戻ってきた。嬉しそうに尻尾を振るブースターを褒める間もなく、あなたは急いで部屋を出る。
「……すたぁ」
 頑張ったのに褒めてくれなかった、と言いたげな目で拗ねるブースターに、あなたは先ほどとは違う汗をかきながらクリーム色の毛を撫でる。ブースターがうっとりと目を閉じるまで撫で続けたあなたは、顔をもう一度ハンカチで拭うと階段の方へと進んでいった。

 通常ルート「扉を開く宝石」へと続く


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