イーブイを親から譲ってもらったトレーナーが未来を思い見る話。
ガラルで知り合ったシュロというトレーナーを通じて、ガラルの研究者を紹介してもらったユカリ。
検査の結果は、シュロのところのイーブイと同じ。縁はキョダイマックス個体のイーブイだった。
この特殊性は、解除することが可能だという話も教えてもらい、ユカリは縁に確認をとる。
そして、縁は解除しないことを選んだ。
朝からの検査で、普段とは違うことをし、いっぱい疲れた縁はこの日いつもより早く就寝した。
宿泊施設でユカリより先にベッドの上で寝息を立て始めた。ユカリは眠気が来なかったので、縁を1匹にしないようにオドリドリのマイに部屋に残ってもらい、オドシシのアントラ―を連れて宿泊施設の外へ出た。
まだ、夜の早い時間。人が出歩く街の中をユカリはアントラーと一緒に特に目的もなく進んで行く。そのままふらふらと進み街外れ、人気のないバトルコートにたどり着いた。
コートの脇にあるベンチに座ると、横にアントラーが立つ。
ユカリは座ったままアントラーに寄りかかった。アントラーはそんなユカリを見守っている。
そのまま暫くじっとしていると、ユカリがぽつぽつと呟きました。街の雑踏の中では聞き逃しそうな小さな声で
「縁、進化しないんだって。イーブイのままなんだって。選ぶのは縁なんだってわかってるけど、俺、進化選んでほしかったなぁ……」
ユカリが昔読んだ記事には、個体差があるということを念頭においても、イーブイは進化した方が長生きする場合が多いという情報があった。
マイはブリーダーから譲り受けた若いオドリドリで、オドシシのアントラーはユカリがタマゴから孵した。でも、縁は違う。
縁はユカリの父親が孵し、育て、ユカリに託されたイーブイ。ユカリの産まれる前、父が母と出会う前に産まれた。ユカリよりも年上のポケモン
「進化できない原因わかんなかったときに進化の話振っても、縁は進化すること嫌がってなかったけど、原因がわかって選択肢ができたら進化しないこと選んじゃった……」
アントラーはユカリの声が震えたことに気がついたが、動かずそのまま寄り添った。
縁もまだ若い。ユカリもその事はわかっている。それでも、いずれの未来を考えると、少しでも長くともにいられる可能性が上がるならあげておきたかった。
産まれたときから兄弟同然に育った相棒との別れは考えたくない。
「俺、縁に長生きしてほしいんだけど、ずっと一緒に居てほしいんだけど……」
ユカリの願い。ただ、縁に押し付けることはしない。
縁が選ぶことだからだ。そして、縁は選んだ。変わらないことを。ユカリはぐずぐず言いながらも気持ちを切り替える。
元々切り替えるために外へ出てきていた。声に出すことで整理できて、落ち着くことへの手助けにもなった。
ベンチから立ち上がるとアントラーが顔を摺り寄せてくる。ユカリは首に抱き着いた。
「この話は俺と、アントラーだけの秘密な。縁にもマイにも内緒だ。教えんなよぉ。」
鳴いてアントラーは返事を返した。ユカリは安心したように笑ってから歩き出す。まだ街は眠らない。ただ、ユカリが寝るには良い時間になっていた。
イーブイの寿命については非公式ですが、イーブイの寿命についてはとある方の同人誌を読んでオマージュ?リスペクト?なんといえば正解なのかわからないですが、なるほど、進化しない方が寿命が短い。
と私の中に残ったお話の中の一文を今回入れて書かさせてもらいました。