山なし、意味なし、オチなしスケッチ。
紅葉が燃えていた。
比喩表現ではない。蒼い炎に照らされて、エンジュ街道の塔まで続く樹々を色づかせていた紅葉の葉は確かにその生命をまっとうしようとしていた。
そう見えた。
くさタイプのポケモンとして、いい気はしない。
だがそれ以上に、ああ認めよう。私は年甲斐もなしに、その姿に陶然となっていたんだ。
シャンデラがそんな私の姿を認めると、「れんごく」の炎は弱められた。
「アラアラチェリムさん、盗み見は感心しませンねぇ! 」
先ほどの炎のや言葉の勢いに反して、そのまなざしは私に酷く無関心に感じられた。
我に返った私は、やっきになって抗議した。
詳細を語る必要はあるまい。というか、語りたくもない。やれ、貴重な自然になんてことするんだ、とか。人間の所有なのになんてことするんだ、とか、塔にまた燃え移ったらどうする、とか。
そうして火が消し止められたのち私は、大樹たちの姿がなにひとつ損なわれずそこにあることに気付く。
いや、それは正しくない。この道を写真で見たそれよりも、少しその紅は色褪せて見えた。
「私が食ったのは…オホン!! 食べたのはこの紅葉を見上げてきた人の余剰魂魄…この街への信仰ですよ。
魂は食料源でもありますが、定期的にこうしなければ、恨みが積もってしまいますからねえ。」
最後まで言い終わる前に、シャンデラを呼ぶ人間の男の声がする。
お互いトレーナー持ちらしい私達は、それぞれの持ち場に帰る。ほんの少し美しさを減じた赤絨毯を渡りながら、いつあいつに一矢報いるぞ、と根拠もなく思いながら。