91話 グレートな奴G

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 改装中のかーどひーろーの二階で行われている、蜂谷と店員の佐藤さんとの対戦が熱い。
 蜂谷のバトル場にはヤンヤンマ50/50、ベンチにはチラチーノ90/90とチラーミィ60/60、ヤンヤンマ50/50。そしてサイドは六枚。
 その一方で佐藤さんのバトル場には超エネルギーが二枚ついたムウマージ40/80、ベンチには特殊悪がついたドラピオン100/100とイーブイ50/50が三体、そしてクロバットグレート130/130。更にサイドは四枚と、蜂谷を大きく上回っている。
「俺のターン! ……グレートポケモンか」
 ベンチで泰然と構えるクロバット。その体からほんの僅かに小さな金色の粉末のようなモノが零れているのはグレートポケモン特有の演出だ。
 圧倒的な威圧感を放つそのクロバットだが、蜂谷は怯えるどころかむしろ笑っていた。
「グレートポケモンは佐藤さんだけの専売特許じゃないぜ! 手札からグッズカードのポケモン通信! 手札のポケモンを一枚デッキに戻し、自分のデッキからポケモンを一枚手札に加える。俺は手札のドーブルを戻してメガヤンマグレートを手札に加え、バトル場のヤンヤンマをメガヤンマグレートに進化だ!」
 グレート返しと言わんばかりに蜂谷もメガヤンマグレート110/110を繰り出すが……。こいつは強いぞ。
「そして手札のダブル無色エネルギーをベンチのチラチーノにつける。このエネルギーは、無色エネルギー二個分として働くエネルギーだ。さらにサポートカード、ジャッジマン!」
 このジャッジマンが後にメガヤンマに生きる。ジャッジマンの効果は、互いの手札を山札に戻したのちに四枚山札からカードを引くもの。こうして蜂谷と佐藤さんの手札は互いに四枚になった。
「メガヤンマグレートでバトル!」
「えっ!? メガヤンマにはエネルギーが一つもついてないのに」
 驚く佐藤さんに対し、蜂谷は待ってましたと言わんばかりににやける。これがメガヤンマグレートの真骨頂だ。
「メガヤンマのポケボディー、インサイトは自分と相手の手札の枚数が同じ時、このポケモンに必要なワザエネルギーがなくなる!」
「そんな!」
 メガヤンマの赤い複眼がキラリと光る。メガヤンマの口が開くと、そこに空気の塊が目に見えるように集まって行く。
「よし。メガヤンマでムウマージに攻撃する。直撃弾!」
 溜めに溜めていた空気の塊がムウマージ40/80に向けて放たれる。直撃弾は相手のポケモン1匹に40ダメージを与えることの出来る汎用性の高いワザだ。
 この一撃を受けたことでムウマージのHPは無くなり、糸の切れた凧のように崩れ落ちる。これでようやくサイド差が一枚に縮まった。
「サイドを一枚引くぜ」
「私はクロバットグレートをバトル場に出すわ。私のターン」
 グレートポケモンとグレートポケモンが互いに向かい合う。どういう戦術で来るか。
「クロバットに超エネルギーをつけて、そしてベンチのイーブイを進化させる。おいで、ブラッキーグレート!」
「何っ!?」
「に、二種類目のグレートポケモン!?」
 ベンチのイーブイのうち一匹が、光り輝きブラッキー100/100へと進化を遂げる。クロバットに続いてのグレートポケモンが出るだなんて俺も蜂谷も完全に予想外だ。一体どういう風に仕掛けてくる。
「さらにサポートカード、ウツギ博士の育てかたを使うよ。この効果で山札の進化ポケモンを一枚手札に加える。私が加えたのはエーフィグレート! そしてベンチのイーブイをエーフィグレートに進化させる!」
「ま、またグレートポケモン!?」
「多すぎだろチキショウ……」
 ブラッキーグレートの横に並ぶように、エーフィグレート100/100が現れる。二体とも他のグレートと同じように体から金色の粒子が零れている。
「そっちにばかり見とれてちゃダメよ? クロバットで攻撃。バッドポイズン!」
 高速でメガヤンマの上をとったクロバットが、そのままメガヤンマの背中を強く噛みつく。体を揺らしてメガヤンマが抵抗するものの、完全に張り付いたクロバットはまったく振り落とされない。そしてさらに数秒してからメガヤンマからクロバットは離れ、自分のバトル場に戻って行く。
「あれ、俺のメガヤンマのHPバーは減ってないぞ……」
「このバッドポイズンは相手にダメージを与えるワザじゃないの。これは相手を毒にするワザ」
 そう聞いてほっ、と落ち着く蜂谷。確かに毒ならポケモンチェックの度に10ダメージを受ける程度の特殊状態であって、不利なモノは不利とはいえ60ダメージを喰らったりするよりかは遥かにマシだ。
「なんだ。毒程度なら別に問題は」
「バッドポイズンによって毒になったポケモンは、ポケモンチェックのときに10ダメージではなく40ダメージを受ける!」
「よっ、40!?」
 分かりやすいようなリアクションで蜂谷の顔が一気に驚きのそれに変わる。そんな蜂谷を置いてけぼりに、苦しそうにするメガヤンマ70/110のHPは一気に40も削られてしまった。
 ポケモンチェックはそれぞれの番の終わりに来る。もし蜂谷の番が終われば残りHPは30/110、そして佐藤さんは攻撃をしなくてもメガヤンマは勝手に気絶。グレートと名のつくポケモンらしく、非常に豪快なワザだ。
「俺のターン! 残念だけど俺のメガヤンマは逃げるために必要なエネルギーは0。こいつを逃がしてベンチのチラチーノ(90/90)を新たにバトル場に出すぜ」
 特殊状態はベンチに戻ってしまえば回復してしまう。これでバッドポイズンで苦しむことはなくなった。逃げるエネルギーが0で幸いしたな。
「ベンチのチラーミィにダブル無色エネルギーをつけて、ヤンヤンマ(50/50)をベンチに出す。そしてアララギ博士を発動!」
 アララギ博士は手札を全てトラッシュしてから手札が七枚になるようにデッキからカードを引くサポートカード。ついでに蜂谷はかーどひーろーで売っていたこれを半額にしてもらえるように頼み込んだのが対戦の始まりだったんだが、少なくとも蜂谷は二枚もこのカードを持っている。本当に必要あるか?
 今の蜂谷の手札はレディアンとオーキド博士の新理論の二枚。その二枚とトラッシュしてデッキから七枚引く。しかし、あまり恵まれたドローとは言えない。
「うーん。ベンチのチラーミィをチラチーノ(90/90)に進化させる。そしてバトル! チラチーノでクロバットグレートに攻撃だ。友達の輪!」
 ベンチのヤンヤンマ二匹、メガヤンマ、チラチーノの体から淡い白い光が発せられ、その光が宙をふわふわ漂いながらバトル場のチラチーノの元に集まる。
「このワザは自分のベンチのポケモンの数かける20ダメージを相手に与えることが出来る。俺のベンチには今ポケモンが四匹! よって80ダメージだ!」
 チラチーノが集った白い光をクロバットめがけて打ち放ち、クロバット50/130に大ダメージを与えた。次の番にもう一度友達の輪を使えばクロバットグレートを倒せる。
「私の番ね。まずは手札のダブル無色エネルギーをベンチのブラッキーにつけるわ。そしてサポートカードのオーキド博士の新理論、行くよ。手札を全て山札に戻してシャッフルし、その後手札が六枚になるように山札からカードを引く。……ベンチにイーブイを出すわ」
 デッキに同名のカードは四枚までしか入れられない。今現れたイーブイ50/50で佐藤さんのイーブイは全て場に出たことになる。
「ベンチのイーブイを、ブラッキーに進化させる」
 今進化したブラッキー90/90はグレートポケモンじゃない。基本的にグレートポケモンの方が優秀だが、あえてグレートでないブラッキーを採用した意図は一体なんだ?
「さらにグッズカードのポケモンキャッチャー! 対象はヤンヤンマ!」
 突如佐藤さんの場から捕縛用の網が飛び出しヤンヤンマを捕まえた。そしてそのままバトル場に強制的に引きずり出される。
「ポケモンキャッチャーは相手のベンチポケモンを一匹選び、そのポケモンを強制的にバトル場に出させる! そしてそのままクロバットでヤンヤンマにバッドポイズン!」
 今度はヤンヤンマがバッドポイズンを受けてしまった。ヤンヤンマのHPはたったの50/50、ポケモンチェックで毒の判定を受けるだけで瀕死状態だ。
「バッドポイズンで毒になったポケモンはポケモンチェックの度に40ダメージを受ける。さあ、受けてもらうよ」
 ヤンヤンマのHPバーが10/50と大きく削られてしまった。しかし、進化及びベンチに逃がせばバッドポイズンであろうとなんだろうと特殊状態は回復する。
「俺のターン!」
 今の蜂谷の手札は七枚ある。が、その中にサポートカードも無ければメガヤンマのカードもない。毒状態を逸するには逃げるしかない。しかし、逃げるために必要なエネルギーカードさえも手札にない。ヤンヤンマがベンチに逃げるためには逃げるエネルギーが一つ必要だ。このまま蜂谷の番が終わってポケモンチェックに入ればヤンヤンマは毒で気絶してしまう。
「ヤンヤンマのポケボディー、フリーフライトは、このヤンヤンマにエネルギーがついていないならこのポケモンの逃げるエネルギーは0となる。だからヤンヤンマを逃がしてベンチのチラチーノを出すぜ」
 なるほど、ポケボディーか。確かにその効果でバッドポイズンから楽々逃れることに成功した、良い調子だ。
「グッズカードのクラッシュハンマーを発動するぜ。コイントスをしてオモテなら、相手のポケモンのエネルギーを一枚トラッシュする。……またウラかよ。だったら力づくで行くぜ、チラチーノでバトル! 友達の輪!」
 今の蜂谷の場は先ほどと変わらずベンチポケモンが四匹。20×4=80ダメージがクロバットグレートを襲う。この攻撃でHPの尽きたクロバットは、ふらふらと勢いを失くして倒れる。
「よし、グレートポケモンまずは一匹目撃破だ。サイドを一枚引くぜ」
「私はブラッキーグレート(100/100)をバトル場に出すわ。私のターン。まずはグッズカードのポケモン通信、発動するよ。手札のゴルバットを山札に戻してエーフィを加える。そして残り一匹のイーブイをエーフィに進化させるわ」
 先のブラッキーと同じく今現れたエーフィ90/90もただの普通のエーフィ。ただの普通のっていうのもなんか変な気もするが、これで今の佐藤さんの場にはバトル場にブラッキーグレート100/100、ベンチにエーフィグレート100/100、エーフィ90/90、ブラッキー90/90、そしてドラピオン100/100。イーブイの進化系が四匹……。はっ、これは!
「サポートカード、チェレンを使うわ。その効果で山札から三枚カードを引く。続いてグッズのエネルギー交換装置! 手札の超エネルギーを戻して山札から特殊悪エネルギーを手札に加える。そして今手札に加えた特殊悪エネルギーをブラッキーグレートにつけて攻撃。エボルブラスト!」
 ブラッキーが身をやや屈めると、その額にある黄色の縞模様から虹色に輝く力強い光線が放たれてチラチーノに直撃する。グレートポケモンだけあってか、すさまじいエフェクトで床のビニールシートもものすごい勢いでバサバサと騒ぎ立て、はがれて飛び散るものもあった。
「ぐおおおおっ!」
「ぐうううっ!」
 近くで見ている俺も思わずそのパワーに堪えようと脚に力を入れてしまった。
「このエボルブラストは、基本値50に加えて自分の場にいるイーブイから進化するポケモンの数かける10ダメージを加算する。ベンチにはエーフィ、ブラッキー、そしてエーフィグレート。さらにバトル場にいるブラッキーグレート自身も含めて40ダメージが加算! さらに特殊悪エネルギーが悪ポケモンについている場合、このポケモンが相手のバトルポケモンに与えるダメージを10加算する。よって100ダメージ!」
「だからあんなにイーブイの進化系を並べて……!」
 チラチーノのHPは90、それを削りきる強烈な一撃! 佐藤さんはサイドを一枚引いて、蜂谷はベンチにいた二匹目のチラチーノをバトル場に繰り出す。
「今の君のベンチのポケモンは三匹、友達の輪で攻撃してもたった60ダメージ。それじゃあこのブラッキーは倒しきれないよ。さらにこのブラッキーにはポケパワー、月隠れというものがあるの。このポケモンがバトル場にいるとき自分の番に一度使えるポケパワーで、コイントスをしてオモテならこのポケモンとついている全てのカードを手札に戻せる。ヤワな攻撃をされても、このカードを戻してしまえば問題ないってことよ」
 月隠れが決まる確率はあくまで二分の一。しかし確率はたかが確立、成功するときは成功してしまう。
 佐藤さんのサイドは残り三枚、蜂谷のサイドは残り四枚。ここでブラッキーグレート100/100を倒しきれないとこの後の苦戦は必至!
 さあどうする蜂谷!



蜂谷「今回のキーカードは俺の使ったチラチーノ!
   ベンチを肥やすだけでなんと100ダメージも与えれるぜ!
   無色タイプだからどのデッキにも入れやすい!」

チラチーノ HP90 無 (BW1)
無 スイープビンタ  20×
 コインを2回投げ、オモテの数×20ダメージ。
無無 ともだちのわ  20×
 自分のベンチポケモンの数×20ダメージ。
弱点 闘×2 抵抗力 - にげる 1

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