第31話 新しい仲間と

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

「まずは自然公園あたりにでも行ってみようかしら。ギャラちゃん、自然公園まで空を飛ぶ!」

 クリスと別れた後、アヤノは気合を入れるためか髪を一つに結びポニーテールにする。
 ギャラちゃんとは、見た目は大きな青色の鯉で目付きが鋭いポケモンだ。このギャラドスはまだ進化する前のコイキングの時に捕獲されたポケモンで、アヤノとはずっと一緒にいる幼馴染のような存在だ。

「シャー!」
「ふふ、久しぶりに知らない土地を飛ぶものね。寄り道はこの子を捕獲してからね」

 ワカバタウンでこんなに大きなポケモンはいないのか、突然現れた巨大に悲鳴をあげたり、物珍しげに写真を撮ったりと少しだけ有名人になったような気分でアヤノは恥ずかしかったのか、すぐにギャラドスの頭に飛び乗り、空高くへ飛んで行った。

◆◆◆

「ねー、ゴールド。まだー?」
「待てって、絶対こっちにいたんだよ!」
「もう……。ストライクならまた出てくるよー」

 その頃二人は未だ自然公園にいた。どうやらゴールドが珍しいポケモン、ストライクを目の端に見つけたようで草むらをかき分けて探していた。
 マイはというと、草むらから離れ整備されているコンクリートの上で新しい仲間ロコンを腕に抱えて待っている様子だが、この天気にやられたのか暑そうにゴールドに視線を送っていた。

「クソー。カッコいいからなぁ、欲しいんだよ。チェッ見つからねえ」
「あ。曇ってきた……え?」
「なんだどうし……た?」

 エイパムを出しての捜索を虚しく諦めようとした時、頭上に大きな影が降りかかる。
 ようやく日差しから逃れられると思い顔をあげれば、それは白い雲ではなく、真っ青な雲が。これは雲、なのか?

「ギャラちゃん、ここでいいわ」
「わわ、ゴールド」

 マイはテレビではギャラドスを見たことはあるが、生でははじめてだったらしく怯えるように草むらの中にいるゴールドめがけて走って行くと背中に隠れるようにくっつく。

「うーん。クリスさまが言ってたマイさんとゴールドさんはこの辺りにいそうなんだけど」
「く、クリスだと!?」

 アヤノが独り言のように呟いた言葉はゴールドにしっかり届いて来た。このままだと連れ戻されるに違いないと頭の回転をフルに活用して、マイに帽子を深く被せ、ジャケットを肩から掛ける。

「え、ゴールド?」
「あいつ、クリスの刺客だ。マイこのまま俺の背中から離れるなよ」
「刺客って……」

 突然の行為に目を白黒させるマイに早口で説明する。大げさだなぁと思いながらも悪くはないポジションに満足気な顔でぎゅっと背中に張り付いた。

「あ、すいません!」
「おっおう。どうした?」

 アヤノがゴールドに気付き近寄ってくる。アヤノの持っている写真には昔のゴールドとマイだったので、帽子を被っていないゴールドを探している本人とは分からなかったようで話を続ける。

「私はアヤノと言います、アヤと呼んでください。本題ですが、この二人をご存知ないですか。探しているんです」
「しっしら、知らないなあ。なあ、マ――弟ォ?」
「……、ん」

 写真を見せてきて調査を開始。草むらの陰でマイをうまい具合に隠し弟として紹介する。

「あら、弟さん。声がでないのかしら?」
「あー、そうなんだよ。こいつ人見知りでよぉ。は、ははは」
「そう。二人共、目の色がステキですね。お邪魔しましたね、失礼します。では、私はこれで。あ、すいませんー!」

 マイを怪しく思いながらも挨拶を返し、他に自然公園に遊びに来ていた家族に声を掛けて去って行くアヤノ。

「アヤ、か。手強そうな奴だぜ」
「もー、早く行かないからだよ! ゴールド、もう先に行こう!」
「仕方ねえ、ストライクは諦めっとするか」

 しぶしぶ自然公園から出るゴールド。マイはなんだか悪いことしちゃったかな、と反省。
 しかしゴールドは気が変わるのが早く既に、動く木のことでワクワクしているようだ。

◆◆◆

 しばらく迷路のような森を歩いて抜けると、イカニモな木が細い道を邪魔するように立っていた。
 ゴールドは、岩みたいな木だ、と言いながらペタペタと木に触っている。
 マイはというとビクついて触ろうとしない。ゴールドに、花屋のお姉さんからもらったゼニガメジョウロを渡し見守る。

「よし、かかってこい!」
「—―!?」
「わ! 木が動いた!」

 これは何のポケモンだろうとマイは図鑑を開いて調べる。名前はウソッキー、なんとなく察しの出来る名前だ。見た目から言って炎タイプに弱いかと思えばタイプはなんと。

「えええっ岩タイプ?! ゴールド、その子岩タイプだよ! バクたろうじゃあんまり効果がない!」
「おー、サンキュな。でも大丈夫だ、しっかり作戦を立てておいた!」
「作戦?」

 ゴールドの作戦とは一体。そして、ウソッキーは無事に捕獲することが出来るのか?!

「こいつだ! 出てこい、ニョたろう」
「あ、ニョたろう! え、いつの間に?!」

 なんと出てきたのは、ゴールドの実家に置いてきたはずのニョロモことニョたろう。お腹の渦巻きが特徴的だ。
 どうやらマイが大レースをしている時にポケモンセンターからお母さんに通信システムで送ってもらったらしい。

「ニョたろう、水鉄砲、続けて泡!」
「わ、すごい。やっぱり一緒に長くいるとあんなに複雑なこともできるんだ!」

 ゴールドの細かい指示がなくても、水鉄砲でウソッキーを狭い通路に追い詰め、泡で囲む。マイだったら説明を一からしなくては済まないだろうにゴールドはあっという間にやってみせた。

「うお! なんだこりゃ! けたぐりだな、やるな……!」

 ビヨヨーンという効果音がぴったり。足を自在に伸ばして泡を弾く。しかし、これまでのダメージを計算するとかなり体力を消費しているはず。

 いつものモンスターボールではなく青色のスーパーボールを投げる。

「よっしゃ! ウソッキーゲット!」

 にかっと笑ってスーパーボールをマイに突きつけるように見せる。
 まるでポケモンショーのような流れにマイはぱちぱちと小さな手で拍手するのであった。

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