≪約10年ほど前…ジョウトのアサギシティにてアサギの灯台≫
灯台の下から、ワンピースにボレロを羽織り、胸をリボンで止めた女の子が飛び出した。
アサギシティの鋼タイプジムリーダーである、ミカンだ。
「アカリちゃん!あのヒビキ君がね…新しいチャンピオンになったんだって!」
「・・・」
嬉々として話しかけるミカンに対し、デンリュウは反応しない。
「今はセキエイリーグに行ってるみたい。エリカが戦ったんだって!」
「・・・」
「あ、あとセンリさんがホウエンに引っ越すんだって!お別れパーティーの準備しないとね♪」
「・・・」
そこで、ミカンはデンリュウの様子がおかしいことに気づいた。
「ねぇ…アカリちゃん聞いてる?」
「・・・」
「何を覗いてるの?」
そういってミカンは灯台からアサギシティを見下ろした。船乗り場や、看板が見える。
アクア号は出港していて、今は見えない。
『遠く 離れた 異国に 最も 近い 港町 潮風 香る 港町』
ミカンはちらりとアサギの海を見まわした。デンリュウの視線をたどる。
そこで、変なものが浮いているのが見えた。ぼんやりとしていてよく見えない。
「あれは…いったい何かしら?」
「ぱるぱるぅ…」
デンリュウが落ち込んだようにうなだれたとき、ミカンにはそれが見えた。
その時、ひどい悪寒をミカンは感じた。
「あ…あれは…」
「ぱるぅ?」
「アカリちゃん、ちょっと待っててね」
「ぱるぱる!」
そういうとミカンは灯台を降り、アサギの港に大急ぎて駆け寄った。
そこには目測で見ても縦横1mはある木箱があった。
木箱の蓋を力任せに取ると、案外それは簡単に外れた。
中には何か袋に包まれたものが入っていた。
「何…かしら…?」
手を触れたその時、何か温かいものを感じた。そしてそれは突然姿を現した。
「人間の…赤ちゃん…!?」
そこには寝息を立てながら、すやすやと眠る男の子の赤ちゃんがうずくまっていた。
10年後…その赤ちゃんは…伝説となる…。