46話 凍結!

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「俺はハマナのリサーチの効果によりデッキからヒトカゲとヒノアラシを手札に加える。そしてその二匹をベンチに出す。あらかじめバトル場にいるヒノアラシに炎エネルギーをつけ、ヒノアラシをマグマラシに進化させる!」
 バトルベルトの機能によってヒトカゲとヒノアラシが現れ、ヒノアラシはマグマラシへ進化した。
 冬の公園で行われている俺と姉さんの突発対戦。元は風見がうちに寄こしたバトルベルトが原因だ。
 現在互いにサイドは三枚。俺のバトル場には今進化させたばかりで炎エネルギーを二つ付けたマグマラシ80/80、ベンチにはヒトカゲ60/60。
 対する姉さんのバトル場は水エネルギー一枚ついているデリバード60/70、ベンチにユキワラシ50/50とタマザラシ50/50の計三匹。
 さて、こういうバトルベルトのような光学機器は俺からすれば風見との対戦や風見杯、こないだの拓哉と松野さんの戦いのせいで至って普通に思えるのだが、世間一般的にはこうして空想上の生き物が生きているように見える、そんな素晴らしくかつ、かつて見た事のない珍しい技術だ。
 そのせいか辺りの野次馬、もっとも小学生だが、そいつらが俺たちが何かアクションを起こす度にワーだのキャーだの黄色い声を上げるので耳が痛い。
「うーん、なんか調子狂うなぁ」
「さっさとしなさいよ」
「はいはい。マグマラシで攻撃。火花! コイントスをしてオモテなら技は成功、ウラなら失敗する。……ウラ」
「あっはっは、運に見放されてるわね」
「うるさいなぁ」
 自分の番でダメージを与える唯一のチャンスを失ってしまった。これは痛い。後に響かなければいいんだけど。
「あたしのターン! ユキワラシに水エネルギーをつけ、タマザラシをトドグラーに進化させる。更にユキワラシもユキメノコに進化させるわよ」
 トドグラー80/80、ユキメノコ80/80とポケモンが二匹とも進化すると同時に、子供たちの歓声も上がる。ちょっとまずいぞ。
「そして進化した瞬間にユキメノコのポケパワー、雪の手土産を発動! ユキメノコに手札から進化させた時、自分の山札から好きなカードを一枚手札に加える」
「ま、また?」
 姉さんはうふふと小さく笑いながら、何かしらデッキからカードをサーチして手札に加える。何かが続けて来る……!
「そして手札からサポーターカードのギンガ団のマーズを発動。このカードの効果によってあたしは山札からカードを二枚引き、その後相手の手札をウラのまま一枚選んでデッキの下に置いてもらうわ。それじゃあ翔から見て一番左のカードを」
「うっそー!」
 次の番、進化させようと思っていたバクフーンが山札の底、デッキボトムへ行ってしまった。だめだ、姉さんは欲しいカードをどんどん引いてるのに俺はどんどん調子が下がっていく。何とかしなければ。
「デリバードのワザ、プレゼントを発動。……ウラね」
「まだまだ! 俺の番だ。ベンチのヒノアラシもマグマラシ(80/80)に進化させ、手札のゴージャスボールを発動する」
 カードの発動宣言と同時に、バトル場のマグマラシの横にゴージャスボールが現れた。
「その効果で好きなポケモンを山札から一枚加えることが出来る。俺はリザードンを手札に加える」
 そう宣言するとゴージャスボールが開き、リザードンのカードの拡大コピーが数秒姿を見せる。
「そして手札の不思議なアメを発動。ベンチのヒトカゲを手札からリザードンに進化させる!」
 ヒトカゲは突如現れた小さな飴を飲み込むと、ヒトカゲを大きな光の柱が覆い、徐々にリザードンへとフォルムを変えていく。シルエットがリザードンになると、リザードン140/140は光の柱をかき消して大きく吠える。
「手札からハンサムの捜査を発動。まずその効果によって相手の手札を見ることが出来る」
 姉さんが俺の方に手札を見せると同時に、デリバードの前に姉さんの四枚の手札が先ほどのゴージャスボールと同じように拡大して現れる。
 水エネルギーにワープポイント、トドゼルガとハマナのリサーチ。ワープポイントが気になるってところか。
「俺はハンサムの捜査の効果によって手札をデッキに戻してシャッフルした後、カードを五枚ドローする。しかし今の俺の手札は0なので、手札をデッキに戻す行為は省略だ」
 これで手札が五枚まで潤う。キーカードも来た、行ける。
「手札の炎エネルギーをベンチのリザードンにつけてマグマラシで攻撃。火花!」
 コイントスボタンをもう一度押す。子供らも見守る中で表示される結果はウラ。子供らの笑い声が聞こえてちょっとムッとなる。
「くっそー、二回連続失敗かよ」
「調子悪いみたいね。それじゃああたしの番よ。まずはトレーナーカード、ワープポイントを発動」
 バトル場のマグマラシとデリバードの足元に青い渦が現れ、二体ともそれに引き込まれていく。
「ワープポイントによって互いのバトルポケモンを自分のベンチポケモンと入れ替える。あたしはユキメノコを場に出すわ」
「ならば俺はリザードンを出す」
 さっきと同様にユキメノコとリザードンの足元にも青い渦が現れて二匹を引き込み、バトル場に残っていた青い渦からその二匹が現れる。同じようにベンチにデリバードとマグマラシが帰っていく。
「よし、それじゃあ手札の水エネルギーをトドグラーにつけて、トドゼルガに進化させるわ。そしてこの瞬間にトドゼルガのポケパワー発動」
「この瞬間で!?」
「トドゼルガのポケパワー、凍結はさっきよりも強力よ。このカードを手札から進化させたときに一度使えるポケパワーで、コインを二回投げて全てオモテなら相手のバトルポケモンとそのポケモンについているカードをトラッシュさせる!」
「な、なんだって!」
「さ。コイントスよ」
 ……オモテ、オモテ。姉さんはまるで俺から運を吸収しているかのようにコイントスを見事に成功させた。
「効果発動、凍結!」
 トドゼルガ130/130が足元から放つ冷気がリザードンを包み込み、リザードンは文字通り氷漬けとなった。
「このポケパワーで唯一残念なのはこの効果でトラッシュさせても、気絶扱いじゃないことね」
 気絶扱いじゃない。ということは姉さんはサイドを引けない。でも折角手塩にかけてここまで育てたポケモンがほんの一瞬で無に帰すのはあまりにもダメージが大きい。
「くっ……。俺はエネルギーが付いていない方のマグマラシをバトル場に出す」
 このままだとまだ何かされそうだ。大事をとって、エネルギーをつけていない育ってない方を壁としてバトル場に送りだす。
「あたしはハマナのリサーチを発動。水エネルギーとタマザラシを手札に加えて、タマザラシ(50/50)をベンチに出すわ」
 姉さんの手札は前の番、ハンサムの捜査で確認した限り水エネルギー一枚だけのはず。これ以上の追撃はないとだけ信じたいが。
「ユキメノコで攻撃よ。霜柱!」
 マグマラシの足元から人の背ほどあるような霜柱が何十本も伸びてきてマグマラシを襲う。こんな大きさの霜柱は果たして「霜柱」と分類していいのかっ。
 しかし大きいのは霜柱だけでなく、被ダメージ量も半端ない。マグマラシのHPゲージがほとんどなくなり、色も緑から黄、赤色と変わっていく。
 ユキメノコの霜柱の威力は50に加え、マグマラシの弱点が水+20なので合計50+20=70ダメージとなり、残りHPはたったの10/80。でも、首の皮一枚繋がっただけまだマシとするべきか。
「ぐう。俺の番だ、ドロー」
 引いたカードはバクフーン。巡り巡りでようやく手札に戻ってきた。しかし少し遅かったか。いいや、なんとかしてみせる。
「ベンチのマグマラシを進化させる。さあ来い、バクフーン!」
 ベンチのマグマラシが四足歩行から後ろ脚二本でしっかりと立ち上がり、バクフーン110/110へと進化。そして辺りに響くよう、大きく咆哮する。子どもたちも様々に反応してみせた。
「ポケパワー焚きつけるを発動。トラッシュの炎エネルギーを自分のベンチポケモンにつける。俺はバクフーンにトラッシュの炎エネルギーをつける」
 さて、手札がリザード、リザードン、不思議なアメ、ポケドロアー+、ワープゾーン。山札からカードを一枚引く効果をもつトレーナー、ポケドロアー+に賭けてもいいが、これまでの戦況的に運に持ち込むのは危ないような気がする。だったら。
「俺もワープポイントを発動。マグマラシとバクフーンを入れ替える」
「あたしはトドゼルガと交代よ」
 再び青い渦がポケモン達を入れ替える。思えばこれはかなりおいしい選択だ。トドゼルガは逃げようにも逃げるエネルギーが多い。交代させられないままサンドバッグするのは良い判断だ。しかもトドゼルガには十分なエネルギーがついていない。攻めるなら今しか!
「バクフーンで攻撃。気化熱!」
 バクフーンが口から溢れんばかりの炎をトドゼルガにぶつけると、大きな音を立てて蒸発していき、白い水蒸気に覆われてトドゼルガが一瞬隠れてしまう。トドゼルガのHPバーが半分近くの70/130まで削られ、トドゼルガの体から水エネルギーのマークが出てくると、水エネルギーのマークが真っ二つに割れる。
「気化熱は攻撃を与えた相手の水エネルギーをトラッシュさせる!」
「へぇ。これじゃあトドゼルガはどうあがいても、ワザを使う事も逃げることもできないってことね。それくらいしてくれなきゃ」
 当たり前だ、それくらいしなきゃ負けてしまう。まだ可能性はいくらでも残っている。不利を蹴飛ばし勝利をもぎ取ってみせる!



雫「今回のキーカードはトドゼルガ。
  コイントスで二回連続表は大変だけど、効果は絶大!
  ワザのアイスバインドは任意トラッシュかマヒの付属つき!」

トドゼルガLv.51 HP130 水 (DP2)
ポケパワー とうけつ
 自分の番に、このカードを手札から出してポケモンを進化させたとき、1回使える。コインを2回投げ、すべてオモテなら、相手のバトルポケモン1匹と、そのポケモンについているすべてのカードをトラッシュ(この効果はきぜつでなはい)。
水水無  アイスバインド 70
 相手プレイヤーが手札を1枚トラッシュしないかぎり、相手をマヒにする。
弱点 鋼+30 抵抗力 ─ にげる 3

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