29話 至上命令!

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「よろしくお願いします」
 対戦開始のブザーが鳴り、準々決勝第三試合の火蓋が切って落とされる。
 今回の俺、風見雄大の対戦相手は田嶋玲子。俺よりも年齢が二つ程高いようだ。余談だが、この準々決勝には中学生以下は一人も残っていない。カードゲームにおいては子どもと大人では、財力とプレイングが物を言うところがある。年齢の低いものから抜けていくとなるのは、大会をする前から予想出来ていた事だった。
「私のターンから始めます」
 先攻は相手からだ。相手のバトル場にはラプラス80/80。俺のバトル場にはフカマル60/60。互いにベンチにはまだポケモンがいない。
「私はシェイミ(70/70)をベンチに出し、ラプラスに水エネルギーをつけてラプラスのワザを使います。運び込む! その効果で山札から『ポケモンのどうぐ』、『サポーター』、『基本エネルギー』を手札に加えるわ。草エネルギーとミズキの検索、しあわせタマゴを手札に加えてターンエンド!」
 まずは堅実に土台を固めてきたか。ラプラスとシェイミ。水と草タイプと考えるのが妥当なところだろうか。
「今度は俺の番だ」
 新たにカードを引くが、手札の大抵が進化系のカードばかりで動くに動けない。だったら。
「フカマルにコールエネルギーをつける。そしてこの瞬間に特殊エネルギー、コールエネルギーの効果が発動! 自分の山札からたねポケモンを二匹までベンチに出す。その効果でタツベイを二匹を山札からベンチに出させてもらう」
 ベンチエリアに隣同士でタツベイ50/50が並ぶ。このデッキは高火力だが、速攻出来る代物ではない。コールエネルギーはそれをなんとか助けようとする俺なりの工夫だ。
「コールエネルギーの効果を発動した場合、強制的に自分の番は終わる」
「それなら私のターン、ポッチャマ(60/60)をベンチに出し、手札のサポーターカードを発動。ミズキの検索」
 前の番にラプラスで加えたカードか……。ミズキの検索は自分の手札を一枚戻す代わりに山札から好きなポケモンを手札に加えれるカード。果たして何を引いてくるか。
「手札を一枚戻して、私はエンペルトを手札に加えるわ。そして不思議なアメ発動! ポッチャマをエンペルトに進化させるわ」
 光の柱がポッチャマを包むとポッチャマはシルエット状態のまま姿を変えていく。ぐんぐん背が伸び体が鋭くなって、エンペルト130/130のフォルムを形成すると、光の柱はスッと消えていった。
 さて、エースクラスカードが早速のお出ましか。どう仕掛けてくる。
「エンペルトに水エネルギーをつけて、この番もラプラスのワザ運び込むを使うわ! 再び草エネルギーとしあわせタマゴ、ミズキの検索を手札に加えて私の番はおしまいよ」
 また同じカードをサーチ。幸いにもまだ時間をかけてくれるらしい。ならばそのうちにこちらも一気に攻め立てれるよう準備をしよう。
「俺のターンだ。俺は、ベンチのタツベイを二匹ともコモルー(80/80)に進化させる。そしてフカマルに炎エネルギーをつけてこちらも不思議なアメだ!」
 ポッチャマと同じエフェクトがフカマルにも起きる。先ほどの小さなフカマルから大きなガブリアス130/130に変わる瞬間は圧巻である。
「そして手札のサポーター、デンジの哲学を発動。手札が六枚になるまで山札からカードを引く。今の俺の手札は一枚。よって五枚引かせてもらおう」
 引いたカードはボーマンダ、ガバイト、炎エネルギー二枚、水エネルギー一枚。あまり良い言いにくいが、文句を言ったところで何か変わるモノでもない。
「ガブリアスで攻撃。ガードクロー! このワザは相手に40ダメージを与えるとともに、次のターンにこのガブリアスが受けるダメージを20軽減する」
 ガブリアスの翼がラプラスの首めがけて襲いかかり、攻撃の動作を終えたガブリアスは両腕で顔を隠し防御態勢に移る。これでラプラスの残りHPは40/80。次のターン、もう一度ガードクローで攻撃すれば気絶させれるだろう。
「私のターン。もう一度ミズキの検索を発動よ。手札を一枚戻し、ポケモンを一枚手札に加える。続いてトレーナーカードのゴージャスボールも発動するわ」
 ゴージャスボールはノーリスクで山札から好きなポケモンを一枚手札に加える優秀なカード。ミズキの検索も同じサーチカードなのでこのターンで手札に任意のポケモンが二匹加わることになる。
「エンペルトに水エネルギーをつけ、ベンチにチコリータ(50/50)を出すわ。ラプラスの水エネルギーをトラッシュして逃がし、エンペルトを新たにバトル場に」
 予想はしていたが、やはり守りに入られた。ベンチを攻撃する術が無いのでラプラスに追撃することが出来ない。
「そして更にエンペルトをレベルアップさせるわ! カモン、エンペルトLV.X!」
 ポケモンのレベルアップは通常はバトル場でしか行えない。だがその代わりより強力なステータスを得られる。今現れたエンペルトLV.X140/140も、恐らく。
「ここでエンペルトLV.Xのポケパワーを発動。至上命令!」
 ポケパワー宣言とともにエンペルトが右の翼を俺に向け、青いレーザー光線のようなものを二本俺の手札に突き刺す。
「むっ」
「至上命令は自分の番に一回使えるポケパワー。相手の手札をオモテを見ずに二枚選んでそのカードを相手の番の終わりまで手札として扱わずバトル場の横に置いてもらうわ」
 手札封じか。ボーマンダと炎エネルギーが持って行かれた。次の番に即座にベンチのコモルーを進化させようと思っていたが、予想していないところから歯車が狂わされてしまった。
「まだよ。エンペルトLV.Xで攻撃。氷の刃!」
 エンペルトLV.Xは地面スレスレを凄まじい速度で滑ると、バトル場のガブリアス……ではなくベンチのコモルーに鋭い右の翼を振り下ろす。
「ベンチポケモンに攻撃か!」
 一撃をモロに受けたコモルー40/80は横に転ばされる。もう一度氷の刃を受ければ気絶してしまう。
 ここに来て至上命令で持って行かれたボーマンダがジワジワと効いてくる。次の番にボーマンダに進化していればコモルーの最大HPも上昇し、また氷の刃を受けても耐えれるようになるのだが……。
「俺のターン」
 引いたカードはゴージャスボール。よし、俺のデッキにはボーマンダは二枚ある。ゴージャスボールの効果で山札からボーマンダを手札に加えれば。
「グッズカード、ゴージャスボールを発動だ。その効果で山札から……」
 残り十枚になった山札を探すが、そこにはボーマンダの姿が見当たらない。一体どこに行ったんだ。
 至上命令で封じられたボーマンダが一枚。残りの一枚は手札に無いし、トラッシュにも無い。デッキにも無ければ……。
 くっ、サイドカードか。そんなところにあるのならば手出しが出来ない。
「俺はフカマルを手札に加える。そしてガブリアスに水エネルギーをつけて攻撃だ。スピードインパクト!」
 ガブリアスが衝撃波を発しつつエンペルトLV.Xに頭から突撃していく。轟音を生みながら、エンペルトLV.Xの巨体を軽々と弾き飛ばした。
「このスピードインパクトの威力は120だが、相手のエネルギーの数かける20分の威力が軽減される。エンペルトLV.Xには水エネルギーが二枚ついているので80ダメージだ」
 エンペルトLV.Xの残りHPは60/140だ。たとえ次の番にコモルーが倒されようと、ガブリアスで返り討ちにすることが出来る。そして俺の番が終わったことで至上命令で封じられていたボーマンダと炎エネルギーが再び手札に戻ってくる。
「私の番よ。草エネルギーをシェイミにつけるわ」
 無理をしてエンペルトLV.Xにエネルギーをつけず、次のポケモンを育てるか。流石準々決勝と言うべきか、もう甘いプレイングを見せてくれる相手はそうそういないということだろう。
「まずはチコリータをベイリーフ(80/80)に進化。そして手札からトレーナーカード、レベルMAX!」
「レベルMAXだと!?」
「コイントスをしてオモテなら自分の山札からLV.Xのポケモンを一枚選べ、自分のポケモンに重ねることが出来る効果よ。さあコイントス」
 相手のベンチはシェイミとラプラスとベイリーフ。その中でLV.Xのカードが存在するのはカードはシェイミのみ。シェイミのレベルアップを狙っているのだろう。
 しかも厄介な事に、通常レベルアップはバトル場でしか行えないのだが、このカードはベンチでのレベルアップを可能にさせる。
「よし、オモテね。シェイミをレベルアップさせるわ」
 ベンチにいるシェイミが眩い光を放ち、シェイミLV.X100/100へと進化する。一見小さくてひ弱そうだが、このカードはとんでもない能力を持っている。
 レベルアップをさせるにしても、別のカードであって欲しかった。LV.Xの中でもとりわけ厄介なそのポケボディーが、番狂わせとなってしまう。
「さあ、シェイミLV.Xのポケボディー発動よ!」



翔「今日のキーカードはエンペルトLV.X!
  至上命令で相手を押えつつ、
  ハイドロインパクトで大ダメージだ!」

エンペルトLV.X HP140 水 (DP1)
ポケパワー しじょうめいれい
 自分の番に1回使える。相手の手札を、オモテを見ないで2枚まで選ぶ。選んだカードは、ウラのまま相手のバトル場の横におき、手札としてあつかわれない。次の相手の番の終わりに、それらのカードを相手の手札にもどす。このパワーは、このポケモンが特殊状態なら使えない。
水水水 ハイドロインパクト
 相手のポケモン1匹に80ダメージ。次の自分の番、自分はワザを使えない。
─このカードは、バトル場のエンペルトに重ねてレベルアップさせる。レベルアップ前のワザ・ポケパワーも使うことができ、ポケボディーもはたらく。─
弱点 水+30 抵抗力 ─ にげる 2

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