18話 運命のコイントス

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「ドロー!」
 互いのサイドは二枚。しかし半田さんの場にはエナジーゲイン、悪エネルギーのついているドンカラス80/80、ベンチにクロバットG80/80、マニューラG80/80、超エネルギーが一枚ついたスカタンクG80/80。
 俺の場には炎エネルギー一枚ついたバシャーモ30/130、ベンチにヒコザル40/40だけと場を見るとどちらが有利かは火を見るより明らかだ。
 そして回ってきた俺の番。引いたカードはオーキド博士の訪問だった。山札からカードを三枚引いて、その後手札から一枚デッキの下に置くカードだ。手札補充をしよう。新たに引く三枚に賭けるんだ。
「サポーター、オーキド博士の訪問を発動!」
 オーキド博士の訪問で引いたのは不思議なアメ、炎エネルギー、ゴウカザル。
 半田さんはドンカラスGでベンチのヒコザルをきずをねらうで攻撃すればダメージカウンターのないヒコザルには最初に20ダメージ、次のターンはすでにヒコザルにはダメージカウンターが乗ってるため40ダメージ。HPが40しかないから気絶。残りHPが30のバシャーモは毒で倒れ、サイドを二枚引く算段なのだろう。
 俺の手札にはあらかじめモウカザルがあったがスタジアムのギンガ団のアジトのせいで進化するとダメージを受けてしまい、ドンカラスGによるワザのダメージが増えるためため迂闊に進化できなかった。しかしヒコザルからゴウカザルへと一気に進化できるならHPも一気に増えるため問題ない。
 オーキド博士の訪問の効果で戻すカードはモウカザルにした。
「不思議なアメを発動。ヒコザルをゴウカザルに進化させる!」
 ヒコザルの足元から光の柱が現われ、それが消えた頃にはゴウカザル110/110へと姿を変えていた。
「進化させたためダメージカウンターを二つ乗せてもらう」
「それくらいは構わないさ。バシャーモのポケパワー、バーニングブレスを今度こそ喰らってもらうぜ!」
 バシャーモが炎の息をドンカラスGへ吹きかける。ドンカラスGは羽を動かして必死に抵抗している。リアルな演出だ。
「バシャーモの炎エネルギーをトラッシュしてベンチのゴウカザルと入れ替える。ゴウカザルに炎エネルギーをつけてワザを使うぜ。ファイアーラッシュ!」
 ベンチに逃げたことでバシャーモの毒は回復した。ゴウカザル90/110がドンカラスG80/80へと四足歩行で駆けて行く。
「自分の場の炎エネルギーを好きなだけトラッシュして、トラッシュしたエネルギーの枚数だけコイントスをする。そしてオモテならオモテの数かける80ダメージを相手に与える。俺の場にはゴウカザルにつけている炎エネルギー一枚しかない。それをトラッシュしてコイントスだ!」
 モニター手前のコイントスボタンを押す。オモテが出ると一気に情勢が変わる。来いっ、オモテが出てくれっ!
 が、そうはいかず無情にもウラと表示された。それに対応してゴウカザルの攻撃はドンカラスGに当たらず。
「ふぅ」
 半田さんは外れたことに安堵しているようで、一瞬緊張が入った表情も元通りに戻っていく。
「だけどポケモンチェックで火傷の判定をしてもらうぜ」
 火傷は毒と違い、ポケモンチェック毎コイントスが必要である。オモテならダメージはないがウラなら20ダメージだ。
 半田さんがコイントスをした結果オモテとなりダメージはまだ0。
「俺のターン。ギンガ団の賭けを発動。互いに手札を全て山札に加えシャッフルだ」
 ここで手札リセット。タイミングが微妙なので俺の頭にはクエスチョンマークが一つ。
「そしてじゃんけんをしてもらう。勝ったら山札から六枚、負けたら三枚引くのさ」
 確実な一手を踏んできた半田さんが急にギャンブルカードを使うことにまたクエスチョンマークが増える。しかしここは迷うところではないだろう。じゃんけんに勝って確実に手札が増やしたい。
「よし、そうとなったら! 最初はグー、じゃんけんほい!」
 ……。勢いだけではどうにかならず、じゃんけんでも負けてしまったか。
「俺が勝ったから六枚引かせてもらうよ。そしてスカタンクGに超エネルギーをつけてポケパワー発動、ポイズンストラクチャー!」
 スタジアムが場にあるとSPポケモン以外のバトルポケモンを毒にするポケパワーが発動し、ゴウカザルは毒に冒される。
「ドンカラスGの攻撃、きずをねらう。バシャーモに攻撃だ!」
 ドンカラスGは飛び立つとベンチにいるバシャーモ30/130を襲う。バシャーモにはダメージカウンターが乗っているため受けるダメージは40。この一撃でバシャーモはHPが0になったのでこれで戦闘不能となってしまった。
「サイドを引かしてもらう。俺の番は終わりだが、ゴウカザルは毒のダメージを受ける」
 110あったHPがもう80/110まで減っていく。じわりじわりと減っていくHPは、まるで残り僅かの砂時計。なんとかタイムリミットまでに勝ちきらねば。
「だがそっちも火傷判定をしてもらう!」
 威勢よく言ったのはいいが、またしても半田さんはオモテを出す。運を味方にしすぎである。しかしここで火傷の20ダメージの有無はどうでもいい。
「俺のターン! ゴウカザルに炎エネルギーをつけて攻撃。ファイアーラッシュ!」
 今つけたばかりの炎エネルギーをトラッシュ。そして今度こそ決まってくれ! と強く念じてコイントスボタンを押す。……願いは通じたのかオモテだ!
「っしゃあ! 行っけえ!」
 ゴウカザルは大きな火球をドンカラスGへぶつける。盛大な爆発のエフェクトと共に吹き飛ばされたドンカラスGのHPをたった一撃で削りきる大技は綺麗に決まった。
「サイドを引いてターンエンド! 追いついたぜ」
「次の俺のバトルポケモンはスカタンクGだ。そしてポケモンチェックが来たのでゴウカザルには再び毒のダメージを受けてもらう」
 じわじわと痛みつけられるゴウカザル70/110。そろそろHP半分を切ってしまう。
「俺のターン、スカタンクGに超エネルギーをつけて攻撃だ! 煙幕!」
 スカタンクGが灰色の煙……って普通の煙だな。目くらましで使うような煙幕を発する。ゴウカザル50/110のHPは更に削られていく。
「ゴウカザルに20ダメージだ。そして次のターン、ゴウカザルはワザを使う時にコイントスをしなくてはならない。そのコイントスがウラだとワザが使えなくなる。俺の番が終わると共に毒のダメージを受けてもらおう」
 もう残りHPは40/110。次にワザを外すか倒しきれなかったとしたら俺の番の終わりのポケモンチェックで毒の10ダメージ、そして半田さんの攻撃で20ダメージ、そして半田さんの番の終わりのポケモンチェックでさらに10ダメージ。これでゴウカザルは気絶してしまう。サイドが残り一枚の半田さんはこれで勝利だ。
「くっ、俺のターン!」
 引いたカードは炎エネルギー。毒をなんとかするカードでなければ種ポケモンでもない。こうなったらこのゴウカザルで勝つしかないか。
「炎エネルギーをゴウカザルにつけて攻撃だ!」
 つけた炎エネルギーをすぐにトラッシュする。もはやつけた気がしないが……。
「まずは煙幕の効果の判定だ」
 コイントスボタンを押す。ウラが出た時点で詰み、負けだ。
「オモテだ! 続いてファイアーラッシュの判定!」
 ここでオモテを決めれば勝ち、ウラが出れば負け。こんなところで負けるとまた俺は姉さんに頼ることになる。もう高校一年生、いや。あと何ヶ月かで高校二年生だ。なのにまだ姉さんの脚を引っ張ってしまうのか。それだけは嫌だ。
 俺はまだ、負けられない!
「俺はまだまだ勝ち続けるんだ!」
 叫び声が響くと同時にモニターに文字が映る。
「オモテか? ウラか!?」
 半田さんも釣られて叫ぶ。モニターにはオモテと表示されていた。
「おっしゃあああ! 喰らえ!」
 ゴウカザルが右手にもった火球をスカタンクGに力いっぱいぶん投げる。派手な爆発のエフェクトの後、スカタンクGは力なく倒れる。最後のサイドカードを引くと試合終了のブザーが鳴る。



「ありがとうございました」
 挨拶を終え、熱戦をした相手と握手をする。
「最後までドキドキハラハラで怖かったよ。でも楽しかった。また機会があれば」
 半田さんは悔しさの一切ない笑顔を浮かべる。清々しい対戦だったのは俺も同じだ。半田さんの言葉に俺は黙ってうなずく。
「頑張れよ」
 去っていく半田さんは右手拳を俺に向かって突き出す。それに返すように、半田さんの拳に俺の拳をぶつけた。



翔「今日のキーカードはゴウカザル!
  エネルギーをトラッシュすると80ダメージ!
  ただしコイントスはしっかりとな!

ゴウカザルLv.44 HP110 炎 (EPDPt)
炎 ファイアーラッシュ  80×
 自分の場の炎エネルギーを好きなだけトラッシュし、トラッシュしたエネルギーの枚数ぶんコインを投げ、オモテ×80ダメージ。
無無 いかり  30+
 自分のダメージカウンター×10ダメージを追加。
弱点 水+30 抵抗力 ─ にげる 0

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