第8話 とある一室には神様がいます。

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はい、というわけで更新します。キャラクタ説明も付けました。結構、楽しい。キャラクタ説明。
さて、前回私は目標を掲げました。筋肉をつけようということです。
えぇ…、三日坊主にはならないように善処しようと思っています。いますが………。
「ねぇ~、お姉~ちゃ~ん。遊ぼーよー」
「い、今、私忙しいからレンと遊んでもらって?」
「い~や~、お姉ちゃんがいい~の!」
「うぐふぅ!」
腕立て伏せをしていた私の背中に飛び乗ってきた。バキッて音を立てて床に突っ伏す私の体。
腕で支える?……無理、そんな力は今の私にはない。
「あそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼ遊ぼうよー!」
「ちょ、首…首はやめて……」
上下に首の根元から揺らすチャムちゃん。さすが、ポケモンといいましょうか。その腕に込められている力は凄まじい…。このままいくと私の首が吹っ飛ぶんじゃないかしら?
あっ、なんかお花畑が見えるような…。
「遊んでぇええ‼」
「わ、わかった。わかったからもうやめて…」
「よし」
そういうとのっそり私の背中から降りて満面の笑みを浮かべて満足そうだ。
しかし、もはや私の体力は底をつきそうである。ゲームで言うならピコーン、ピコーンって音が鳴るレベルである。真っ赤である。ついでに顔も。
それでもチャムちゃんの顔を見てまぁいいかと思えるくらいの余裕はあるらしく顔がにやけている…ような気がする。
「なにして遊ぶ?」
「え~っとね、う~んとね……神様に会いに行く!」
「うん……ん?」
今、神様って言わなかった?
「…もしかして生贄をささげるとかそんな感じ?」
「まっさか~、そんなことしないよ~。上に普通にいるよ?」
えっ、何、神様いんの?…このアパートに?
そもそも、そんな簡単に会えるもんなの、神様って…?
レッツゴー!なんて張り切りながら階段を駆け上がるチャムちゃん。
一方、私は神様なんて手持ちにいたっけかなぁ…?そんな状態である。
そもそも、神様の定義がよくわからないし……。ウインディも一応中国では伝説らしいし、ここでも伝説とかそういう区切りがあるのかなぁ?
「早く早く、は~や~くぅ」
待ちかねないといわんばかりに二階の錆びた手すりを叩きながら私のことを急かしているチャムちゃん。
……それにしてもこのアパート階段多くないスか?
軽く40段くらいあるような気がするんですけど⁉
そりゃ、一思いにポケモンって言ってもいろんな大きさあるからそれくらいは必要になるのかもしれないけどさぁ……長すぎだよ!
エレベーター付けてください、コモさんんんんんんんん‼
………付けるようなとこないから仕方ないんだろうけどさぁ。
軽く息を切らしながらチャムちゃんに追いつくとレンの部屋の前を通りすぎ少しばかり離れたところのドアの前に立つ。
インターホンのボタンにチャムちゃんの背丈では届かない。だから私が押してあげようと思って手を伸ばすとチャムちゃんは思いっきり息を吸い出した。
「神様~、チャムだよ~。開けて~」
どうするのかと思ったらまさかの神様を呼ぶという…それも友達を呼ぶような感じで。
神様に失礼じゃないかしら?
とかなんとか思ってるとガチャっとカギを開ける音がして白い羽が見えた。あっと私の記憶の中の手持ちの一匹を思い出す。
「おぉ、チャム……と誰だ?」
「お隣のレンの部屋に居候してるゆみお姉ちゃん」
「ほう、まぁ…立ち話もなんだからな。入るといい」
「お邪魔しまーす!」
チャムちゃんが私の手を引っ張りながら中へと入っていく。そして玄関前では見えなかった全体が見えた。
そう、銀色の羽。真っ青なお腹。すらっと伸びた長い尻尾。キリッとした表情。そして何より私が付けた名前…。
「やっぱりケシンサマだ」
「き、貴様なぜその名を知っている⁉」
神様の顔が見る見るうちに真っ赤に染まっていく。うはっと私の顔に笑みが浮かぶ。
あぁそうそう、思い出した、思い出した。
いたよ、いたいた。神様。レベル上げが嫌いな私にとってのレンの次の次くらいに高かったやつ。もちろん二番目はコモさん。色違いがうれしかったんだよね、やっぱり。
エアロブラストとハイドロポンプ、自己再生、そして雨乞い。
確か、こんな感じだったような気がする。
「うわ~ケシンサマだ。うわ~うわ~うわぁぁぁぁぁ~!」
「えぇい、ケシンサマ言うな!」
「うわぁぁぁぁぁ‼」
我を忘れてケシンサマの足に抱き付いた。つるつるかと思ったら意外と短い体毛で覆われていてサラサラだった。筋肉質かと思ったら意外とプニプニだった。体温低いかと思ったら意外と温かったぁ!
「うぁぁぁぁぁ~」
「―――ッ、そもそもなんで我のことを知っている?」
「そりゃ知ってるも何もあんたのトレーナーだもん」
あ、言っちゃった……。
言っちゃってもいいのかな、これ……。
「むっ、貴様…ゆみか⁉」
「私のこと知ってるの?」
「知ってるもなにもあとにも先にも私を捕まえたのは貴様ぐらいだからな。忘れられるわけがなかろう?」
「うわぁぁぁぁぁ、ケシンサマァー!」
ケシンサマが私のことを知っていてくれた。それが嬉しい。
だって、知っているってことは私と旅した日々を覚えてくれていると言うことだから。
「えぇい、離れい!」
翼で背中を摘ままれてペッとチャムちゃんの足元に投げられる。
私はニパッとまた笑顔を浮かべる。
「ねぇ神様、お姉ちゃんのこと知ってるの?」
「チャムよ、こやつはな、ワシのことを神様ではなく化身だと思い込んでワシのことをケシンサマと名付けたのだよ」
こやつはっ!と私の頭をつんっと突っつく。結構痛い。
「じゃあ、ゆみお姉ちゃんは神様のお母さん?」
「まぁ…似たようなもんかな?」
「そんなわけなかろう!」
今度はさっきよりも強い力で突っつかれる。さすがにケシンサマも本気で殴ったら死んでしまうことくらいはわかっているのだろう。
「それで…ゆみよ」
「なぁに、ケシンサマ?」
「……頼むからせめてルギアと呼んでくれないか?」
「やだ」
「今まで十年ばかり放っておいて…」
うっ…それを言われると私は何も言えないのだけど…。
そういえば確かに私は銀をしばらく触ってないけど。
「わかったわよ、でルギア、いったい何?」
「何故、こちらの世界に来たのだ? そもそもどうやって来たのだ?」
「……さぁね、私もわかんない。気づいたらレンが乗ってた電車にいたわ」
「ほう…。ワシの好奇心がくすぐられる話じゃのぅ‼」
そういうとルギアはわっはっはっと大きく笑い声をあげるとそれならばと声を張り上げる。
「ワシの知り合いに物知りな奴がおるから、そいつに聞いてみよう。…あわよくばゆみのいた世界に進出してやろうじゃないか!」
ちょっ、私の世界に進出ぅ⁉
そんなことさせるわけにはいくかぁぁぁぁぁあ!
そんなことされたら私の世界がめちゃくちゃになるじゃないの‼
あんたみたいなデカいやつがいたら世界征服なんてお茶の子さいさいなのよ、わかってんの⁉
そう思い、私はルギアの足にしがみつこうとしたのだけどぺしっと簡単に払いのけられてしまう。
「神様またお出かけするの?」
「そうさなぁ…チャムよ、大家さんに三週間くらい部屋を空けると言っておいてくれないか?」
「ラジャー!」
「じゃあの、ゆみ。グットラック!」
そういってルギアは親指らしき指を持ち上げてビッとかっこよく天井をぶち破って大空に飛んでいく。
私の隣でチャムちゃんがお土産まってるよーと大きな声で叫んでいる。
「…………天井…いいの?」
「うん、神様お金持ちだからこれくらいどうってことないと思うよ?」
さ…さすが神様…。貧乏人には理解しがたい発想です。
……そういえばなんでルギアは私のこと覚えてるんだろう。レンもコモさんも私のことは覚えてなかったのに…。
「あ、お母さんに神様のこと言ってこなくちゃ」
そういってたたーっと走っていくチャムちゃん。
その後姿を目で追いながら考える。
そういえばどうして私はレンたちの住むこの世界に来れたのだろう…。毎日が楽しくて考えもしなかった。
ただ、酔っ払って寝てただけなのに…。
チャムちゃんを追って外に出る。
夕日に照らされてこがね色という名にふさわしい色合いに染まるアパート。
コモさんの部屋からカレーの匂いが漂ってくる。
今日の夕飯はカレーらしい。
まぁ…考えるのは明日でもいいかぁ~。
なんて考えながら何か忘れてるような気がしたけどお腹がすいたのでコモさんの部屋に吸い込まれるように入っていく。
…………………。
「あっ、筋トレの最中だったじゃん!」
カレーを食べてる最中に思い出しましたとさ。

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