第43話

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

タ「でもスパイアが見つかってよかった。」

トキワの森からの帰り道、タツミが急に言い出した。

ス『ごめん・・・。もうしないから・・・。』

タ「うん。わかったからもうそんなにしょんぼりとしないの。見ててこっちも元気なくなってくるから・・・。ん?なんだろ?あれ?」

タツミが指差した先には1体の二ドラン♀がいた。しかしどうも状況がおかしかった。

「あ!やっと見つけたぞ!待てー!」

タ「・・・もしかして追いかけられている?・・・クラウン、スパイア。」

ク『おうよ!』

ス『うん!』

追いかけているのは1人だったのでクラウンだけでも行けそうな感じだったが、保険でスパイアを付けた。クラウンは男の前に立ちはだかり・・・

ク『おい!てめぇ!なんでこいつを追いかけてるんだ!』

ちなみにクラウンの言葉は相手には分からないので、相手からするとただ凄い剣幕で目の前のバクフーンが唸っているとしかとらえられていない。

男「なんだよ?そいつが俺の弁当食ったのが悪いんだろうが!少しお仕置きしないといけねぇんだよ!どけ!」

ク『そうはさせねぇよ。そらよっと。』

クラウンは相手を掴み上げるとゆっくりと地面に叩き付け睨み付けた。

男「ひぃ!!!お・・覚えてろー!!」

男は凄い速さでクラウンから逃げていった。

タ「クラウン、お疲れ様。1人で大丈夫だったな。っていうかさっきの奴なんか小さいなぁ・・・。弁当食べられただけでねぇ・・・。君大丈夫だったかい?」

ニ『は・・・はい・・・。助けてくれてありがとうございました。』

タ「お礼ならこっちに言ってね。僕は何もしてないから。」

ニ『あっ・・・ありがとうございました。』

ク『お・・・おう・・・。』

タ「君もしかしてお腹空いている?」

ニ『・・・コクッ。』

タ「そうか・・・・。・・・あっ。」

タツミは何かを思い出したかのようにバックの中を探る。そして一つの袋を取り出した。

タ「これ、あげるよ。これで少しはお腹満たせるでしょ。」

タツミはポテチの袋を開けてから二ドランへと渡した。

ニ『えっ・・・でも困るんじゃ・・・。』

タ「いいのいいの、それじゃあね。次からは気を付けるんだよ。」

タツミ達はポケモンセンターへと歩いて行った。そしてそれをただ呆然と見ていた二ドランなのであった。

・・・・・・・・・
レガ『あっ!タツミ!大丈夫だった?』

タ「大丈夫だよ。ありがとう。」

レガ『・・・・スパイア、タツミにちゃんと謝ったか?』

ス『うん・・・。』

タ「まぁまぁ、そんなに責めるな。そもそも僕が悪いんだから。それよりも、もう今日は遅いからここに泊まっていこうか。テントには貴重品は置いてきていないし・・・。」

レガ『タツミが悪いとは思わないんだけどなぁ・・・。』

ク『まぁいいじゃないか、事は解決できたみたいだし。スパイアも安心していた顔していたぞ。』

レガ『そう?まぁそれならいいけどね。』

・・・・・・・・
タツミはダメもとで部屋が空いていないかジョーイさんに聞いてみたが、残念ながら空きは出ていなかった。現在時刻は11時、もう外は深い闇に包まれていた。

タ「う~ん・・・仕方ない、歩いてテントまで戻るか・・・・。」

レガ『それならボールから出ておくよ。タツミが心配だから。』

ク『じゃあ僕はボールに入って寝ておこうかな。』

タ「うん、レガありがとう。クラウンもありがとうね、ゆっくり休んで。・・・スパイアはどうする?」

ス『僕も歩くよ。』

タ「わかった。じゃあ2人とも行こうか。」

ス『うん!』

レガ『(確かにクラウンが言った通りにスパイアもちょっとは気持ちが軽くなったみたいだな。良かったよかった)』

タツミ達はテントへ向けて歩き出した。

暫くはまだこんな時間までトレーニングする人が沢山いたが、トキワの森へ近づくにつれて人影がまばらになりテントまで来た時には辺りには誰もいなかった。

タ「相当人いなくなったな。やっぱりこっちは人通りが少ないんだろうなぁ。」

レガ『恐らくね。トキワの森はかなり複雑みたいだからね・・・。って夜に通ろうってまず思わないよ。』

タ「それもそうだね。あっ、やっとテントが見えてきた。」

タツミ達はようやく町の外れに設置したテントへと到着し、タツミがテントの中に入ろうとすると・・・

ス『タツミ!ちょっと待って!』

タ「!?いきなりどうした?」

ス『中に何かいるような感じがする・・・・。』

タ「えっ・・・・。」

ス『とりあえず僕が中見てくる・・・。』

タ「危ないんじゃ・・・。」

ス『大丈夫。・・・・・。』

スパイアがテントのチャックを開けるといきなり何か得体のしれない物体が飛び出してきた。

ス『!!!!!!?』

タ「!!!!なんだあれ?」

レガ『・・・二ドラン?』

タ「えっ?」

タツミが目を凝らしてよく見てみるとさっき助けた二ドラン♀だった。

タ「あっ本当だ。っでどうかした?ってよく僕のテントだってわかったな。」

ニ『においを付けてきました。』

タ「マジかぁ・・・。すごいなぁ・・・。」

レガ『んで何かタツミに用?』

ニ『さっきのお菓子のお礼ができなかったのでお礼を言いに・・・。それと・・・。』

タ「お礼なんてよかったのに。それで?」

ニ『旅しているんですよね?もしよければ私も連れて行ってほしいなと・・・。』

タ「えっ、でも誰か心配するんじゃ・・・。」

ニ『大丈夫です。私野生で1人身ですから・・・。また、生まれてからずっとこの付近にしかいたことないんで出来るならいろいろと回ってみたくて・・・。』

タ「まぁね・・・。別に構わないけどなんで僕にしたの?」

ニ『それは・・・あの仲良さそうにパートナーさんたちと話しているのを見てこの人なら信頼できると思って・・・。またあんな風に助けてもらったし・・。』

タ「そうか・・・。うん、なら付いておいで。あんまり楽しくないと思うけどね・・・。」

ニ『いいんです!ありがとうございます!』

レガ『まぁ仲間が増えるだけにぎやかになるからね。うん。』

ス『まあね。』

タ「じゃあ名前付けないとなぁ・・・・。う~ん・・・・ルビアで良いかな?」

『大丈夫です!』

タ「よし、じゃあこれからよろしくね。ルビア。」

ル『はい!』

レガ『また賑やかになるなぁ~。それより眠い・・・。』

タ「さて、もう今日は遅いし明日はトキワの森をまた抜けないといけないしゆっくり休もうか。」

ス『それもそうだね・・・・僕はまだあんまり眠くないから起きておくよ。』

タ「そう?わかった。あっルビアはボールに入っていて。」

ル『うん!』

ルビアはタツミが置いたボールに自ら入っていった。

タ「スパイアも早く寝るんだよ。お休み。」

ス『お休み。』

タツミはテントの中に入って行った。スパイアはというと暫くボーっと星を見ていた。

ス『凄いなぁ・・・。本当に綺麗だなぁ・・・・。』

そんな時に1つ流れ星が流れた。

ス『あっ、流れ星・・・お願いしないと・・・・・・・タツミを・・・・・・・・・守れますように・・・。』

流れ星はスパイアが願い事を言い終える前に消えてしまったが、スパイアは素直に言えて満足そうだった。

ス『よし、僕も頑張らないと。寝るか・・・。』

スパイアもまた夢の世界へと落ちていった。

・・・・・・・・・
翌日は残念なことに雨だった。しかも雨のせいでか気温が低いようでやや肌寒かった。

タ「久々に雨降ってるなぁ・・・。スパイアとクラウンは連れ歩かないほうが無難かな。」

ス『そうだね・・・。うん、ボールに入っておくよ。』

ク『僕は多分大丈夫と思うんだけどなぁ・・・。この前のタツミとの水合戦で慣れた気がするし・・・。』

タ「クラウンはレインコート着せますか・・・。うん。」

タツミはスパイアをボールに戻した後、クラウンにレインコートを渡した。

ク『?』

タ「一応予防にね。水に慣れたからと言って油断できないからね。ほらほら早く着る。その間にテント片付けるか・・。」

クラウンはレインコートを羽織るが前のボタンを留めるのに苦労しているようだ。その間にタツミはテントを片付けていく。

タ「ここをこうして・・・ん?あ~ルビアか・・・どうした?」

ル『いや・・・ちょっとお願いがあって・・・。』

タ「?」

ル『私も連れ歩いてくれませんか?・・・ボールの中はどうしても落ち着かなくて・・・。』

タ「まぁ今日はクラウンだけだから良いよ。でも歩くのは辛いでしょ、だから僕の肩に乗っていいよ。」

ル『ありがとう!うん!』

ルビアは嬉しそうにタツミの肩へと飛び乗った。

タ「さて、テントも畳み終わったしそろそろ出発しようかな。クラウン準備・・・まだボタン留めれてなかった・・・。」

ク『どうしてもボタンが・・・・。』

タ「どれ、貸してみて。あっ、ちなみに絶対に背中の炎は出すなよ。溶けるぞ。」

ク『うん、それは分かっているよ。』

タツミはクラウンが着たレインコートのボタンを1つ1つ留めていく。クラウンはどことなく嬉しそうな表情だ。

ル『クラウンさんは本当にタツミさんのことが好きなんですね。』

ク『当たり前だろ~!タツミがいたから僕はここまで来れたんだから、ある意味命の恩人だよ!』

タ「クラウン・・・あっ、ルビア、さんは付けなくても良いからね。」

ル『わかりました!』

タ「礼儀正しい子だなぁ・・・。よし、クラウンこれで終わったよ。行こうか。」

ク『ありがとうタツミ。うん!』

・・・・・・・・・
キャンプ場を出発してトキワの森へと向かう。雨は止む気配がなく逆に強くなっている始末である。

タ「雨ってなんか嫌だね。濡れるし歩きづらいしなんかねぇ・・・。」

ク『確かにねぇ・・・。炎も弱まるからねぇ・・・。』

タ「なんかクラウン可愛いわ。その姿・・・。」

ク『なっ・・・・まぁいいや。』

ル『ふふふ・・・本当に仲良いんですね。』

タ「そりゃあ長い付き合いだからね。自然とこうなったって感じかな?」

ク『まぁね。タツミがいて僕がいるって感じだからね。』

タ「クラウン・・・頬赤いぞ。」

ク『・・・・・・。』

タ「(照れてるなぁ。)」

暫く歩くとトキワの森の入口ゲートへと到着する。雨の方は幸いにも小降りになっていた。

タ「まぁ、今日一番の難関だね。まぁ昨日も通ってきたから大丈夫だろうけど、多分ぬかるんでいるからクラウンは足元に気を付けるんだよ。」

ク『うん。万が一の時はタツミに飛びつくから。』

タ「おいおい・・・ま・・まぁ行こうか。」

タツミ達はトキワの森へと入って行った。

・・・・・・・・
トキワの森は案の定地面がぬかるんでいて、それでいて歩行者が多いので地面としてのコンディションは最悪なものであった。

タ「うわ・・・靴汚れるなぁ・・・。くらうんは・・・・ポケモンセンターで一回洗わないとダメか・・・。」

ク『ドロドロ・・・・。』

クラウンが来ているレインコートは上着だけなので跳ね返った泥がクラウンのクリーム色の体を茶色に染めていた。

タ「ズボンあるけど絶対に着れないから仕方ないか・・・。ルビアは大丈夫?」

ル『大丈夫です!』

そんな会話をしていると、急にトレーナーから話しかけられてしまった。

ト「よぉ、お前も新人トレーナー・・・・だろ?バトルしようぜ。」

タ「今何で一回言葉が詰まったのか・・・。まぁいいや。やろうか。」

ト「そうこなくっちゃ。行け!キャタピー!」

タ「うん、ルビア頼む。」

ル『任せてください!』

ト「ふっ、キャタピー体当たりだ!」

タ「ルビア、毒針!」

ト「甘いな。キャタピー避けろ!」

キャタピーは毒針をかわしルビアに体当たりを決めた。

タ「ルビア!大丈夫か?」

ル『まだ大丈夫です!』

タ「よし、こっちも体当たり!」

ルビアはキャタピーに向かって突き進んでいくが・・・

ト「ふっ、いとをはく!」

キャタピーは糸をルビアへと飛ばしたが

タ「避けろ!」

ルビアは間一髪で避けたが体当たりはキャタピーには当たらなかった。

タ「・・・一体どうすれば・・・・・。そうだ!」

ト「これで終わりだ!体当たり!」

タ「ルビア!ギリギリまで引き寄せろ!」

ル「分かりました!」

ルビアはタツミから言われたとおりキャタピーをぎりぎりまで引き寄せ・・・

タ「今だ!上に飛んで毒針だ!」

ルビアはキャタピーが当たる直前で上に飛び、至近距離で毒針を放った。キャタピーは突然の事でまったく対処できなく直撃した。

ト「キャタピー!!」

砂埃が晴れるとそこにはまだ持ちこたえたキャタピーがいた。

タ「すげぇ・・・。本当にガッツあるなぁ・・・。」

ル『本当です・・。』

キャタピーはその場で暫く動かずにじっとしていたが、しばらくしてバタッと倒れてしまった。

ク『ほぉ・・・なかなか素質あるなぁ・・・あいつ・・。』

ト「やっぱり連戦だったからなぁ・・・。疲れてたのかな・・・。お前!ありがとうな。さらばだ!」

トレーナーはキャタピーをボールに戻すとトキワの方へと走って行った。

タ「ふぃ~何とか勝てた・・・・。ルビアお疲れ様。」

ル『全然大丈夫ですよ。』

タ「スタミナあるなぁ・・・。先に進もうか。雨もちょっとは止んできたみたいだし。」

タツミ達は森の奥へと足を進めた。

・・・・・・・
暫く歩いていると分岐があるが、ここは一応案内看板があるから迷わずニビのほうへ。

タ「こんな感じで看板があると良いんだけどなぁ・・・。あれ?」

ク『どうした?タツミ?』

タ「今ちょっとタマゴ揺れたぞ・・・。何が生まれてくるんだろうねぇ・・・。」

ク『本当、だねぇ・・・。』

ル『でも元気そうで何よりですね。』

タ「そうだね。元気に生まれてくるんだよ。」

タツミはそういいながら卵を軽くなでる。

タマゴはそれに応えるかのように軽く揺れた。

タ「一回通っているけどこの森、本当に長いなぁ・・・。雨もやまないし・・・。」

ク『まぁ良いんじゃない。早くポケモンセンター行っても何もすることないでしょ?』

タ「まぁそうだけどねぇ・・・。おっ、ようやく出口か?」

タツミ達はトキワの森のニビ側出口を見つけた。トキワ側からはそんなにかからなかったようだ。

タ「あんまり掛からなかったなぁ・・・。帰りは速いって感じか・・・。こんなことならもうちょっとゆっくり過ごしていても良かったかな。」

ク『そうだね・・・。まだ昼前だよ・・・。これからどうする?』

タ「そうねぇ・・・まぁニビに行ってから考えるよ。」

ル『それもそうですね。ニビは結構大きな町と聞いているから何かあるかもしれないですよ。』

タ「そうだな、まぁ行ってみよう。」

タツミ達は、まずはニビのポケモンセンターへと向かうことにした。

ニビはとても大きな町で活気にあふれていた。ここにはポケモンリーグ認定の最初のジムがあるから若い新米トレーナーが多くトレーニングしていた。

タ「見ているとなんか懐かしい感じがするなぁ・・・。僕もあんな感じに右往左往してたもんなぁ・・・。」

ク『タツミはこっちの世界に来てから結構大変そうだったもんね・・・。うん・・・。』

タ「まぁ今はこうして何不自由なく過ごしているから、人生ってどうなるかわからないね。」

ル『結構大変な思いをされたんですね・・・。』

タ「うん、まぁ辛かったけど何とかね、まぁクラウン達がいたから救われたのかもしれないしね・・・。心細かったからね・・・・。」

ク『タツミ・・・おっ、ポケモンセンター見えてきたぞ。』

タ「そうか、よしまずはクラウンを洗おう!」

ク『ぇえ!水苦手ぇぇぇ!!』

た「さっきまであんなに水に慣れたとか言ってたのにね~でもクラウン、相当汚れているぞ。どっち道汚れは落とさないといけないから我慢我慢。」

ク『う~・・・・。わかったよ・・・タツミ・・・。』

クラウンはどことなく(´・ω・`)とした顔をした。それを可愛いと見ていたタツミなのであった。


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