Mission #169 疑念のリーク

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アカツキたちは取得したUSBフラッシュメモリをすぐさまシンバラ教授に届け、大まかな事情を説明した。

「なるほど。もしかしたら連中が落としていったかもしれない……というわけか」
「その可能性も否定できないので、教授に見ていただこうと思いまして」
「ふむ……」

教授は親指と人差し指でフラッシュメモリをつまみ上げた。
その表情や物腰は本部が襲撃を受けた直後とも思えぬほど冷静だったが、それは襲撃による被害が思いのほか少なかったからに他ならない。
アカツキがオペレーションルームに入った時に見た被害状況は、ロビー半壊、非常階段(西側)の破損、廊下等の破損(軽微)だった。
各地のレンジャーに指示を飛ばす指令塔であるオペレーションルームが入った十階にまで踏み込まれたものの、ヤミヤミ団の目的がイオリを連れ去ることだったためか、オペレーションルームは無傷だった。
普通は指令塔を真っ先につぶして、相手の身動きを封じそうなものなのだが、それをしなかったのはどういうことか……解せないところはあったが、不幸中の幸いと考えるべきなのだろう。

「では、オフラインのパソコンで確認しよう。ウイルスでも入っていたら大変だからな」

言って、教授は壁際のパソコンのUSBポートにフラッシュメモリを挿入した。
ヤミヤミ団が罠として残していったものなら、オンラインのパソコンにつなぐのは危険すぎる。
まずはオフラインで単独稼働しているパソコンにつないで、ウイルスの有無をチェックするべきだろう。
外部媒体が接続されたことにより、自動でスキャニングとウイルスチェックが行われたが、ウイルスは検出されなかった。

「ウイルス、出てきませんでしたね」
「そうじゃな。誰が落としていったものか……調べてみるとしよう」

アカツキが思わず漏らしたつぶやきに、教授は深く頷いた。
ヤミヤミ団の罠でないことは間違いないが、メモリに入ったファイルの内容を確認するまでは安心できない。
教授は慣れた手つきでメニューを開き、フラッシュメモリにアクセスした。
中に入ったファイルは二つで、片方は何かの図面、もう片方は動画のファイルだった。

(なにかのプレゼンで使う資料かな……?)

ファイルのタイトルをパッと見たところ、アカツキはそんな印象を受けた。
教授も似たようなことを思ってか、動画のファイルをダブルクリックして再生したのだが……
プレーヤーが起動し、画面に映し出されたのは予期せぬ人物の顔だった。

「なっ……!!」
「え、どういうこと……?」
「マジかよ……!?」

画面に映った人物の顔に反応を示したのは、教授以外の三人だった。
教授はその人物と顔を合わせたことがなかったためか、ピンと来ていない様子だった。

(なんでこの人が……)

アカツキは喉がカラカラに渇いていくのを自覚していたが、驚愕のあまり、唾を飲み込むことさえ忘れていた。
というのも、画面に映ったのはヤミヤミ団の中でも屈指の狡猾さを持ち合わせる白衣の女だったからだ。

「ヤミヤミ団の連中がわざと落としていったな、これ……」

セブンが苦虫を噛み潰したような表情でつぶやく。
……正解である。
このフラッシュメモリは、ヤミヤミ団のアイスが女の指示を受けて現場に持参し、わざと落としていったものだった。
その割にはウイルスが検出されず、誰が見ても無害なシロモノだったわけだが。
どうにも解せないものを感じている一同を余所に、動画が再生される。

『レンジャーユニオンの方々がこれを見ているということは、『地獄の三人衆(トリオ・ザ・ヘル)』がすでに目的を達成して現場から引き揚げたのでしょう』

この状況を予期していたかのごとく、女の言葉は正確だった。
妙に冷静で、無表情。
大事な親友を拉致同然に連れ去った連中の一味とは思えないような表情に、アカツキは神経を逆撫でされるのをどうしようもないほど自覚していたが、ぐっとこらえた。
ここで怒鳴り散らしたところでどうにもならないことは分かっていたからだ。

『あなた方が想像している通り、完成間近の『アンヘルタワー』こそ、我々ヤミヤミ団が『ドカリモ』や『モバリモ』を進化させた……ポケモンを自在に操ることのできる兵器です』

「……!?」
「なんだって!?」

いい意味か、それとも悪い意味か。
女の言葉は一同の予想を裏切るものだった。

「やはり、そうだったか……」
「解せませんね。わざわざそのようなことを自分から白状しますか、普通?」
「ふむ……」

驚愕するアカツキとダズルを余所に、教授とセブンは女が何を考えているのか量りかねているようだった。

(アンヘルタワーが兵器って……)

アカツキは頭の中にいくつも疑問符を浮かべていた。
アンヘルタワーといえば、アンヘル社が創立七十周年を記念して、同社の新しいシンボルとして、またアルミア地方の観光名所の一つとして建設を進めている塔だ。
外観、内装ともに完成しており、あとはテレビの電波塔としての最終調整を残すのみとなっている。
明後日の午前0時に稼働が予定されていて、同日の10時には完成記念セレモニーが催されることになっているのだが……
そのアンヘルタワーがヤミヤミ団の誇る兵器とは、どういうことなのか?
それに、女は自ら『ヤミヤミ団とアンヘル社はつながっている』と認めたのだ。
もう隠す必要がないと判断したからだろうが、今まで彼女の狡猾なところを散々見てきたアカツキにとっては、解せない動画だった。

「なあ、アカツキ……これ、どういうことなんだ?」
「分かんない。でも、罠なのかな、これ……?」

問いかけてくるダズルに顔を向け、アカツキは頭を振った。
根拠はないが、罠とは思えない。
まるで『止められるなら止めてみろ』と挑発しているように見えるし、それ以外にも何かしらの思惑が秘められているようにも思える。
さすがにそんなことを口にするわけにもいかず、アカツキは黙って画面を注視していた。

『イオリ君を連れ去ったのは、兵器の最終的なシステムチェックのためです。
『ドカリモ』や『モバリモ』を下地に作ったものですから、彼によるチェックが一番と判断しました。
明後日の午前0時に、その兵器は稼働します。
あなた方レンジャーユニオンのパートナーポケモンは影響を受けないでしょうが、アルミア地方に住むほぼすべてのポケモンが我々の影響下に置かれ、意のままに動くことになるでしょう。
電波塔の機能を使えば、それくらいのことは造作もありません』

(そういうことか……)

そこまで言われて、アカツキとダズルはようやく納得した。
『ドカリモ』や『モバリモ』がポケモンを操るのに用いている音波は、どちらかといえば電波に近い性質のものを持っている。
つまり、テレビの電波塔を用いることで、ポケモンを操る音波を広範囲に、出力次第では強力に発信することができ、アルミア地方全土を影響下に置くことができる。
ヤミヤミ団が求めていたのは、そういったシロモノだったのだ。

「……ってことは、アンヘル社ってまんまと利用されちまったってことか?」
「そうだと思う」

恐らく、アンヘル社はヤミヤミ団の野望に自ら手を貸していたのではなく、まんまと利用されていただけなのだろう。
そうでなければ、イオリが『アンヘル社がヤミヤミ団とつながっている』と言われるまでそのことを知らなかったはずがないのだ。
アンヘル社の社員の中にはヤミヤミ団に協力する者もいただろうが、大多数の社員は何も知らなかったに違いない。

「でもさ、だったらなんでわざわざそんなこと、教えてくれるんだ?」
「分かんない」

最も疑問に思うところをダズルが訊ねてきたため、アカツキとしては答えようがなかった。
わざわざ親切に教えてくれることではないだろう。
むしろ、ヤミヤミ団からすればマジックのタネのようなもので、一般人はおろか、敵対するレンジャーユニオンには絶対に教えてはならない情報のはずだ。
それをわざわざ動画としてフラッシュメモリに記録して、現場に落とさせるなど、どう考えても不可解極まりない。
ハイリスク、ローリターン。
必要性のないことをわざわざ行う理由が分からないのだ。

『ちなみに、この動画ファイルと同じフォルダに、アンヘルタワーの設計図から電波塔のシステムの概要、回路図まですべて詰め込んだファイルが入っています。
……必要ならどうぞ、お使いください。それでは、失礼いたします』

慇懃な態度は最後まで崩さず、むしろ最後には挑戦的な言葉と笑みを残して、動画が終了した。

「……………………」
「……………………」

何から何まで、意味が分からない。
教授やセブンだけでなく、アカツキとダズルまで『白衣の女の一人芝居にすら見える動画』を胡散臭く見ていた。
動画が終わり、暗転した画面をしばらく眺めた後、教授が深々とため息をついて言葉を絞り出した。

「一体何だ、これは……?」

やっとの思いで紡いだその言葉は、この場にいる全員の総意だった。
あからさまに罠だと分かる内容だっただけに、どう受け止めていいのか戸惑いを隠せないのだ。

「どう考えても罠だとは思いますが……」

セブンも、白衣の女と相対したことがあるため、素直に受け止めきれない様子だった。
わざわざ自らのアキレス腱をバラすようなバカはいない。
しかし、白衣の女はバカどころか、狡猾な策をめぐらす頭脳の持ち主だ。
確実な逃げ道を確保した上で、トップレンジャーすら欺く高度な罠を仕掛ける……アカツキもヒトミを人質に取られ、彼女を助けるために女の要求(ポケモンレンジャーを辞めて、ヤミヤミ団に加わること)を呑む寸前まで追い詰められたことがあった。
そんな『できれば関わり合いになりたくない相手』が、親切心でこのような情報を提供してくれるだろうか?
どう考えても、答えはノーだ。
だが、実際のところは『親切心』での情報提供である。
女はヤミヤミ団に潜り込んでいる他の組織の人間で、自らが属している組織のために必要なことをヤミヤミ団の中で行っていたに過ぎない。
無論、そのようなことはレンジャーユニオンの誰も知らないことであるため、彼女の思惑(ヤミヤミ団とレンジャーユニオンを衝突させること)など、誰一人として知る由もない。

「頭から信じている気はないが、もう一つのファイルを見てみよう」

言って、教授は動画のアプリケーションを閉じると、もう一つのファイルを開いた。
そのファイルには、アルミアタワーの全体図や電気回路、内部の細かなレイアウトに至るまで、ほぼすべての情報ではないかと思うほどの内容が入っていた。

「…………見たところ、デタラメというわけでもなさそうだが……」

教授は神妙な面持ちで、図面のすべてに目を通した。
パッと見ただけでも、どういった性質の回路であるかくらいは把握できるが、かなり難解なシステムを構築しているようだ。

「だが、イオリ君ほどの技術者でなければこれほどのシステムのすべてに最終チェックを行うのは厳しいだろう。
あながち、まったくのデマというわけではなさそうだな。
信じがたいことではあるが……」
「…………」
「……?」

アカツキもダズルも、パソコンの画面に映った図面がどのようなものか、アンヘルタワーの全体図くらいしか理解できなかった。
細かな電気回路……たとえばどこにどの部品が用いられていて、その部品が作用する電気の流れや周波数といった細かな中身は理解どころか、暗号にしか見えなかった。
教授が『シャクだが認めざるを得ない……』と言いたげな面持ちを浮かべているのを見て、イオリほどの頭脳がなければとても処理できないものなのだと把握するのがやっとだった。

(そういえば、アンヘルタワーの電気回路の一部を担当したって、イオリはそう言ってたっけ。
だから、最終チェックに必要だってヤミヤミ団が判断したのかな……?)

イオリと近況について会話を交わした時、そのようなことを言っていたのを思い出す。
どちらにしても、彼ほどの頭脳がなければ処理できないものなら、ヤミヤミ団が最後の仕上げとしてユニオン本部を襲撃してまでイオリを誘拐したのも納得できる。
アンヘルタワーが新たな電波塔として稼働を開始するのは明後日の午前0時。
同時刻か、それより早い時間で、ヤミヤミ団が『アルミア地方全土のポケモンを操るための装置』として起動をかけてしまえば、とんでもなく厄介なことになる。
それはセブンも教授も重々承知していたが、だからこそ、思いもかけずもたらされたこの情報の信憑性を測りかねているのだ。
教授としては、筋の通った回路だと理解できるだけに、なおさらだった。

「頭から否定できる回路ではない。
だが、敵対組織からの情報でなければ素直に信用するところだが……これは議長の判断を仰いだ方が良さそうだな。
時間がないが、だからこそしっかりと協議しておく必要が――」
「……あの人の言ってることは、本当だと思います」
「……うん?」

ユニオンの技術部門における最高権力者である教授でも、一人で決めるにはあまりに大きい物事だと思ったのだろう。
議長や他の上層部としっかりと話し合って対応を決めていくべき。
そう思うのは当然だったが、教授の思考に思わぬ形で割って入ったのは、アカツキだった。
教授が興味深げに、画面に視線を据えたままのアカツキを見やる。

「おいおい、アカツキ。いくらデキがいいファイルだからって、敵の言うことを頭から信用しちゃまずいだろ」

……と、ダズルがそんなことを言った。
当たり前といえば当たり前だろう。
敵対組織がもたらした情報を素直に信用することほど、バカなことはない。それで罠にハメられた日には、状況が逼迫しているだけに目も当てられない。
彼の言葉は至極当然だったりするのだが……

「ダズルの言う通りだと思うよ。
でも、あの人は嘘なんてつかないんだ。
……いつだって本当のことを言ってる」
「え?」

アカツキが頭を振り、ため息混じりに言うと、ダズルは目を丸くした。
彼ほど大仰な反応を示さなかったにしても、教授も怪訝な面持ちで眉を上下させた。
何の根拠があってそのようなことを言うのか、興味深かったのだ。

「ぼくはあの人と三回会ったことがあるんだけど、どの時も嘘は言ってなかった。
本当のことだけ言ってたんだ……嫌なことばっかりだったけどね」

できれば触れたくないことなのだが、ダズルを納得させるためにはやむを得ない。
そう判断して、アカツキは白衣の女に会った時のことを、多少はぼかしながらも、大まかに伝えた。
三件、どのケースもアカツキにとっては酷な状況ばかりだったことが言葉の節々から伝わったのか、ダズルの表情が見る間に曇っていった。

「そっか……そんなことがあったんだな。悪い、アカツキ」
「いいよ、別に」

別に気にしてはいなかった。
白衣の女とじかに会って話をしたことがなければ、彼女が『本当のことだが、相手を動揺させたり怒らせたりするような言い回しで話すこと』を知らないに決まっているからだ。
アカツキの言葉を疑うわけではないが、教授の表情は未だに晴れない。
残る一人――セブンは小さく息をつくと、彼の言葉に同意した。

「確かに、無人島にあったアンヘルの研究プラントで会った時、嘘は一言も言わなかった。
むしろ、事実だけを話すことで、逆に相手に疑念を植え付けたり、混乱させようとする意図があったように思えたな。
……教授、これは罠の可能性もありますが、恐らく事実でしょう。
早急に対応を協議する必要があると考えます」
「ふむ……」

一年生のレンジャーだけならまだしも、トップレンジャーが同意したとなれば、捨て置くわけにはいかないのだろう。
教授は画面の回路図を睨みつけるように見やったまま、思案をめぐらせていた。

「ユニオン本部のレンジャーだけでなく、ビエンのレンジャーベースの力も借りて、全力でヤミヤミ団の企みを阻止しなければならんな。
至急、上層部を集めて対策を協議しよう。
協議が終了し次第、地下のホールに全レンジャーを集めて、作戦を伝えることとする。
それまでの間、きみたちは休んでいるように。
……恐らく、決戦は明日の晩になるだろう。疲れを残したままでは、支障をきたす恐れがあるからな」

言い終えるが早いか、教授はノートパソコンを抱えると、足早に自身の執務室を後にした。
まずは議長に話をして、上層部の召集をかけるつもりなのだろう。
相当に切羽詰っているのか、ドアを閉める音はかなり大きかった。そこまで気を回している余裕がないのかもしれない。
教授の足音が遠ざかっていくのを耳に挟みながら、セブンが口を開いた。

「……なんか、とんでもないことになってきたな。
いずれはヤミヤミ団と直接対決するとは思っていたが……まさか、こんな形で乗り込むことになるとは考えもしなかった」
「そう……ですね」

アカツキもダズルも、頷くしかなかった。
予期せぬ形でもたらされた情報は、恐らくは真実なのだろうが、だからこそ罠が仕掛けられている可能性が高い。
もっとも、それは白衣の女の『現在までの人物像』から推測される可能性に過ぎず、彼女の言葉を信じるならば――という前提があってこその話だが。

「しかし、意外だったよ。
アカツキ、おまえがあの女の言葉が本当だって言い出すなんてな。
……どうしたんだ?」
「そうだよなあ。なんであんなこと言ったんだ?」
「それは……今まであの人と何度か会ってきて、嘘なんて言われたことが一度もなかったから、そう思っただけです」

セブンとダズルの問いかけに、アカツキは頭を振った。
恐らく、レンジャーユニオンの中で彼が一番多く、白衣の女と相対したはずだ。
だからこそ、彼女が嘘を言わず、代わりに真実を回りくどく、それでいて誤解しやすい言葉にしていたのだと直感的に理解していた。
それと教授の前で意見することは別問題なのだが、

「……だな。それは俺も同じことを考えていた。
おまえが言い出さなきゃ俺が言ってたぜ」
「そうだったんですか?」
「ああ。あの女は『そういう』タイプのヤツだって、すぐに分かったからな」

セブン曰く、アンヘル社の無人島の研究プラントで女と相対した時のやり取りで、彼女の性格はだいたい理解していたのだそうだ。

「とりあえず、今後のことは上層部に任せて、俺たちは休ませてもらおう。
たぶん、教授の言う通り、明日の晩がヤマだろうからな」
「明日……」

ポケモンレンジャーになって半年あまり。
ほとんどの期間をヤミヤミ団との対決に費やしてきたと言っても良かっただけに、アカツキは明日から明後日の間に決着がつくのかと考えると、思うところがあった。

(ヤミヤミ団がなくなれば、アルミア地方は平和になると思うけど……それだけじゃダメなんだろうな。
困っている人やポケモンを助けることに、終わりなんてないんだから)

ヤミヤミ団はアルミア地方の平和を大きく脅かしている組織だ。
当然、解体させなければその脅威を取り除くことはできないし、レンジャーユニオンとしてはそれが最優先の課題となっていることは間違いない。
しかし、ヤミヤミ団の解体によって平和秩序を回復することが終わりではない。
理念として掲げている『自然と平和を守る』ことに終着点はない。人やポケモンが困るということに、終わりはないからだ。
ヤミヤミ団の解体がアルミア地方にとって大きな転換点(ターニングポイント)であることに違いはないが、道はその先にも延々と続いている。

(いつだってそうだ。
ぼくはぼくにできることを一つ一つ、確実にやってくしかない。相手がヤミヤミ団だろうと誰だろうと、それは変わんないんだ)

大きな転換点を前に、アカツキは自分の為すべきことを改めて思い返していた。
何度目になるか、正直よく分からない。
だが、自然と平和を守るポケモンレンジャーとして、常に自分の使命を理解していなければならないのだ。
それは彼だけでなく、すべてのポケモンレンジャーに共通して言えることだったが。

「ダズル、俺はオペレーションルームで所用を済ませてくる。
おまえたちは夕食でも摂って、自分の部屋で休んでてくれ。用ができたらスタイラーのボイスメールを使って呼ぶから」
「あ、はい。分かりました」

セブンはダズルに言伝を残すと、眉間にシワを寄せて思案しているアカツキに視線をやった。
どこまでも真面目でまっすぐな気性の持ち主らしく、こうと決めたら自分の考えを貫き通すところはあるが、そこに至るまでにやや時間を要する熟考型のタイプだ。

「じゃあ、また後でな」

言って、セブンは研究室を後にした。
その後、ダズルに声をかけられるまで、アカツキはひたすらに考え事を続けていた。






To Be Continued...

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