毎日ハロウィン企画:8日目のお話
ある夜の事。フワンテとフワライドが夜風に揺られていると、同じく風に乗ってふわりふわりとランタンが浮かんできました。見下ろすと、地上でニンゲンたちが飛ばしている物だと気がつきました。軽い紙で出来たランタンには願い事が書いてあるのですが、ニンゲンの文字なので読むことができません。綺麗な模様だねとぼんやり眺めていると、よろよろと弱そうにかろうじて飛んでいるランタンがありました。
それにはポケモンの足跡で願い事が書いてありました。
「どうかこの想いが伝わりますように」と書いてあるのですが、弱弱しく飛ぶランタンは、今にも落っこちてしまいそうです。フワンテはランタンを捕まえて、高い所へ持っていこうとするのですが、どういうわけか重たくて持ち上がらないのです。それならばとフワライドが持ってみましたが、やはり重たくて、持ち上げられません。
どうしようかと考えていると、シクシクシクと悲しい声が聞こえてきました。最初は、風の音だと思っていましたが、泣き声の主は持っているランタンでした。辺りの風を少し弱めると、更に声が聞こえてきます。このお願い事はあまりにも重たくて、届けてあげられないよ。叶えてあげられないよ。泣きながら、それでも燃料の限り飛ぼうとするランタンを、フワンテもフワライドも放ってはおけませんでした。フワライドは願い事を書いたポケモンのところまで降りていき、大きく息を吸い込んで吹き付けます。
ふきとばしくらいの風量で砂ぼこりが舞い上がり、ポケモンが目を覆っている間に、フワンテはランタンに書かれた願い事を手でこすって、わからなくしてしまいました。そんな願い事、届けなくってもいいんだよ。そうだよ、きみがつら~いのに、がんばることないんだよ~。フワンテとフワライドに慰められて、軽くなったランタンは空の高い所へふわふわと昇っていくのでした
他のランタンたちを越えて、雲を越えて、優しくやわらかな月の光をたくさん浴びたランタンは、一匹のフワンテに姿を変えて、風のゆくまま流されていくのでした。ぼくらにも、あんなころあったねぇ~と、感傷に浸るフワライドとフワンテは、ランタンだったフワンテが雲の向こう側に消えるまで、ずっと手を振って見送るのでした。
きょうのおはなしは、これでおしまい