毎日ハロウィン企画:9日目のお話
ハロウィンも近いこの季節、特に何があるというわけもなく、雰囲気にでも酔ってしまったかのように、ミカルゲの108個の魂はざわついていた。普段はしないことをしてみようと思い、魂はどうするこうすると話し合い、親切をしようと決めました。ミカルゲは魂の赴くままかなめいしを引きずり道を歩いていきます。しばらく歩いていくと、風船が木に引っかかっているのが見えました。木の下でぴょんぴょん飛び跳ねるも、届かないバネブーが躍起になっています。
ここで風船をとってあげれば、親切をしたことになりそう。ミカルゲが影を伸ばして風船を取ろうとすると、触れた瞬間パァンと音を立てて割れてしまいました。バネブーは意地悪なミカルゲが割ったのだと、えんえん泣き出してしまいました。そんなつもりはなかった。なんていえるはずもなく、困り顔で佇んでしまうのでした。
なんだかバカらしくなってきて、ミカルゲはその場を去りました。やっぱり慣れないことはするもんじゃないなぁと、がっくり落ち込みながら、ずりずり道を進んでいきます。次に出会ったのは、オロオロとあたりを見回しては地面を足で触っているエーフィでした。大事なものを落としてしまったらしく、落ち着かない様子で茂みを漁っていました。エーフィの足がちょっと届かないところに、ものしりメガネがおちていました。これを拾ってあげれば、今度こそ親切に違いない。ミカルゲはひょいと持ち上げて、エーフィにメガネをかけてあげました。
ありがとうと言おうとして顔を向けたエーフィは、自分のすぐ近くにミカルゲがいたことに驚き、うわあ襲われる!!! と、悲鳴を上げて逃げてしまいました。失礼だな、そう毎回毎回襲うわけじゃないのにと、ミカルゲはぷんすか怒るのでした。
ああもうやめだやめだ! 親切なんてしたって面白くもなんともない! いつも通りみんなを困らせて楽しもう! 108個の魂全会一致で親切にすることをやめたミカルゲは、今日はどんな悪いことをしてやろうかと考えながら、ウキウキかなめいしを揺らして進みます。
小川のほとりに出ると、川のそばで水を飲んでいる様子のラッタを見かけました。そばにたくさん木の実が置いてあったので、しめしめ、こいつを川に落として、その間に木の実をいただいてやろうと、ミカルゲはニヤリと笑いました。そーっとそーっと近づいて、後ろからふいうちを仕掛けると、ラッタは川の中に落ちました。やってやったぞとミカルゲがゲラゲラ笑っていると、ラッタが勢いよく顔を上げました。反撃されるかと思いきや、何故かニコニコしています。
ありがとう!実は木の実を食べていたらつっかえちゃって、苦しかったんだ。君が背中を押してくれなかったら、どうなっていたか……! ああ、すっきりした! といって、ラッタは軽快に走っていくのでした。木の実とともに置いていかれたミカルゲの108個の魂は、同時になんだそれー!と声を上げるのでした。
きょうのおはなしは、これでおしまい