1話 この狂った世界に中指を

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読了時間目安:14分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

現実は非常である。汚く、そして醜い世界。これが現実である。この世界に住む生物は現実を受け入れなければならない。冷たい世界を生き抜かなければならない。
これは、現実を描いた………を求める物語である。
(‥‥‥)


「‥‥‥‥‥‥は?」

何かが聞こえた。
誰かの声?

俺は寝ていたのか…?何でここに寝ていた?

…はゆっくりと起き上がる。

「…なんだ?…これは。」
見渡すとそこは洞窟だった。てかここどこ?青紫の景色が俺を照らしている。潤った洞窟だ。蒸し暑くジメジメしている。俺はこういうのが大嫌いなんだよ。

…でも、なんで? 意味が分からない。

なぜか自分の体が明るい色をしている。…は?黄色?

手を見た。指は5本。だが、小さい。俺の指がこんなに小さいわけがない。

起き上がって容姿が確認できる場所がないか探す。

あ……。 あそこに水たまりがあるじゃん。

水たまりに映った…の姿は、前髪3本ぴょこんとはねている。ウサギのような耳、頬のがまるく赤い。ギザギザの尻尾ってことは俺はピカチュウになってるやんけ!!

俺、ピカチュウになってるじゃん。(二度言う)

あぁ、なんだ夢か。夢以外に何があるというんだ。

あぁぁ 眠たい。

……夢から覚めるのを待とうか。



…はまた浅い眠りに落ちた。










あれからどれくらいたっただろうか。…はまた目を覚ます。

だがそこは洞窟。何度見ても気味悪く薄暗い洞窟である。

また自分の手を確認する。しかし何度見ても短くて明るい黄色の手だった。
もう一度寝るか?とはいっても睡魔は吹っ切れた。寝ようと思っても寝れない体になっている。そして…は大きくため息をつく。


「チッ。ここにいてもキリがねぇな‥‥‥。しょうがねぇ。出口を探すか。」
舌打ちをしてさっき寝ていたことに後悔している。寝なおしても戻らないのなら早く出口を探せばよかった。と思いながら洞窟を歩く。

道は一本道でその先には道が二つに分かれている。どっちにいこうか。

洞窟が奇妙に青紫色に光っている部分があるせいか、洞窟はそこまで暗くない。

とりあえず迷ったときは右の道だ。何故か知らない。なんとなく。

そういえばあることに気づく。


「ん?」
…は自分の体を触った。黄色い手、ぴょんとはねた前髪、ギザギザの尻尾。

‥‥‥俺って……そういえばだけど‥‥‥


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!??????????????????」
俺ってポケモンなの?!えっ?!人間じゃないの?!いやいやいやいやいや!!!

今頃気づいたのか。遅いぞ。(作者の声が漏れる音)


「は?はっ?はぁ?????どっどどどどっどどっどっどっどっどどどどどどうすんだよ!!これはやばいって!なんでなんでなんでなんで?!おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい!!!!」
今頃慌てて走り出す。出口はどこ?!それでなんで俺はポケモンになってるんだ?!

ここから抜けたら誰かがいるだろう。話を聞きたい。そのためには急いでここからでなければ。ピカチュウは必死に洞窟の一本道を走る。


「うっ?!」
ドサッ。
躓いて転んでしまった。


「…!クソッ!!なんなんだこの足!足が短くて超走りにくい!」

人間のカラダとポケモンの体構造は大違いである。ピカチュウは人間と比較して手や足が非常に短い。走りにくい。人間のように直立して走るのは非常に困難である。

では、どうやったら走りやすい?答えは簡単である。

「‥‥‥四足歩行か‥‥‥。恥ずかしいな///‥‥‥‥‥‥?!クソ恥ずかしいけどこれすごい走りやすい!体が軽いぞぉ~!!!」
走りはぎこちなくまだ慣れていないが思った以上に走りやすい。特に後ろ足で地面をけった時の感覚がとても強い。しっかりと足を蹴れていてぐんと進む。へぇ、ピカチュウってこうやって走ってるのかぁ。意外と悪くねぇなこの体。と思うピカチュウであった。



…ハァ……ハァ…今どこまで走っただろうか。何分走り続けただろうか。
走るのにだんだん慣れてきた。数分走っていると勝手に体に染みつく。俺って運動神経すごいのかも?
と思ったピカチュウであった。
…あ、あそこに誰かいる!ラッキー!ちょっとお話を聞かせてもらおうかな…。

見たものはアノプスである。少し広いフロアでふらふら~とあちらこちらを回っている。一体何をしているだろうか。


「ちょっとそこの!!少し話があるんだk……」
ピカチュウが話しかけようとした瞬間

ガスッ。

「え????????」
アノプスが急接近してきて何か近くで音がした。自分の胸元に違和感がある。

触ったら……うわっ?!血だ!

鮮やか色とは違って赤黒い血血血血血。自分の胸元から鮮血が滴れ落ちていく。その瞬間、胸元から急激に痛みが走った。不意に襲ったその痛みは鋭く


「なっ?!…がッ!!…ゲホッゲホッ!!」
思わず胸を抑え咳き込む。
出会って2秒で攻撃された。引っかかれた。血が出た。しかし、傷はそこまで深くはない。胸部を切っているだけの状態である。血は出ているが数十分経てば止まる程度だ。
何か情報が欲しかっただけなのに!初対面の人になんて態度だ!!クソ許せねぇ!
アノプスは何も喋らず、また‘‘ひっかく‘‘を繰り出そうとしている。!!!腕を振げた!


「と…とりあえず…逃げる!!!!」
このフロアはピカチュウがやってきた道を省くとアノプスの奥と左方向の2つの通り道があった。スッと体を左向きに方向転換して道を走って逃げる。

クソ野郎がッ!アノプスが追いかけてきやがる!後ろに戻ることはもう不可能。走った正面に同じような狂った野郎がいたら挟まれて俺はヤられる!しかし移動速度はこっちのほうが速い!逃げ切れる!いける!
振り向かずに真っ直ぐに広がる一本道を必死に走った。








ハァ…ハァ…

やはり全力疾走で走り続けるのは疲れる。!!アイツは?!ピカチュウは後ろを振り向く。
‥‥‥もうアノプスは見えない。振り切ったようだ


「へっ!クソがッ!俺と鬼ごっこして勝てると思ったか!!ざまぁみろ!!…ハァ…ハァ…」
全力で走って1分半、かなり疲れたためペースを落としてゆっくり歩く。するとまた広いフロアが見えた。そこには2体のポケモン、コラッタと……またアノプスだ。しかし二体とも眠っている。ラッキーだ。

そのさきには…階段がある!あ、大体わかったぞコレ。階段を上って行った先に出口があるんだ。しかし一体何階あるのだろうか。それはさておき、とっても大事なことがある。二匹を起こさずに気づかれずに階段に上ることができるかが問題。起こさないように慎重に歩く。そぉぉぉっと。そぉぉぉっと。

ピキッ!
「っ?!」
足元の石ころを蹴ってしまった。やばい!起きてる?????

‥‥‥寝息しか聞こえない。大丈夫だったようだ。もう少しで…もう少し…


‥‥‥‥‥‥やぁぁぁぁっと! 階段近くまで来れた!ふぃーっ!よかったよかったww


…と次の瞬間!!鼻に急激な違和感が!‥‥‥あっ、これはまずい。これはまずい!!ヤバイヤバイくるくるくるくる!!!

‥‥‥はっ…ふぇあっ…


「はっくしょーーーーーーーーーっ!!!!!」

うわ…やっちまった。なんつうドでかいくしゃみだ。でかい鳴き声だ!!!クソッ!自分!死ね!

‥‥‥はっ!!そうだ!
二体は起きた?おきていない?振り返って確認した。それは…予想通りだった…。ぱっちり目を開けている。まさにこれは


「フラグってヤツかよ…。逃げろォぉォぉォぉォぉ!!!!!」
ピカチュウは急いで階段へ走った。そして階段を駆け上った。




上った先には同じような景色が広がった。青紫色の薄暗い洞窟。ピカチュウは階段を上りながら…


「出口はまだなのかよッ!!クソがッ!!!俺を殺す気かよ!!起きたら洞窟だしなんかピカチュウになってるしマジでなんな‥‥‥!チッ。」
口が止まった。階段を上がってすぐ目の前に敵がいるからである。ズバットとアノプスだ。


「アノプス何体いるんだよ・・・・。」
5分くらいでもうアノプス(あいつ)を三体も見た。しかも体引っかかれて血が出た。なんだか腹が立ってきた。もう一回逃げるか?戦い方は知らないけど戦うか?逃げた先が行き止まりだったら完璧に詰む。戦うとしてもどうやって?ピカチュウのくせに電気の使い方が分からない。体当たりとかどうやってやるの???
つまり、使える技は‥‥‥ない。

現在、フロアの真ん中あたりにいる。そして敵が正面から斜め右と左に45度の位置にいる。距離はおよそ10m。少年の目先には一本の道がある。全力でフロアから一本道へ走れば、たぶん切り抜けれる。
おっし! 逃げよう!
ピカチュウは深呼吸をしてクラウチングスタートの構えをとって真っ直ぐ走りだす。


カァァァァァァ!!!!!!


「?!まぶしっ・・・!!!」
突然、斜め左で何かが光っている!眩しい!
思わず足を止めて光が目に入らないように手で覆う。しまった…逃げるチャンスを逃してしまった。


……光が小さくなってきた。

光ったものは何?

光の先から見えたのは星形の物体がこっちへ向かってきていることだった。
‘‘スピードスター‘‘だ。

不意に来た“スピードスター‘‘は避けられるはずもない。ピカチュウの足に鋭く突き刺さった。


「あああああッ!!!」
当たった足には血が出ている。足に突き刺さった星形の凶器を引き抜く。やばい抜くべきじゃなかったか?!…痛くて走れない!

光が完全に消え、その姿が見えた。

「………。タイミングよすぎるだろクソがぁ‥‥‥」
それはゴルバットの姿だった。
つまり、ズバットから進化したのだった。
すると後ろからも足音が。


「っっ!!ふざけんなよ!!!」
それは階段を上る前にいたコラッタとアノプスが階段を上ってきやがった!完全に包囲された。やばい。マジで殺される。しかも一体進化してるし。誰か助けに来ねぇかな…。助けがないと俺死んじまうぜ。………だめだダメだそんなネガティブなことを考えちゃいけない。さぁて、これどうやってぶっ飛ばそうか。それとも逃げ切るか。ぶっ飛ばすにしても方法がない。電気技すら使えないピカチュウはただの雑魚同然だからなぁ。

ザァッ
!!!左側から足音!!!!!!


「!!!しまっ…!!」
ドズッッ!!


色々考えすぎたせいでコラッタが‘‘とっしん‘‘を繰り出したことに気が付くのが遅かった。間に合わなかった。その突進をよけることはできず、直撃してしまった。


「がはッ!!」
‘‘とっしん‘‘はピカチュウの左脇腹に食い込み、吹き飛ばされた。


「あぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
悶えて左脇腹を抑える。それと同時に胸の傷、足の傷が痛みだした!クッソ痛アッッッッ!!まだ血止まってなかったのかよ!畜生がッ!!
‘‘とっしん‘‘は強烈な物理技である。ただし、攻撃をした側も受けた分の約四分の一のダメージを負う。ダメージ覚悟で思い切り突っ込んできた技をもろに喰らえば痛くないはずがない。


「このッ!!ざっけんな!!ぶっ殺す!!!」
歯を食いしばってピカチュウは吹っ飛んだ場所にあった石ころ(いしのつぶて)を拾って全力で投げて応戦した。この攻撃は、大正解であった。石ころは予想もしない弾丸のような快速音ですぅっととコラッタに向かって顔面に石をぶつけてぶっ倒れた。もう動かない。

これは、使える。いける!


「これはイケるぞぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
何だろうかこの感覚は。なぜか懐かしい。
ピッチャーマウンドでおおきく振りかぶって、
足をクアッと上げて大きく前に出して、
腕と手首、指のスナップをすぅと利かせる。
バットが空を切り、
キャッチャーのミットにクッと収まる。
それがすごくさぁぁっと爽快でなぜか安心する。

この清々しい感覚。懐かしい。楽しい。



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投げた石は次々と相手の額へと吸い込まれていく。気が付いたらコラッタ、アノプス2体を地に伏せさせていた。あとは急に進化してきたゴルバットだけ。

楽しい。すごく楽しい。もう足の痛さも何も感じない。
セットポジションからスッと投げる。127km/hの石ころがスゥッと回転音を唸らせてゴルバットへまっすぐ回転しながら向かっていく。
しかし石ころはクゥァッと妙な音が鳴って翼で…


「クッソッ!!はじきやがった!!」
石ははじかれてしまったものの、よく見たら翼に傷のようなものが見える。血が出てる!!ノーダメージではない!攻撃は効いている!!!
もう一球!!!ツーストライクワンボール。自分の心臓の鼓動がドクドクと速いテンポで燃えていることを感じる。最高に楽しい!!!!地面に転がっている石を握りしめて、今度は大きく振りかぶって足を全開で上げて、石が指から離れるギリギリまで力を入れて投げる。

それと同時に!ゴルバットも応戦!スピードスターをピカチュウに向かって撃った!


「うっ?!」

投げた直後にスピードスタが肩に刺さる。胸を切られた痛み、突進を食らった痛みが。咳き込んで膝がストンと落ちてしまう。足が動かない…体力の限界だ。もう投げる力も無い。

投げた石は直撃した!それと同時にゴルバットは崩れ落ちた。



……………奇跡だ。
敵は倒したが喜びはない。もう力が出ないからだ。だが、倒れていても助けは来ない。現実、そんな漫画みたいなドラマは起きない。一人で立ち上がって歩かなければならない。ここでは助けてくれる人は誰もいない。

足が震えながらも体に鞭を打って立ち上がって必死に一歩ずつ歩く。
胸からは血が出ている。足にも。コラッタから突進を喰らった際にも少量の吐血をしている。肩に刺さった星の凶器をぐっと歯を食いしばって抜いて、
歩く。歩く。歩かねばならない。

幸い、この階には誰もいなかった。







…………………………。


「出口だ…。」
しかし、待っていたのは光ではなく、夜だった。洞窟を出ると


「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁもうだめだ。」
暗くて明るい砂浜にピカチュウは仰向けにぶっ倒れた。

そこは海岸。深夜2時。
真っ暗だが暗い分だけ月が明るい。
海が月の光に照らされて道が作られている。

綺麗だ。

全く、めんどくせぇ世界だ。
そう思いながら目をつぶった。







現実現実現実現実現実。
現実は甘くない。

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