第102話 嘘の変更を更新して保存

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

「アヤノ、夢と目標のためにサニー地方からジョウト地方へ単身、自らの意志で訪れた。そこでクリスタルと出会い、夢を叶えるために自分と戦った強い者。オーキドからの評価は……『強い者』」

 アヤノは自分のページを読むと照れくさそうに笑って次はコウよ、と催促させた。不貞腐れてるマイをチラ見してからコウは申し訳なさそうに読み始める。

「コウ、ポケモン達を守るために『闘う者』と評価。ポケモンバトルの『戦う者』とは違い、自分の境遇、困難と『闘う者』」
「コウちゃんすごいね~レッド先輩と同じだね」
「やややめろ。どうしようご本人さま登場とかしたら俺この場で死ぬかもしれない」

 一通り読み終えるとコウはアヤノと違い顔を照れという意味ではなく恐ろしいと言う意味で顔を赤くしてぶつぶつと呟いていた。
 しかしオーキド博士が言っていた「読めば分かる」がマイには理解できなくて頭上にクエスチョンマークを何個も浮かべた。

「マイ、君が冒険に出ようと決意したことは素晴らしい、もちろん目的もな」
「…………」

 オーキド博士の言葉に一瞬だけ苦い顔をしたコウだったがマイがコウに笑いかけたためすぐにいつも通りの表情に安堵を付け加えた。

「そして宣言通りバッジを全て集めたな」
「う、うん」
「そして今、ポケモンリーグにも挑戦しようとしている」
「うん……」

 何が言いたいのかマイ含めその場にいた誰もが分からずにいた。オーキド博士は気を使っているのであろう、はっきりと言えないのだった。

「確かにマイ、君は強くなった。さらには守れるようにもなった」
「えへへへ」
「だが、しかし戦う者はすでにおる。守る者の人物も決まっている。君に残されたものは――」

 褒められて頬に手を当てて顔を緩ませるマイに言葉を続けた。この調子なら言えるのではないか、オーキド博士はごくりと生温い唾を飲み込んだ。

「導く者」
(なにそのドラ○ンクエ○トみたいな名前)
「アヤノ、何か別のこと思ったでしょ」
「別に?」

 オーキド博士の雰囲気を察したのか、その言葉に重くのしかかられたようなマイは逆に、明るく振るまおうとアヤノに話を振る。

「果たしてマイ、君は導く者なのか……」
「へ? 違うんですか?」

 どうやらオーキド博士が悩んでいるのは『導く者』が相応しいか。他にも何かあるんじゃないか。バッジ八つを集めるためにポケモン達を導いた、ゴールドを冒険へと導き、弱い者を守る事が出来る強さと芯のある人間として成長させることを導くことができた、そしてコウをウツギ博士の元へ導いて行った。

「十分だと思います。私はドククラゲの大軍が海で暴れて災害レベルになりそうだったのをマイのアイデアで無事に済んだことを誇りに思っていますし。導いてくれていますよ、昔も今も、そしてこれからも……」
「そんなこともあったのか……。それは知らなかったな」

 アヤノの説明に腑に落ちたのか深く首を下げて、ゆっくりと顔をあげるとマイの爛々と輝く金色の瞳を見て言った。

「マイ、君は『導く者』じゃ」
「導く者……わかった! わたし、がんばるよ!」
(うーん、本当によかったんじゃろうか?)

 能天気な反応をしているマイに内心、やっぱり不満そうなオーキド博士であったがアヤノが「そろそろ勉強の時間なので」と頭を下げたので研究所の外へ出て手を振りながら見送った。


◆◆◆

 ――ワカバタウン、ウツギ研究所。
 研究所にはマイ、コウ、アヤノ、ウツギ博士の他にクリスとシルバーがいた。クリスとシルバーはウツギ博士の手伝いに来ていたのだがサニー組の三人はソラを待つためと喧嘩防止のために勉強道具を持って訪れていた。

「五十歩ヒャッホーってすごいよね」
「五十歩百歩ね」
「ちなみにすごくないぞ、違うように見えても、実際はほとんど変わらないことって意味だからな」

 いったいどんな教材を見てそう思ったのかマイが口に出すとすかさずアヤノに訂正されて、コウにもオマケで説明された。項垂れているとクリスの声が「ちょっと失礼」と聞こえていた。
 大きな研究所の一角で長方形のテーブルを借りて目いっぱいに教材を広げているので、クリスは器用に片づけながらそれぞれの手が届く範囲にコーヒーカップを置いてくれたのだ。中身はアヤノにはコーヒー、マイとコウにはココアを淹れてくれていた。

「あんまり気張りすぎたらすぐに疲れちゃうからね、アヤ困ったら言ってね。マイちゃんの扱いは結構手慣れたものよ」
「クリスさんそれどういう意味ですか……」
「ふふ、冗談よ冗談。これでもゴールドから言われてるの」

 ココアの入ったコーヒーカップを両手で持ったマイは息をふーふーしてから口に一口含んだ。ゴールドはこの場にはいない、だけどいつでも見守ってくれているんだな、と分かり勉強にやる気が出たのかちゃっちゃと宿題を進めた。

「傷薬はポケモンが体力を消耗した時に使うが、ポケモンの技でも回復できる。三つ答えよ」
「えーっと……眠る、吸血、自己再生」
「おー正解だ。珍しいな。ちゃんと勉強したんだな」
「まーねっ!」

 アヤノが問題文を読み上げて、マイが答える。時間は少しかかったがすべて応えることができた。ドヤ顔でマイがコウを見ると冷たい目で見られる。だが、外で物音がすると一瞬で瞳孔が開き、研究所の扉の方を見つめた。

「ソラさん! こちらにどうぞ!」
「ああ、アヤちゃんありがとう。みんな待たせてごめん、オーキド博士に呼ばれたんだ」
「ソラにいちゃんも? わたし達もさっきお呼ばれされたよ」
((嘘つけ!))

 いち早くアヤノがパイプ椅子から立ち上がりソラを招き入れる。長方形で、コウとマイが隣に座っていたので隣が空いていたアヤノが椅子を引いて座らせた。
 マイが「わたしも呼ばれたよ」と堂々と嘘をついたのでアヤとコウに足を踏まれるが涼しい顔をしてスルーした。

「ほらポケモン図鑑もらったんだ。代名詞? って言うのかな、そういうのももらったんだ。マイちゃん達ももらったんだろ?」
「うん! 導く者!」
「マイは無理矢理だったけどね」

 コウとアヤは鞄から、マイは上着のパーカーポケットからポケモン図鑑を取り出してテーブルに置いた。なんだかようやく四人が揃ったようで懐かしい感じに包まれる空間であった。

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