第99話 ようやく会えた

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

「あーぁ、勉強のスペシャリストが来るまで時間あるから外に出たのはいーけど……」

 ウツギ博士に朝起こされたマイはワカバタウンの空気を吸いに林の中に入っていた。木々の葉からもれる日差しが気持ちいい。
 たまには散歩をさせようとガルーラをモンスターボールから出してのんびり歩いていると先頭を行くマイが立ち止まった。

「がう?」
「天気良すぎない? なーんかポカポカ陽気だし眠くなっちゃうよね」

 後ろを歩いていたガルーラに顔が見えるように振り向くとガルーラが何かを発見したようで慌て出した。言葉は分からないが何となく雰囲気で察することは出来る。

「ガウ?! ガウガ!」
「あ! あんなところに男の人が!? 野生のポケモンに襲われてる!」

 林の中にはキャタピーやコラッタ、ポッポなどといった小さなポケモン達で平和なはずなのだが、この陽気なせいで山奥にいたポケモンが林まで降りて来たらしい。

「あれはニドキング! どうしてワカバタウンに? あっー考えてる暇はない! ルーちゃん! 炎のパンチ!」
「ガーッ! ウーッ!」
「今だ!」
「ガッー!」

 マイにはどうしてニドキングがふもとまで来ているのか分からなかったが男性がニドキングの足元で尻餅をついているのを確認するとガルーラに素早く指示を飛ばす。
 その指示に合わせるガルーラは、右手の拳に炎を集めて逃さぬように左手で覆う。その右手を体の左側に来るように回転を加えると更に炎は増す。最後にマイの出す拳に合わせてニドキングに一撃を食らわすと目を回したニドキング。

「大丈夫ですかー!」
「ありがとう助かったよ。君のガルーラよく育てられているね……あ」

 尻餅をついていた男性が砂埃を払い終わると同時にマイが走って駆け寄る。久しぶりに走ったが息は上がっていなかった。
 男性は綺麗な金髪をワカバの風になびかせながらガルーラの腕を慣れた手つきで触る。ガルーラからマイに視線を変えるとこれまた透き通るような緑色の瞳で捕らえられた。そして、素っ頓狂な声を出した。

「……へ?」
「ま、マイちゃん!?」
「もっもしかしてソラにいちゃん!? どうしてワカバタウンに!? あれなんかデジャブ!」

 はじめの内は理解出来ていなかったマイだったが名前を呼ばれると懐かしい響きを脳内のどこかで結びつけ相手の名前が浮かび声を出す。
 あまりにも突然すぎてパニックになりマイは手をバタバタと興奮気味に上下させてからソラに更に近寄り胸元に手を置いたりまでした。
 そのまま家に向かおうと人差し指で家の方向を指差して案内をする。

「ははっ相変わらずマイちゃんは面白いな。俺はゴールド君に頼まれた勉強のスペシャリスト!」
「なんだぁー! ソラにいちゃんだったんだ! あ、わたしのお家こっちだよ! 上がって上がって! お父さんは今いないから気兼ねなくどうぞ~」

 変わらないマイにそんな言葉をぶつけて爽やかに笑う。家に着くと扉を開けてマイが先に上がり、振り返りながらソラに言う。

「……! そんなに難しい言葉を覚えたんだね! 成長したなあ」
「えへへ、そんなこと~あるかな~へへ~」
「そうやってすぐに調子に乗る所も変わらないね。それでマイちゃん、ゴールド君から聞いたけど勉強がまるで出来ないんだって?」
「うっまあまあだよ! 昨日も勉強したしっ! それより! どうしてソラにいちゃんはゴールドのこと知ってるの?」

 気兼ねなく、と言う言葉に感涙したのか薄っすら涙が見えた。頭の後ろに手を当ててニヤけるように喜ぶマイを一撃必殺ならぬ言葉で叩き潰しかけるソラに部屋を案内しながらつまずく。

「あー話せば長くなるんだけど。実はマイちゃんが旅に出てる時にコウに会ったんだ。それからつい最近ホウオウとライコウを捕獲したから、その時にアヤちゃん、アヤノって子にも会って。ほら、分かるだろ? アヤちゃん」
「アヤ、ちゃん……ま、まあ」

 部屋に招き入れると二人掛けの白いソファーに並んで座る。
設置してあった小型冷蔵庫から飲み物を出してテーブルの上に準備してあった、落としても大丈夫用のプラスチック製のコップに注ぐ。

「その二人もスイクンとエンテイを捕獲したんだ、それでポケモンの謎解きのカギになるかもしれないマイちゃんのルギアと合わせてジョウトに伝わるポケモン神話に……って話について行けてるか?」
「うう頭痛いよー! 簡単に言って!」
「簡単にかぁ。簡単に言うとコウの紹介でアヤちゃんと出会って、アヤちゃんの紹介でウツギ博士に出会った。それで、そのウツギ博士からゴールド君を紹介してもらった。それで、一昨日くらいだったかな、ゴールド君に勉強を頼まれたわけ!」

 話について行けなかったマイがヤケ飲みするように一気に飲み干すとテーブルにプラスチック独特の乾いた音を立ててコップを置いた。
 ソラは少し悩んだのか眉を下げて瞳を宙にさまよわせると思いついたのか右手の人差し指を立てて説明する。

「出会いに出会いの連鎖だったんだ。すごいね! 運命だね! あ、このブレスレット今でも大事に付けてるんだよ! お守りみたいになってるんだ!」
「おお、金色のブレスレットはゴールド君に渡したのかな?」

 分かっているのか分かっていないのかさておきマイは「すごいね」だけで終わらせた。すごいね。それから自分の話に戻すと右腕に付けていた銀色のブレスレットを見せる。
 ソラは一瞬驚いたようだったが悟られないようにすぐに平静を装う。ゴールドに渡したと言っていなかったが適当に言ってやると的中する。

「うんっ! あ、でも旅行から帰って来たら返してねって言ってあるんだー!」
「そ、そっか。たくましくなったね、本当に」

 別の意味で自分の意思をハッキリと言えるようになったマイに一歩引くソラに気づかないマイは言葉を続けた。

「えへへー。でもソラにいちゃんが勉強教えてくれるなら千人力だよ!」
「それを言うなら百人力だよ。あ、メール来た。他のメンバーが家の前に来たらしい。玄関までお出迎えと行こうか!」
「えーっ誰だろー!」

 やっぱりどこか抜けてるマイに子供らしい笑顔でソラは笑うがポケギアにメールが届いたらしくポケギアを操作する。
 ソラの次こそがシルバーのお姉さんかも、とマイは期待に胸を膨らませる。

「ってアヤノか」
「失礼ね! クリスさまから頼まれてやって来たのよ!」

 玄関を大きい音を立てて開けていたら、そこにいたのはアヤノ。思わず目を白けさせてしまいアヤノは眉を寄せて講義する。

「俺も一応……来たけど……」
「コウちゃん! 心のオアシスだよ! 入って入って! あーほら、アヤノそこ段差気をつけてよ」

 アヤノの後ろからコウが気まづそうに顔を出し、右手をちょこんと出してアピールをするとマイは笑顔になりアヤノからコウを離して中に招き入れる。後ろからアヤノが入る時につまずきそうになりマイはアヤノに手を差しのべた。

「あ、ありがとう……」
(なんだかんだアヤちゃんとも友達じゃないか。素直じゃないな、マイちゃんは)

ちゃっかりアヤノも手を取り家に入った。ソラはなんだかんだ優しいマイに安堵の息をするのであった。

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