第96話 パジャマでおじゃま

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

『ポケモンリーグ・シロガネ大会、今年はワカバタウンで開催! 腕に自信のあるトレーナーは挑戦すべし! ワカバタウンのポケモンセンターにて受付中! 最終受付は3月31日の昼12時までです! お急ぎを!』

 ワカバタウンのポケモンセンターにデカデカと書かれたポスターが張られたのはマイが冒険を終えてからそう遅くなかった。
 十二月に張ってあったポスターは何度となく見てきて、テレビのニュースでもポケギアのトレーナー向け講座ラジオにも毎日聞かされていた。なのに。

「ど~して登録してねーんだよ」
「ま、まだ大丈夫かなって……そんなに睨まないでよ~」

 またまたワカバタウンで有名なポケモン屋敷にてマイはのんびりと温かいココアを飲んでいた。ゴールドの自室に向かい合わせで炬燵の中で他愛もない話をしているだけだったのにゴールドが聞いていたラジオからそんな事が聞こえてきて空気は一変した。

「マイ、お前分かってんのか! 登録してないと大会自体にも参加できねーんだぞ!」
「大きい声出さなくても聞こえてるよ。だいじょうぶ、まだ明日があるから!」
「その明日しかねーんだよ! いいか! 絶対に寝坊するなよ! ったくあんだけ言ったのに登録してないとかよォ!」

 両腕で力強く炬燵を叩きながら起き上がるゴールドを見て小さい背中をさらに小さく丸めるマイ。
 現在の時刻は賑やかなこの町もだいぶ静かになる夜の十一時。このまま泊まる予定のマイは、これ以上怒られたくないと炬燵から抜け出してゴールドのベットに逃げるように潜る。

「あっオイコラ逃げるのか!」
「ちがうよ~寝坊しないために寝るんだよ。早くゴールドも来てよ」
「まあそれならいいか。いいのか? あーまぁいい。よし寝るぞ」

 布団から顔だけ出してマイはゴールドをベットに誘導するとゴールドはラジオと部屋の電気を消して布団に潜ってくる。寒い冬でも二人一緒ならそんなに寒くないね、とマイは暗い部屋で見えないが笑いながら言ってきた。

「おしゃべりしてっと寝坊するからな。寝るぞ、おやすみ」
「うんっおやすみ、ゴールド」

 マイは寝付きがいいのですんなりと眠りの世界に行ったがゴールドは逆に中々寝付けずにマイの横顔を見ていた。

(もし俺が起きれなかったらこいつ確実に登録できねぇんだろうな……今日は母さんもいねぇし俺がしっかりしないとな。目覚まし時計はちゃんとセットしたし大丈夫だろうけど)

 悶々とした考えはポジティブとはとても言えない。旅が終えた今でもポジションは保護者として変わらず、面倒を見ている。

(こいつの寝てる顔見てるとこっちまで眠くなるな……)

 ぼんやりとした感覚の中、頭を使うと眠くなるタイプのゴールドだった。

◆◆◆

「――! ――!! ――ろ! 起きろマイ! 大変だ!」
「…………んあ、ごーるどおはよー」
「おー、おはようさん。ってちげーよ! お前目覚まし止めただろ!?」

 寝起きの前髪が爆発していないゴールドに起こされたマイは眠たい目をダルそうにこすっている。目覚ましを止めたと聞かれて起きていない頭で考えようといても何も思いつかずに首を傾げるのみ。

「ああ! もうラチがあかねぇ! 寝坊だ寝坊! パジャマのままでいい! ポケモンセンターに急ぐぞ!」
「んえ~」

 ゴールドがポケギアを見せてきて、マイに見えた時刻は「12:15」完全に寝坊している。マイはゴールドにおぶさると全速力でゴールドが走る(ゴールドライド)
 パジャマ姿できたゴールドとマイにポケモンセンターに訪れていた人達は目を丸くしたり、笑ったりしていた。完全に起きていなかったマイだがここでようやくことの大変さに気づいたのかゴールドから飛び降りるとバッジを置いてジョーイさんに見せる。混乱しているのか必要ないポケモン図鑑まで置いている。

「すいません寝坊しました! リーグ登録お願いします!」
「う~ん……マイちゃんその言いづらいんだけど……」

 ジョーイさんは視線を時計へとずらして、置かれた図鑑とバッジをマイに返すように押し返してきた。

「時間が過ぎているから予選無しの登録ができないのよ」
「やっぱり~って、へ? 予選無し登録?」
「マイちゃん知ってるかな。今日の十二時までの登録はバッジ所有者の期限なの。バッジ所有者は予選なしで決勝戦から出場できるのよ。だから、その~……バッジを集めてきたんだろうけど予選有りの登録ならまだ出来るわよ」

 ゴールドとマイの目がテンになった。登録が出来ずに来年までリーグを待つ羽目になるかと思いきや、本日三月三十一日は「バッジ所有者」が「予選無し」で「登録」できる最終日だったのだ。
 言い方を変えれば「予選有り」ならまだ「登録」出来るということ。せっかく集めたバッジが無駄になってしまうが本末転倒は防がれた。

「それで登録します! お願いします!」
「はい、かしこまりました! それでは登録と行きたいのですが~」
「ですが?」

 ジョーイさんの言葉にマイとゴールドは同じ方向に首を傾げる。

「パジャマから着替えてこようか」
「あっはい……」
「予選有りの登録は四月七日までだけど今日中に来てね。心配だから」
「うっはい……」

 すっかりパジャマ姿のことを忘れていた二人。ジョーイさんの気の使ったスマイルに顔を赤くしてポケモンセンターから出て行ったそうな――。

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