第70話 タコの子はタコ

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

「完全ふっかーつ! ゴールドおまたせ~」
「おーよかったよかった。このまま永遠に釣りするかと思ったぜ、ほらよ。結構珍しいポケモンらしーぜ」
「わーなにこの子? えと、マンタイン?」

 ぎりぎり九月になるまでポケモンセンターでお世話になったマイは頭を深く下げてお辞儀をする。「元気で何よりです」ジョーイさんはそう笑顔で二人を見送った。
 そして今まで歩いてきた道を逆に戻ってエンジュシティまで来ていた。ここから東に行くと42番道路になり、泉を越えるとチョウジタウンがある。

「おー。せっかくゲットしたけどよ、俺は七体もポケモンを扱える程器用でもないしな、母さんに預かってもらうことにした」
「そっか! でもすぐに会えるよね? 博士に言っておこーか?」
「いや大丈夫だ。ポケモンセンターから転送システムでウツギ研究所に送ってもらうからさ」

 ゴールドはマイがポケモンセンターで休んでいる時に暇だったので、貰った”すごい釣り竿”で釣りをしていたらしく、釣ったマンタインをマイに見せたのだが手持ちが六体になってしまうので持ち歩いてもいいのだが、扱える自信がないので預けると言い出した。
 プライドが高いゴールドがそんなことを言うなんて珍しいなあ、とマイは思ったのだが言う必要もないというのはやめておいた。そんなこんなでエンジュシティのポケモンセンターに寄り道。

「マイ、失礼なこと思ったろ?」
「えっ!? なんでわかったの? ううん、思ってないよ~! お願いだから怒らないで~!」

 顔に書いてあんだよ、ゴールドは額に青い筋を浮かせて声を上げ、マイが目をぎゅっとつぶり懇願しているシーンを見ていた一人――

(あの声、マイちゃん? いや、まさかな……)

 首筋を隠すくらいの長さの金髪に深い緑色の目をした少年が目でマイを追いかけるように見ていたのだが、人違いだと思いエンジュシティを後にする。

「ねえ、わたし転送スイッチ押していー?」
「もう押してんじゃねぇか! まあいいけどよォ、これで送れたっと! さ、42番道路に行こう」

 円形の台にモンスターボールを置き、その定位置のすぐ下に張り付けられているタッチパネルを押すと、モンスターボールは砂嵐にあったように姿を消していく。
 不思議そうに首を傾げてマイはじっと見ていたのだが、ゴールドにパーカーのフードを掴まれて喉を鳴らし、歩くべき向くに身体の軸を変えた。

「ゴールド、なんで次に行く場所わかるの? ヒントでも書いてあるの?」
「なんでってなぁ……。アサギシティで行き止まりだったし、戻るしかねえだろ? そういうこった、分かんだろ?」
「なるほど~! おもしろいね!」
「うん、まあお前が面白いならそれでいいよ、ほら行くぞ!」

 東ゲートを抜けるとすぐ正面には大きな泉がお出迎えしてくれた。しかし、横を見ると洞窟もお出迎えしてくれている。どちらからでもチョウジタウン行けると掲示板には書いてあるが。

「よし泉行こう」
「だろーな。よし、アルファに乗って泉を渡るか!」
「おー!」

 洞窟には良い思い出がないので速攻で泉を渡る決断をする。ボールから泉目掛けてラプラスを繰り出すと背中に乗るマイとゴールド。
 のんびり泉を渡りたいとろこだが…………。

「いいラプラスを持っているな! 俺とバトルだ!」
「いいよー」
「緩いな!? まあ、いい! 水上バトルはしたことがあるか?」

 もうじき岸に着くというところでキャンプボーイが泳いで近寄って来たと思ったらバトルを持ち掛けられた。今までベット生活をしていたマイにとっては燃えるバトル。台詞は緩いが気持ちは燃えている。
 水上バトル? 言葉にクエスチョンマークを上げるマイはゴールドを見るがゴールドも首を横に振る。

「したことない! どうやるんですか?」
「そうか! 俺もしたことない! なぜなら俺はキャンプボーイだからな!」
「フィーちゃん、念力」
「おいおいおいマイ!? なにやってんだ!?」
「関わっちゃいけないタイプかなって……」

 分からないことは知らないと聞く、それ常識。しかしキャンプボーイも知らなかったらしくマイのエーフィに念力によって岸まで飛ばされてしまう。
 突然の行為に目を開くゴールドだったがマイは冷静に言葉を返した。岸まで着くとキャンプボーイがお出ましだ。

「急に飛ばすことないだろ!? 俺が誰だか分かってるのか!? フーヤだぞ!」
「「 知らない 」」
「ウッ、まあそういう人もいるかもしれないね。まあ、陸に上がればこっちのもんさ、バトルをしよう!」

 まあ地上なら悪くないか~、なんて軽い気持ちでマイはバトルを引き受ける。フーヤと名乗った少年はサファリハットを投げ捨てたと思えば帽子からモンスターボールを取り出す。

「オクタン! 行け!」
「た、タコさんだ! ゴールド、タコさんだ!」
「オクタンはタコだよなあ、どう見ても……」

 赤いフォルムに黄色い吸盤、まさにタコ。見た目にも水タイプだと判断がつきすぐにピカチュウをマイは出す。ゴールドは独り言のようにつぶやいた。

「ピーくん! 10万ボルト!」

 耳をつんざく程の音を立てての大きな雷鳴にオクタンも目を回す。

「オクタン! からみく! オクタン砲!」
「びぃがぁ~」
「あ~っピーくんが捕まっちゃった!?」
「相性では勝ってる! このまま攻撃だ!」

 しかし驚くだけのオクタンではない、自慢の吸盤をピカチュウに張り付けてどんなにもがこうが離さない。
 素早さが取り柄のピカチュウだが掴まっては元も子もない。しかも間近でオクタンの口に光の束がたまっていき、今にもオクタン砲を繰り出す気だ。
 ゴールドの言葉を聞き、ピカチュウに指示を出す。

「ピーくん! オクタンの口に向かって電気ショック!」

 いくら状況がピンチといえど相性ではピカチュウが上、オクタン砲を食らう前に電撃を食らわせばこっちのものだ。本当は10万ボルトをしたかったが時間を短縮させるため、電気ショックに変更。
 もちろん、オクタンはこの電撃に耐えきることができなかったので倒れる。気絶したので吸盤の吸い付く力もなくなりピカチュウは身体を震わしてマイの元へ戻って来た。

「まだまだだね!」
「お、お前、いや君の名は!?」
「わたしはワカバタウンのマイだよ、忘れないでね!」

 オクタンをボールに戻すとフーヤは二人駆け寄り、マイと握手を交わすと名前を聞かれるのでドヤ顔で応えてやったのだった。

「いや、そっちの男の人です!」
「俺かよ!!」
(ドヤ顔の意味……)

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