第69話 青い春がやってきた?
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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください
「その声はゴールド君!? マイちゃんもいるのかい!?」
「ウツギ博士か! マイ、よかったな! 助かったぜ!」
返って来た返事は何よりも嬉しい、人間の……ウツギ博士の声だった。
ゴールドは腰に抱き付いているマイの頭を軽く数回撫でて顔を上げさせる。顔を上げる頃には小屋の中にウツギ博士、ゴールドの母親が顔を赤くしてそこにいた。
「ゴールド!? あんたどうせ無理やりマイちゃんを連れ出したんでしょ!」
「お! 母さんも来てるのか! よかったぜー! それがよォ~!」
「それがよォ~じゃない! 危険な目に合わせた自覚はあるの!?」
(どうしようどうしようゴールドさんが怒られてる! もしかしたらこのまま会えなくなっちゃうのかな……そんなのイヤだよ……なにか言わなきゃ……助けなきゃ!)
わなわなと震えながらゴールドの母さんは渇を入れるような厳しい口調でゴールドに言い放つ。本人はけろっとしているがマイは気が気でない。上から圧力がかかって押しつぶされそうな気になっている。
(ゴールドさんと会えないなんてそんなのイヤだ……ずっと、ずっといっしょにいたいのに!)
「もうしばらくは大人しくしていなさ「違うの! 違うの!」ま、マイちゃん!?」
ヤキモキする気持ちが胸いっぱいに広がり、興奮で胸が激しく波立つのを感じる。
我ながらおかしいほどに酷く興奮していることがマイにも分かってはいたが止められない。
「わたしが無理言ってゴールドさんに連れてきてもらったんです! わたしがワガママ言って……! だっだからゴールドさんは関係ないんです! 怒らないであげてください!」
興奮してガタガタと震え、身体の下の方から火照って来た。耳の側で大声を出されたように驚くウツギ博士と母さんは言葉が出てこない。急ブレーキをかけられたような動揺に近い。ゴールドも驚いて思わず肩が飛び上がる。
「マイ……どうしたんだよ。俺、気にしてないぜ?」
「そういう意味じゃないんです~! ゴールドさんといっしょにいれなくなるような気がしてそんなのいやだから……ってあれ? どういう意味?」
両手を握ってブンブンと上下に振って主張していたマイだが、どうしてここまで苦手対象だったゴールドに自分が怒っているのか分からずに、小鳥がさえずるような呟き方をする。
そんないつものマイを見て、ゴールド含め三人はほんわかとするのであった。
◆◆◆
エアームドに襲われた日の夜――ゴールドは布団に潜り考え事をしていた。
家族同様であるポケモン達は真剣な表情をして頭を悩ませるご主人をじっと見ていたのだが、邪魔になると思い部屋から出て行く。
(今日はたまたま怪我をしなくてすんだものの、あの時山小屋を見つけていなかったら俺等は確実にあのポケモンの餌食になってただろうな)
ガラにもなく妙に落胆してしまって中々寝付けない。ワカバタウンに引っ越してきた年下の女の子がお気に入りで、自分の良いところを知ってもらおうと遊びに誘ってきて、ちょっとした好奇心で彼女を危険にさらした、それが心につっかえているのだ。
(風邪引いてないよなぁ……。でも震えてたし、悪い事しちまったのは確かだ。俺がちゃんと知識を持っていたら、あんなに怖がられることもなかったんだよな。俺に力があれば……)
寝ていても仕方ないと、黒々と磨き上げられた冬の空を布団から出てきて眺めていると、外から小さく声が聞こえてきた。
「マイ!? お前こんな遅くに何してんだ!」
「しーっ! ゴールドさんしーっです! そっち行ってもいいですか?」
「おー。今は母さんいないし、気兼ねなく来れるぜ」
突然の訪問者に顔がぱっと明るくなる。マイを家に招き入れると木製の蓋つきバスケットを手渡された。
「おー! クッキー! 焼いたのか?」
「は、はい! 今日はゴールドさんに助けてもらったのでお礼です……おいしくないかもですけど、はかせとがんばって作りました!」
「うんめ~! マイ、うまいよ!」
マイの台詞が言い終わる前にバスケットの蓋を開けてクッキーを食べるゴールドを見て、ほっとしている。えへへ、と笑うマイを見て思わず口が止まる。
(守りきらなきゃな。そのためには強くならねえといけねぇ! 明日、ウツギ博士に図鑑をもらいに行こう、守るために俺は強くなる)
「ゴールドさん、口の端にクッキー付いてますよ」
「オイコラ」
「ええ!? ご、ごめんなさい~!」
人の心も知らないで、とゴールドはふて腐れたようにソッポを向き、自分の部屋である二階の部屋に向かうので、マイも慌てて靴を脱ぎ追いかける。
「ま、ありがとな」
「え? なんか言いました?」
「うるせえ! さっさと入れ!」
◆◆◆
「あのポケモン、エアームドっていうポケモンらしいですよ。はかせに聞きました! やっぱり最近見つかったらしいです!」
「ははーん、エアームドねえ。ずいぶん手こずられてもらったぜ」
部屋にあるビリヤード台で遊ぶゴールドを見ながらマイは思い出したように言う。
ラジカセのボタンを押して、お気に入りのラジオ番組を合わせて曲を聴くマイは鼻歌混じりで心地好さそうに頭をゆっくりと振っている。
(気にしてないのか? ならよかったけど、やっぱりそれなりに気を使ってるんだよな……俺はいつも通りにしていた方がいいのか?)
(ううう、どうしてだろゴールドさんの顔がまともに見れない)
「マイ、泊まってくよな? 風呂入ったか?」
「はい! あとは寝るだけです。はかせにも言ってきました!」
「そうか、ならいいんだけどよ。ま、ゆっくりしてけよ。明日もどうせ寝坊時間に起きるんだろ」
ちゃんと早起きしますーと言うが絶対ゴールドより一時間ちかく遅く起きると確信が持てるため、明日早朝ウツギ博士の家に行こうと決意。
(待ってろよ! ポケモン図鑑!)
「ウツギ博士か! マイ、よかったな! 助かったぜ!」
返って来た返事は何よりも嬉しい、人間の……ウツギ博士の声だった。
ゴールドは腰に抱き付いているマイの頭を軽く数回撫でて顔を上げさせる。顔を上げる頃には小屋の中にウツギ博士、ゴールドの母親が顔を赤くしてそこにいた。
「ゴールド!? あんたどうせ無理やりマイちゃんを連れ出したんでしょ!」
「お! 母さんも来てるのか! よかったぜー! それがよォ~!」
「それがよォ~じゃない! 危険な目に合わせた自覚はあるの!?」
(どうしようどうしようゴールドさんが怒られてる! もしかしたらこのまま会えなくなっちゃうのかな……そんなのイヤだよ……なにか言わなきゃ……助けなきゃ!)
わなわなと震えながらゴールドの母さんは渇を入れるような厳しい口調でゴールドに言い放つ。本人はけろっとしているがマイは気が気でない。上から圧力がかかって押しつぶされそうな気になっている。
(ゴールドさんと会えないなんてそんなのイヤだ……ずっと、ずっといっしょにいたいのに!)
「もうしばらくは大人しくしていなさ「違うの! 違うの!」ま、マイちゃん!?」
ヤキモキする気持ちが胸いっぱいに広がり、興奮で胸が激しく波立つのを感じる。
我ながらおかしいほどに酷く興奮していることがマイにも分かってはいたが止められない。
「わたしが無理言ってゴールドさんに連れてきてもらったんです! わたしがワガママ言って……! だっだからゴールドさんは関係ないんです! 怒らないであげてください!」
興奮してガタガタと震え、身体の下の方から火照って来た。耳の側で大声を出されたように驚くウツギ博士と母さんは言葉が出てこない。急ブレーキをかけられたような動揺に近い。ゴールドも驚いて思わず肩が飛び上がる。
「マイ……どうしたんだよ。俺、気にしてないぜ?」
「そういう意味じゃないんです~! ゴールドさんといっしょにいれなくなるような気がしてそんなのいやだから……ってあれ? どういう意味?」
両手を握ってブンブンと上下に振って主張していたマイだが、どうしてここまで苦手対象だったゴールドに自分が怒っているのか分からずに、小鳥がさえずるような呟き方をする。
そんないつものマイを見て、ゴールド含め三人はほんわかとするのであった。
◆◆◆
エアームドに襲われた日の夜――ゴールドは布団に潜り考え事をしていた。
家族同様であるポケモン達は真剣な表情をして頭を悩ませるご主人をじっと見ていたのだが、邪魔になると思い部屋から出て行く。
(今日はたまたま怪我をしなくてすんだものの、あの時山小屋を見つけていなかったら俺等は確実にあのポケモンの餌食になってただろうな)
ガラにもなく妙に落胆してしまって中々寝付けない。ワカバタウンに引っ越してきた年下の女の子がお気に入りで、自分の良いところを知ってもらおうと遊びに誘ってきて、ちょっとした好奇心で彼女を危険にさらした、それが心につっかえているのだ。
(風邪引いてないよなぁ……。でも震えてたし、悪い事しちまったのは確かだ。俺がちゃんと知識を持っていたら、あんなに怖がられることもなかったんだよな。俺に力があれば……)
寝ていても仕方ないと、黒々と磨き上げられた冬の空を布団から出てきて眺めていると、外から小さく声が聞こえてきた。
「マイ!? お前こんな遅くに何してんだ!」
「しーっ! ゴールドさんしーっです! そっち行ってもいいですか?」
「おー。今は母さんいないし、気兼ねなく来れるぜ」
突然の訪問者に顔がぱっと明るくなる。マイを家に招き入れると木製の蓋つきバスケットを手渡された。
「おー! クッキー! 焼いたのか?」
「は、はい! 今日はゴールドさんに助けてもらったのでお礼です……おいしくないかもですけど、はかせとがんばって作りました!」
「うんめ~! マイ、うまいよ!」
マイの台詞が言い終わる前にバスケットの蓋を開けてクッキーを食べるゴールドを見て、ほっとしている。えへへ、と笑うマイを見て思わず口が止まる。
(守りきらなきゃな。そのためには強くならねえといけねぇ! 明日、ウツギ博士に図鑑をもらいに行こう、守るために俺は強くなる)
「ゴールドさん、口の端にクッキー付いてますよ」
「オイコラ」
「ええ!? ご、ごめんなさい~!」
人の心も知らないで、とゴールドはふて腐れたようにソッポを向き、自分の部屋である二階の部屋に向かうので、マイも慌てて靴を脱ぎ追いかける。
「ま、ありがとな」
「え? なんか言いました?」
「うるせえ! さっさと入れ!」
◆◆◆
「あのポケモン、エアームドっていうポケモンらしいですよ。はかせに聞きました! やっぱり最近見つかったらしいです!」
「ははーん、エアームドねえ。ずいぶん手こずられてもらったぜ」
部屋にあるビリヤード台で遊ぶゴールドを見ながらマイは思い出したように言う。
ラジカセのボタンを押して、お気に入りのラジオ番組を合わせて曲を聴くマイは鼻歌混じりで心地好さそうに頭をゆっくりと振っている。
(気にしてないのか? ならよかったけど、やっぱりそれなりに気を使ってるんだよな……俺はいつも通りにしていた方がいいのか?)
(ううう、どうしてだろゴールドさんの顔がまともに見れない)
「マイ、泊まってくよな? 風呂入ったか?」
「はい! あとは寝るだけです。はかせにも言ってきました!」
「そうか、ならいいんだけどよ。ま、ゆっくりしてけよ。明日もどうせ寝坊時間に起きるんだろ」
ちゃんと早起きしますーと言うが絶対ゴールドより一時間ちかく遅く起きると確信が持てるため、明日早朝ウツギ博士の家に行こうと決意。
(待ってろよ! ポケモン図鑑!)