第66話 シルバーとの出会い[後編]

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

「やあ、ゴールド君久しぶりだね。そっちの子がマイちゃんか、こんにちは」
「こっこんにちは……」
「それでシルバー君、わざわざジョウトまで来てもらってすまんの。君に渡そうとしていた図鑑がワシの手違いでジョウトに来てしまったので観光がてら来てしまったよ、ハッハッハッ」

 そんな世間話をしているとオーキド博士が赤い携帯ゲーム機をシルバーに渡す、これはポケモン図鑑だ。ゴールドはすでにウツギ博士からポケモン図鑑をもらっていたのでにんまりとした顔で眺めている。

「これは……ブルー姉さんが持っていた物と同じ物?」
「そうじゃな。型は違うが大体同じじゃ。ブルーから君のことを聞いてな、ぜひと思って。どうじゃ、受け取ってもらえんか?」
「オーキド博士がいいと言うならぜひ、受け取りたい……」

 ポケモン図鑑をボーと眺めていると思ったら知らない人名が出てきて今度はゴールドとマイが首を傾げる。
 ウツギ博士とオーキド博士がポケモンの生態について話が盛り上がってしまったので子供達は研究所から出て、小川に落ち葉が綺麗に流れている高さの低くない石橋まで来ていた。石橋に対して高くない手すりにシルバー、ゴールド、マイの順で座って話している。

「なあシル公、さっきのブルー姉さんってお前の姉ちゃんか? 写真見せてくれよ~」
「ブルー姉さんは俺の本当の姉さんじゃないが、お前には見せたくないな。マイならいいぞ」
「えっ! 見たいで……いやそこまで見たくない……です……」

 さりげなくシルバーにニックネームで呼ぶが華麗にスルーをかます。先程言った「ブルー姉さん」という知らない人物にスポットライトを当てる。
 どうやらシルバーは幼い時に両親から離されてポケモン修行に出されたらしく、その時に辛い時も楽しい時も一緒にいてくれたブルーという年上の少女を姉のように慕っていたらしく、その修行が終わった今でも姉弟の関係は変わってないらしい。

「な~んだよ、やっぱりシルバーちゃんは弟だったわけな! ハハハ!」
「んもう、ゴールドさん……」
(こいつ話を盛り上げようとしてるのか、案外悪いやつじゃないみたいだな)

 ゴールドの意図か分からないがシルバーもゴールドのことを少しは認めたようだ。
 マイはあえて何も言わなかったが、自分も両親と離れているので悲しみを分かっているし、本当の兄のように慕ってくれた人物にどれだけ救われたかも知っている。

「なあシルバー、ポケモン図鑑の使い方教えてやろうか~?」
「別にいい」
「んなっ! 素直じゃねーな、聞けよ」
「ブルー姉さんに聞くからいい」

 ゴールドは自慢気にズボンのポケットからポケモン図鑑を取り出すと見せつけるように見せてやる。

「ねえ、どうしてゴールドさんはポケモン図鑑をはかせからもらったんですか?」
「わりーかよ、図鑑が欲しい理由なんざ単純だ! 持ってたら強くなんじゃねーか! だからだよ」
「へ、へえ。そうなんですか(はかせ、ゴールドさんに弱みでも握られてるのかな……)」

 ゴールドは十一歳の冬にウツギ博士からポケモン図鑑をもらっていたがマイはあえて理由は聞かなかったし聞くのも面倒だから聞いていなかった。しかし、シルバーがもらった今、なんとなく聞きたくて聞いたが大した理由でもなかったので話をそこで終わらせる。

「そろそろ俺は家に帰る、また会える時があったら……会おう」
「シルバーさんのおうちってどこなんですか?」
「カントー地方のトキワシティだ」

 知らない地名にマイは内心首を傾げるが気づけばシルバーはヤミカラスの脚に掴まり外へ飛んで行った。

「なんだよあいつ、俺には挨拶なしか!」
「でもいい人そうですよ」
「まあ、それは分かるけど。というかもうずいぶん話してたな、今日は帰るか。また明日な、マイ!」
「はい、また明日、ゴールドさん!」

◆◆◆

「あのはかせ、どうしてゴールドさんに図鑑を渡したんですか? ゴールドさんは強くなりたいからって言ってましたけど本当は……(弱みを握られてるんじゃないですか、なんて言えないや)」
「はは、ついに聞いたのかい。そうだよ、ゴールド君はね、ま……強くなるために図鑑が欲しいって朝早く言ってきたんだ」

 夕飯のクリームシチューを口に運びながら夕方、ゴールドに聞いたことをウツギ博士に問いかける。本当に弱みを握られていたらどうしようと思っていたからだ。
 ゴールドからはキツく口止めされていたが、つい口が滑って真実を言ってしまいそうになるウツギ博士にマイは気づいていない様子。

「ふうん、ほんとに強くなりたいだけなんだ……よかったぁ」
「――? まあ、マイちゃんがいいならいいんだよ。どうしたんだい、マイちゃんも図鑑が欲しくなったのかい?」
「えっううん、そういうわけじゃないです! わたしはゴールドさんの後ろにいるので精いっぱいだから……」

 話してる途中で恥ずかしくなったのか口が止まってしまい、顔が下がったままになる。ウツギ博士は変わらないなあ、と暖かい目で見ていたのだった。



『ウツギ博士、頼む! 俺に図鑑をくれ!』
『どっどうしたんだい。ゴールド君の事はよく知っているし、それはまあいいけど……どうして急に?』
『いいんスか! よっしゃ! 理由なんざ単純だ! あいつを、マイを守りてぇからだ! それ以上の理由なんかいらねえだろ!』

 早朝、まだマイも寝ているし普段のゴールドも寝ているだろう時間帯に早起きをしたゴールドが研究所を訪れていた。扉を強く叩きウツギ博士に扉を開けてもらうと飛び込んで、図鑑に人差し指を向ける。
 突然の申し出に目を丸くするが、ゴールドのことをよく知っていて、良く思っている彼に図鑑を断る理由はなかったが一応聞いてみると嬉しい答えが返って来た。

『図鑑を持ったところで強くなれるわけじゃないんだよ? それなりに勉強だって必要だし……』
『そうなんスか!? いや関係ないっス! 今のままの俺じゃマイを完璧に守れるわけじゃねえ、だから俺にポケモン図鑑をくれ!』

 ゴールドの熱く光る瞳にウツギは満面の笑みで図鑑を託し、ゴールドも嬉しそうに図鑑を受け取る。

『あ! でもマイには理由言わないでくれよな! 強くなりたいからって言っておいてくれ!』

 スケボーに乗ってポケモン屋敷に戻って行くゴールドに手を振った。
 ――今日も騒がしくなる。良い意味で。

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