第60話 幽霊屋敷珍騒動

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

「うううゴールド……どこぉ」

 脅かされて廊下をダッシュしてきて息が上がった頃、ふと我に返る。
 叫ぶにも、もしかしたら幽霊が騒ぎ出てきたら――と思ったら大声が出ない。そんな時、真後ろから生ぬるい何かを感じたと思えばそれは一瞬で終わった。
 振り返っても何もいない、気のせいかとまた前を向くと原因がそこに浮いていた。

「ゴォ~ス?」
「ぎゃー! ごっごごゴース!?」

 ぬる~とマイの顔をすり抜けて正面に回ったらしいゴース。そう、通り抜けられる際に生ぬるく感じ取ったのだ。

「なっなななに! こここわくないんだから!」
「ゴォ~ス、ゴォ~ス♪」
「えっ? な、なに!?」

 マイを誘導するかのように念力を使って手を引くゴースについて行くと、この古びた屋敷とは思えないほどのファンシーな扉が目の前にあった。
 軽く扉が開くと思えば、中にあったのはメリーゴーランドや滑り台などの遊具。壁紙は黄色に白い水玉模様が描かれていて、この屋敷とは正反対。

「もしかして遊びたいとか?」
「ゴ~ゴォ~ス♪」
「うんん……フィーちゃんどう思う?」

 別に大丈夫なんじゃない? と言いたげにエーフィがボールの中で尻尾を優雅に振る。

(うーん、ゴールドがいないからなんとも言えない……)
「ゴース?」
「うん、わかったよ。遊ぼっか!」

 ゴースとメリーゴーランドに乗り込むと、念力の力か勝手に動き出す。案外楽しくなってきたのかマイが大きな声で笑いだした。
 その笑い声を聞いたゴールドが声を辿ってファンシーな扉の前にたどり着いた、笑い声が絶えないので心配しているのか焦りが見える。

「マイ! なにがあっ……ハァ?」
「あっゴールド! ねえこっちにおいでよ! 面白いよ!」
「ったく……人が心配すりゃ」

 扉を開ける大きな音とゴールドが飛び込んで来た。しかし想像していた最悪の事態とはかけ離れていて肩を落とす。そんなことをいうゴールドにマイは眉を寄せて声を出した。

「元はと言えばゴールドが脅かすからでしょ!」
「そうだったかな?」
「そーだよ! ね、ゴース!」

 トランプをゴースとしていたマイが女の子座りをしながら文句を言う。頭をかきとぼけるゴールドに睨みを利かせるが全く効果なし。

「そうだよ、そのゴース! どうしたんだよ」
「え~今言うの? さっき友達になったの。かわいいでしょー」

 空気になっていたゴース(元々ある意味空気だが)にようやく気にするゴールド。
 ゴースの周りに漂うオーラに手をツッコミながらマイが答える。そんな姿を見てニヤリと笑いながら嬉しそうにゴールドが言う。

「へえ、怖いって気持ちがどっか行ったみたいだな」
「うん! 見た目が怖いからって性格まで決めちゃったらだめだよね、ありがとうゴース!」
「俺にも言えよ! 誰のおかげで克服できたと思ってんだ」

 確かにそうだけど、と不足そうにマイがゴールドを見ると目が合う。うーん、やっぱりこの目には敵わないなあ、と目と目を合わせてマイがありがとう、とお辞儀する。

「連れて来たかいがあったぜ~。いいもんも拾ったし冒険もできたし満足だ、帰ろうぜ」
「いいもん……? うん! じゃあね、ゴース!」

 ゴールドがマイをすぐに探さずに冒険してから来たことに関してはあえて触れずに克服させてくれたゴースに手を振る。寂しそうにしながらも見送りにきてくれたゴースにお礼を言って二人はアサギシティへ向かうのだった。

◆◆◆

「八月も中旬か~」
「ちゅーじゅん? あっ満月! ゴールド空見て、満月!」
「おー、綺麗だな~」

 幽霊屋敷の帰り道、すっかり暗くなった空を見上げると大きな満月が浮かんでいた。旅に出てからもうそんなになるんだぁ、としみじみする二人。

「明日、ジムに挑戦しようかなあ」
「もうか? あのハガネールのこととか何も調べなくていいのかよ」
「あー、そか。ゴールドがいるからいいかと思っちゃったよ~」

 恐怖を克服をしたもののゴールド離れはしていない模様。じとーと見られても一切気にしていないマイはいろんな意味で成長をしていた。

「鋼タイプは新種だぜ? 何が得意で何が苦手かどう作戦を立てて行くか、をよく考えねえと」

 右手の人差し指を宙に円を描くように説明してやるとマイの視線もそれに合わせて動かす。

「んー酔って来た……早くポケモンセンターに帰ろ~」
「わーったよ。自由人だなー本当に」

 森を抜けてポケモンセンターに到着。遅い帰りにジョーイさんが心配そうに近寄ってきたが、大丈夫です、とゴールドが片手をあげて横を通り抜けると子供って丈夫ねラッキーなんて声を掛けていた。

「ハガネールは鋼タイプかぁ。ポケモン図鑑で調べてみようかなあ」
(おー自分で考えるようになったか)
「へえ、炎タイプと格闘タイプ、地面タイプに弱いんだぁ」

 ポケモンセンターのベットに寝転ぶゴールドの横に体育座りで図鑑をいじっているマイにあえて口を出そうとはしない。

「炎タイプはキューくんかぁ。でもこの前で活躍してくれたしな~。アルファ頑張ってみる?」
「ほお、今度はアルファか! タイプを考えないでっていうなら作戦があるのか?」
「ない!」
「ですよねー」

 親指を立てて強く宣言するマイにツッコム気力もない。なんだかんだで上手くいってしまうのだから人生ってわからない。

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