第59話 太陽の奇跡

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 マグマラシの炎の渦はダンスをしているかのようにクルクルと回りながらもイシオカさん目掛けて行く。勘違いだと気付かされたのはマイのラプラスのバブル光線で炎がかき消されたからだ。

「なんだ? つまり、イシオカさんに無理やり太陽の石を受け取れって言われてたってことか? ったく紛らわしい! もらっとけ!」
「だって石いらない……ゴールドがもらえばいいと思うよ!」
「あー……キマたろうにでも使ってみるか! イシオカさん俺にくれよ」

 ワカバタウン組の話についてきてなかったイシオカさんは混乱状態でゴールドに太陽の石を渡し、ゴールドがヒマナッツに渡す。

「わあ! キマちゃんが進化した!」
「だーからっキマたろう! ほら図鑑開けよ。あ、イシオカさんサンキューな! もう行っていいぞ!」

 太陽の石をかざすとヒマナッツの身体全体が光り輝き、その光が収まるとヒマナッツの姿はなく、向日葵のような見た目のポケモンが現れた。

「キマワリ、太陽ポケモン……へえ、夜になると花びらが閉じるんだ。よろしくねキマちゃん!」
「最後のキマちゃんって嫌味か! キマたろうだ! しかしデカくなったな!」

 一気に身長が伸びたキマワリにゴールドは目を見張る。そんな横でマイは

「わたしも進化したらおっきくなるのかな」
「進化ってなんだよ」
「あれ!? 声に出てた?」

 なんてくだらないことを考えていたのだが口に出たためゴールドにツッコミをくらう。
 そんな会話をしていると塔の外からイシオカさんの叫び声が聞こえてきた。

「イシオカさん! どうした……え」
「な、なんだこのデカいの!」

 塔の扉付近で尻もちをついたまま動けずにいたイシオカさんの震える指先にいたものは、イワークに似ているがイワークではない何かがギョロリとした目で三人を見つめていた。
 マイはあまりの大きさに恐怖が勝ってしまい脚がその場から動けないでいて背中には嫌な汗も垂れている。
 ゴールドはキマワリとは比べ物にならないくらいの大きさのポケモンに驚きの声を上げていた。

「わーっごめんなさい、わたしのポケモンですー!」

 その場を一瞬にして目線を集めるその先にいたのはミカンだった。

「ごめんなさい。顔は怖いけど心は優しい子なの!」
「ミッミミミカンさんの怖いポケモンって……この子だったの!?」
「あっマイちゃん! やだ見ちゃったわね、この子はハガネールって言って新種のタイプでハガネタイプなんだけど……あっ色々言っちゃった!」

 頭の上で二つに縛った髪を持って残念がるミカンだがマイとイシオカさんは未だに震えていた。ゴールドに背中を叩かれてようやくハッとするくらいだ。

「と、とりあえず! ジム挑戦待ってるからね! いつでも来てね!」
「…………勝てる、かな」
「ハガネールにか? 勝てんだろ、船の中でもバトルしたし」
「みんなは信頼してる! けどわたしが……ハガネールだっけ、あんなに大きくて怖いポケモンはじめて見たよ。怖くて何も動けなかったし、ちゃんと指示できるか不安だよ」

 ああ、そっちか。とミカンが走って去っていた方向を見ながらゴールドは納得。
 確かに今のままだとマイは動けないだろう、しかしどう転んでもバトルしたらハガネールは確実に出てくる。主力ポケモンだろう。
 恐怖を克服するには恐怖に慣れること、これしかない。

「よし、マイ」
「あっ嫌な予感!」

 視線をマイに向け、両肩にゴールドの手が力強く置かれる。逃げれるに逃げれない。
 先程とは違う汗が顔に伝うと、マイは視線をあっちこっちに泳がせる。

「そーだ! この辺に幽霊屋敷があるらしいんだ。まあ海も近いしな、あってもおかしくねえ。今夜そこに行って恐怖に慣れろ」
「やだ! むり! 気合いで行く!」
「無理だろ。また負けてもいいのか? あん時みたいによ」

 親指を立て、ウインクを決めるゴールドにマイは顔を一発ぶん殴りたい衝動に駆られる。しかし、ここでアヤノ戦を思い出され苦い思い出が蘇る。
 確かにこのまま根性で負けるなんてことはしたくない。自分達の全力で負けるならまだしも根性と気合いで負けるのは許さなかった。

「わかった! 行くよ! ゴールドも来てね」
「わーったよ。また変なのに会うかもしれねーしな。ただし俺に触ったりしたら駄目だからな。手も繋がないし、腕も貸さない、いいな」

 唯一の希望はゴールドが共にきて、手を繋ぐか腕をまじ合わせての行動だったが先回りの答えを返されてしまってマイは已に泣きそうだ。
 しかし、こんなことを言ってもなんだかんだゴールドは手も腕も貸してしまうだろう。

「ま、夜になるまでポケモンセンターで休んでそっからだな。おいイシオカさん、いつまで座ってだ! 行くぞ!」
「はいいいっ」

 イシオカさんの尻を蹴り上げてからポケモンセンターに向かう二人。イシオカさんは黙って手を振りながら蹴られた尻を撫でていた。

◆◆◆

「ねえほんとに、ここ……入るの?」
「たりめーだろ! 気合いと根性を叩き直すチャンスだぞ」
「ううなんか違う気がするよぉ……」

 夜九時、人影が減ってきた時刻にゴールドとマイはポケモンセンターから出て、アサギシティから少し離れて森を抜けると現れた幽霊屋敷の立派な門の前にいた。
 すでに森を歩く時にマイはがっしりとゴールドの手を握り、絶対離すもんかという意思が見えた。

「さ、手を離せ! 行くぜ!」
「ねえ絶対楽しんでるよね!? わたしの反応見て楽しんでるよね!?」
「そんなことないぜ~お前のためだからなーハッハッハッ!」

 手を離されて、先に行けと言わんばかりに背中を押される。門を恐る恐るくぐり抜けると門と同じくらいの高さの門があった。
 錆び付いて血のような匂いが混じった扉を静かに開けようとしても音が屋敷に響いてしまう。

「あー! もうやだ! 帰りたい!」
「だーめだめ。ほらほら行くぜ! 探検だ!」
「ほら探検って言った! もう目的と違うじゃん! あーやだやだ!」

 先に行かせたものの、ゴールドはマイの前を地球を蹴るように歩き、後ろでは極力音を立てないようにマイが慎重になっていた。

「お願いしますお願いします幽霊さんでないでくださいお願いしますお願いします……ねえゴールド。ゴールド? ねえっゴールド! あれれ……どこ?」
「バアッ!」
「ギャー‼︎」

 手を合わせて拝むポーズのまま歩くマイが俯いていた顔を上げてゴールドを呼ぶが返事が中々帰ってこない。
 不安になり血の気がなくなりそうな時に後ろから思い切り大きな声で脅かされ、振り向くこともせずにマイは屋敷の廊下を駆け抜けた。

「……ビビりすぎだろ、あいつ。ったく、マーイッ 俺だー!」

 あまりの驚きように目を丸くするゴールドは一人残された廊下で呟くと、仕方なさそうにマイを追いかける。
ツイッターの連携のやり方がさっきよーやく分かった私です。

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