第56話 食べ物の恨みは恐ろしい

しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
 
ログインするとお気に入り登録や積読登録ができます

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

「おはようゴールド!」
「……うぉ!? は、はよう。珍しいなお前が早起きなんて」

 あの後結局また夜中に泣いたのかまぶたが腫れぼったいマイにゴールドが起こされた。身体を起こせば既にカーテンを開けられ朝日が目に入り込んでくる。目を細めると顔面に向かって今日着る服が投げられてくる。

「ほらほら早く早く! 間に合わないよ!」
「んだよ……眠、朝食だってデザートだって逃げねーぞ? ゆっくりしてこーぜ?」
「ダメ! アイスがなくなっちゃうでしょ!」

 急かされるのでほぼ服を着ながらの部屋を出る形になった。マイがそれだけ急ぐ理由がよくわかった、大好物のアイスが期間限定で輸入されたそうだ。
 しかも、このアイス遠い遠い地方のイッシュ地方という外国の所から輸入したそうだ。

「わーい! アイス! アイス! すいません! トリプルポップのレギュラーでスコーン……わかったよー、スコーンじゃなくてカップで、えっとアイスは~」
(はしゃいでるなーまあ元気になったなら安いもんか……財布はー、っと)

 途切れの悪いマイだが、こういう時は違う。スラスラと呪文のようにアイスを選んでいく。本当はスコーンで食べたかったのだが、ゴールドが睨むとしぶしぶカップに変更。
 そんなゴールドだが内心、心が軽くなっているのが分かる。マイにお金を渡してアイスを受け取らせる。

「いっただきまーす! わあ!?」
「やいやいお嬢ちゃんよぉ、俺様の服にアイスつけてくれちゃったなあ?」
「…………」

 スプーンで掬い口に運ぼうとした時、前から地面を蹴りながら歩いてきたガタイのいい青色のTシャツに黒のジーパンを履いたお兄さんにアイスが張り付いてしまった。
 ガンを飛ばしてマイを睨みつけてくるからゴールドがすかさずマイの前に出ようとする。
 しかし……

「なんだ黙り込んで!? どー落とし前つけてくれんだ?あ?」
「おいオッさ「アンタがぶつかってきたんでしょ」ま、マイさん?」
「なんだとぉ!?」

 ゴールドが前に出るのを停止させるためにマイが左腕を出してゴールドを下がらせ、言葉をお兄さんにぶつけた。
 あまりの変貌にゴールドは思わず、さん呼びをしてしまう。

「あんたがぶつかってきたんでしょって言ってるの! わたし悪くないし! そのダサいTシャツに可愛い模様ができたんだから感謝してほしいくらいなんだけど!」
「こんガキャァー! 舐めた口聞いてんじゃねえぞ! バトルだ! 行ってこい、マグマッグ!」
「じょーとーだね! アルファ、君に決めた!」
「マイ、お前無理すんなよ。俺変わるぜ? 怖いんだろ本当は」

 マイにきゃんきゃんと子犬のように吠えて威嚇されて怒れた男はモンスターボールを床にぶつける。
 中から出てきたのはマグマポケモンのマグマッグ、水が大の苦手で今度こそ、とラプラスを出すとゴールドが小さくそう言うが気を使わせて言うが

「だいじょうぶ! 怖くない! アルファ、水の波動!」
「弾ける炎で焼き尽くしてやれぇ!」

 ゴールドの方には一切振り向かずに言い切るとラプラスに指示を出す。ラプラスは甲羅にためていた水を、自分の周りに出すとヒレを激しく強く動かして振動を起こし水に伝える。
 その振動によって水は大きく跳ねたり地面に叩きつけられたりを繰り返されながらもマグマッグに向かう。
 マグマッグの身体から作られる炎を消しつつマグマッグ本体に水の波動が直撃。それでも倒れないので続けて指示を飛ばすトレーナー二人。

「水鉄砲!」
「岩落としだ!」

 水鉄砲を食らう前にマグマッグの身体から今度は岩が出てきてラプラスの頭上へ飛ばす。頭から硬い岩が落とされてめまいを起こすラプラスは水鉄砲をおかしな方向に飛ばす。

「へへ、どこを狙っているんだ? 混乱してるんじゃ相性なんて関係ないね!」
「アルファ! 上に向かって水鉄砲!」
「おいおいトレーナーまで頭おかしくなったのか? って何ィ?!」

 ラプラスの水鉄砲は天高く登って行ったと思えば勢いよく自分の頭にぶつかる、すると混乱が解けたのか目がカッと開く。

「おはようアルファ! 寝起きのハイドロポンプ!」
「マグマッグー!?」

 別に寝ていたわけじゃないが、こっちの世界に戻ってきたような意味でマイはそう言った。ゴールドは先程起こされた時を思い出して、なるほどだからこんなに怒ってんのかマイは、と納得している様子だ。
 ラプラスの強烈なハイドロポンプを真正面から受け取ったマグマッグはその場に倒れて目を回している。戦闘不能だ。

「わーい勝った勝った! わー! アイスが溶けてる……ちょっとお兄さん!」
「なっなんでしょうか!? あっアイスですね! 全て買いますううう!」

 バトルに勝ったもののアイスが溶けてカップの中に液体となって泳いでいた。キッとお兄さんを睨むとマイは黙って左手の人差し指でアイス屋を指差す。

「おい何やってんだよアオ!」
「あっ兄者! よかったこのガキが俺から金を取り上げて来るんすよ! アイスに変えて!」

 マイ達のバトルを見ていた野次馬の中からお兄さんの知り合いだろうか、赤い髪をポニーテールにまとめた男が出てきた。

「あっおい! こいつはー! あん時の!」
「あ! あんたは!」

 そう、行く途中の船で出会ったイオンだ。ゴールドが名前を言うのを待つイオンとアオと呼ばれたお兄さん。

「誰だっけ?」

 ゴールドの言葉に待つだけ待っていたので思わず肩から力が抜けズッコケてしまうイオン。

「イオンだよイオン! もう忘れたのかよ! おいアオこいつらには敵わねえ! アイスだけで済むならマシだ! 金置いて逃げるぞ!」
「わ、わかったっす兄者! ほら財布だ! 受け取れ!」
「いらなーい、ほい」

 財布を床に落として逃げようと尻尾を巻いたイオンとアオに向かってバトルで買った賞金という名目のアイス代だけ引き抜くとアオに向かって放り投げる。
 ぼとっと鈍い音がしたがアオは財布を握ってその場を走り去る。

「ゴールドもアイス食べるよね? 何がいい? 奢るよ!」
「さっきの奴の金だけどな……。まあ賞金としてのアイスなら食っても不味くはねえか」
「え? アイスはどれも美味しいよ!」

 アオに怒っていた同一人物とは思えない切り替えにゴールドもたじろぐ。
 もしかしたらとんでもない女の子を友達にしてしまったかもしれない、とようやく気づくゴールドであった。

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想

感想の読み込みに失敗しました。

 この作品は感想が書かれていません。