第54話 VSアヤノ[前編]

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 タンバシティの穏やかな浜辺には似合わないなんとも臭い台詞が海にこだまする。
 ゴールドはアヤノの言葉にも驚いたがマイの台詞にも目を白黒とさせていた、あのいい子だったマイがそんな下品な言葉をと夢か幻かと自分の頬を抓って確かめた。

「運命じゃないから! なんか勘違いしてない?」
「勘違い? 違うわ! あなたにそんなこと言われる筋合いないわ!」
「運命の相手とか言ったのにひどいこと言うね!?」

 どうやらマイは同じ年くらいの相手だと態度が変わるらしい。ゴールドは信じれないと耳を塞いでいる。

「あなたなんてマイさんじゃないわ! マイよ!」
「わかってる! アヤノだってアヤノだよ! アヤなんて呼んであげない!」
「何よ! ニックネームは関係ないでしょ!」
「別に仲良くないし! 言いたくないね!」
「あーほらほら二人共落ち着けって。マイ、どうしたんだよ? おかしいぜ?」

 二人が取っ組み合いの喧嘩をしそうになったところをゴールドによって仲裁された。まずはアヤノにどうしてタンバシティに来たのかを聞く。
 まあ言わずも内容はだいたい察しができるのだが。

「私はコウという友人からあなた達がここにいることを聞いてきたのよ! ギャラちゃんに乗ってね!」
「コウちゃん!? 助けたのにぃ~! ていうかなんでコウちゃんのこと知ってるの?」
「少し前にコウが目的達成したようなこと言って余裕ができたから協力するって連絡くれたのよ。まあ連絡先を交換しておいたのが幸運だったわね」

 少し前に目的達成というのはマイに図鑑を返したことだろう。だからと言ってひどい! とマイが抗議するがそんなことを知らないアヤノはそう話をした。

「さあ、マイ! ワカバタウンに帰るわよ!」
「やだ! ゴールドと旅をしたいの! 邪魔するならバトルで決めようよ!」
「いいけれど……あなた強いの?」

 さらっと嬉しいこと言ってくれるマイに口角が上がるゴールド。マイがボールを手にしてアヤノに突き出すとアヤノはため息をついてそんなことを言う。流石にカチンときたのだろう「強い!」と胸を張る。

「まあもう分かりきっているけど……いいわ。私はこのロコン一体で勝負するわ。あなたは手持ち全てをどうぞ?」
「ぐぬぬ! 絶対勝つ! ロコンなら知ってるし、アルファ君に決めた!」

 アヤノの髪がそよ風に吹かれてなびいている。ロコンを浜辺に出すとよろしくね、と顎を下げてロコンに言う。マイはラプラスのアルファを繰り出して、得意であろう浜辺から海の入るように指示を出す。

「遅いわね、ロコン。相性なんて存在しないことを見せてやりましょう。煉獄!」
「キュ!?」

 ラプラスがもたもたと移動している間、マイはすっかり油断をしていた。てっきり攻撃をされないと思ったのだがアヤノがすかさず煉獄という炎タイプでもかなり強力な技をロコンに出させた。
 ヒレや甲羅に炎が燃え移り海につかり満足気な顔をするもそれは一瞬の出来事で火傷が治る気は一切ない。

「いいこと、これが経験の差。あなたのラプラス見たところ産まれたばかりでしょう。そんな子をフィア……ロコンと一緒にされたら困るわ。もう一度煉獄で決めてやりましょう!」
「アルファ、波乗り!」

 フィアと呼ばれたロコンが再び大技を繰り出そうと口を大きく開き燃え踊るような炎の渦をラプラス目掛けて打ち放つ。ラプラスも負けじと海を利用して波乗りを煉獄目掛けてぶつけようとするがまだ小さい波、煉獄に焼き尽くされてしまう。
 波の中を炎の渦が通過すればラプラス目掛けてぶつかるのみ。海に潜れば助かる可能性はあるかもしれない、しかし波乗りを乗り越えてしまったのだその可能性は……もはやゼロ。

「アルファー!! ありがとう、ごめんね……」
「次のポケモンは? まだいるんでしょ? フィアはまだだ動けるわよ」

 海の中へ入りラプラスを撫でる。火傷の痕はポケモンセンターで治るがバトルが終わるまでの辛抱だ、辛いだろうがモンスターボールの中で待機をしてもらおうとしたが、ゴールドが火傷直しを持っていたのでそれを貸してもらい一時的にしのいでもらえることになったのが不幸中の幸い。
 アヤノは余裕の顔でしかも煽り文句まで付けてマイの次のポケモンを待っている。

「フィーちゃん! かたき討ちだよ!」
「はぁ。エスパータイプね。フィア、かたき討ちですって、ならこちらは……だまし討ち!」

 誰が上手いことを言えと。マイのエーフィが地面に着地する前に既にロコンはエーフィの前に立っていて、口を開くと噛みつくような仕草をする。エーフィが珍しく驚いた表情をするのを確認すると本当の攻撃を仕掛けてくる。

「噛みつく!」
「フィーちゃん! サイコキネシス!」
「遅い! 祟り目!」

 ロコンに赤青緑の光線がかすれたような気がしたがびくともしない、むしろロコンは攻撃を繰り出してきて大きな瞳に見つめられてしまうと精神的ダメージを負われる羽目になった。
 フラフラの状態になっているエーフィにマイは電光石火を指示してその場から逃げるようにするが、ロコンにとったら亀を追いかけるようなスピード。

「それが電光石火? 噛みつくを最後にお見舞いしてやりなさい!」
「ふぃい……」

 ロコンにもて遊ばれるように追われる形になりとどめの攻撃、このロコン強敵するぎる。マイの自慢のポケモンたちがもう二体も倒されてしまった。

「キューくん! お願い!」
「キュウコン! 可愛いわね、フィアのフィアンセにぴったりね。でも……つぶらな瞳! しっぽを振る! 鳴き声!」
「待ってずるい! そんなに技出すなんてずるくない!?」

 ロコンの大きくて可愛らしい赤ちゃんのような瞳に見つめられキュウコンの脚が止まる。そして、お尻の尻尾を振られてしまったり、可愛らしい声で鳴かれてしまったからキュウコンはメロメロ状態。

「キューくん何やってるの! 大文字!」
「フィア、あなたも大文字よ!」
「うそなんで!? キューくんの方が身体も大きいはずなのに!」

 キュウコンの作る大文字とロコンの作る大文字の大きさの違いに今まで黙って見ていたゴールドですら声をあげる。

「言ったでしょ、経験の差だって。しかもあなたのキュウコンの攻撃力・防御力はガタ落ち、これで終わりね」
「キューくん! 性別って怖いね……ありがとう」

 ロコンにメロメロ状態でキュウコンはお腹を見せてその場に倒れる。若干焦げ臭い気もする。
 しかしふざけている場合ではない、今までずっと旅をしてきた仲間がたった一匹のロコンにやられてしまっている。
 泣きたい気もあるがあと二体、主力が残っている。まだ負けたわけじゃない、戦える。マイは顔をあげてピカチュウを出した――。

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