第41話 ここからはじまる

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 ジムを目指していた二人の昨夜――
 ポケモンセンターにて取った部屋でのんびりと二人仲良く並んで寝転んでいた。

「博士に図鑑のことは話したし、コウちゃんとも友達になれたからわたしの目的は終わっちゃったなあ……とりあえずジム制覇だけど……」

 ゴロン、と転がってゴールドの方向へ顔を向ける。それに合わせて、マイの方向にも身体を向ける。それがなんだかワカバタウンにいた頃のように思えておかしかったのかクスクスと笑ってしまう。
 ゴールドにデコピンを軽くおみまいされデコをさするマイ。鼻を軽く鳴らしてゴールドは言う。

「なーに言ってんだよ。ジム制覇だって難しいことなんだぞ? それに、また新しい目的を探す旅にでも出ればいいじゃねえか」

 マイの目的は「泥棒を捕まえて、図鑑を取り返すこと」であり、目的を完璧に達成することができた。燃え尽き症候群になったわけではないが、マイが眉を寄せて考えていた夜。
 しかし、ゴールドの一言で、それもそうだね! と笑顔になって布団に潜りこんだ。やっぱり彼と一緒にいることによりマイも大きく成長をしている。

「何を目的にしようかなあ。ねえ、ゴールドは何かあるの?」
「そうだな。まあ、お前が……」
「え? わたし?」

 布団からひょっこり顔を出して、大きな目に問われるとゴールドは言葉を出したものの止まってしまう。キラキラとした瞳を見ないように手で覆うとマイは手を左右に動かして離してもらうようにする。もちろん離さないが。

「お前が泣くのを見逃さないように旅でもするかな」
「えー! 何それ! ひどいよー! わたし泣かないようにするもん!」
「うるせえ、さっさと寝ろ!」

 無理やり布団に顔を入れられてすぐにマイが顔を出すと、すでにゴールドは背中を向けて寝ようとしていた。

(マイを守りきる、それが俺の目的、目標だなんて言えるわけねえだろ、バーカ)

 そして、今。マイとゴールドはジムの目の前にいた。

「たーのもー!」
(もうツッコムのはやめよう)

 エンジュシティに来てから様々な事件が起きた。事件、というのだろうか?
 ポケモンバトルはかなり受けてきたつもりだが、今度のジムは四つ目であって折り返しのようなものだ。油断は出来ない。

「わっ! 真っ暗だ! 何も見えないや……うーん、電気もつかないや」
「スポットライトが点く様子もねえな~」

 ジムの中はツクシ同様真っ暗闇の一色。マイとゴールドが目を二倍に開き、キョロキョロと辺りを見渡す。

「見えないなあ。ピーくん、出てきて! フラッシュ!」
「そうだそうだ。分かってるじゃねえかマイ」
「えへへ~、まあね~。あれ? 誰もいないみたいだよ? こんにちはー!」

 ピカチュウのフラッシュに寄って周りが明るくなったものの人の気配はない。マイが声を出しても返ってくるのは自分の声だけ。
 扉の前で止まっていても仕方ないという事で歩みだしてみると、また床が抜けたような感触が足を襲う。今回は違う、元から床がなかったのだ。

「わー!? ってあれ、また扉の前に戻ってる……?」
「どういうこった? さっき確かに落ちた筈じゃ?」
「フッフッフッ」
「え? ゴールド、なんか言った?」
「俺は何も言ってねえ」

 マイとゴールドは落ちたのだ。でも、ワープをしたかのように元の位置に戻っていた。二人で頭の上に大量のハテナを浮かべていると、マイクを通した声がジム全体に響きわたるが電気が点くことはなかった。

「僕だよ、僕! ここのジムリーダー! マツバさ!」
「って言ってるけど見えないからわかんないよー! うー、また行くと落ちちゃうかもしれないし……」
「待てマイ、ピカチュ……ピーくんと一緒に歩けば落ちずに済む。下を見て歩けばどこが抜けているか分かるぞ」

 ハハハ! と笑い声が聞こえるのがマイにはたまらなく悔しいのか歯を食いしばる。ピカチュウがマイの脚に小さな手でポンポンと当ててきて一緒に頑張ろうと言っているようだった。
 ゴールドの言う通り落ち着いて、よーく見れば透明な板がいることが分かる。先頭を歩くのはゴールドでその後をマイがついて行く。
 時計がないので何分歩いたのか分からない、もしかしたら永遠にジムを回っているのかもしれない、という恐怖がマイの背筋に汗を垂らす。

「着いたぞ! マイ、ジャンプしろ! 受け止めてやる!」
「うん! ――っと!」
「よーやくご対面できたね、ワカバタウンのマイ! 楽しみだなあ、三人からはよーく聞いているよ」

 二人がようやくマツバの声がマイク越しではないところに着いた途端、電気がつきマツバの姿が分かった。
 金髪の頭に紫のバンダナを巻いている、そのバンダナと同じ色のマフラーを身に着けていて、黒色の長袖のシャツと真っ白なパンツがよく似合う青年だった。
 三人、というのは今まで戦ってきたジムリーダーのことだ。

「こんなに暑いのになんで長袖なんですか?」
「そこォ!? うーん、まあこっちの方が決まるから、かな?」
(あーなんとなく分かるぜ、マツバさん)
「へえー……」

 マイが悪気もなく聞いた質問に答えるマツバに、マイが大した興味を示すことなく終わる。最近の子供は怖い、とマツバは思っただろう。
 だが肩を落としているのもすぐにやめ、顔をあげてマイにモンスターボールを見せつけて宣言する。

「だがしかし! 君の快進撃もここまでだ! さあ、バトルをしよう!」
「はい! ぜったい勝ってみせる! みんながんばろうね!」

 オーッと手を挙げてやる気満々のマイとノリノリで話をするマツバは噛みあっていない。ゴールドは早々にツッコムのをやめることにした。

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