第39話 それぞれの今日

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

「その図鑑、俺に完成させてください」
「おお! それは助かるなあ。じゃあ、この図鑑を君に与えよう。これで君も正式に図鑑所有者の仲間入りだね」
「よかったね、コウちゃん! じゃあ、わたしはコウちゃんが持って行った図鑑をもらうね」

 名前入りの図鑑はコウの手元に戻り、同時に泥棒の名前も消え去った。マイは旅の目的である一つを成し遂げたのだ!
 コウから図鑑を受け取ったマイは満足そうにしている。

(ゲッ! コウちゃん、わたしより図鑑完成させてる……)
「どうしたマイ? 戻るぞ?」
「う、うん……。あっ博士、わたし戻るね! ゴールドが待ってるの!」

 コウの図鑑を確認すると明らかにマイより図鑑を完成させていて顔を引きつらせるマイ。
 あんなに怖いと思っていたコウの顔がいつもより優しい顔つきになっていることに気づくとマイは思わず、レッツゴー! と叫んでグライガ―と飛び去った。

◆◆◆

「で、コウは図鑑を完成させる旅に出たわけで。マイはどうするんだ? 目的は終わったぜ?」

 コウと別れた後、マイはゴールドが待っているポケモンセンターへ走って戻ると笑顔で迎えてくれたゴールドに抱き付く。ふわり、と髪から香りが漂っていい香りがした。

「うーんとね、とりあえず、ジョウト地方のジムを制覇することかな!」
「おー、いいな、それ。まあ頑張れよ。協力してやるさ、仕方ねえからなぁ~」

 頭に手を回し、椅子に背を預けて満足そうに答えてやるゴールド。マイも嬉しそうに笑った。あんなにひどかった頭痛も消えてしまったようだ。

「ゴールド、わたしこの旅で少しは大きくなれたかなあ?」
「さあな~お前は相変わらずチビだし泣き虫だし甘えん坊だし寝坊助だし」
「う~! 意地悪言わないでよ~!」
「ほぉら泣きそうだ! 全然成長してねーよ! カーバ!」

 すっかり日が暮れて、夕焼け空が部屋を赤くする。マイは夕日を背に向けてゴールドに聞く。求めていた答えとはずいぶんと違ったが、ゴールドらしくてマイはなんだかほっとした。

「今日はなんだか疲れたなあ。もう寝ようかなー」
「おー寝ろ寝ろ。お子ちゃまはもうおねむの時間だな」

 なんてまたゴールドが茶化すものだから眠る気なんてなくなってしまった。図鑑を開いて、コウの記録を読んでいく。博士がトレーナーカードを作り直してくれたおかげでマイのデータは新しいものに更新されて気分転換のような、新しい風が吹いているように感じた。

「へえ、コウ結構図鑑うめてたんだな。お前も頑張れよ」
「うん! 負けないよー!」

 横から覗き込まれて、近い顔に少しだけ顔を赤くするマイ。コウといい、はじめは怖いと思っていたのに実は優しい! なんてギャップを見せられて動揺しているようだ。

◆◆◆

「あ、もしもし。アヤか。俺だ、コウだ」
『言わなくても分かるわよ。どうしたの、なんだか嬉しそうね』

 マイと別れたあとコウはゴールドに見つかってしまった所へ来て、しゃがみこむとポケギアでアヤノに電話を掛けた。
 アヤノは鋭く勘づくと、声のトーンを上げて聞いてきた。

「いや、ただお礼を言いたくて。ありがとう、アヤ。お前に出会えて本当によかった」
『なるほどね。目的完了ってとこかしら、でも新しい目標もできたとみたわ』

 お礼を言われるなんて久しぶり、と電話越しでも嬉しそうにするアヤノが分かる。

「そうだな、今度は難しそうだがやり遂げでみせるさ。アヤ、お前の探し人にも協力させてくれ」
『ええ、よろしく頼むわ! じゃ、私捕獲するポケモンが目の前に来たから切るわ!』

 有無を言わさず電話を切るアヤノは男らしい電話……と変にコウに思われてしまっていた。

◆◆◆
 
 研究所前にてシルバーとクリスが二人揃って入り口でウツギ博士と話していた。

「ええ~! マイちゃんワカバタウンに来たんですか!? どうして教えてくれなかったんですかウツギ博士!」
「クリス落ち着け。どうやら図鑑を盗んだ犯人とは決着がついたようだし、危険な事は少なくなったんじゃないか?」
「そ、そうね。ごめんなさい取り乱したわ。もう挨拶くらいしてくれてもいいのに」

 ワカバタウンにマイが来たというのはすぐに広まった。それはウツギ博士が嬉しそうに助手に話し、助手が近辺に話す、それでどんどん広がっていったようだ。

「クリスちゃん、あの子は絶対無事に帰ってくるよ。なんて言ったってゴールド君がついているんだ。最強のボディガードだと思わないかい?」
「ゴールドだから心配なんです! 目を離した隙に何をするか分かりません!」

 必死な身振り手振りにウツギも困り果ててしまった。ウツギ自身はゴールドのことを信頼していて、マイもまたゴールドも信頼、信用している。
 どうすればクリスは信じてくれるだろうか?

「ううーん(クリスちゃんはマイちゃんから何も聞いてないのかな?)」
「ウツギ博士、黙ってないで何か言ってください!」
「マイちゃんから、ゴールド君との出会いを聞いていないのかい?」

 首を横に振りながら聞いていないと言うクリス。ウツギはどこから話せばいいのか、とまた悩んでしまったようだ。

「シルバー君、君も聞きたいかい?」
「……あぁ」

 少しだけ間を空けてシルバーも頷く。ウツギも話す言葉が思いついたらしく、二人を研究所に入れて椅子に座らせてから話そうとしていた。

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