第36話 さよならミニリュウ

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 焼け焦げた臭いは塔に染み付いてしまっているようで、不気味な雰囲気を更に不気味に仕上げる。
 少しでも怖さをなくすために相棒であるポケモンのミニリュウを出し、膝を立てて包み込むように抱きしめる。

「リューくん、青色の何か見えた?」
「りゅー」
「うーん、そうかぁ。もうちょっと辺りを見渡してみよっか!」

 首を左右に振るミニリュウを確認して、見てないことを確認。マイが現在いる階は一階なのだが、床の底が抜けているところが何箇所もあった。そこを恐る恐る覗けば深い谷底のように何も見えない暗闇があり、どうやら地下があるようだ。
 しばらく探索をしていると、横壁が抜け落ちたところから優しくて柔らかい月の光が差し込んで来た。どうやら相当探していたらしく辺りは暗くなっていた。

「夜だ! もう帰らな、わー!?」

 急いで立ち上がり塔の入り口を目指そうと走り出した時、床が抜けてしまった。転ぶ衝撃でモンスターボールが弾けとび、ボールは地上に残したままマイとミニリュウは地下に落ちてしまう。

「いったたた、リューくんだいじょうぶ? 結構落ちてきちゃったね、ここからじゃ上に上がれないや」

 尻もちをついたのでスカートについた土埃をはたきながらミニリュウに声を掛ける。地上からはボールから出たのであろうポケモン達が声を上げて鳴いていた。

「そうだ! フィーちゃん、ゴールドにこの事を伝えてくれない? フィーちゃんのテレパシーなら伝わるはずだよ!」
「フィー!」
「ピーくんはフラッシュで辺りを照らして!」
「ぴっか!」
「キューくんは……キューくんは可愛くいて!」
「きゅー」

 マイの判断に素直に従うポケモンに暖かい気持ちでいっぱいになる。そして地下にいるマイとミニリュウは他に上がれる場所がないか確認をするため辺りを探索。
 いつもならゴールドがいて、誰も思いつかないような事で事件を解決してくれるのになぁ、なんて目に涙が溢れてくる。
 いつも隣にいてくれるゴールドがいないとこんなにも心細いなんて気が付かなかった。

「りゅ? りゅー!」
「あはは……ごめんね。なんだか怖くなってきちゃって」
「りゅー! りゅー!」
「うん、ありが……リュー、くん!?」

 寄り添って頰を撫でてくるミニリュウを撫でていると身体が光りだした。咄嗟の事に目を白黒とさせ、涙も収まってしまった。
 もしかして、これは—―

「進化!?」

 恐怖で怯えてしまったご主人をどうにかしたいという気持ちがミニリュウを新しい姿へと変えた。
 そして、ミニリュウはハクリューへと進化を遂げたのだ!

「き、きれい……」

 マイが顔を上げてその美しい姿を見る。青かった身体は水色になり神秘的なオーラを放って、月の光を味方にし神々しいまでにも感じ取れた。
 ハクリューになったミニリュウはマイのパーカーを口で掴み、を背中へと乗せる。不安定ながらも乗り、目の前を見ると別のポケモンが現れた。

「あっあれは! あの子だよ! わたしが見たのは!」
「リュー!」

 不意に現れた青色のポケモンは、マイが見た何かで。優雅にも音を立てずに一人と一匹の前に現れたのだ。乾いた草がパサパサと音を立てるのが聞き取れるくらい静寂な時が過ぎる。

「あっ! 待って! そんな、行っちゃった……あの子はなんて名前の子なんだろう」
「リュー? リュー!」
「えっもももしかして空を飛ぶの!? 翼とか羽はないのに!?」

 ハクリューが屈伸運動のような動きをはじめ、しなやかな身体を曲げたり伸ばしたりする、そして地面まで着くくらい落とした腰を一気に上げると—―

「とっ跳んだァ!」

 高い高いジャンプをしてみせたハクリュー。マイは首にしがみついて離れないように必至だ。飛ぶ、ではなく跳ぶことにより閉鎖空間から逃れることができ地上に足をつけ、ピカチュウとロコンが心配そうに脚にすり寄ってくる。

「マーイ! おいおいフィーちゃんから聞いたけど……あ? なんだ、マイ。真下に落ちたって聞いたけど」
「う、うん……リューくんが助けてくれたの」
「おーってなんだァ!? 進化してんじゃねーか!」

 元の身体の二倍になったハクリューをみてゴールドは一歩引いてしまう。
 だが、変わらない人懐っこい笑顔でゴールドの頬をすりすりとしてくるのを見て、思わず笑みをこぼす。

「あ~ゴールド笑った!」
「笑った~じゃねえよ! 心配かけさせんなよ、たく」
「えへへ、ごめんなさい。でもケガはなかったよ! ほら、元気ー!」

 ポケモンセンターに帰る途中、一瞬だけ見た青いポケモンをゴールドに話したが俺にも分からないと首を横に振る。
 ピカチュウのフラッシュが暗い夜道を明るく照らし、ゴールドとマイの影を映し出す。マイが影で遊びだしたところでゴールドが思い出したように言う。

「あっそうだマイ。虹色の羽のこと分かったぜ」
「え! ほんと!? なになにっ!」

 感情の曲線が急カーブを描いて上昇、両手を握りしめ小刻みに揺らす。ゴールドがズボンのポケットから何かを取り出して、マイに見せれば顔が明るくなる。

「わあ! これって虹色の羽!?」
「おー、さっき母さんに電話してよ。やっぱり昔お前と見たのが忘れられなくてよ」
「う、うん……ありがとう」

 なぜお礼を言われるのか分からないが話を続けるゴールド。

「あの時は知らなかったけど、虹色のポケモンはホウオウって言ってな、伝説のポケモンなんだ。スケボーで追いかけたろ? その時に、そいつが落としてった羽拾ったのを部屋に置いといたの忘れてたんだわ」
「うんうん」
「それを母さんに通信システムで送ってもらったんだ」

 虹色の羽を渡されて、頭にクエスチョンマークを何個も浮かび上がる。

「お前が持っとけ。なんだろうな……これは今のマイにふさわしい」
「いいの?」
「おー、ほらよ」

 強引に渡された虹色の羽を受け取り、困ったように笑うマイ。
 疲れからか、ポケモンセンターについてからはすぐに眠りについてしまった。


「おやすみマイ、ごめんよ」

 聞こえないように言って、髪をそっと撫でるゴールドの表情は苦しそうだった。
またきてハクリュー!

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