第18話 進化の奇跡

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 エーフィが見つめる先にいたのは、なんと全身が真っ黒なエーフィに似たポケモン。クロヒョウなような体型と、ラグビーボールを細長くしたような耳と、それと同じ形状の尻尾をもち、黒い身体のあちこちに黄色い輪っかの模様がある。
 そんなポケモンを抱きかかえていた人物は――

「コウちゃん!」
「ゲッ! なんでお前ここにいるんだよ!」

 まぎれもなくコウだった。大事そうに抱えているポケモンの名前はブラッキー。エーフィは激しく怒りの声を上げる。

「ん? なんだ、そのエーフィ怒ってるけど」
「あっ、そうかコウちゃんはポケモンの気持ちが分かるんだよね」
「へえ、そいつはすげえな」

 そういいつつもゴールドはコウを睨む。しかしエーフィが怒っている理由が分かるのはコウだけ。今はうかつに行動はできない。

「なるほど、エーフィはこのブラッキーの姉ちゃんで、このブラッキーがとんでもなく弱いから独り立ちさせたのにまだこの場にいるから怒っていると」
「姉弟!? へえ、フィーちゃん、お姉ちゃんなんだね」

 フィーちゃん、という発言はスルーしておいて。どうやらエーフィはコウの言う通り、ブラッキーがまだここにいる事に対して怒りを覚えているようだった。
 抱えられて大人しくしているのを見る限りブラッキーはコウにゲットされたようで、何気にマイは図鑑を開く。

「月光ポケモン、ふうん。フィーちゃんとは真逆なんだ」
「マイそんなことより、コウから図鑑返してもらえ」
「あっそうか! コウちゃん!」

 図鑑をリュックに戻して、ブラッキーに顔をべろべろとなめられているコウに人差し指をさし宣言する。

「図鑑を今すぐ返して! 今は洞窟から出たばっかりだけどリューくん達は元気いっぱいだから!」
(まあ俺のポケモンが戦ってたからなー)

 ビシッとコウに言い放つマイ。瞳は爛々に輝いていて図鑑を返すよりもバトルをしたいという思いの方が強いように思う。

「分かった」
「えっ!?」
「ただしバトルに勝てたらな! 行け! ヨーギラス!」

 案外素直に「分かった」なんて返事をするからゴールドとマイの肩が落ちる。ただし、やっぱりここはトレーナー同士。血が騒ぐのだろう。

「ヨーギラス! 待ってたよ! リューくんッ君に決めた!」
(おー珍しい。マイがボール投げた)

 力強く放ったモンスターボールからは煙が辺りに広がりミニリュウが出てくる。しかし、煙がどこかに去る前に

「踏みつけだ!」
「リューくん! 避けて!」

 コウの素早い指示にマイは目を丸くする、しかしマイだってあの研究所とは違う。ミニリュウに避けてと言い放つ。しかし!

「そんな! ミニリュウの尻尾が踏まれている!」
「リューくん! ヨーギラスを尻尾振るで飛ばして!」

 ゴールドの声にマイもようやく理解できた。尻尾が踏まれているなら尻尾を振ってやればいい!

「甘いな! 俺のヨーギラスの体重をなめるな!」
「でもリューくんの方が身長は高い!」

 この二人の言葉が、ヨーギラスを動かした。心と身体を。

「えっ!?」
「なにっ!? ヨーギラス、なぜ尻尾から離れる!」
「ははーん。そういうことか」

 ヨーギラスがミニリュウの尻尾から離れたのだが、マイとコウにはそれが理解できない。しかし、ゴールドは、分かったためが深いため息をついている。

「コウ、このヨーギラス、メスだろ」
「え、ああ。そうですけど」
「なんで敬語だよ、まあいいけど」

 男二人で悪いことをしたな、とヨーギラスに謝った。遅れてマイがようやく理解したらしく言わないでいいことを言ってしまった。

「そうかー! 女の子なのに体重重いって言われて、男の子のリューくんからどいたんだね!」
「マイーッ!」
「それは言っちゃダメなやつだろ」

 手をぽんと鳴らしてから、人差し指を上にかけげて説明してやる。それもいらない説明を。

「ヨーギラス!? 待て! その技はやめるんだ! 破壊光線はまだ未完成だ!」
「じゃー、リューくんも破壊光線してみる?」
「恐ろしいこと言うのはやめてくれマイ」

 恥ずかしさからか、ヨーギラスは口を大きく開き光のエネルギーを溜める。コウがいうには破壊光線らしいが、マイはその効果を知らないらしく気軽にミニリュウに言ってしまう。ゴールドが間髪入れずに止めに入るが。

「くそっヨーギラス! 言うことを聞いてくれ!」
「リューくん! ヨーギラスを止めて!」

 ミニリュウが素早く動き出し、ヨーギラスに巻き付いた。突然、異性に抱き付かれ、ハッと我に返るヨーギラス。そして、ヨーギラスの身体全体が光に包まれる。

「ヨーギラスどうしちゃったの?! リューくん危ないから戻って!」
「安心しろ! あの現象は進化だ!」

 まばゆい星のような光に目を細める三人、その光が収まるとあの二足歩行からは思いつかない姿になっていた。

「サナギラス!」

 コウが叫びながら変わり切ったヨーギラス、いや進化ししてサナギラスを抱きしめる。ぎゅっと目をつむり、その隙間からは涙が見える。うれし涙だ。
 こういうコウを見るとどうも弱いマイは、バトルと図鑑はまた今度ね、とコウを置いてスタスタと前を歩いて行く。

「マイ……成長したな」
「そんなことないもんっ邪魔したくないだけだもん!」

 なんて強がっているが、実際のところ半分正解だ。ライバルに近い存在のコウのポケモンはどんどん強く成長しているのに、と焦りを覚えているし、うれし涙なんて見たくないという強がり。
 進化したことで全体が青い殻で覆われるようになったサナギラスは、殻の上部にあたる部分に穴が開いており、その穴からコウを見る瞳は優しい目をしていた。

「じゃーな。コウ、ちゃんとブラッキーも育てろよー!」
「もー! 行こうよ! ゴールド!」

 ヒワダタウンはすぐそこだ。マイは次のジムを目指して突き進む。


(わたしもしっかりしないといけないね)

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