第11話 追われるのはもはや、お約束?

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 お昼もだいぶすぎ、今は夕方である。
 しばらく見にはいってしまいそうなくらいの真っ赤な夕焼け。のんびり眺めるのも、また旅の醍醐味といったとろこだろう。
 しかし、そんなのんびりゆったりな旅ができていないのが、こちら。
 
「オイオイオイオイ~! いつまで追って来るんだアイツら~!?」
「ゴールドォ~! 怖いよ~!」

 脱走犯のごとく、木に覆われたトンネルのような森の中を走りぬく二人。自分の足音に追われるかのように鼓動が激しく脈を打つ。
 ただいまゴールドとマイはオニスズメの群れに追われている。

「どうしようどうしようゴールドー!」
「仕方ねえ! 今は走るしかねえよ!」

 ゴールドはまだまだ体力が残っているが、マイはどうだろうか。顔はリンゴのように赤く染まりつつあり、結ってない髪が走る自分の速度とともになびいている。
森中の木という木を大軍のオニスズメの羽音が鳴らして風が吹く。

(確か飛行タイプは電気タイプが苦手だったってゴールドが言ってた!)
「マイっもう少しで街に着く! それまで頑張れ!」
「ゴールドは先に行って!」
「はあ!?」

 マイが突然ゴールドを先に行かせようとした。もちろんゴールドはそんなことが出来るわけがなく同じく止まってしまう。
 一体何がどうしたってんだよ!? 息が切れてしまっていて言葉にもできない。
 
「だいじょうぶだよ、ゴールド。わたし、できるから。だから先に行って?」
「そんな顔で言われて行けるわけねーだろ!?」

 顔が強張ってうまく笑顔が作れないが、しっかりとした声だけ出た。しかし唇はプルプルと震えて止まらない。でも、ゴールドを守れるのは自分しかいないと、正義感にかられたマイは強かった。

「リューくん! ピーくん! 10万ボルトォォオオ!」

 あのマイがはじめてモンスターボールを投げ放った。名前を呼ぶ叫び声と共にボールの中で蓄えていた電気をボールから放れた瞬間――耳をつんざくような大きな雷鳴が轟く。

「ぎ、ぎえぴぃ……」
「よっしゃ! っておいマイ!? ミニリュウ、ピカチュウ、戻っていいぞ! ありがとうな!」
 
 あんなに大量にいたオニスズメが地面に全員落とされ、ぴくぴくと伸びきっている。興奮した目がくらくらするマイを支え、さっと抱き上げる。

「ごー、る……ど」
「気が付いたか!? キキョウシティについたらすぐにポケモンセンターに行こうな! 辛抱できるか!?」
「うん……」

 暗く染まりつつある空から、音もなく冷たい雨が降ってきた。ゴールドのパートナーポケモンであるヒノアラシとエイパムにリュックを持たせ、自分のジャケットをマイに羽織らせた。

「これで少しは暖ったけえだろ。もう少しだ、もう少し」

 声をかき消すほどの雨音の激しさにも負けずに走り続け、ようやくキキョウシティにつく。目と鼻の先にあったポケモンセンターに転がり込むように走り込む。
 雨で濡れている少年とぐったりした少女を見たジョーイさんがテンプレートの挨拶の途中で飛び出してくる。
 マイをジョーイさんとラッキーに引き渡し自分は、借りた部屋へと行く。

「クソッ!」

 静けさの中、雷の音と自分が叩いた壁の音が響く。部屋にはいってすぐに扉を背に向け座り込んでしまう。
 悔しくて悔しくて、握った拳から血が流れてきそうだった。

(なんで守ってやれなかったんだ!)
「パムゥ」
「ああ、すまねえ。リュック持ってくれてありがとうな。もう戻っていいぞ」

 心配そうに寄り添う二匹に礼を述べてモンスターボールに戻す。ポケモンにまで心配されてどうするんだ。雨に濡れた服を脱いで替えの服に着替える。
 いつも自慢している前髪がペタリと垂れ下がっているのを気にせず治療室へ足を運ぶ。

「ゴールド!」
「マイ、もう大丈夫なのか?」
「うんっごめんね、ちょっと貧血だったみたい。ありがとう」

 一枚紙のように軽くて頼りのない雰囲気のいつものマイがそこにはいた。先ほどのマイは一体なんだったのだろうか。

「あ、前髪。おかしいよ、爆発してない。えへへ」
「雨で濡れたんだから仕方ねーだろ」

 気を使ってかマイが珍しくゴールドをからかう。いつもならこめかみに青い筋が立つゴールドも今日は特別だ。

「ったく。無茶しやがって」
「えへへごめ~ん」

 半分が夢のような感覚のマイをジョーイさんに「持って行く」と言ってまた抱きかかえて部屋に戻る。
 足取りは重くない、もう大丈夫だ。ゴールドはマイの顔を見て心に明るさを感じた


(わたしは荷物じゃないよ~)
(知ってる! 黙って寝ろ!)

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