9.結成:ウィステリア

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「つ、つかれた…」

まだ入ってもいない森のダンジョンの入り口でそうこぼしたウィズにデンリュウは叱るような声色で言った。

「移動するだけで弱音を吐くとは情けないですねぇ、ダンジョンを一匹で攻略できるというのは嘘だったんですか?そんなことでは調査団は務まりませんよ!」
「そもそも行くなんて一言も行ってないし誰かさんの荒い運送業のせいなんですけど!!」
「あ、ウィズも来たの?」
「お前ほんといい度胸してんな。」
「さあさあ!時間押してますよ!話はダンジョンに入ってからしましょう!」

ウィズのツッコミも虚しく2匹はそのまま森の奥に入ろうとしている。

「ちょっと待ったここどこだよ!お前が入ったら俺帰れないんだけど!?」

ダンジョンは出口と入り口が異なる。どれだけ深いダンジョンでも踏破しきれば出口があるのだ。2匹が入ってしまえばこの入り口から出てくることはない。ウィズは慌ててデンリュウたちの後に続いた。



「先にこれを渡しておきましょう。」

デンリュウから渡されたのは丸い水晶玉のようなものだった。その周りを太めな棒状の金属質な何かが一周し、周回上に同質の半球が取り付けられている。

「なんかモンスターボールみたいな形だな。」

そう漏らしたウィズに2匹が首を傾げた。

「もんすたーぼーる?」
「なんですかそれ?」
「あ、いや、何でもない。」

まさかお前らを捕まえる道具だよとは口にできず、やっぱりこの世界に人間の文化はないのかと思い知る。もっともウィズ自身にその道具を扱ったという記憶はない。ただ知識としてあるだけだった。

(やっぱちゃんと人間だったんだろうなぁ、俺…)

クラスメイトに妄想癖扱いされたのがそこそこ堪えていたらしいウィズは安心ともつかない気持ちでその水晶を覗きこんだ。

「これはつながりオーブと言います。」
「つながりおーぶ…」

モンスターボールの名称を口にした時と同じ口調でティーが反芻する。それに頷くとデンリュウは覗きこむよう指示した。

「これはまだ見習い用のグレードですがそうカスタマイズされているだけでスペックは正規のものと変わりません。中央の玉に君たちが映っていますね?」
「あ、うん。私とウィズが映ってる。」
「ではそこから水晶の中を覗いてみてください。」
「水晶って…あ、何か出てきたぞ!?」

手の中の天球の内側に星のような点が現れる。デンリュウがそれに触れるとその点が大きくなっていき、ついには水晶を飛び出して1匹のポケモンが宙に映しだされた。何やら困ったような顔をしていた。

「これ、ニンフィア…?」
「知ってるポケモンか?」
「ううん、しらない。」

何がなんだかわからないままのウィズとティーにデンリュウが映像を指した。

「これは困っているポケモンを助けるための道具です。君たちは初めての使用ですから近くの困っているポケモンが映しだされたみたいですね。あー、ニンフィアさん?どうなさいましたか?」
『あ、あなたは…?いえそれよりも…実は迷ってしまいましたの…こわそうな森でなんですけれども…』

こちらも映像として映っているのだろう、ニンフィアは突然のことで驚いていたが話のわかるポケモンが現れてホッとしたようだった。ニンフィアの言葉にティーがなにか思い出したようだった。

「こわそうな森?そう言えば村の近くにそんなダンジョンがあるって聞いたことあるなぁ。」
「近所かよ!頑張って帰ればよかった!」
「まあまあ、乗りかかった船でしょう。ではニンフィアさん、今から救助に向かいますのでそこを動かないでくださいね。」

ウィズをなだめつつ映像のニンフィアにデンリュウがそう言うと、感謝の言葉を返されて映像が途切れた。

「これで、依頼受領となります。」
「今ので?」
「はい。場所は…ええと、4階層ほど下るようですよ。こんな感じでこのつながりオーブでは依頼を受けることができ、またつながったポケモンの位置情報が大まかにわかるようになっています。」
「すごいなー!さすが調査団のアイテム!!これくれるの!?」
「ええ、今は訓練中ですがこの依頼が終われば正式に調査団見習いとしてお渡ししましょう。」
「やった!すごい!本物の調査団みたい!」

ティーがぴょんぴょんあたりを飛び回る。デンリュウも嬉しそうだ。

「相当うれしいみたいですねぇ。」
「まあずっと憧れてたみたいだしな。んで、俺達は何すりゃいい?」
「そう言えばあなたはダンジョン踏破の経験があるんでしたね。基本的にはそれと変わりません。ただ該当の場所についたら依頼をこなすとオーブがあなぬけのたまの代わりになってくれるので踏破しきる必要はありませんよ。」
「便利だな。」
「調査団のためのアイテムですからね。うちの優秀な開発者が作ったんですよ。」

白い胸をこれでもかと張るのはデンリュウの癖なのだろうか。ウィズの体高からはやや見えづらいのだが、自信満々な表情は容易に想像がつく。

「へえ、調査団に入るかは別にしてそいつには一回会ってみたいもんだ。」
「……まあ、あなたは割と流されやすそうですけどね。」
「なんか言ったか?」
「いえ何も、さあニンフィアさんがお待ちです。ティーさんも行きますよ!」

追い立てられるように急かされてダンジョンの奥へと向かう道すがら、ウィズはふいに違和感を感じた。
いつもダンジョンへ入る前とは何かが決定的に違うような、しかしそれが何かまではわからない。

「…まあ4階層下がる程度だ。終わってから考えればいいか。」

森のダンジョンは階層と言ってもどちらかといえば斜面だ。階段の板張りようにフロアが延々と続いている。そのため「こわそうな森」というだけあって薄暗く深い森ではあるが、階層を2つ降りてもなおチラチラと枝葉の隙間をくぐり抜けた日光が真上で光っている。

「敵はそんなに強くないし、なんだかピクニックみたい。」
「引率に私もいますからね。何かあっても大丈夫ですよ。」
「頼もしいこった。」

大人のデンリュウがいるという安心感もあるのか、普段は周りに警戒と回避を怠らないウィズも雑談をしながら歩く程度の余裕があった。
1対多数では不利極まりないが、3対多数ともなれば徒党も回避する必要も随分少ない。

「あ、あれラピスじゃない?」

小さな空間にポツリと落ちていたそれに、先頭を歩いていたティーがいち早く気がついた。ダンジョンの不思議な力の結晶であるラピスは、地面に落ちていると時間が経てば割れてかけらになってしまう。
使用するか大事にとっておくかリングルにはめ込むかという選択肢はあるにしろ、早めに回収しておくのが一番良い。

今日最初のラピスの発見、ということで誰が装着するか、と考えたところでウィズの思考が停止する。

「…ティー、お前リングル持ってきてるか?」
「え?うん。今日はウィズについていくつもりだったからリュックに入ってるよ?」
「…」

最初からゴリ押しする気だったというティーの話もウィズの頭には半分も入っていない。
それよりも重要なことが頭を占めていた。

「やっべえ…おい、急いでニンフィア連れ出してこっから出るぞ!!」
「えっどうしたんですか、そんな急にやる気を出して…」
「うっせえ!そもそもの原因はテメーだクソが!」
「言葉遣い荒いよウィズ。お腹でも空いた……の………」

あれ、とティーもそこで違和感に気がつく。
目の前をあわてて駆けていくウィズは普段学校で見る姿だ。当たり前だ。自分たちは今日学校に行くつもりで家を出ているのだから。
でも以前、カンロ草原へと向かった時のウィズはもっと大きなリュックじゃなかっただろうか。枝や不思議玉や食料を詰めたそれとしっぽにリングルをはめ込んで、いかにも冒険者然とした姿はまだそう遠い記憶ではない。

「たしかにやばい…かも。」

しかし今日はイレギュラーだ。登校する前にデンリュウと会い、道案内の末まっすぐダンジョンに来ている。ウィズがどこで荷物を取り替えているかをティーは知らないが、デンリュウに抱えられてきたのだからそんな余地はなかっただろう。
ティーは木々に覆われた空を仰ぎ見る。森の外であれば燦めく太陽は一番高い位置に来ていることだろう。
学校のクラスメイトはそろそろ昼食の時間だ。しかしウィズとティーの昼食はといえば隣でぽかんとしているデンリュウの腹の中。
テンションがうなぎ登りだったティーもそこでようやく自分のお腹がなりそうだということに気がついて、慌ててウィズの後を追う。

「デンリュウさん急いでーー!!あときのみがあったら拾ってきて!」
「ちょっと待ってくださいよー!?」

ティーは見ていたから知っているのだ。ウィズにとって空腹は何物にも耐え難いということを。それに伴う攻撃性と窃盗グセは許されたものではないがそれはウィズには制御できないようだった。
登校前や下校した後にカクレオンの店でおやつを買っているのをみたのは一度や二度ではない。食い意地が張っているといえばそれまでかしれないがティーには制御できなくなる前に予防しておこうというウィズの恐れのようなものを感じていた。
だからこそ、偶然とはいえ余裕のない状況に陥ってしまったウィズが心配だった。

「ウィズ!」

ティーがウィズに追いついた時、そこは目的の4階層目だった。後ろで体の重いデンリュウがやや息を切らして合流した。その手には小さなオレンの実がひとつ。

「目的の、フロアに着いた、みたいですねえ…ハァ、一体どうしたんですか…」

一匹だけピクニック気分が台無しになったデンリュウは突然の全力疾走にやや不満気だ。

「私もいい年なんですから無理はさせないでくださいよ…」
「ごめんねデンリュウさん。ニンフィアさんの捜索は私が先にするから、そのオレンをウィズにあげてほしいんだ。」
「ウィズくんに?」
「うん、お願いね!」

そう言って走り去るティーを心配しながらも、デンリュウは少しの好奇心を持ってウィズに近づいた。

「ウィズくん、オレン食べます?」
「…」

振り向いたウィズにデンリュウは少し驚いた。

「ダンジョンモンスターにでもなったんですかあなたは。ひどい目ですよ。」

言葉の通じない獣を相手取っているような感覚に、デンリュウはきのみをおいて少し下がる。
ウィズはそれに間髪入れず飛び込み、きのみを囲うように食べ始めた。
余裕ぶった生意気な態度とは真逆の必死じみた様子にデンリュウも呆けざるを得なかった。

「いやぁ、お昼ごはんを頂いたのは確かですが空腹でこうなるとは…君の喪った記憶とやらはなかなか波乱に満ちていそうだ。」

まだまだ子供といって差し支えない少年が小さめのきのみに食らいつく姿は大人のデンリュウには憐れにさえ思えた。

「君は、村から出ない方がいいのかもしれないですね。」

何があったのかはわからないが、きっとろくな生活ではなかったのだろう。彼の生意気な態度は豊かなおだやか村でようやく手に入れた余裕なのかもしれない。
ウィズは記憶を探している、とティーは言っていたが、それは果たして彼のこれからに必要なものなのだろうか。
ウィズの本懐もしらず老婆心からそんなことまで思ってしまったデンリュウは、私も年をとってしまったなぁと自嘲した。年寄りのおせっかいは時に若者には毒だ。デンリュウはそれをよくわかっていたと思っていたのだ。

「……早く帰りたい。」

ぽそりと落とされた言葉はウィズのものだ。
ようやくまともに話せるようにはなったようだが、自分の嫌な姿をデンリュウに見せてしまったことに落ち込んでいる。強がっていたい気持ちは同じ男であるデンリュウにもよくわかる。だから追求はしなかった。

「今ティーさんがニンフィアさんを探しています。我々も加わればすぐに見つかりますよ。」
「わかった。俺はあっち、あんたはあっちだ。」
「了解です。」

散開したウィズは歩きながらも先ほどのデンリュウの言葉を考えていた。

「村から出ない方がいい、か…。調査団には向いてないってことかね…。」



ティーの一声で大部屋に集まったウィズたちは、そこで今回の依頼主にようやく対面する。
ニンフィアは目に涙を浮かべて何度も何度も3匹にお礼を言った。このお礼は後日必ずします、とつながりオーブの効果でダンジョンから脱出するまでニンフィアはリボンを振っていた。
残された3匹はデンリュウがつながりオーブの使い方を説明し、ティーが実際に起動してみることで遅れて脱出する。
こわそうな森の出口に立ったデンリュウは少し傾き始めた午後の日を眩しそうに眺めた。

「いやー、森の中がどれだけ暗かったのかわかりますね。お二方もお疲れ様です。帰りは歩きましょう。」
「ありがとう!楽しかったよ!ニンフィアさんも喜んでくれてすごく嬉しかった!」
「そうでしょう!ポケモンに喜ばれるということは働く上でモチベーションに繋がりますしとても重要です。」
「まあ確かにあそこまで感謝されたら悪い気はしないな。」

二人の反応にうんうんと満足気に頷いたデンリュウはティーが持ったままのつながりオーブをビシリとさした。

「しかも!それだけではありませんよ!つながりオーブを見てください。先ほどのニンフィアさんが映っていると思いますが、何かに気が付きませんか?」
「なにか…あ!ニンフィアさんの映像に縁取りができてる!」
「それだけじゃなくないか?何かに繋がってるぞ。」
「そのとおりです!その先をご覧ください!」

ウィズとティーがオーブを覗き込むと、それはポケモンの形に繋がり、そこからさらに伸びている。
さながら星をつないで星座を作っているようだ。

「それはニンフィアさんと繋がっているポケモンたちです。そのつながりを強化することでいつか私達の助けになる。言ってみれば助け合いのつながりですね。」
「なるほどそれで『つながりオーブ』…」

ティーの言葉に頷いてデンリュウが続ける。

「しばらくは見習いとしてオーブでつながりを強化して実践経験を積むといいでしょう。繋がったポケモンたちが力を貸してくれるはずです。ダンジョン攻略も楽になりますよ。」
「やった!大人と一緒ならおじいたちもきっと許してくれるよ!よかったねウィズ!」
「はっ?」

ティーの言葉の真意を確認しようとする前に、デンリュウがそうでした!と声を上げた。

「日が落ちる前に私は私の仕事を終わらせなければ!ではこれで実習は終了とさせていただきますね。活躍を期待してますよ!それでは!」

ドタドタと音を立てて走り去っていくデンリュウ。
残された2匹がそれを呆気にとられたまま見送った。

「なんかすごいポケモンだったね…」
「方向音痴だって言ってたけど方向合ってんのかな。」
「大丈夫でしょ、もう村は見えてるんだし。」
「今度は腹もそんなに減ってないだろうしな。全く、おかげでひどい目にあったぜ。」

腹減った、と幾分かは余裕のある声でウィズが項垂れる。お腹は空いているだろうがおかしな気になっていないのは穏やか村に帰れば大丈夫だという安心感があるからだうか。それに少しホッとしながらティーは笑った。

「あはは、私もお腹空いたし、カフェでなにか食べていこうよ。学校も今更行ったって明日行ったってそう変わらないしさ。」
「そうだな。」

断る理由もないウィズは一刻も早く腹を満たしたいという気持ちでティーとともに広場のカフェへ向かって歩みを早めた。


そうして、グミスムージーを片手にカフェでカットフルーツの盛り合わせのおかわりを頼んでいたウィズは今しがた相席しているティーが放った言葉に眉を寄せた。
しかしティーはあまり気にしていないようで、カットフルーツをどういう順番で食べようかと吟味しながら事も無げに言ってのける。

「私もそうだけどウィズもはみ出し者じゃない?問題児同士固まるくらいがちょうどいいよ。」

ざっくりと切り込まれた真実にウィズは唸った。ティーの言葉に反論する隙は悲しいかな、全く見つからない。
そもそも手癖も口も悪いと自覚しているウィズを全面的に味方するポケモンなど、オーガスタくらいだ。
ヨルダもコリーもカーティス村長も、そこそこ良好な関係を築き始めているとはいえ、それでウィズがまともな良い子だと手放しで言えるポケモンはこの村にはいないだろう。
今日だってまだ学校が終わっていない時間にカフェに入ったせいでガルーラのおばちゃんから訝しげな顔を頂いたばかりだ。
でもだからと言ってわざわざ自分を選ぶことは無いともウィズは思うのだ。


ティーに申し立てられたのは見習い調査チームの結成についてだ。当初の予定ではティーがウィズにくっついていく、というスタンスだったがその口約束をチーム結成にまで押し上げられているらしい。
調査団員になる、それは世界に憧れるティーの夢だ。その自分の道に相棒としてウィズを引き込もうとしている。
ウィズだって、つながりオーブという話に聞く調査団の科学力を直にかいま見たことで調査団が自分の道に有効であることは気がついてはいる。ティーがそれを受け取った以上、ティーと組む利害は利に軍配をあげる。しかしウィズはデンリュウに「向いてない」と言外に言われたばかり。迂闊に飛びつくにも癪に障る。

「一人でもいいんだけど?」
「言うと思ったよ。」

断りのつもりで放った言葉は予測されていた。顔を見れば得意げにしているのがまたウィズの癪に障る。断られるのを予想しておいてそれでも引き下がらないというのだからティーも大概面の皮が厚い。

「あっそう。」
「でもウィズは絶対私と組んでくれるって思ってるよ。」
「そりゃご大層な自信なことで。何で?」

フルーツに刺さっていたピーカンナッツから食べることにしたらしいティーがどこか自信ありげにこちらを見る。

「ウィズはずっとここにはいられないでしょ。探しものをやめない限りはね。コノハナさんにしてもいつか折り合いをつけるつもり、違う?」

そんなティーをウィズはやっぱりコイツ馬鹿ではないよなと思う。
ウィズの目的は記憶を取り戻すことだ。おだやか村にある文献を片っ端から読み漁ったが、人間がポケモンになるなどという症例は見受けられなかった。そもそも人間がお伽話扱いのこの世界で前例があるかどうかも分からないが、おだやか村のような田舎に伝えられていないだけだという可能性が捨てきれない。
ならばウィズが次に目をつけるべきは都会なのだ。記憶を取り戻して人間に戻るという目標を捨てない限りは、ウィズの心が決まろうと決まっていなかろうといつかはそうなる。
ティーはそれを自分に合わせろと言っているのだ。それも調査団の科学力をちらつかせて言うのだから食えない。
学校のクラスメイトが以前自分に「都会のワイワイタウンから来たのか」と聞いてきたことがあるが、そこにティーの目的地である調査団員の基地があることももう知っている。
そして調査団員の仕事は世界を巡って土地を、ダンジョンを調査することだ。
これ以上なく利害が一致している。ならこの際おだやか村脱出のために遠慮のいらないウィズを連れて行こうという考えは嫌いではない。

「なるほど?」
「でしょ?」

この村にはお互い厄介者で、出て行くために相棒にするにはむしろちょうどいいのかもしれない。ウィズはおとなしく他のポケモン達と共同生活をして余生を過ごすわけではないのだ。できることならば、オーガスタとはそのままでいたいとは思うけれど。

「俺調査団には向いてないかもしれないぞ。」
「そう?でもダンジョン潜るのは得意なんだし私のサポートすればいいじゃん。少なくてもウィズに損はないんだからありがたく受けなよ。」
「お前のそういうとこ、案外嫌いじゃねえよ。不本意だけど。」
「まったまたー!」
「んで?チーム名は決まってるわけ?」
「あーそれなんだけどね!」

初対面で印象最悪の彼らが今まさに楽しげな笑い声を響かせている。気に入らない者同士だったはずなのに、いつの間にかお互いが側にいて苦しくなかった。

他の席で村の主婦たちが「あらあら青春ねえ」などと言いながらほほえましげに見ていることを二匹は知らない。
偶然知り合った小さな二匹が、口約束で作った小さな繋がり。その後世界を巻き込む調査団チーム、『ウィステリア』がそこに生まれ落ちた瞬間だったことはその主婦たちは知らない。
そんなどこにでもあるような、平凡な平日の昼下がりの話だった。

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