第2話 夢もいっしょに連れてきた

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 無事シルバーと共にはじめてのポケモン《ミニリュウ》を捕獲したマイはモンスターボールを大事そうに持って洞窟から出てきた。
 長居するのも意味がないとシルバーは早々にヤミカラスをモンスターボールから繰り出すと、行きと同じやり方でマイの家まで送って行くと、なぜだかマイだけを置いてどこかへと飛び去って行こうとした。

「シルバーさんはゴールドさんに会わなくていいんですかー?」
「俺は……いい」
「ほへ? わ、わかりました」

 何か意味ありそうな視線を泳がせるシルバーに疑問を持ったマイだが聞くのも悪いと思い質問はしなかった。そして、シルバーが見えなくなるまで空に手を振り続ける。

(多分あのままゴールドに会うと面倒なことに巻き込まれるしな)

 そんなことはつゆ知らずマイはゴールドを探しにワカバタウンを歩く。庭に二人の姿がなかったのだ。
まだ喧嘩をしているのかな? と不安になりつつも、早くミニリュウを見せたい、と早まる鼓動を感じる足が止まらない。

「マーイッ!」
「わっ!? ご、ゴールドさん!」

 きょろきょろとあたりを見渡すと後ろから大きな声を掛けられた。振り返ろうとする暇もなく首に回される両腕はゴールドのものだった。
 その勢いに驚いてモンスターボールを落としそうになったが、反射神経のいいゴールドが地面に落ちかけたボールを見事キャッチしそのままマイに手渡してくれた。

「俺を置いてくなんて酷ぇじゃねーか」
「ご、ごめんなさい」
「別に怒ってるわけじゃねえよ? ただ、その……心配したっつーか」
「へ?」

 首に回された腕が今度は肩に来て、ぐるりと視界を百八十度変えられるとゴールドが目の前に。表情は少しばかり怒っているようにも見えたが、素直ではないゴールドが心配した、と小声なりに言ってくるもんだから目がテンになってしまう。
 その様子に恥ずかしさを覚えたゴールドが話題をかえようとボールの中身を問う。

「ポケモン、ゲットしてきたんだろ? 見せてくれよ」
「はいっ」

 教えてもらったばかりの、ボールを放り投げてポケモンを繰り出すやり方はまだ抵抗があり、それをできないマイが、ボールを右手で持って左手の人差し指で、そっと開閉スイッチを押してみる。
 煙と共に捕獲したばかりのミニリュウが出てくるとゴールドは目を丸くして言う。

「ミニリュウたぁ、なかなかなポケモンを……」
「えへへ、そうかなあ」

 ゴールドの素直な感想に、照れて頬がリンゴのように赤くなるマイは頬を指でかいて視線を外に向けた。しかしゴールドには一つ疑問が出た。

「なあ、ミニリュウって確か、ワカバタウンの端にある洞窟で出たよな? そこって前に俺が危ないから行くなって言わなかったかなあ?」
「あっ……え、えと」

 ニコォ、と顔は笑顔のゴールド。しかし、その笑顔が張り付いたような笑顔で、実際はすごく怒っていることに気がついてビビるマイ。
 それでもマイには言いたくて言いたくて仕方ないことがある。

「わっわたしねっ。この子と旅に出たいの!」
「ハア!?」

 笑顔から一転、眉間にしわを寄せてマイを壁へと追いやり、両腕を壁に当て、マイを逃げられないようにする。

「旅って危険なのわかってるよな? お前はただでさえ体調が不安定で、背もちっせえから他の連中からも嫌な意味で絡まれたりもする。今は俺がいるから大きなこと犯罪には巻き込まれないけど、俺の目の届かないところじゃどんな目にあうかわからないんだぞっ!?」

 正論だ。珍しく正論を述べるゴールド。それはそれは三年間も大切に、それはもう大切に面倒をみてきた女の子を「十歳になりましたね! ハイ! 旅に行ってらっしゃ~い!」なんてできるわけがない。
 ゴールドはマイのことを他の友達とは違う感情だって持っている。

「……」
「どうしたよマイ? 黙ってるけど諦めたか?」

 俯いて表情がわからなくなったマイを見て、いい方向で考えが変わったとゴールドが一安心した瞬間にマイがガバっと顔をあげて宣言した。

「わたし決めたの! だいじょうぶだよ、がんばるったらがんばる! 怖いことだって覚悟したもん!」
「マイ……」
「あっごめんなさい。わたし大きな声でっわっ!?」

 三年間過ごしてきたが、こんなにも自分を主張し、意見を突き通そうとしたマイを見たことがなかったゴールドは心臓をギュッと締め付けられたように苦しくなる。
 そして、これは俺も肝を据えるしかないと、つい華奢な身体を強く抱きしめてしまった。

「ごー、るどさん……?」
「ダァァァアアアア! わーったよ! わーった! お前の決意の固さみせてもらったぜ。こうなったら俺もついて行く!」
「へっ?」

 抱きしめられた本人は理解ができていなかったのにゴールドがまたまた大きな声で叫ぶから状況が余計理解できないでいるマイは頭上にたくさんのハテナマークを浮かべる。

「俺と旅をするってこった! 問題ねえな? あ?」
「なるほどーっ」

 ようやく解放されて、ふうっと息をついてから、ぽんっと手のひらの上でこぶしを叩くマイの顔はいちだんと嬉しそうだ。

「じゃあもう不安がなくなりましたっ」
「どういうことだ?」
「だってゴールドさんがいれば何も不安はありませんっ」

 明るい笑顔を見せるマイに、嬉しい言葉を言われてゴールドはきゅっと唇をかみしめて、首まで赤くなっていた。
 今は夕日が出ているせいで、顔が赤くなっていることがマイにはわからかったのが幸いだ。

「…………」
「ゴールドさん?」
「……っふ」
「ほえ?」

 突然黙り込んだと思ったら噴き出して笑うゴールドについていけない様子のマイは眉を下げて困っているとゴールドがニヤッと笑ってから頭を撫でながら言ってきた。

「なんかよォ、おかしくないか? いつもなら俺が言い出す側だろ? なのに今回はマイからって」
「え~? おかしいですか?」

 いつものゴールドに戻り安心したマイはほっと胸を撫で下ろす。そして、もう夕方だからと家にまで送ると言うゴールドの表情も安心したような顔つきだった。

「あ、そうだ。マイ、これやるよ。誕生日プレゼント」
「わー! ポケギアー!」
「お前いっつも家電から電話かけてきたもんなー。博士もくれそうな気配ないからよ、やるよ」

 ゴールドからマイの好きなピンク色のかわいらしいポケギアを受け取った。ポケギアとはスマートフォンのような携帯を時計型にしたもの。これ一つで電話はもちろん、メールもできてしまう優れものだ。
 別に博士は意地悪でポケギアを与えなかったわけではなく、マイにほしいかい? と聞いたら、いりません! と遠慮されてしまったから持っていなかったのである。

「ありがとうございます! ゴールドさんっわたしポケギア大切にします!」
「おー。俺の番号はいってからいつでも電話してきていいからな」
「はいっ」
「じゃあな、また明日、いつもの時間に来るわ」

 家まで送ってくれたゴールドに手を振り玄関先で見送るマイ。首から提げたポケギアが夕日に輝いて眩しく光る。

◆◆◆

「はかせ、遅いなあ」

 ちくたく、ちくたく。いつもなら帰ってくる時間なのに博士が帰ってこない。
 実は博士、誕生日ケーキを研究所からかなり遠いケーキ屋さんにまで買いに行っているのだが、そんなこと知らないマイは不安で仕方なかった。

(研究で忙しいのかも。様子見に行ってみよう)

 この不安を解決するには行動あるのみ! といつもなら家の中で大人しく待つマイだがミニリュウと一緒なら怖くないと研究所まで行くことに。
 それに家からはさほど遠くない場所にある研究所だ。あたりが暗くても行ける。

「あれ? 研究所、電気ついてる? でもおかしいなあ、なんで光が動いているんだろう?」

 だんだんと近づく研究所。電気がついてると言ってもその光が移動しているのは何故? しかも光はあっちに行ったり、こっちに行ったり。

「み、ミニリュウ……お願い一緒にボールから出て行こう?」

 そっとミニリュウをボールから出して研究所の入り口まで来たマイ。もらった合い鍵でこっそり扉を開けると目の前にいたのはなんと。


「どっドロボーさん!?」


 ――泥棒だった!!

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