第77話

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください


あの後タツミはとにかく町から離れようと昼間居た森の近くまで走ってきていた。森へと続く道は昼間でも鬱蒼としており一旦木が生い茂る場所に入ると日光が遮られて薄暗くなる。その為夜間は危険防止のため立ち入りが制限されるのだがタツミ達が来たときはバリケードも無く普通に森の中へとは入れてしまった。


タ「はぁ・・・はぁ・・・・ここまで来れば大丈夫と思うけど・・・でもこれからどうしようか・・・。」

タツミが一息つこうと近くにあった椅子に座ると同時にスパイアがボールから飛び出してきた。スパイアがボールから出てきてくれたおかげで辺りが少し明るくなる。

ス『タツミ・・・・大丈夫だった・・?』

タ「何とか・・・だけどレガが・・・見捨てたく無かったんだが・・・どうすることも出来なかった・・・。」

ス『タツミのせいじゃないよ。それにレガは見捨てられたとは思ってないと思うよ、ずっとタツミといたんだからそれ位はレガも気づいているよ・・・。』

タ「そうだと良いんだけど・・・でもこれからどうしようか・・・もう確か10時近かったと思うし・・・またポケモンセンターに戻るのは危険を伴いそうな感じはするし・・・。」

ス『そうだよね・・・一応バックは持ってきているからテントはあるんだよね?』

タ「一応ね。ただそれ程大きい物じゃ無いから万が一夜間襲われたときには・・・無力だよな・・・僕って・・・。」

ス『でもなんで急に暴れ出したんだろ・・・・?ちょっと前までは特に変わった様子も無く寝てただけなのにね・・・!?』

急に草むらがガサガサと揺れ出した為、スパイアはタツミの前に立ち警戒する。しかし、その草むらから出てきたのは・・・・






『・・・あら?タツミさんじゃないですか?何か話し声が聞こえたんで密猟者かと思いましたよ・・・。』

タ「えっ?」

急に名前を言われ驚くタツミ、最初は暗すぎて正体が分らなかったのだがスパイアの炎の光が届く範囲にその影が近づいてくるにつれ正体が明らかとなった。

タ「あっ、ヨーギラスのお母さんのバンギラスさんでしたか・・・・。」

ス『あー・・・びっくりした・・・。本当心臓に悪い・・・。』

バ『でもこんな夜にどうしたのですか?しかもこんな暗いところで・・それと何かかなり焦った様子ですけど・・・。・・・・ここはあんまり居心地良くないので中にどうぞ。』

バンギラスは何かを察したのかタツミを森の中へと誘い込んだ。その後バンギラスに付いていくと昼間にいたあの草原へと辿り着く、その草原は開けている為とても星が綺麗に見え月明かりもあるため少々明るさもあった。

ヨ『あっお帰りなさい、誰だったの?』

バ『タツミさんだったわ。どうやら色々と事情があって森に来ていたみたい。』

ヨ『えっ!タツミが居るの!』

タ「どもー、また会ったね。」

ヨ『タツミー!』

ヨーギラスはタツミの姿を確認すると満面の笑みを浮かべタツミに飛びついてきた。

タ「おおおお・・・・いきなりだとちょっと驚くよ。でも子供がこんな夜まで起きて居ちゃ健康に良くないぞ?」

ヨ『えー折角また会えたのに・・・・今日くらい良いじゃ無い?』

タ「うーん・・・・どうでしょ?」


その後バンギラスに今まであったことを話した。その間ヨーギラスはフィーロと側で遊んでいたが、とても和気あいあいと過ごしていた。

バ『なるほど・・・そういう事が・・・・だからレガさんは居ないんですね。』

タ「そうなんです・・・本当急だったんでどうするべきか分らなくて・・・仲間を見捨てないとは言ったものの・・・それを守れなくて・・・・。」

バ『それはどうしようも無かったから仕方なかったんですよ。決してタツミさんのせいじゃありませんよ、だからそんなに自分を責めないで。』

ス『そうだよ、レガと同等の力を持っている僕でさえ駄目になりそうだったのにタツミだったらもしかしたら命が無かったのかもしれないよ。だからバンギラスも言っているけどそんなに責めないで。』

タ「そうだと良いんだけどね・・・でもこれからどうしようか・・・。」

バ『もし良かったらここに泊まっていきませんか?』

タ「えっ?でも迷惑になるんじゃ・・・?」

バ『大丈夫ですよ、ここなら一般人は入って来れませんしポケモンも夜はここまで来ませんから。後人数は多い方が楽しいですから全然大丈夫ですよ。』

タ「そうですか・・・・じゃあ一泊泊まらせていただきます。フィーロ、今日はここに泊まることにしたからもう寝る支度するよ。」

フ『えっ、泊まるの?分った!今日は外に出て良いんだよね?』

タ「大丈夫だろう、スパイアよく見張ってて。」

ス『了解!しっかり見張るよ!』



その後ティアやスカイも出しポケモン達が寝た事を確認するとタツミも軽く横になることにした。

タ「うーん・・・・なんか急な事だったからなぁ・・・あっ明日ポケモンセンター行って謝りに行かないといけないなぁ・・・。」

ス『明るくなればまた事態も変わるかもしれないし、レガも戻っているかもしれないから今日はゆっくり休もう?僕が警戒しておくから大丈夫だよ?』

タ「でもそれじゃあスパイアがきついじゃ無いか?スパイアまで倒れられたら僕どうすりゃ良いんだろうね・・・?フィーロとか守れるだろうか・・・?」

ス『大丈夫。僕はそれ程弱くないから安心して、それよりもタツミは休んで。』

タ「そうかい・・・?じゃあ今日はお言葉に甘えて休むことにするよ・・。」

その後タツミはようやく就寝することが出来た。基本的には簡易的なレジャーシートの上に寝袋で寝ているだけなのだが下が柔らかい芝生の為寝心地としては上々のようだ。

ス『でもなんで急に暴れ出したんだろうな・・・・?それだけが気になるな・・・しかも明らかに瞳に輝きも無かったし何かに操られているって感じだったしな・・・。』

バ『そうですよね・・・急に仲間がそうなるとショックも受けますよね・・・。』

ス『そうでしょうねぇ・・・特にレガに至ってはタツミとずっと一緒に居たからなおさらそう感じているのかもしれません。戻ると良いんですけどね・・・。』

バ『そうなる事を今は願うしか・・・。それよりもスパイアさんは大丈夫ですか?寝ていても大丈夫ですよ?』

ス『いや、僕は今日起きておこうと思います。フィーロやタツミを見ておかないといけないし何よりまた襲われでもしたら対処出来ませんから・・。』


その後朝までバンギラスと共に辺りを警戒しつつも交互に仮眠を取りながら翌朝を迎えた一行。

タ「うーーーーーーん・・・・もう朝か・・・。スパイアは・・・フィーロは・・・・。」

タツミが辺りを見渡すとスパイアは木にもたれ眠っておりフィーロはスカイやティア、ヨーギラスと共にまだ寝息を立てていた。

タ「あれ?バンギラスが居ないな・・・・どこ行ったんだろ?」

タツミはちょっと不思議に思いつつ寝袋から出て寝袋、レジャーシートを片付け何時でも出発OKのように準備をしていた。その時バンギラスが森の方から沢山の木の実を抱えて帰ってきた。

タ「あっ、木の実を採りに行ってたんですね。後、昨日はありがとうございました。おかげで助かりました。」

バ『ここら辺は木の実が多く実る場所が多いので朝食にと思いまして・・・いえいえ困った時はお互い様ですよ。でもスパイアさんは本当にタツミさんの事を信頼しているんですね。』

タ「もう結構長い事一緒に居て色々と問題を解決していった仲ですからね。」

バ『昨日話を聞いていてそう感じましたよ、あっどうしますか?かぶりつきますか?それともちょっと切りますか?』

タ「ええ~・・・・き・・切ってもらって大丈夫ですか?」

バ『大丈夫ですよ。』

バンギラスは木で作った包丁のような物を取り出し木の実を器用に切っていく。その光景は朝食を作っている母親のようだった。


そうこうしている内にスパイアやティアが起きてきたのでちょっと早いが朝食とすることにした。

タ「スパイア昨日はありがとうね。おかげでゆっくりと休めたよ。」

ス『なら良かった。』

そういったスパイアの顔はどこか満足げな顔であったがそれに気づいたのはティアだけだったのはここだけの話である。


その後フィーロ達も起きてきて一通り朝食が済んだところで今日の作戦会議を行うことにした。

タ「一応、今日は始めにポケモンセンターに行って状況確認をした後、ジョーイさんに謝罪。その後テレビで情報収集、移動できるなら移動って事にしようって思うけど大丈夫?」

ス『大丈夫、ちょっと寝たから十分体力は回復したよ。』

フ『僕はちょっとボールの中から観察しておくことにするね?』

タ「よし、なら早速行動開始だ。・・・それじゃあ出発します。昨日はお世話になりました。」

バ『いえいえ、こっちは何も・・・ただ、聞いた話だとかなり過激な人たちみたいですから気をつけてください・・・。』

タ「分ってます。よし、スパイア行くよ。」

ス『了解!』



ポケモンセンターの周りに行ってみるとパトカーが数台止まっておりどうやら昨日の事で調査しているようだった。またポケモンセンターの周りには規制線が張られており一般人は中へと入ることが出来ないようになっている。

タ「うわ~・・・結構大事になってるよ・・・どうやって謝る・・・ってかあれもしかして修理費負担しないといけないパターンだったりする・・・?」

ス『まさか・・・昨日の事は僕が・・・・って警察には言葉が通じないんだった・・・。さてどうする?』

タ「まぁ当たって砕けろって感じで行くか・・・。ここでこのまま時間が過ぎるのを待っていても仕方ないことだしな・・。」

タツミは意を決し規制線の前で一般人を見張る警察の元へと歩いて行った。

タ「何かあったんですか?」そうタツミが警察官に聞くと

警察「えっ?ああ~昨日このポケモンセンターであるポケモンが暴れてね・・・しかも1匹とか2匹とかじゃ無く預けていたポケモンも含めて大体10匹くらいのポケモンが中で急に暴れてセンターの中がかなり滅茶苦茶なんだ。」

ス『(直接あの事を言うんじゃ無いんだ・・・。)』

タ「それでどうやって収束したんですか?」

警察「うーん・・・連絡を受けて僕たちも直ぐ駆けつけたんだけどその頃にはもう居なくて・・・ジョーイさんや宿泊者から話を聞いたらサイレンの音を聞いたら一目散に逃げていったって話だけどねぇ・・・。リーダーが向こうに行ってなかったら良かったのになぁ・・・。」

タ「今この町にジムリーダーって居ないんですか・・・?」

警察「テレビで見なかったかい?カイナシティに集合掛けられて今この町も僕たち警察官5人くらいしか居ないんだよ。あ、そうそう宿泊者達から変な話聞いたな・・・確か暴れていたポケモンすべて目に光が無くて全員死んだ目をしていたって話。何だろうね?」

タ「そうなんですか・・・ここのセンターは復活は難しいですか・・・。」

警察「どうだろうね・・・?今丁度業者に来て貰って復旧作業して貰っているけど1週間は欲しいって話だから・・・キンセツとかハジツゲの方に回って貰うしか無いよ・・・。」

タ「そうなんですね・・・ありがとうございました。」



タ「さてと、一応レガみたいな状態になったポケモンが他にも複数居ることが確認出来た・・・。でもどういう基準でこうなっているんだろ・・?」

ス『うーん・・・元々人も少なかったし部屋の中に入った人とかも居なかったから・・・外でかなぁ・・・?』

タ「まぁ最近レガの様子が急におかしくなったりはしていたからなんだかんだで思い当たる節はあるんだけどねぇ・・・でも一体どこで?」

ス『・・・もしかしてあの女が関わってるんじゃ無い?今回の問題起こしたのってロケット団だったよね?そしてあいつもまたロケット団・・・そしてレガは一番接触率が高かった・・・。』

タ「うーん・・・一応リュウセイが無事か確認した後考えてみよう。・・・・・・あれ?出ないなぁ・・・何とか無事なら良いんだけど・・・。でもあのカイリューはなんとも無かった気もするけどな・・。」

ス『用心には用心を重ねて・・・でも逃げたポケモンは一体どこ行ったんだろ?ん?ここを出る時ってあの森を通らないと行けないの?』

タ「いや、公式ガイドマップには乗ってないけどこの町から出るのはあの森を通るルートだけじゃ無いんだ。ここからカナズミの方やハジツゲの方にも行けるルートはある。恐らくそっちから行ったかなぁ。」

ス『そうか・・・森を通るルートだけならバンギラスに聞いたら何か分るかもしれなかったんだけどね・・・。』

タ「さて、まずはレガがどこに行ったのか探る必要があるな・・・でも空飛べるからかなり範囲広くなりそうだなぁ・・・ん?電話か・・・。」

そんな時に一本の着信がある。しかし、画面を見ても非通知設定としか表示されていなかった。

タ「非通知か・・・怖いが・・迷惑電話だったらぶち切れば良いか・・・・もしもし?」

???「お前のポケモンは我々が預かった。返して欲しければカイナシティの役所まで来い。このまま来なかったらお前のポケモンはただじゃ済まないと言うことだけを覚えておけ。」

タ「あの?どちら様でしょうか?まず名乗るのがマナーかと?」

???「・・・・お前この状況が分らないのか?まぁいい、ロケット団だ。それだけ覚えておけ。」

タ「とりあえず僕のポケモンの種族名分ります?」

???「はぁ・・・・分っているよ、カイリューだろ?良いから早く来い。」ブチッ

そこで電話はやや強引に切れた。

タ「うーん・・・謎の電話はあったけどなんか信憑性が無いなぁ・・・。一応行っても良いけどあっちは絶対交通規制敷かれていると思うんだよね。」

ス『でも種族名は答えられていたけど・・・一応行ってみる?ここからカイナまでだったら空を飛ぶで2時間あれば行ける思うから。』

タ「そうだなぁ・・・ん?また電話か・・・あっ今度はリュウセイからだ。もしもし?お前無事やった?」

リュ(何とか逃げることは出来たんだが・・・なんかタツミ・・・お前のカイリューと思われるスカーフ巻いたカイリューが町破壊してたぞ・・・?どうなってんだ?)

タ「まさか・・・・・・とりあえずリュウセイは安全な場所に居るんだな?」

リュ(避難所に今は何とか身を寄せているけどここも何時まで安全か・・・手持ちのポケモンも治療はして貰っているけど流石にこれ以上傷つけるわけにはいかないし・・・。)

タ「・・・・分った。今からそっちに向かう。そこで直接確認しようと思う。」

リュ(なっ・・!タツミ止めろ!よせ!お前までこっちに来たら命が危ないぞ!下手すると死ぬぞ!おい聞いてるのか!)

タ「そんな僕の手持ちが暴れているんだったら直接自分の手で押さえないといけないだろ?だからだ・・・・。切るぞ。」

リュ(おい!タツミ!聞けy)

タ「さて、急に予定変更してまずカイナシティに行ってから今後の事を考えることにした。でも恐らく警察などが集まっているから簡単にいかないと思う。」

ス『確かにそうだね、特にこんな時は警備がかなり厳重になっていると思うし・・・。』

タ「そうなんだ。だけど今回はちょっと準備をしてから行こうと思う。しかし、命に危険が生じる可能性も否定できないから・・・ちょっとバンギラスが居たところまで戻ろう。」


その後一応バンギラスとヨーギラスが居る広場まで戻ったタツミ達。しかし戻る途中少々道に迷い掛け結局空から行くことによって到達することが出来た。そこで手持ちのポケモンをすべて出し話を始めた。

タ「さて、レガがああなったのはみんなも知っている通りだと思う。さっきもレガが町を破壊しているって連絡もあった・・・・その為一旦町の様子を確認するためカイナシティへと向かおうと思うんだ。」

フ『ふむふむ・・・カイナシティで見たカイリューってレガなの?』

タ「それは分らないけど・・・恐らくスカーフを巻いていたって話だったから間違いないと思う。」

スカ『結構長期戦になりそうですね・・・・。』

ス『それに相手の数やレベルが分らないし・・・警察やジムリーダーが出動しているって事は相当な事だろうしな・・・。』

タ「そうなんだ。だから命に危険が生じる可能性がある、・・・・・安全のため・・・その為にここにみんなを一旦置いていこうと思う。」

ティ『!?なななななんで?』

タ「今回の相手は今までの相手とは違う、話し合いで決着が付くような相手じゃ無い・・・下手すると怪我をするかもしれないし最悪な事にもなりかねないんだ・・・。みんなを危険から守るため・・・。」

フ『・・・・・・・・・・。』

ス『一人で突っ走るのは止めた方が良いよ、特に今回の事に至っては一人じゃどうしようも無い可能性が高い。』

タ「しかし、みんなを危険な目に遭わせるわけには・・・・。」

フ『タツミ!』

タ「はい!・・・・どうしたフィーロ?」

急に大声を上げたフィーロにタツミは驚いて目を丸くしてしまう。しかしその時に見たフィーロの顔は今までに見たことが無い位真面目でただまっすぐタツミの目を見つめていた。

フ『今まで僕は何度も危ない目に遭ってきたよ・・・でもその度にタツミが守ってくれて・・・だから今回は僕がタツミを守る!!だから僕はタツミと一緒に行くよ!!タツミが断っても僕はついていくからね!』

ス『今まで何度もピンチに一緒に立ち向かって行っただろ?・・・今回も同じ。タツミは一人じゃ無いよ、僕達が付いている。』

スカ『そ・・そうですよ!何度も助けて貰ったからそれ位する借りはあります!』

ティ『そうなんだよ!僕達は役に立つか分らないけど一人よりも全然ましだよ!だから僕は付いていくからね!なんと言おうとも!』

タ「みんな・・・でも危ないかもしれないよ・・・?・・・・それでも付いてきてくれる?」

全『勿論!』

タ「・・・・みんな・・・・。本当ありがとう・・・。」

ヨ『僕は・・・。』

タ「ヨーギラスはここで無事を祈っていてくれると嬉しいな。またこっちに戻ってくるつもりだからね。」

バ『でも本当に気をつけてくださいね・・・・。』

タ「分ってます。まず安全第一に行動するようにします。危険と感じたら身を引きますので・・・・よし、まずは作戦会議だ。」


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