episode3ーⅡ 貫くは奇才の矢

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

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「おー、待たせたな。ちょっと迷っちまった」
「お疲れ、シャルにミリアン」

数分後、シャル達は少々疲れた表情で洞窟前まで歩いてきた。
…これで、ツララを除いた全員が揃ったな。
ついでに、シャルへと俺の意見を伝えた。洞窟内部が怪しいということを。

「んーなるほどな。調べる価値はあるな。じゃ早速…」
「待って。もうすぐツララ先輩がここに到着するみたいよ」
「あん?まじか」

ラルダは連絡機を使いながらそう言った。…意外と早かったな。

「…いや、ごめんなさい。マテリアの調整でほんの少し遅れるみたい。一応アイスには着いてるみたいだから、調整しながらゆっくりこっちに向かうとのことよ」
「なんだそれ…じゃあルト。行こうぜ」
「そうだな」

とりあえず先頭に立ち、洞窟内へゆっくりと足を踏み入れた。
全員が中に入ると、外より格段に暖かくなった。エネルギー石の影響だろうか。

………

「よし、調整出来た。…うーむ、初対面の人たちに迷惑かけちゃうとは…。なーんでこうも寝覚め悪いのかねー」

ぶつくさと独り言を呟きながら、マテリアを背中に担ぐ。
ラルちゃんにも謝らないとな…。

「…遅れは、取り戻すのが筋ってもんだよね。…急ぎますか」

少しだけ進む速度を上げ、洞窟まで一直線に向かう。
…面白いポケモンだったら、楽しそうね。

………

「こりゃあまぁ…大胆だな」

大きな広場に出た。そして、シャルが呆れ声で息をついている。
…広場の中心には、2体のアンノウン。特に動きを見せず、こちらをぼーっと眺めていた。

「…2体同時か。ラルダ、ぶっつけだが連携行けるか?」
「問題ないわよ。…でも、その必要は無いかも。…私一人でアンノウン一匹引き受けるわ」
「なに…?」

ラルダはズカズカと前に歩いていき、アンノウン2体はラルダを見た。

「おい!流石に一人でやるのは…」
「…もうすぐツララ先輩が到着するのよ。効率よく行くなら…チームで一体ずつ殺した方が楽でしょう?」

ラルダはそう告げ、勢いよく前に駆け出す。
アンノウン2体は体を動かし、ラルダに狙いを定めていた。
…仕方ねぇ!

「…ミリアンっ!引き付けろ!」
「はいっ!」

ミリアンのマテリアがアンノウン一体に張り付くような近さに接近し、大粒の球を打ち出した。
アンノウンは両手で防御姿勢を取り、その場から大きく吹き飛んでいく。
ラルダからアンノウンを離れさせる事に成功した。

「上出来ね。…『冷凍ビーム』!」

ラルダは一体になったアンノウンを囲うように、凍てつく光線を放つ。円の様に張り巡らされた光線は、ピキピキと音を立てて凍り付く。

「『ロック』!」

声を上げるとその氷が蠢き始め、囲うように広がっていた氷がアンノウンを包みこんだ。

「…なんだ、アイツの特性…?」
「余所見すんなルト!こっちの仕事をやろうぜ!」

シャルから呼び掛けられ、眼前のアンノウンに集中し直した。

「ハッ!」

空気を口から漏らしつつ、腕の力のみで軽い斬撃を放つ。
アンノウンは体を反らして避ける。が、見逃さない。

「ォラッ!!」

刀を地面まで下げ手を着き、腰を捻らせて弾き出す様に回し蹴りを放つ。
アンノウンの腹に当たり、少しだが姿勢が崩れた。

「連携!」
「オオッ!」

アンノウンの背後からシャルが近寄り、両手で勢いよく槍を突き立てる。アンノウンは避けれず、腹と腰を槍が連続で貫いた。

「弱いな!…ミリアン!とどめはくれてやる!」
「…頂きます!」

倒れたアンノウンを四方からマテリアが囲うように散らばり、ミリアンの合図と共に強烈な炸裂弾が放たれた。
アンノウンの体が粉々に砕け散り、コアを残して消滅した。
…呆気なかったな。

「よくやった!…さて、ラルダは…」

一段落着き、ラルダの方を見る。すると…

「…まだかしら」

氷で包まれたアンノウンを見ながら、ラルダは足を世話しなく地面に叩きつけていた。
…アンノウンを前にして、何をしてるんだ…?

「おっ、オイ!とどめをさせよ!?」
「そうは言っても!ツララ先輩が見せ場欲しいって言ったんだもの!」
「は、はぁ…?」

呆れて声も出ない。要するに、ツララはフィニッシャーで、目立ちたがりってことか?

「とにかく、ちょっと待ってて。…ツララ先輩の凄さを見せて上げるから」
「……」

ラルダも内心呆れている様で、イライラしている様子だった。

その時だ。

「【キンッ】」
「…え…?」

凍らされていたアンノウンに、一本の矢が突き刺さったのだ。矢は胸部を寸分の狂い無く突き刺しており、アンノウンの体がバラバラと朽ちていく。
思わず矢が飛んできた方向を見ると、広場の入り口で一体のポケモンが弓を持ったまま立っていた。

「…遅いですよ!ツララ先輩!」
「ごっ、ごめんなさい~!」

先程までの静かな表情から一変し、朗らかな表情でこちらまで向かってきた。
…このポケモンが…ツララ先輩…?種族はユキメノコか。
いや、それよりも…ツララからアンノウンまでの距離…【400メートル】は有った…!コアで強化されたマテリアとはいえ、その距離から正確にアンノウンを貫いたのか…!
剛弓かつ、とてつもない精度だ。

「…は、初めまして!ツララ隊隊長の【ツララ・フウゲツ】です。遅れてしまい、ほんとぉに申し訳ないです…」
「あっ、はい…初めまして…」

唖然としていた時にツララはこちらに寄ってきていたようで、話しかけられて驚いてしまった。

「…ツララ先輩は中上級兵士で、20歳の女性よ。…まぁ見たらわかるわよね」

と、ラルダがツララの自己紹介を補完した。
中上級兵士か、歳もだが階級も上のようだ。

………

それぞれの自己紹介を交わし、ラルダとツララは自身のマテリアとその特性を話し始めた。
アンノウンは村人からの証言だと残り1体。5対1で掛かれる分気楽だが、油断大敵だ。
ので味方の情報は詳しく聞いておいた方がいい。

「私のは『アイスシール』っていう名前のネックレスタイプのマテリアよ。レートはB」
「ネックレス…?マテリアじゃないとアンノウンは倒せないのに、そんなものが武器になるのか?」

シャルは当然の質問をした。ラルダは首を横に振り

「…勘違いしているポケモンは多いみたいだけど、アンノウンはマテリアじゃないと倒せないワケじゃないわよ。それに、私のマテリアは倒すためじゃなく、着けてることに意味があるのよ」
「…馬鹿にすんな、基本はって話をしたんだよ。…つまりアレか、『特性』でアンノウンを倒すんだな?」
「そ。私の特性は【強化氷】(アイスフォース)。氷エネルギーで作り出した氷の強度を自在に変える。氷を氷のままゼリーのように柔らかくしたり、氷のままアンノウンコア並の硬さにしたりーってとこね。つまるところ、氷エネルギー技でアンノウンを倒せるのよ」

ラルダは淡い水色のネックレスを揺らし、説明を終えた。その説明を聞いて、先程の光景を思い出した。
先程のラルダの戦闘は、冷凍ビームで辺りを凍らし特性で氷を柔らかくする。それを移動させ、アンノウンに纏わりつかせて硬度を上げる。そうすることでアンノウンをその場に固定したんだ。
使い方は多様。なので、文句なしの良特性だ。

「次、私かな?…えと、私のマテリアは弓矢です。名前は『アローヴジーニアス』。レートはA+で…弓と矢がセットになってるマテリアです」

ツララは背中に背負っていた弓矢を前に持ち出した。長さは大体80~90センチ。弓自体はコアを使ってないのかと思ったが、弦にコアを用いているようだ。矢尻の先にもコアを用いているようで、先程のように全力を込めた射出ならば威力は段違いに跳ね上がるだろう。
しれっと言っていたが、レートはA+…。弓矢は初心者には使いにくい武器なので、シャルのマテリアと同じく価値こそあれど使われてなかったマテリアなのかもしれないな。

「それで、私の特性は【カモフラージュ】。物質やポケモンを一時的に見えなくします。使い方と言えば、マテリアを隠して放ったり、自分を隠して隙を窺ったり…って感じです。ただ、隠しても消えた訳じゃないので衝撃を受ければ現れますし、一定時間がたっても現れます。世の中、上手い話はないのです…」

…と特性の説明した。なるほどな、弓矢と合わせれば見えない射撃を射てるし、自身を隠せば隠密行動にも使える。使い方を間違えなければ、必ずメリットが産まれるな。

「…おし、じゃあ俺らのも教えるよ」

俺は、自分の刀を前に持ってきた。

………

「っし、探すか。洞窟は、まだまだ深そうだしな」

話を終え、広場の先へと向かう。
この広場は他と比べて綺麗に整地されていて、見通しも良い。…ここで修行しているポケモンとやらは、この広場を使っているんだろうな。生憎、今はいないようだが。

広場の中心部から離れ、またしても細い通路を見つけた。ここと違い、奥は道が整っていない。
…慎重に進まないとな。

「…とりあえず先行する。足下に気を付けてくれ」
「了解したよー」

ツララの軽い返事を聞きながら、敵の気配をいち早く察知できる俺がまず通路に入った。
…石がゴロゴロ転がっていて、さっきから足に当たって痛い。広場も整えたなら、こっちも整えてほしかったよ…。
その時だ。

「『……ァ………』」
「…?今、誰が喋った?」

小さな声が聞こえて、思わず後ろを振り返った。だが、全員は小さく首を横に振っている。…気のせいか?

「…空耳か。悪い、先に進…」
「『ゴォアアアアアアア!!!』」

今度ははっきりと聞こえた。ポケモンの声からは程遠い、おぞましい叫び声。その声は、通路の先から響いてきている。

「っ!?皆、広場へ出ろっ!」
「「了解!」」

背後にいた全員が広場に出たのを確認し、通路から目を離さずに後ろへ下がった。広場から気配は無し。やはり、通路の奥だ…!

「ルト隊、戦闘準備だ!」
「ラジャ!」
「はいっ!」

「こっちもだよ!ラルちゃん、前衛は頼んだよ!
「任せて!」

全員が必要な距離まで離れ、マテリアを構えて通路の奥をじっと見つめた。
すると、そこからアンノウンが現れた。シルエットは、サワムラー。
…待てよ、声の主はコイツ…なのか…?だとしたら…!

脳裏に、コジョンドの言葉が響いていた。

「『言葉を話すアンノウン』」

その一瞬の思考が、隙になってしまった。

「『アアアィウアア!』」

アンノウンはおぞましい声を上げながら、俺の脇腹を打ち抜くように…蹴りつけた。


コジョンド
前作の仲間で、武器を作る天才職人。グリーンという町で武器屋を営んでいたが、主人公のルカリオに興味を持ち、仲間になった。
主人公の特殊な武器(オーラブレード)を作ったのがコジョンドの祖先であり、コジョンドもオーラブレードについて詳しい。
今はマニューラと共に世界を巡っており、マテリアを作るという偉大な功績を持つ

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