エピローグ、もう一人の私は。

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エピローグです。少々遅れてごめんなさい!
「ハァ…ッ…ハァ…!!」

今日も、息を切らして走り続ける。このカロス地方の大地を、その少女は何回蹴ってきただろうか。たとえそれが数えきれない程走っていたとしても、彼女の走る速さは常に一定。それは、今までの旅で鍛えられた体力の強さを示している。

「ここにもいない…。どこへ行ったの…?」

彼女はかなり焦っていた。もう何ヵ月もカロス地方中を走り回っているが、一向に目的が果たせない。そう、彼女は相棒を探しているのだ。

彼女の相棒は、白くてフサフサとした羽を持ち、赤い毛皮で長くスラッとした足を持つポケモンである。ポケモンセンターで特別に貰い、運命的な出会いをしたあの頃は、まだ彼も幼いひよこの様な姿だった。彼女は、彼と長い間旅をしてきた。どんなときも一緒で、辛い時も嬉しい時も共に過ごしてきた、親友の様で家族の様な相棒だ。
そんな彼は、ある日突然少女の前から姿を消した。ファイアローに空中からの捜索を頼んでも、ジュンサーさんに協力してもらっても、また自らの足で探し歩いても、彼は見つからなかった。もしかしたら、誰かに捕まってるのかもしれない。しかし、仮にも彼のトレーナーである少女の‘‘でんどういり‘‘を助けたポケモン。つまり、カロスチャンピオンのポケモンだ。そう簡単には捕まらないはず。

「お願い…出てきてよ…バシャーモ…。」

少女は相棒の名を呟く。ずっと動かしっぱなしだった足も止まる。ふと空を仰ぐと、自然と目に入ってきたのはヒャッコクの日時計。赤紫色に輝くこの宝石は、ここヒャッコクシティのシンボルだ。
彼女の記憶が時を遡る。その時は、とある家の主人の依頼を聞くために、ヒャッコクシティを訪れていた。依頼主の家はこの日時計から遠くはなく、彼女はここで相棒───もといバシャーモを待たせていた。用事を済ませ、待ち合わせ場所であるこの場所に戻ると、何とバシャーモは居なくなっていたのだ。
そんな過去を振り返りながら、彼女は自身の不注意を悔やむ。そんなことを考えても、意味はない事くらいわかっていても。

「ここでバシャーモはいなくなったんだよね…」

少女は怪しく輝く日時計と灰色の綿が敷き詰められた様な曇り空の境界線をじっと見つめる。美しい赤紫色が視界に入ってくるにも関わらず、どんよりとした空に吸い込まれそうになった。すると突然、ピロピロと明るい機械音が鳴り響く。その音は、ホロキャスターと呼ばれる小型の携帯電話機のもので、虚ろな目をしていた持ち主の少女を現実に引き戻した。

「あ、リクからだ…」

彼女はかけてきた相手の名を呟き、電話を繋いだ。

『もしもし、カレンかい?バシャーモは見つかった?」

『ううん、それがまだなの…リクのリザードンは?』

『まだ見つかってないんだ。また、電話するよ。』

『ありがとう。』

一連の何気ない会話を終えて、カレンと呼ばれた少女はホロキャスターの電源を切って鞄にしまった。
カレンと電話してた相手──リクは、カレンの幼馴染みだ。彼はカレンと同じカロス地方の出身だが、旅に出てすぐにカントー地方と呼ばれる遠い地方へ行き、そこで殿堂入りを果たした少年だ。数ヵ月前、彼がカロス地方に帰ってきた時、カレンの相棒と同じように、リクのパートナーであるリザードンが姿を消した。それからはリクはカロスに残り、カレンと連絡を取りながらリザードンを探しているのだ。

「リクも頑張ってるんだし、私も早く見つけなきゃ!待っててねバシャーモ!」

カレンはリクの声を聞いて安心したのか、グッと拳を握りしめて立ち上がる。その時、空から何かが落ちてくるのに気付いた。段々と地面に近づくその影はかなりの大きさだ。

「えっ、ちょっとなになに!?きゃああ!?」

あまりの突然な落下物に思わず悲鳴をあげる。その落下物は、カレンの上にのしかかってきた。感触的に大型の鳥ポケモンが何かに襲われて落下したと思われたが、その正体に、カレンは目を丸くした。

「ば、バシャーモ…!?」

「シャモ、シャーモ!」

何ヵ月も前に居なくなり、必死に探した相棒が今、目の前に帰ってきたのだ。嬉しさのあまり、カレンの目からは大粒の涙が溢れ出る。

「よかった…バシャーモ!無事だったんだね…本当に…本当によかった……!!」

カレンは思いっきりバシャーモを抱きしめる。バシャーモもトレーナーとの再開に満面の笑みを浮かべた。ちょうどその時、鞄の中のホロキャスターがカレンを呼び出す。カレンはホロキャスターを繋いだ。

『もしもし、カレン!僕のリザードンが見つかったんだ!』

『本当に!?よかった…!私のバシャーモも見つかったんだよ!!』

『そうか!これで一件落着だね。僕はもうじきカントーに戻るけど、カレンも元気でな。』

『うん、ありがとう!またね!』

お互いの朗報に、カレンもスッキリとした笑顔でホロキャスターを切り、鞄にいれる。

「そうだ、バシャーモ。貴方、どこで何やってたの?心配したのよ?」

「シャモシャモ!バッシャー!!!」

「えっ?あっちの私に…?そうかぁ~、元気そうなのね!私も会ってみたいな…」

バシャーモは経験した事をトレーナーに話す。カレンはとても面白そうに聞いていた。

「またカロス中を駆け回ろう!行こう、バシャーモ!!」

「バッシャー!!」

こうして、再開したカレンとバシャーモは、再びカロス地方の大地を駆け抜ける。二人の冒険は、まだまだ続く。



閲覧ありがとうございます。best friend ー私だけの友達ー はこれにて完結となります。一度でも読んでくださった方も、最初から最後まで読んでくださった方も本当にありがとうございました。

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