十六、真実をかけたバトル。

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両者のポケモンが向かい合ったその瞬間から、バトルは始まった。

「先手はどうぞ。」

「じゃあ、ありがたく!バシャーモ、キリキザンに『ブレイズキック』!!」

「バッシャァ!!」

「リザードン、ピジョットに『ドラゴンクロー』!!」

「グルル……っ!!」

「キリキザンはかわして!ピジョットは『エアスラッシュ』で向かいうってください!」

バシャーモは大きく飛び上がり、炎を足に纏う。そして、その足をキリキザンに向かって蹴り落とすが、キリキザンは素早く右に回避する。バシャーモの蹴りは地面に突き刺さり、公園の砂がパラパラと舞った。
一方、リザードンは鋭い爪でピジョットに切りかかる。しかし、一歩前にピジョットが出現させた空気の刃、『エアスラッシュ』によって、相殺された。

「バシャーモ、キリキザンを追って、『かわらわり』で連続攻撃よ!」

「リザードン、『そらをとぶ』で相手を攪乱させるんだ!」

「ピジョット、『かぜおこし』です!」

キリキザンはしばらくバシャーモと距離を取っていたが、バシャーモの方が素早さは勝っている為、すぐに追い付かれてしまう。そこからはバシャーモの技を防ぐので精一杯だった。
リザードンはハイスピードで上昇する。飛び回りながらタイミングを見計らい、しばらくするとピジョットに向かって急降下する。そして、ピジョットに突撃する直前に、ピジョットは『かぜおこし』を発動、リザードンは吹き飛ばされ、キリキザンに攻撃しているバシャーモも、バランスを崩してしまう。キリキザンは素早く腕の刀を地面に突き刺し、バランスを取った。

「良い感じですよピジョット、そろそろ止めてください。キリキザン、『つじぎり』です!」

ピジョットが『かぜおこし』を止めたと同時に、キリキザンはふらついていてガードができないバシャーモに『つじぎり』を決める。瀕死までには至らなかったが、かなりのダメージだ。

「バシャーモ!?」

「そのままリザードンにも『つじぎり』!」

更に、キリキザンは素早くリザードンの背後に移動し、切り裂く。リザードンは地面に落下し、うつ伏せに倒れた。

「リザードン、大丈夫か!?」

いくらゲームでバトルしてるからといっても、現実は甘くはなかった。カレンとリクがポケモン達と出会ってから、バトルすることはあまり無かった為、完全にファルの方がバトルに慣れていた。そして、その実力の差を見せつけられるかの様に、ファルに大きなリードを取られた。

「バシャーモ、まだいける?」

「シャモッ!」

「よし。バシャーモ、キリキザンにもう一度『かわらわり』!」

「リザードン『フレアドライブ』!」

カレンの声に答えて、バシャーモは立ち上がり、キリキザンの頭上に拳を振り落とす。リザードンは身体中に高温の炎を纏い、ピジョットに突進する。

「キリキザン、かわしてピジョットに乗ってください!」

バシャーモの攻撃はまたもやかわされ、キリキザンは素早くピジョットの上に乗る。

「バシャーモ追って!二匹まとめて『ブレイズキック』で蹴落として!」

「ピジョット『たつまき』!」

「…!?ダメだ、リザードンもバシャーモも戻ってこい!」

ファルの作戦にいち早く気づいたリクはバシャーモとリザードンを止める。ピジョットは大きな羽を羽ばたかせ、自身の周りに竜巻をつくった。二匹の姿は竜巻に隠れ、見えなくなっている。幸い、リクが止めたからバシャーモ達にダメージは無かったが、あと一歩遅かったら、確実に弾き飛ばせれていた。

「危なかった…リク、ありがとう。」

「ああ…でも厄介なのはここからだよ。どうする…」

リクはしばらく考え込む。この状態をどうにか打開したいが、なかなか良い案が浮かばない。それでも相手は待ってくれないのがポケモンバトルだ。

「ピジョット、前方に『エアスラッシュ』です!キリキザンは竜巻の中から出てきて、バシャーモに『アイアンヘッド』!」

「リザードンかわして!」

「バシャーモも避けて!」

前方からものすごい勢いで飛んできた『エアスラッシュ』と『アイアンヘッド』を、バシャーモとリザードンは飛んでかわす。キリキザンはすぐに竜巻の中へと戻っていった。

「ねぇ、リク…」

すると突然、二人の後ろに居たサキがリクの肩を叩く。

「どうしたの、サキ。」

リクは後ろを向かずに、ずっとフィールドを見つめながら反応する。かなり焦っているのだろう。手にも額にも、汗がたまっている。

「うん。さっき、キリキザンが技を出すときさ、なんで竜巻から出てから構えたのかなって。構えてる途中に攻撃されちゃうじゃん。絶対竜巻の中で構えた方が安全だよなーって。」

「竜巻…安全…そうか!!」

リクは、サキの言葉を復唱すると、何かわかったのか、顔がパッと明るくなった。

「カレン!もしかしてだけど、こちらからファルのポケモン達が見えない様に、ファルのポケモン達からもこっちは見えてないんじゃないかな?」

「なんで?」

カレンは、不思議そうな顔で聞き返した。

「普通、ポケモンに技を指示する時って、技を当てるポケモンの名前を叫ぶでしょ。ほら、『バシャーモにアイアンヘッド!』みたいに。」

「うん。」

「でもあの時、ファルはピジョットに細かな位置を指示してたよね。『前方に』って。それってバシャーモとリザードンがピジョットから見えない事を知ってたから、そんな指示をしたんじゃない?」

「た、確かに…!!」

カレンは相槌をうちながら二度も驚いていた。一つ目は、今回の様な難しい戦術があることに。もう一つは、その戦術を見破ったリクの頭の良さに。
少しでも弱点が見えてしまえば、竜巻など怖くはなかった。それどころか、二人には更なる自信が湧いてきた。そして、リクは作戦をカレンにひそひそ話で伝える。

「じゃあ、まずはリザードンが竜巻に突っ込んでピジョットに攻撃する。そしたらきっと竜巻は止まるから、その隙にキリキザンを。」

「わかった!」

カレンが元気よく返事したところで、リク達の反撃が始まった。

「リザードン、『フレアドライブ』で突っ込め!」

「何度でも同じです!ピジョット、前方に『エアスラッシュ』!」

竜巻の中から、高速で風の刃が飛んでくる。しかし、リクの表情には余裕があった。

「…そっちじゃねーよバーカ。リザードン!!」

「グオオオオォォ!!」

リザードンはエアスラッシュをかわすと大きく回転し、先ほど居た位置とは正反対の場所から竜巻の中に入った。勢いもあり、『フレアドライブ』の炎もあるので、簡単に突破出来た。

「リザードン、『フレアドライブ』解除。ピジョットに『ドラゴンクロー』!!!」

「……っ!?しまった!ピジョット、後ろです!」

『フレアドライブ』は、攻撃した後に自分自身もダメージを受ける、いわば反動の大きい技だ。しかしそれは、技が外れてしまえば起こらない。リクは攻撃の反動を避けるため、あえて『ドラゴンクロー』を選択した。竜巻の中からは周りが見えない為、簡単に背後を取れた。更に、ピジョットは背後を取られた事になかなか気づかず、反応が遅れてしまう。リザードンはそのままピジョットを切り裂いた。そこで初めて、『たつまき』が解除された。

「今よバシャーモ!『スカイアッパー』!!」

「バッシャアアァ!!!」

姿が露になったキリキザンに、バシャーモは下から殴り込む。キリキザンには格闘タイプの技は四倍で、大ダメージを与えると同時に、ピジョットから振り落とす事にも成功した。

「クッ…キリキザン、ピジョット!しっかりしてください!」

ファルに焦りの色が見え始める。作戦一つでファルのリードが大きく崩されてしまった。

「とどめだよ!バシャーモ、キリキザンに『ブレイズキック』!!」

「こっちもいくよ!リザードン、ピジョットに『ドラゴンクロー』!!」

バシャーモはキリキザンに炎の一蹴りを、リザードンはピジョットを大きな爪で引き裂き、共に立ち上がるので精一杯の相手ポケモンにとどめを刺した。技を受けた二匹は、目を回して倒れていた。カレンとリクの勝利だ。

「ふぅ…あの子達はやりますね…。ピジョット、キリキザン、お疲れ様です。」

そう呟きながら、ファルは手元のモンスターボールにポケモン達を戻す。

「やったあ!勝ったよ、バシャーモ!!」

「リザードン、凄いよ!」

「流石だな、二人とも。おめでとう!」

自分のパートナーに抱きついて喜ぶ二人をサキも笑顔で祝福した。そして、三人と二匹で顔を見合わせると、笑顔で熱いハイタッチを交わした。

閲覧ありがとうございます。
そろそろラストスパートですが、最後までよろしくお願いします。

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